男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第2話 山登りしてる奴らを横目にバイクで駆け抜けるのは最高ですね

 □2044年日本 真木 正弥

 

 少し所用があると言ってログアウトして、リアルに戻ってきた。

 そのまま急いで電話をかける。国際通話、っと。

 

「Alex after a long time,| are you well?」

 ——久しぶりアレク、元気してる? 

 って言ってる。英語だな。あっちも日本語喋れるっちゃ喋れるんだけど、まあローカル言語だし、俺が英語を喋った方が早い。

 

『……It's been quite a while, Masaya after a long time. Since the visit when you were discharged from the hospital?』

 ——……随分いきなりだな、久しぶりマサヤ。退院した時の見舞い以来か? 

 

 おっと、ちょっといきなりすぎたかな。声が不機嫌になってる。

 

「Bad forgive me for letting me make an appointment with your favorite idol later」

 ——悪い悪い、後で君の大好きなアイドルと会わせてあげるから許してくれ

 

 今こいつがご執心なアイドルがいるんだけど、俺その子と仲良いんだよねぇ。彼女プロゲーマーも兼任してるからウチの部署と関わりがあるし。

 彼女は玉の輿に乗れるかな? 

 

『Really? So let's forgive』

 ——本当か? ならば許そう

 

 はは、チョロいぜ。私的な電話だから相手もあんまり警戒してないのもあるけどな。

 

 こいつ——アレクは、俺の学友の一人にしてアメリカのバイクブランドの御曹司である。真木には及ばないけれど、一般人からしてみれば雲の上の存在なのは間違いない。

 俺と仲が良いので、俺たちは互いの会社に便宜を図りつつ互いが求めるものを相手に寄越すのが通例になっていた。その他にも二人で遊ぶこともあり、昔ラスベガスで1000万スった時は良い勝負だったものだ。

 

 そしてこういう時は、素直に用件を言うに限る。

 

「I've been doing Dendro recently, but are you going to use it in your design for a really cool bike plan?」

 ——俺、最近デンドロやってるんだけど、その中で使うからかっこよくてでかいバイクの設計図くれないかな? 

 

『……That is』

 ——それは

 

「All right, I do not do public operation. It's only me who uses it」

 ——大丈夫、公的な運用はしない。使うのはあくまで俺だけだよ

 

 

 さすがにバイクにまで手を伸ばしたら競合相手が多すぎるし。こうやって共存できるようにしなければ互いに潰しあってしまう。

 そこを承知してくれたのか、アレクは追加で食事会企画しろと注文をつけながらデータを送ってきた。

 

 ……ふむふむ。ほー、こんな構造になってるのか。

 

 …………………よし覚えた。

 

 

 最後にThank you(ありがとう)とメールを送って、俺はデンドロにログインした。

 

 

 /

 

 

 思念でアルマにバイクの造形を伝える。

 

「ひとつ聞くけど、何してきたの?」

 

「知り合いの御曹司に便宜図ってバイクの設計図もらった」

 

「リアルブルジョワジー極まりすぎてるねぇ!?」

 

 おっと、フランクリンさん味を感じたぞ。

 

 

 /

 

 

 その後、俺たちは足早に皇都を出た。

 どうやら件の村は<厳冬山脈>から少し離れたドライフ皇国北西にあるらしく、収穫期でも少し寒いらしい。

 

 なのでゴーグルやマフラーなど、とりあえず買えるだけ防寒具を買い、大型のバイクに変化したアルマに乗ってその村を目指していた。

 

 ま、操縦はアルマに任せてるんだけどね。俺は上に乗ってるだけ。

 

「楽だ」

 

『私は楽じゃない』

 

「ごめんて」

 

 アルマだけ頑張ってるからなー、何かやれることないアルマ。

 

『……ん、じゃあ、ご飯をあーんして?』

 

「……それだけでいいのか?」

 

『膝の上に乗せて、耳元で甘い言葉を囁きながら』

 

「ごめんそれは勘弁して」

 

 甘い言葉っていうオーダーは、せめて二人の時だけにしてくれないかな。膝の上ならいつやってもいいから。

 

『むふー』

 

 あ、ちょ待って加速しないで、振り落とされるって尻が固定されてGがァー! 

 

 

 その後、落ち着いたアルマによって道端で休憩を挟み……俺たちは、ウォトラ村に通ずる山道の前に着いたのだった。

 

 普通ならここで乗り換えたり、自分の足で行くのだろう。

 

 けれど俺が乗っているのはアルマという最高の汎用性を持つ<エンブリオ>。その形状は金属製のスライムであり、自在に姿を変える自己造形型の<エンブリオ>である。

 

 ゆえに、こんな芸当も可能なのだァ! 

 

「はっはっはー!」

 

「あいつずるい! なんでバイクで山道登れるんだよ!?」

 

『マスターの才能のおかげ』

 

 好きなだけ喚くがいい。アルマの汎用性に震えろ! 

 

 俺とアルマは必死こいて歩く他のマスターを横目に、山道をバイクで駆け抜けるのだった。




ノリノリですねこいつ。
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