男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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ちょっと情報過多になりそうだったのでメルクさんの正体は次回に回します。


第18話 【黒鋼之系統樹(ブラック・デンドロン)

 ——そこに、【クロマドーラ】は在った。

 

 かつては無骨で、鉄の人形としか形容できなかった機械人。4.5メテルの体躯は、体積を削らず、けれどしなやかなフォルムへと変化させている。

 アルマの使用を前提としているため余計な武装オプションはないが、腕には【グレネード】系の補助オプションが取り付けられている。

 外からはわからずとも、全身に現代の……リアル知識をフル活用した別の技術体系の組み込みによって、【クロマドーラ】の操作性・反応性・膂力・速度……アルマによって補われるENDを捨て去り、それ以外に機能を特化させたフルカスタム。

 

 オーダーメイド級の性能を誇る、世界唯一の<マジンギア>。

 

【クロマドーラ】——否、その名はもはや不適切だ。

 

Magingear(マジンギア) Unique(ユニーク) Boss(ボス) Monster(モンスター) CV(カスタマイズバージョン)-001】——

 

 ——【黒鋼之系統樹(ブラック・デンドロン)

 

 無限の進化の可能性を秘める、俺だけの機体。

 武装を捨て去り、防御を捨て去り、ゆえにアルマという最強の汎用性を持つ装甲を乗せなければまともに機能しない究極の“欠陥機”。

 

 それこそが、【MUBM CV-001 ブラック・デンドロン】である。

 

 

 /

 

 

「……はは」

 

 ああ。

 なんて、素晴らしい仕事をしてくれたんだろう。

 

 眼前にいる数機の<マジンギア>。完全破壊しないよう気をつけながら、アルマを双剣に変容させて首の神経回路を切断し、機能停止に追い込む。

 

『はやっ』

 

『ってか反応速度が頭おかしいぞ、なんだこの数値!』

 

『6フレームで即応するとかマジかよ!』

 

 外野がうるさい——でも、気分が良いから気にもならない。

 まだまだこいつに慣れてないんだ。アルマを機械越しに操作するのも初めてだし……さ、続きやろうぜ。

 いくら俺がオーダーメイドっつっても、一撃当てられれば終了なんだから簡単だろ——! 

 

『嘘だろ4フレームに反応したァ!?』

 

『まだ反応速度上がるのかよ! アスリートなんて軽く超えてるぞこいつ!』

 

『え、ちょま、うわああああああああ』

 

 

 /

 

 

「うわあ……うわあ」

 

 メルクは、目の前に映る圧倒的な蹂躙劇にドン引きしたような声を漏らした。

 

(五対一、しかもこっちは五人とも熟練の【操縦士】系統、対して相手はオーダーメイド級とはいえ【操縦士】でもなく一撃当たったら終了っていう滅茶苦茶なハンデを背負ってる)

 

 普通勝負になるわけがない。普通は負ける。

 けれど今繰り広げられているのは、一体の黒きロボットが<マジンギア>を次々機能停止させていく光景だった。

 

 それに先ほどから【ブラック・デンドロン】を駆るヤヨイの反応速度を調べてみれば、なんだこれは。

 AGI型でもないのに、相手が動いたわずかな瞬間の攻撃を見切り、躱して、カウンターしている。その反応速度、ムラがあるとはいえ基本6フレーム以上に対応が可能なほどだ。

 

「アスリートと同等……でも6以上も結構ポンポン出してるし、もっと訓練したらさらに恐ろしいことになるんじゃ……」

 

 と、いうか、そもそもだ。

 

「……ねえ、メルクさん。

 なんであの人、初期設定の——【ブラック・デンドロン】の性能をフル活用できる反応速度を素で出してるんです?」

 

 そう。

 そもそも、彼らが最初調整した【ブラック・デンドロン】は、機体性能に見合って求められる反応速度が非常に高く、性能をフルに活かすならばその反応速度を満たすことが前提となる、いわばじゃじゃ馬だ。

 

 その反応速度は、0.1秒。

 鍛え上げられたアスリートですら難しい値だ。やりすぎたと技術者たちは反省し、ヤヨイが反応できるようになるまで機体の調整を繰り返すつもりだったのだ——が。

 

 ヤヨイはひょいと乗り込むと——普通に機体を動かして、普通に機体のフルスペックを活かし始めた。

 

『おー、思い通りに動く! ちょっと遅い(・・)けど、まあ許容範囲だな』

 

 こともなげにそう言い放ち、呆気なく【ブラック・デンドロン】を乗りこなしたヤヨイは、ウォーミングアップとばかりに先の無茶な模擬戦を行い、初心者だというのに熟練のパイロットに普通に勝っている。

 

 はっきり言って、異常だ。

 

(……ただ、いないわけでもない。シュウはなんでもできるし、フィガロもデンドロ内では戦闘に関してはシュウに匹敵する才能を持つ。ヤヨイ君がシュウと同じハイエンドならば、この異常な戦績にも説明がつく)

 

 それにまだまだ伸び代は非常に多い。

 なにせ、聞くところによると彼はまだ二つ目の下級職をカンストしたばかりらしい。彼の才能ならば、もしかしたら【神】にも就けるかもしれないのにだ。

 そうでなくとも、アルマという汎用性の極地のような<エンブリオ>がいる以上、彼のジョブの選択肢は非常に多い。それこそありえない組み合わせでも見つけて未知の超級職を見つけることだってあり得る。

 

「ま、そこは今後に期待かな。

 あ、僕オーナーに呼ばれてるから録画よろしくー」

 

「はーい」

 

 メルクはモニター席から立ち上がり、最後にちらりと画面を見る。

 

 模擬戦を終え、人の良い笑顔で打ち負かしたパイロットに挨拶しているヤヨイ。メルクは少し微笑んで、オーナーの……【大教授】Mr.フランクリンの部屋に向かうのだった。




まあ簡単に言っちゃうと、ランスロット乗ってるス◯ク状態です。
彼、ランスロットですら反応速度に見合ってないらしいんですよね……しかもアルビオンでもまだ足りないらしい。

ヤヨイ君は運動してなかったからそもそも鍛えられてないけど、デンドロ世界で戦闘経験を積めば積むほど反応速度が上昇します。
そのため、まだまだ彼も発展途上です。いずれは1フレーム即応反撃とかやれるかも。人間じゃねえ。

—情報開示—
【MUBM CV-001 黒鋼之系統樹(ブラック・デンドロン)
武装なし、装甲なし、ただ操作性だけに全てをつぎ込んだ機体。アルマを乗せることを前提としており、アルマが移動しやすいよう溝のような線が入っている。
なれどこの機体が欠陥とされているのは、ひとえに“AGIがほとんど上がらない【操縦士】などの搭乗を前提としていながら、人間限界に達した反応速度を要求する”という点からである。

機体のパフォーマンスを活かすならば、【操縦士】系列のジョブに就くしかない。
けれど反応速度に達するためにはAGIが必要で、すなわちそれは限られた人間しか動かせないことを指し示している欠陥機である。
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