男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>— 作:クーボー
□グランバロア洋上 【
【<UBM>【凶性頸厄 カルマトラクト】が討伐されました】
【MVPを選出します】
【【ラトラナジュ】がMVPに選出されました】
【【ラトラナジュ】にMVP特典【契菌棲飾 カルマトラクト】を贈与します】
「……終わった、か」
眼前に表示されたウィンドウを見て、私はほっと息を吐いた。
正直、今回の戦いでほとんど何もしていなかった私が……神話級特典武具なんてものをもらっていいのか、少し戸惑っている。
……システムにそう認められたとはいえ、私よりも頑張っていたヤヨイ君が、何ももらえないのは、ね。
「あ、こっちにもアナウンス来た。ってことは、本当に終わったんだね」
同じく飛行用ホムンクルスに乗って私がいる上空にまで飛んできたメルクが、そう声をかけてきた。メルクは今回、ホムンクルスも全動員してネグラフ・シーヴェを完封していたから妥当よね。
「ということは、カグラ君と、それにグランヴィルにもアナウンスが出る……と見ていいわよね?」
「僕たち二人にアナウンスが出てないから、確実にね。まあそれも全員が揃う三日後までお預けだけど」
……最後に動きが止まったの、少し気になったけど、もしかしなくても自分から飛び込んでいったヤヨイ君の仕込みよね。多分自害システムを使ったんだろうけど……あの子のテンションにはいつも驚くわ。
良い意味でも、悪い意味でもね。
そう思いつつ、アイテムボックスから特典を取り出そうとして……止めた。
「メルク、特典を見せ合うの、三日後にしない?」
「え? ……あぁ、そうだね。せっかくならみんなで見せ合ったほうが楽しいか……うん、僕のはちょっと名前で予想ついちゃってるけど」
「……もしかしなくても特典素材?」
「うん、完全遺骸。鯨を縮小したやつだから、そこまで目新しくもないし」
私のは多分アクセサリーだろうけど、これ以上考えるのは野暮かな。デザインとかも……うぅ、とても楽しみね……!
「じゃあ、23時間と少しの後に」
「また逢いましょう、メルク」
「ふふっ、そうだね。じゃ、またね!」
お互いに笑い合って、ログアウトする。
意識が暗転する刹那、メルクがこちらに軽く手を振ったのが見えて、自然、私も手を振っていた。
/
それから三日後、約束の時。
先んじてログインしていた私たちの前に、ほとんど時間ピッタリで示し合わせたかのように、三人が現れる。
「うわぁ…… レベルが0……」
「そういえば俺だけ特典武具取れてねえのか………ケッ」
「うーんぜっこうちょー!!!」
カグラ君、全力で煽ってるわね……あっ、殴られた。そりゃ倒すのにレベル全部捧げた人とそもそも取れなかった人の前でそんなことしたら殴られるわよ……。
「まあそれはともかく、勝利おめでとー。いやあ良いものが見れて満足だ」
「なんか大体メルク無双だった気が……」
「あっはっは、それは勘違いだよヤヨイくぅん。さすがに僕とてデカ鯨を相手にしながら他の<UBM>を相手にするのはキツいからねぇ、必然の結果というものさ」
「無理とは言わねえんだな……」
まあ、メルクの兵力なら多分いけてたでしょうけど、その場合今回の比じゃない被害が出てたからノーカンよノーカン。
そんな感じで皆を納得させて、次に戦利品の確認となった。
ちなみにヤヨイ君はもらえなかったので、紋章からアルマちゃんを呼び出して膝の上でナデナデしてる。プライド的な問題だろうけど、結構贅沢な不貞腐れ方よね。
「とりあえず神話級のラトラナジュは最後にして……カグラ君から行こうか」
「えーっと、僕のは……特典素材だね。【方向纏貫圧縮金属遺骸 ベクトルドラフト】……金属っぽいからヤヨイ担当かな?」
ポン、と掌サイズに縮まった、って。
「小さくなりすぎじゃない!? 生前はもっとこう、何メートルもあったわよね!?」
「特典素材になったらちっちゃくなるとか普通にあることだし……僕も経験あるよ」
「メルクリウスは一体何体の特典素材を持ってるんだ……」
「軽く十は超えてるんじゃなーい? よく数えてないけど」
昔にも聴いた覚えがあるけどやっぱりメルクって持ってる素材の数おかしいわよ。そりゃあんな無茶苦茶な狩りしてたらそうなるだろうけども。
……ま、まぁ、装備を作るときは私も宝石を融通しましょう。今ほとんど在庫ないから仕入れなきゃいけないけど……。
「えー……次は俺か。んと、【烈水砲 グスタ・ベスタ】、名前と外見からして俺の船にアジャストされたな、コレ」
船の上に出された近未来的な兵装……あのウォータージェットほど威力が高いわけじゃないでしょうけど、弾薬を必要としないならかなり使い勝手が良さそうね。
「へー、ほー、僕らが引き上げるはずだった船に加えて特典武具の追加パーツもかー、へぇー、へぇぇー、へぇぇぇぇー??」
うわぁすごいジト目……でもかっこいい。
「うっ、しゃあないだろお前らが来るとか知らなかったんだから! あとでなんだ、レジェンダリアで良い船の部品売ってるトコ紹介するからこの件は勘弁してくれ!」
「うんオッケー、交渉成立ぅ!!」
「こんにゃろ……!」
悪いメルクもかっこいいわね……なんていうか子どもっぽくて。ヤヨイ君も生暖かい目で見守ってるわよ……いや違うわね、あの目は『俺だったらもっと効率よく色々搾り取れたのになー、残念だなー』とか思ってる目だわ、間違いない。
「で、僕は【盲鯨空母完全遺骸 ネグラフ・シーヴェ】。僕ちょーっとコレで良いこと思いついちゃったんだよねー」
「あっ、文豪……」
「うーん情報ダダ漏れなガバガバ馬鹿野郎はここかなー???」
「うわやめろ俺レベル0だからクソカスなんだよってうぎゃああああああ!!」
……文豪? よくわからないわね……レトロなネタかしら? ヤヨイ君はわかってるみたいだけど、カグラ君も頭の上にクエスチョンマークをたくさん浮かべている。あとでネット検索してみようかしら。
そんなわけでほぼ全員の紹介を終えて……私の番がやってくる。
この戦いの戦利品における目玉、神話級特典武具。
再三、私がもらって良いのか疑問に思う。けどこれは皆が頑張ってくれたからこそ手に入れられたものだと、そう考えて、アイテムボックスから取り出した。
——それは黒い髪飾り。真珠のような黒い宝石が中心に配置された不思議なデザインをしていて、しかしそこから漂う雰囲気は、いっそ荘厳さをも感じさせる。
予想通りのアクセサリーだったけれど……これは、すごいわ。ヤヨイ君が今も耳に着けている【山竜宝飾 ドラグベルグ】や、カグラ君が着ている【猿王襲装 モナブリム】にも劣らない力を感じる。
それに向けて、私はそっとスキルを使った。
【契菌棲飾 カルマトラクト】
<
あらゆる生命に寄生し、その未来をも貪る菌糸類の力を具現化した神器。
菌糸類の持つ力と、荘厳なる美の造形を備える。
※譲渡・売却不可アイテム
※装備レベル制限なし
・装備補正
なし
・装備スキル
《マイスィーリアム・ストック・プロスペリティー》
《リモート・コントロール・オブ・マイスィーリアム》
《マイスィーリアム・フォース・コントラクト》
《マイスィーリアム・ギブス・パワー》
《マイスィーリアム・ストック・プロスペリティー》:
アクセサリー内部に一〇体の菌糸類をストックできる。
ストックは1hで一つ回復する。
パッシブスキル
《リモート・コントロール・オブ・マイスィーリアム》:
放出した菌糸類を半径100m以内で遠隔操作できる。それ以上離れると自動的に消滅する。
また、内部に入り込んだ菌糸類を操作することで寄生した生命体も操作できる。
アクティブスキル
《マイスィーリアム・フォース・コントラクト》:
自身の合計レベルの半分以下の
また、通常モンスターの場合レベルが50以下、ボスモンスターの場合レベルが25以下の場合にのみ無条件で寄生し、【契約】が可能。
<UBM>への寄生は不可能。
アクティブスキル
《マイスィーリアム・ギブス・パワー》:
【契約】を行った生命体の、HP・MP・SPを除いたステータスに1%の補正をかける。
パッシブスキル
……これはかなりヤバい。
何がヤバいって……【カーバンクル】の必殺スキルとの相性が、抜群に良すぎる……!
知らず、頬に冷や汗が流れる。
それを見た皆が頭上に疑問符を浮かべるが……スキルを聴いた瞬間に、皆一様に、同じような顔になったのだった。
色々と苦心した結果こうなりました。
作者のプロットだとモンスターレベルとの擦り合わせに苦労してましたが、UBM即死とかいう事態を避けるためにも種類で分かれるようにしました。
あとラトラナジュの即死の性質上、下手すると特典武具の分すら宝石にしかねなかったので、自重しました。
なおカーバンクルによる即死だとレベルはぜんっぜん上がりません。ドロップ品も出ません。そこら辺全部宝石に変換しているためです。