男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第21話 ふぁいなる・らうんど!

 □グランバロア洋上 【鉄人王(キング・オブ・アイアン)】ヤヨイ・ベルダーウッド

 

 ……こ、これはひどい。

 何がひどいって、俺ですらちょっと引いてるレベルでひどい。リンチってこういうことなんだね……。

 

『KYUAAAAAAAAAAaAaAaAAAA——!??』

 

 ネグラフ・シーヴェが悲痛な声をあげても、まったく意に介さずに無表情で殴り続ける人型の群れはいっそホラーである。

 

 俺が介入する隙間もないくらい、全身をホムンクルスが覆ってぶん殴られまくってる。基礎スペックが違いすぎるグレイが飛び抜けてるけど、こんなホムンクルスの群れに襲われたら<超級>でもない限りどうにもならないだろ。

 

 ……確かに、これを無尽蔵に生み出して狩りができるなら、レベルも1000に近付くというものだ。

 

「っていうか俺の出る幕ないじゃんかよ」

 

『ん』

 

 文字通りの骨折り損だ。これって後で治療できるんですかね……レジェンダリアでそういう魔法を使える人がいることを祈ろう。

 

 ……そういえば始めてか。<UBM>の戦闘で、俺がMVP取れないの。

 まあ今回は相性とかそこら辺の関係で俺が取れるわけなかったからな……でもちょっと悔しいから後で自然ダンジョン行こうかなぁ。ここら辺にちょうどいいダンジョンがあるし。

 

「あ、ネグラフ・シーヴェが光の粒子に……南無なーむ」

 

『南無なーむ』

 

 適当に手を擦り合わせて、臨終した鯨に追悼の意を示す。リアルでもお偉方がお亡くなりになった時に次の商談のことを考え、神も仏も一切信じていない俺が祈ったところで何になるとも思えないけれど、まあ形式的なものなので。

 

 おお、ネグラフ・シーヴェ……おいたわしや……嘘ですとっても面白いです、死後も魂ごと俺たちの糧になってね……ごちそうさまでした!! 

 

『マスター、わりと畜生』

 

「畜生じゃないとあの世界で生き残れないし……」

 

 現代のハンムラビ法典みたいな世界だし……やるからには徹底的に、敵には甘さは一切見せないのだよ。

 

 あーでも、メルクが畜生になると少し困っちゃうなあ……いっそのこと俺が全部処理するか? 

 

 そんなことを考えつつ、消えていく光の粒子に手を振ってみる。

 ……あれ、そういえばなんか忘れてるようなぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!?? 

 

『マスター!? 急に、引っ張られ、って……!』

 

「おっと予想的中しちゃったみたいだなァー!! アルマ、俺を解放して外に放り出せ!!」

 

『馬鹿!?』

 

 失礼な馬鹿じゃないぞぅ!! 

 

「れっきとした作戦さ! ……あ、紋章の中に戻せばいいのか!!」

 

『あっ……う、埋め合わせだけじゃ、ぜんぜん、ぜーんぜん、足りないから——!!』

 

「OK!! 三日後にしっかり、な!」

 

 ……あれ? でも女の子に対する埋め合わせって何やれば……まあリアルでトーマとかに聞いときゃいいか。

 

 それはともかく——

 

「ハッハー!! 出番だぜ、ラトラナジュ——!!」

 

 そう《天属性付与》を付与して、とにかく遠くに声を響かせながら、大きく根を伸ばし始めた何かに捕まって、その内部へと吸い込まれていくのだった。

 

 

 ……あっ、わりと内部気持ち悪いな! 蓮コラみたいで気持ち悪いから目ぇ閉じとこ! 

 

 

 /

 

 

 □グランバロア洋上 【禁忌王(キング・オブ・タブー)】ヴィクター・F・メルクリウス

 

「ヤヨイ君は馬鹿なのかな……??」

 

 ちょっと本当にそう思う。いやだってあの子、明らかに自分からアルマちゃん収納してあの気持ち悪い……なんかキノコが取り憑いた巨木みたいな何かに飛び込んでったよ。

 

 馬鹿なのかな、アホなのかな……? それともどっちも? 

 ヤヨイ君ってテンションで動くからたまにわけわかんない行動するから困るんだよね、本当に。

 

「で、あれ何さ」

 

「多分カルマトラクトの奥の手じゃない? ほら、多分従えてたのが大体全滅したからその分のリソース回収して自己強化したとか」

 

「合体事故かな?」

 

 さすが神話級、一筋縄じゃいかないねぇ……まあそのために何通りも解き方考えてきたんだけどねぇ!! 

 

「で、まあ、外見的に多分めっちゃタフだよね」

 

「そうだねぇ……これ、どうにかできるの?」

 

「もちろん。そのために色々と考えてたんだから」

 

 今の今まで下準備を行なっていたラトラナジュが、ふっと息を吐く。

 そして下がらせたフレイとグレイにマスクを放り投げる。他のホムンクルスは……大体寿命迎えて自滅してるね。あー、デンドロ内時間で一年弱の時間をかけて造ったホムンクルスを一気に消費できて清々しい気分だぁ……。

 あ、一匹飛行用ホムンクルス出しとこ。

 

「ステータスはどんなもんかもわからないけど……まあロクでもないことは確かだ。それに正直そろそろ飽きてきたので速攻で決めちゃおう」

 

「僕もそろそろ特典武具欲しいからね……ベクトルドラフトの特典武具、さっさと寄越せって感じ。あ、今の僕置物にも劣るから一足先に自害していい?」

 

「いいわよ、後は任せなさい」

 

「了解。ほいっと」

 

 カグラ君が軽い様子で自害して、ポリゴンとなって消えていく。うーん、この自爆祭り。

 

「グレイ、あとでメンテしてあげるから、全力で稼働させる腹積りでね」

 

「えー……アレめちゃくちゃ疲れるんだけどー……」

 

「レジェンダリアで遊ばせてあげるから……」

 

「……それならいいけど」

 

 いよっし単純で良かった、と思いつつ、そんなことは一切おくびにも出さずに微笑んでグッドラック。あとでフレイも解放して遊ばせてあげよう……一応僕が親だからね。

 

「さて、準備は整ったね。それじゃあやろうか」

 

「ええ。……宝石の埋め合わせ、期待してるからね」

 

「え? それはもちろん、ホムンクルスを……」

 

「違うわよ……鈍感なんだから」

 

 何故かラトラナジュがため息を吐く。「やっぱり直接的に言わないとダメかしら……」と思い悩むような声を出して、僕の耳に口元を寄せて、一言。

 

 

「あとでたーっぷり……甘やかして?」

 

 

「…………………………………………of course(もちろん)

 

 

 こ、これは……誘われていると見て、いいんだろうか。僕だって男なんだけども……!! 

 

 

「……なんか親がイチャイチャしてるの見るの落ち着かねえな」

 

「……そうですねー……。私も恋愛してみたい……」

 

「無理だろ、恋愛クソ雑魚なんだから」

 

「やかましいですよ馬鹿兄!!」

 

「お前も少しは落ち着け馬鹿妹」

 

 ……なんか急に冷静になった。

 

 とりあえずその勢いのままラトラナジュの額に軽くキスをして、無防備に近付いてきた耳を軽く甘噛みする。きゃっ、と可愛らしい悲鳴をあげて離れたラトラナジュの手を取って、そこにも小さくキスを落とした。

 

「あとで存分にやってあげるから、今は……ね?」

 

「え、ええ……わかった、わ」

 

 …………………………………やっばい超恥ずかしい!! 

 

「ま、まあそれはともかく……さっさとやっちゃうよ! ほらグレイにフレイ、強化全開! あと飛行用はラトラナジュ乗せてあのキノコの上に飛んで!」

 

「わ、私は合図に合わせて撃てばいいのよね!?」

 

「うん、そういうわけでよろしく!」

 

 僕はタイミングを図る役、さあさっさと済ませちゃおう! 

 僕だって古代伝説級の特典には、それなりに興味があるんだから! 

 

 

 /

 

 

 ソレは……【凶性頸厄 カルマトラクト】は、一気に繁殖させた己の身体を確かめるように、人間で言えば握り拳に当たるソレを、ゆっくりと開く。

 

 グスタ・ベスタ。ベクトルドラフト。そしてネグラフ・シーヴェ。

 三体の<UBM>の一部を……魂とも呼べる部分を貯蔵することで、まだ死んでいない状態に落とし込むそのスキル。そしてその発展形である、それらのリソースを回収して自己繁殖を行うスキルを使うことでここまでの体積を得たのだ。

 

 今現在は、先ほどまで抵抗していたにもかかわらず、なぜか急に素直に取り込まれた人間を素体としているために、ある程度人間の姿をしているが……問題はない。

 

 このステータスならば、また新たな生き物を捉えて寄生することも容易。そしてその果てに、あの化け物(巨木)を倒すことができれば、自分の平穏は保障されたも同義だと、そうして空を飛ぼうとして。

 

 眼前に矮小な者が現れたことに、気付けなかった。

 

「……デカすぎるから、俺が見えないのか。ったく、これならグランヴィルと殺し合いしてた方が面白かったな……」

 

 ボソリと、小さなソレ……グレイ・オッドソンジュは肩を鳴らしながらそう呟く。

 それもカルマトラクトには聴こえておらず……。

 

「——リミッター解除」

 

「《マテリアル・スライダー》、主力全開」

 

 

「《金剛抹殺(ダイヤモンド・スレイ)》」

 

 

 刹那、カルマトラクトは、己の身体が重いという……本来味わうはずのなかった感覚を覚える。

 そしてそれだけでなく、身体の端々から、己の重さに耐えきれずにボロボロと全身が崩れていく。同時にソレを為したのが眼前にいる羽虫だと理解して、崩れ始めた腕を一瞬だけ修復させて振るおうとして。

 

 ——? 

 

 ——核が……消えた? 

 

 先ほど吸い込んだ、人型のソレ。ソレを核として形成していたがゆえに、ソレを破壊されるのはまずいと、カルマトラクトもわかっていた。だからこそソレを壊される前に、先んじて羽虫を殺そうとしたのに……何故か核が消えた。

 

 前触れもなく、唐突に。

 

 突然の事態に、カルマトラクトの思考が停止する。歴戦のモンスターであれば、それでも強引に身体を動かせただろうが……あくまでも彼は寄生生物。戦いの経験などあるはずがなく、したがってそれが彼の命運を分けることとなった。

 

 

「この恥ずかしさも力に変えて——!」

 

 

 上空からの叫び。

 およそあり得るはずのない高度からの反応。

 

 

「全部消し飛べ——全放出!!」

 

 

 そして。

 突如空から降り注いだ、極太の光柱が、カルマトラクトの全てを呑み込んで、全てを消し飛ばした。

 

 ついでとばかりに、海面を膨大な破壊力で蹂躙しながら。




傍目から見たら使徒が死んだ時に放つエフェクトみたいな感じだった模様。

戦闘決着。正直長々と耐久戦書いても面白くない&メルクがいるので無尽蔵&メルクが戦うわけじゃないのでドキドキしない、などといった理由からすぐに決着させました。

ちなみに今回使用したリソースを金額に変換すると10億を軽く超えて吹っ飛びます。広域殲滅型でもないラトラナジュからしたらとんでもなく痛い出費。
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