男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>— 作:クーボー
□??? ???
空を飛びたい。
そう思ったのは、いつ頃からか。
ある種それは、解放されたいという願いから、ほんの少し溢れでたものだったのかもしれない。
大きな大きな水槽に、ヒビが入って中の液体が漏れ出たような……そんな小さなものだったのかもしれない。
/
俺はとうてい空には立てない。
そう理解したのはいつだったか。
世の中には天才が数多くいる。
生まれからして俺などとは比べ物にならない、世界経済を左右するほどの力を持つ一族に生まれた、神から愛されたとしか思えない存在。そしてありとあらゆる分野で万能の才能を発揮した、鳥の名を持つ男。
それらに比べれば、俺は矮小な存在だ。
それなのに、俺を縛る枷はどこまでも俺を捕らえてくる。
何故俺のような凡人が、このように縛られなきゃならない。
支配者を望むのなら彼らのような化け物を縛れよ。俺を縛っても、俺は何もできないのだ。
家柄、家業、そんなものからの解放を俺は願った。
時間が欲しかった。自由に過ごせる時間が。
そんな時、俺はとあるゲームを知った。
<Infinite Dendrogram>は新世界とあなただけの可能性オンリーワンを提供いたします——
<Infinite Dendrogram> bietet eine neue Welt und einzigartige Möglichkeiten——
これが本当ならば、俺は。
もしかしたら、解放されるのかもしれないと、そう感じた。
それは間違いでも——正解でもあった。
/
□グランバロア洋上 【
結局、こっちの世界でも、俺は天才と呼ばれる連中には勝てなかった。
奴らはこの世界でも、第七形態という、選ばれた存在へと至る。
俺は至れなかった。それだけの話だ。
「でもなァッ——!」
それでも俺は、この世界が好きだ。
抑圧された全てから、一時的にでも解放してくれるこの世界を、俺は生涯愛し続けるだろう——!
そして!!
向けられた期待に腐っちまうほど、俺は俺を捨ててねえ!!
まだ俺はここにいるのだと……なけなしのプライドを、全力で叫べ!!
あんな化け物に見下されて、最初から最後まで終わりだなんてまっぴらごめんなんだよッ——!!
「——必殺スキル」
俺の【ユピテル】——いや、全ての<エンブリオ>が持つ<エンブリオ>の集大成。
「《
そうさ。
全部、全部解き放ってやるよ——俺もお前らも、何も、かもッ!!
「——
瞬間、俺を含めて、グスタ・ベスタが——
「GUGYAAAAAAAAAAAAAA——!?」
「ハハッ、良い声出すじゃねえか! さァ! 一緒にどこまでも吹っ飛んでこうぜェ!!」
始まりは俺たちを縛るものからの解放!!
『グランヴィル——!?』
「今すぐ離れなアルマトゥーラ。巻き込まれて変なことなりたくなかったらな!!
——始まりの解放は、重力から始まるんだよォ!!」
俺の必殺スキル、《
その始まりが重力だ。俺がスキルを切らない限り、時間経過で俺たちは全てから解放されていくぞ!!
「気持ちいいじゃねえの——肩に乗っかってるもん全部下ろして、刹那主義的に散ってやろうかァ!!」
次は、レベルからの解放。
俺のレベルが……【空賊王】だけじゃない、全てのジョブのレベルがどんどんどんどん下がっていく。
そしてその分の、レベルを変換した膨大なリソースが、俺とグスタ・ベスタの全身を蒼い光で包み込んでいく。
「綺麗だろ」
そして、これは終わりなんだ。
——全てから解放されることを、俺は望んでいた。
最初は重力からの解放。
次にレベルという、この世界で積み上げてきたものからの、力という重荷からの解放。
ならば最後は、これしかないだろ。
この世界からの、解放——!
「魂がどこに行くなんて知らない」
「俺は現実に戻っちまうが、お前はどこに行くんだろうな」
「——まあ、どうでもいいことか」
読み違えたな、ヤヨイ・ベルダーウッド。
俺の必殺スキルは、天を制するものじゃない。天から逃げるためのものだ。
万物を見下ろす空、それへの反逆。
万物を這い蹲らせる重力、それへの反逆。
俺は空に羽ばたきたいんじゃない。全てに逆らってみたかったんだ。
リアルでは、こんなことは絶対できない。俺が持つものを手放せば、それは苦しみしかないからだ。俺が守る人間をも苦しめることは、俺は決して望まない。
だから俺は、俺の全てを賭して死ぬ。この世界から消えていく。
……読み違えたな、グランヴィル・ガスターニュ。
俺の必殺スキルは、強いものを倒すためのものじゃない。
全てを巻き込んで散っていく——全てを解き放って死んでいく、それが俺の必殺スキル。
「……あいつらは、俺を待っていてくれるかね」
性懲りもなくまた戻ってくる俺のことを。
……彼らは、受け入れてくれるだろうか。
その責任すら放り出して、俺は死ぬ。
「……ハハ」
我ながら、刹那主義拗らせすぎだっつうの。
「GOOD-BY WORLD」
また会う日まで、ご機嫌よう。
【致死ダメージ】
【パーティ全滅】
【蘇生可能時間経過】
【デスペナルティ:ログイン制限24h】
グレイと戦っていた時は、必殺スキルは漠然と「性能強化だろうなー」と思っていました。
しかし、色々と考えていくうちに、グランヴィルの過去が生え、そして先に考えていたユピテルを鑑みて、こんなスキルが浮かぶのではないだろうか、と考えてこうなりました。
自分の全てを使って自爆……ある種のロマンですね。