男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第17話 激励的オーバーロード

 □グランバロア洋上 【禁忌王(キング・オブ・タブー)】ヴィクター・F・メルクリウス

 

 ……ヤヨイ君がやられたか。

 

「だが奴は四天王で最弱……」

 

 いやあ最初にヤヨイ君でよかった。カグラ君とかやられてたら対応する前に殺されてたかもだし。

 それでもまあ、ヤヨイ君が死ぬかもしれないってのは、少し気に入らないけども。

 

「ラトラナジュ、首尾はどう?」

 

「良い感じよー……うぅ、宝石が解けていく」

 

 せっかくの貯めに貯めた宝石をリソースに変換しているんだから、その気持ちもよくわかる。でも、今回の戦いだと僕らの中で最高火力であるラトラナジュが重要なパーツだから、やってもらわなきゃならない。

 

「あとで量産型ホムンクルス、格安で売るから……元手は取れないだろうけど、足しにはなるくらいはね」

 

「頼むわよ……ふぅ。こういう時はマニゴルドさんの《金銀財砲(ゴールドラッシュ)》が羨ましくなるわね」

 

 ラトラナジュの必殺スキル、《燃える乱心の玉石(カーバンクル)》は、ある種マニゴルドの<超級エンブリオ>【金城鉄壁 ジパング】の必殺スキルと【放蕩王】の奥義である《金銀財砲》を合わせたような性質を持つ。

 もちろんそれだとリソースが足りないから、あちらに比べれば純粋に劣っている点も数多い。そもそもジパングとは攻撃無効化の手順が違うんだけどね。

 

 まずカーバンクルは、第六形態ということもあって、リソースをそのまま放出するのは非常に効率が劣悪だ。《金銀財砲》と同じだけのコストを捧げてもよくて五分の一だろう。

 だけど攻撃方法が同じということもあって、放出されたリソースは外部の影響を受けない。基本的に物理的防御以外では妨害できず、命中すれば相手のENDとHPとのせめぎ合いになる。

 

 本来なら一発撃つだけで金欠にもなりかねないが、そこは宝石商系統超級職である【魅売(チャーム・バイヤー)】、膨大な量の宝石を貯蓄しているので問題には……なるけど<マスター>だから大丈夫!!

 

「でも、他の商人に比べれば、私は結構マシな方よ。元手さえあれば宝石を生み出せるんだから……たとえそれがグランバロアの海水でもね」

 

 ラトラナジュが現地の商人から購入したプールほどの面積を持つ海水、それをほぼリソースに変換すれば、ある程度はごまかせる。

 もちろん宝石量産特化の<エンブリオ>みたいなのに比べれば元手がかかる分マイナスだけど、商いの元になるものをいくらでも生み出せるってのは、非常に便利なのだ。

 

「それに私は、ヤヨイ君たちに会えてとても感謝してる。彼らがいるから私はここにいるわ。……それに、メルクとも出会えた。だからそのくらいの恩は、返したいもの」

 

 そう言って、カーバンクルを撫でながらラトラナジュはリソースを増やしていく。

 

 ……ほんと、敵わないね。少しだけ妬けちゃうよ。

 

 でも、それにかまけてラトラナジュにダサいところを見せるわけにはいかないよね……!

 

「さぁ……お仕事開始だ」

 

 僕の仕事は主力たるネグラフを抑えること。そしてグランヴィルとカグラ君が安心して敵を殺せるように邪魔をさせないこと。

 

 今も踏ん張ってるアルマちゃんのためにも、頑張りますか!!

 

 

 /

 

 

 □グランバロア洋上 【空賊王(キング・オブ・スカイパイレーツ)】グランヴィル・ガスターニュ

 

「飛沫……ダメージはない。警戒すべきはウォータージェット……そして本体の動き」

 

 速度で言えば俺が大幅に優ってる。不意を突かれなければ負ける要素はない。

 ……ま、その不意を突かれる要素も、ヤヨイが潰してくれたんだが。

 

「アルマ……メイデン、ね。随分と便利なことで」

 

『便利な女とか言ったら、刺す』

 

「言ってねえから安心しろ」

 

 俺の耳あたりでイヤホン型になっているスライムにそう告げて、雷を放つ。上空からバカスカ撃ってた時に比べれば威力は高くないが、その分小回りが効く。

 

「だけどいいのか? 今もお前の<マスター>、あのロボの中で苦しんでるんだろ」

 

『本体が抑え込んでるから問題ない。それにこの距離での情報伝達なんて児戯。私が戻っても意味はない』

 

「末恐ろしいことで……」

 

 こんなんが<超級>になったらどうなっちまうのかね。俺みたいな平凡な野郎には縁のない話だが……。

 

 振るわれた尻尾を上部に急上昇して回避し、ついでにゼノフォルテの刀身を当てて雷を流す。武器としてはゴミだが、雷の通りはいいのでこういう使い方をすることが多い。

 ホントならこの状態でもう一本武器を持つのが正解なんだろうが……。生憎職人の知り合いがいない。そもPKに武器を作る酔狂な輩はほとんどいないのだ。

 

 ——そういう道を選んだのが俺だから、別に文句はねえけどよ。

 

「で、そっちの<マスター>は今どんな感じだ?」

 

『今、【ブラック・デンドロン】の全身に行き渡った本体が全体を拘束してる。あと、隙間から入り込んだ本体がマスターを拘束してる。【カルマトラクト】のステータス強化は%強化。元のSTRが1000にもなってないマスターを強化しても、拘束はできる程度』

 

 ってことは、もしもヤヨイがSTR特化だったら大惨事だったな。あとはカグラだが……あっちは周りのホムンクルスが視線を外せば貧弱になるから問題ない。

 なら一番ヤバイのが俺か。【ユピテル】は意思を持ってないから俺を抑えつけるなんて出来ないし……さて、どうする。

 

「神話級らしいクソッタレなギミックゲーだぜ……!」

 

 ……これホントに勝てるのか? 時間制限付きで火力も足りない今どうにかできるのか?

 

 まだ戦い始めて三十分も経っていないはずなのに、全身に不安が満ちていく。こうしている今も俺の身体を胞子が蝕んでいるのだとすれば、俺はいつ、いつ——

 

『落ち着いて。<マスター>から伝言がある』

 

「なんっだよ、そっちは動けないんじゃないのか!?」

 

『口と頭は動くから問題ない、だって。それはともかく……』

 

 

『あーグランヴィルさーん? もしかして今俺が限界まで踏ん張ってるのにもう無理ー☆ とか言うつもりじゃないよねー? いや俺が自分を抑えつけてまで頑張ってるのに火力もスピードもある君が逃げるなんて思ってないけどさぁ!!』

 

 

 ——(イッラ)

 

 

「上等だコラそう伝えとけー!!」

 

 んだあいつ自分今戦力外のくせにバチクソ煽りやがって! 生態か!? 生態なのか!? なら滅びちまえそんな生物!!

 そんな思いを込めてスライムに叫び返す。スライムはうるさそうにしながらも、こう続けて口にした。

 

『……ハッ、なら上出来だ。おいグランヴィル、お前今、後のこと考えて色々と温存してるだろ』

 

「……」

 

『図星か? なら俺が言うことは一つだけだ。

 ——後のことなんて考えるな。俺がお前に与えたのはグスタ・ベスタの討滅だ。お前のカタログスペックから考えてそれくらいのことはできると判断した。だが逆に言えば俺が与えたのはそれだけだ、それ以上のことは求めてねえ』

 

「てめ——」

 

 

『——僕は君に期待しているんだ』

 

 

 ——ぞっとした。

 口調が変わっただけなのに……何故か不思議と、言葉が出ない。

 

『グランヴィル・ガスターニュ。準<超級>最強クラス。弱体化した<UBM>ならば、全霊を賭せば殺せるはずだ。それとも殺せないと、自分は凡夫だと首から引っ下げて逃げ回るか?』

 

『君は雷雲如きで満足なのか? 君は天に羽ばたくことを……それを求めていると僕は思っている』

 

『ならば雷雲、雷雲如きで満足してはいけないだろう。立ち塞がる者は全て敵だと……自らが天を制するのだと、さあ、吠えてみせるといい』

 

 

『——改めて期待しているよ。僕は君が、死ぬ気で頑張ればどうにかできる課題を出した。倒せて当たり前だと、僕はそう思っているからね』

 

 

「……言ってくれるぜ」

 

 今確信した。

 こいつ、絶対経営者に向いてない。絶対部下に無理させて、でも自分はそれ以上の難題こなして休ませない類の化け物だ。

 

「……でも」

 

 憧れちまう、化け物だ。

 

「……わーった、わーったよ、やってやる」

 

『おう、その意気だ。俺は俺を抑えつけるのに忙しいからそっちはそっちで頑張ってくれ……だと』

 

「……しかし、スイッチの入れ替わりが急すぎるっての。ビビったわ」

 

 さて。

 それじゃあ……やってやろうじゃねえの!!




感想見てると過去の俺がノリで吐き出したヤヨイとかの設定がたくさんあって振り返りに奴に立つぜ……。

というわけで感想ください(
今難しい時期なので……具体的には今後の展開とか何も考えていないので……!
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