男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第20話 懐疑的オーバードーズ

 □グランバロア洋上 【禁忌王(キング・オブ・タブー)】ヴィクター・F・メルクリウス

 

「……なぁにあれぇ」

 

 思わずそんな声が漏れたのは、仕方のないことだと思う。

 眼前で繰り広げられた、一瞬の攻防。その一瞬でカグラ君は燃え尽きたように海上へと落ちていき、ベクトルドラフトはポリゴンとなって消滅していた。

 

「僕のAGIじゃあ、さすがに見えなかったか……まあそれはいいや、ほら、カグラ君回収してきて。明らかに瀕死だから細心の注意を払ってね」

 

 側に控えていた【機械天使】にそう命じて、カグラ君をこちらに運ばせる。

 そして運ばれてきた彼のステータスを見て、少し頬が引き攣った。

 

「最大HP1……おいおい、【舞神】には最終奥義はなかったはずだろ。アメノウズメのスキルでも使ったの?」

 

「……あー、ありがとねメルク。うん、さっきちょっとね……奥義じゃ足りないって思ったから、全部HPを捧げて……最終奥義創っちゃったんだ」

 

「……相変わらずデタラメね」

 

 ラトラナジュが呆れたような顔をして呟くが、僕も頷いて同意する。この土壇場で最終奥義を開発するとか、天才とかそれを通り越してるよ……。

 

「……まあ、それはともかく、勝利おめでと。せっかくだし盛大に祝ってあげたいけど、まだ戦闘中だからまた後でね」

 

「うん、それは嬉しいんだけど……少し気になることがあってさ」

 

 カグラ君が疲れているだろう身体を起こして、真剣な顔でこう告げる。

 

「<UBM>討伐のアナウンスがなかった」

 

「——ってことは、まさか」

 

「うん。多分、まだベクトルドラフトは終わってないんだ。多分、グスタ・ベスタも」

 

 ……考えられる可能性は、二つ。

 

 一つは、まだ他の<UBM>がいるから戦闘が終わっていないので、アナウンスが表示されない。

 正直、こっちの可能性は低いと踏んでる。それでもこっちであったなら、とても喜ばしいことなのだけど。

 

 問題は二つ目だ。

 さすがに<UBM>の武具化そのものを阻害するスキルを神話級が持っているとは考えにくい。だからおそらく、その分のリソースが他のものに回収されている……まさしく、まだ死んでいない状態。

 

 そしてこれを為せるモノがいるとするならば、ひとつだけ。

 

「カルマトラクト……本当に、厄介だね……!!」

 

 次に考えることは、その分のリソースがどこに行くのか、という話。

 

 それはもちろん、残った手駒しかあり得ない。

 

「……仕方ないか」

 

 さすがに1000の三乗になるとは思えないけど、3000%になる可能性はありそうだ。

 その場合本当に悪夢だ、そんなことになったらネグラフ・シーヴェは、神話級をも超えた災害……<イレギュラー>にも匹敵する化け物と化すだろう。

 

 そうなれば、アルマちゃんの防御を突破してヤヨイ君を手駒に加えられかねない。

 正直あそこまで強化されたヤヨイ君という盾を突破するのは難しい。もちろんグレイならどうとでもできるけど、グレイがヤヨイ君をどうにかするために離れたら今度は化け物と化したネグラフ・シーヴェが野放しになってしまう。

 

 そうなれば本末転倒だ。

 

 と、なれば、僕が取れる手はただひとつ。

 

「……できればやりたくはなかったけれど。出し惜しみして負けでもしたら、みんなに一生恨まれそうだ」

 

 それじゃとても——本当に本当に嫌だから、仕方ない。

 僕がなんとかして見せよう。

 

 

「【フランケンシュタイン】、貯蔵してる戦闘用ホムンクルスと【機械天使(ヴァルキュリアル)】を……それぞれ千と五〇ずつ解放」

 

 あとは指揮系統のホムンクルスをある程度解放してフレイの補助に当たらせる。

 

 僕の背後に出現した、巨大な工房……【偽創生命 フランケンシュタイン】の各部に設けられた射出穴から、大量のホムンクルスの幼体が吐き出される。

 それらは一瞬で孵化したように人形となり、空に解き放たれてカラスのように宙を舞う。

 

 その中の無表情で空を飛ぶ人間そのものとさえ言えるホムンクルスを中心として、全てに指揮系統のスキル効果が行き渡ったことを確認。

 

「さあ、消費の時間だ」

 

 僕は少し息を吸い込んで、宣言する。

 

 

「《あり得べからざる生命の終末(フォービドゥン・ファイナルオーダー)》——コード入力(インプット)

 

 

 ——そもそも至れる数が少なかった【禁忌王】の、その中でも極僅かな数しか至れなかった王にしか使えなかったスキル。

 

終焉駆動(END DRIVE)

 

 最終奥義(ファイナルブロウ)の名を。

 

 さあ、存分に暴れるといい。

 ……たとえその果てに、終わりしか待っていないのだとしても。

 

 

 /

 

 

禁忌王(キング・オブ・タブー)】。

 錬金術師派生、禁術師系統超級職。

 

【偽創生命 フランケンシュタイン】との相性の良さによって、初めて数ヶ月でその座に至ったメルクは、まさしく歴代最高の【禁忌王】と呼べるだろう。

 

 そして、そのジョブが持つ最終奥義……【蟲将軍】と似て非なるソレとの相性も、おそらくは歴代で最高だった。

 

あり得べからざる生命の終末(フォービドゥン・ファイナルオーダー)》。

 人によって造られた人間という歪な生命の、その果てに至るための最終奥義。非人道的かつあまりの効率の悪さによって、愉快犯的性質を持つメルクをして使わなければいけない時以外使わないと己に定めた、凶悪なスキルだ。

 

 その効果は、風前の灯火の再現そのもの。

 最期の時に色濃く燃える炎の如く、ホムンクルスの「命」を……文字通りの寿命を、HPを、MPを、SPを、全て燃やし尽くして一瞬の力に変換する。

 一体一体に定めたコードを発動することで起動し、それを発動した後は……何も残らない。

 

 そういうスキルだからこそ、メルクは己の容易な使用を禁じた。

 それを使い続ければ、命を消費する感覚に慣れて、それが日常になってしまうから。そうなれば自分は本当の外道に堕ちると、そう理解していたからだ。

 

 だが——否、そうであるからこそ彼は、使わなければいけない時に使うことに躊躇わない。

 

 ——だからこそ彼は、禁忌の命を統べる王……【禁忌王】なのだから。

 

 

 そして、彼が今選んだ対象は、【フランケンシュタイン】が吐き出した膨大なホムンクルスと、【機械天使】たちである。

【機械天使】は、彼の第三スキル《メイド・オブ・ヴァルキュリアル》によって造られた、世界にティアンと誤認させるほどの完成度を持つ究極のホムンクルスである。

 

 その中でも自我を持たず、生まれながらに必殺スキルである《狂気に依りて偽りの理想を夢む(フランケンシュタイン)》の効果を適応されて生まれたがゆえに、その基礎スペックは極めて高い。

 

 その上からさらに、最終奥義の効果を加えられたのなら……その力は、単騎で並大抵の<マスター>をも蹂躙するだろう。

 

 それが五〇体。

 さらに二つのスキルのコンボで膨大なステータスを獲得した戦闘用ホムンクルス千体が、フレイを筆頭とする指揮系統のジョブの補佐を受けてその力をさらに高める。

 

 もはや悪夢とさえ言えるシナジー。“最強”と呼ばれる化け物でもなければ突破は難しい最悪の制圧者。

 

<超級>の中でも最強の広域制圧型にして、特殊な広域殲滅型。

 

 

 それこそが、【禁忌王】ヴィクター・F・メルクリウスの、全力だった。

 

 

 ——もっとも、彼の“本気”は、まだまだこんなものではないのだが。




ちなみにグレイとかフレイとかには、終焉駆動じゃない他のコードが設定されております。使う予定はないけれど。使ったらメルクがガチで凹むのでやりません。

はい、というわけで考えた時に「これ大丈夫?」と僕に思わせた本作オリジナル<超級>、メルクの本当の力でした。
正直に言えばクロマドーラもラッダリトもスリットテンタクルもドラグベルグもモナブリムも、メルクであれば打破することはできました。ドラグベルグはデカさの関係上、少しは手間取ったかもしれませんけどね。

二種類の秘奥とも呼べる最終奥義と必殺スキルの組み合わせによって、戦闘用ホムンクルスはただでさえ強いのに化け物じみたパゥワーを発揮します。

当初のプロットでは、ネグラフ・シーヴェはヤヨイが撃破する予定だったんですけど、考えてる途中で倒せるビジョンが浮かばなかったので、ならいっそのことメルク無双かましたれと思って叩きつけました。

いやホント、強いんですよネグラフも。最強勢でなければ倒せるくらいには強いんです。
でもそれ以上の数の力と寿命を使ったジャンプ的パワーのせいで、哀れタコ殴りに……

あと最後の本気は……そのぉ……ここでは使えないのでぇ……。
……っていうか使ったらマジで指名手配喰らうのでしばらくは使えません。グランバロアでは使えないっていうのは本当ですけど。

ヒントというか情報出しますと、メルクとフランクリンが深夜テンションで悪ノリしまくってお互いの持ってた希少素材出しまくって(基礎となったMVP特典がメルクのものだったのでMVP特典素材はメルクが担当)、お互いの生産系<超級エンブリオ>を全力で稼働してコンボして完成しました。
なお造った後「この化け物どうしよう」「皇国で使ったらトドメ刺しそう」って冷静になりました。その後のコンボはこれの二の舞を恐れて行いませんでした。なので辛うじてMGDには適応されなかったとさ。
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