男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第20話 俺/僕たちはどこにだって行けるのだから

 □<叡智の三角>本部 【操縦士】ヤヨイ・ベルダーウッド

 

 その後、【ブラック・デンドロン】を受け取り(アイテムボックスがパンパンになったのでもう一個買い、そちらに燃料となる農作物を入れることになった)、カンストしていた【盾戦士】からロボットの性能を引き出すことができる【操縦士】へと転職を行なった。

 わりとブレブレだけど、まあ、うん。大丈夫だろ! 

 

「でもまあ、皇都でやれることも少なくなったからなー」

 

 元々ドライフを選んだのは<マジンギア>を購入するためだ。それを少し異なるとはいえ達成した以上、もうドライフに用はないって言うか。

 

 そもそも一国に根付くのもつまんないし。

 

「アルマはどうしたい?」

 

「マスターの望みが私の望み」

 

 そう言われると余計困っちゃうな。変な選択肢を選ぶわけにもいかないし。

 

 んー……。

 

「ちょいちょい、ヤヨイ君。そんな早急に考えなくたっていいんじゃい?」

 

「あ、メルクさって誰ですかあんた」

 

 なんかハニーミルク色の髪をして、白衣を着た美男子がいる! 

 え? メルク……っていうか名前もヴィクター・F・メルクリウスに変わってる……!? つかなんだその名前まんまじゃないか、遊び心がないぞぅ! 

 

「マスター、突っ込む所はそこじゃない」

 

「お、おう、そうだな。混乱してたわ。

 で、えーと……メルクさんなんでしょうけど、どうしたんです?」

 

 色々と。

 

 メルクさんと思しき男性は、ぽりぽりと気恥ずかしそうに頬を掻いた。

 

「いやさー、そういえば言っとこうかなって思ってたことがあって」

 

「……?」

 

 

「僕ね……実はさ、<超級>なんだ」

 

 ……。

 ………。

 

 

 …………………………はぁっ!? 

 

 

 /

 

 

 速攻でログアウトし、ネットで色々と検索する。

 

 すると、さまざまな記事がヒットした。

 

 ヴィクター・F(フランケンシュタイン)・メルクリウス。数少ないフリーの<超級>で、名前と戦法は有名でも所在はあまり知られていない。

 自らの名前と被っている<エンブリオ>……異名である“偽創天”の由来にもなった【偽創生命 フランケンシュタイン】を操り、【禁忌王】という錬金術師系統の超級職とのシナジーで、広域制圧型兼特殊広域殲滅型、という特殊な戦闘タイプであるという。

 

 彼が引き起こした出来事のひとつであるカルディナの<悪徳街殲滅事件>では、町民全てが犯罪者で構成されている街を当時<超級>ではなかった彼が自力で壊滅させたという、ちょっとドン引きな結果を残している。

 その時の光景と、犯罪者たちが漏れなく彼のラボに運ばれていったことから、“生命を弄び、存在せざる偽の人間を創り出す()を騙るモノ”という皮肉を込めて“偽創天”と称されるようになったという。

 

 うーん……怪物! 

 

 

 /

 

 

「色々調べましたけど凄いですね、俺もああなりたい」

 

「……うん、隠していた正体におののく、とかないのかなー?」

 

「驚きはしましたけど、そういう効果の特典武具だと思うと、【ブラック・デンドロン】を見た後なので納得できます」

 

 多分いつも着てるあの着ぐるみが隠蔽効果も持ってたんだろうな。ただの享楽じゃなかったってわけだ。

 で、今着ている白衣も特典武具であると。<超級>って<UBM>複数体狩ることがノルマか何か? 

 

「この白衣は【霊癒天魔 フロウブロウ】っていう、他者を過剰に回復させて肉袋にして破裂させるっていうちょっと気持ち悪い能力持ってたやつから落ちた奴だよ。常時HP回復とMP回復が発動してて、傷痍系状態異常を喰らわない限り絶対に死なない」

 

「えぇ」

 

 なんだそれ、時間稼ぎに最適すぎないかな。軍勢を生み出す広域制圧型には本来の脆弱さを補うって意味だとものすごく有用じゃないか。

 

「っていうかどうやってそんなの倒して」

 

「AGI特化型で爆弾積んでるホムンクルスを突撃させました☆」

 

「究極の物量作戦……!」

 

「あたまわるい」

 

 こらアルマ、正直な感想を言うでない。

 

 これはあれだな、別名知性という名の脳筋作戦ってやつ? 

 ほら、漫画で「こんなこともあろうかと」って言って味方の科学者が色んなアイテム出してくるだろ? あれが知性という名の力押し(ゴリ押し)なんだよ。ロボットアニメとかなら勢いで誤魔化せるからいいけどさ。

 

「多分千匹くらい爆破させた時点で死んだかな——っと、それはいいんだった。

 君、ドライフ皇国出たいの?」

 

 ……さらっと聞いてきましたねぇ。

 

「ん、出たいっていうか、もうやることないっていうか」

 

「<マジンギア>に代わるものを得てしまったから?」

 

「そうそう。俺にとって——アルマにとっても、【黒鋼之系統樹(ブラック・デンドロン)】が最上の道具で、それを得てしまった以上もうドライフでやることがないんです」

 

 移動に関しても、リアルで友人(スイスでの学友)からバイクでも取り寄せてバラせば構造は頭に入る。それをアルマに模範してもらい、そしてアルマの柔軟性で車輪が自在に姿を変えるためどんな悪路も進むことができる。

 燃料もいらず、車輪を回転させればいいだけなので、移動手段としてもアルマは非常に優れている。敵が襲ってきてもそのまま戦闘形態に移行できるしね。

 

「ドライフの<遺跡>とかは【器神】にダメにされたみたいですし、<叡智の三角>は居心地が良いですけど。

 ……俺は世界を見てみたい。この広い世界を、俺は、どこにだって行けるのだから」

 

 リアルでも、俺は飛行機などで世界を回り、各地の大企業や王族などと縁を結んできた。

 けれど……自分の足で、歩いたことはない。世界を見て回りたいのだ。

 

 この広く、リアリティに溢れた仮想現実を。

 

「……そうかい」

 

 メルクさんはそれだけつぶやいて、立ち上がった。

 

「なら、そうすると良い。それが君にとっての最良なんだろう。

 でも、そうだな。下級の段階で世界を見て回るのは、結構厳しいよ。【ブラック・デンドロン】も、特典武具で自動修繕があるけれどそれで補いきれない不具合が出る可能性もある」

 

 だから、と前置きしてから。

 

「まずは、上級になるまで。それまで<叡智の三角>に付き合いながら、レベル上げをしてアルマを上級にするといい。そのレベルになれば【操縦士】もカンストして【盾巨人】にも就けるだろ? 

 それに、だ」

 

 メルクさんは俺の前で中腰になると、優しそうにも、悪戯好きな子供にも見えるふわりとした笑顔を見せた。

 

 

「いざ旅に出るとなったら、良い【高位整備士】も紹介するよ?」

 

 

 ……そうだね。

 俺はこの世界で、良い友人を持った。

 

「ええ——いや、頼むよ。メルク」

 

「ふふん、まっかせっなさい!」

 

 隣にはアルマがいて。

 一人の男が、友人で。

 

 ああ。

 きっとこの世界での旅は——もっと、楽しくなるんだろうな!




一章完結。
まさかここまでハイペースに駆け抜けるとは思ってなかったけど……まあ、これも良いかなと、ほんの少し嬉しく思いつつ後書きを書くのでした。

皆さんの反応が楽しく、そしてありがたく。
これからも書き続けますので、どうかよろしくお願いいたします!

—情報開示—
【霊癒天魔 フロウブロウ】
エレメンタル系の伝説級UBMで、周辺生命体のHPを過剰回復させて過剰細胞分裂で破裂させるという鬼畜能力を有していた。
いずれ神話級にも至れるくらい素質のあるモンスターだったが、「HPが回復される前に死んでしまえばいいじゃない!」という【禁忌王】のアホな発想から生まれた爆弾搭載型AGI特化ホムンクルスを数千体単位で叩き込まれ、千匹くらいの時に臨終した。

とある管理AIのとある管理AIに向けた力作で、実際に認定されたが、とある<超級>に瞬殺された結果、周辺被害でとある管理AIが泣いた。
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