男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>— 作:クーボー
デンドロ内時間で夜が明けて、次の日の朝。与えられた家の中で、大きく背伸びをする。
リアルでの用事も済ませたし、やっぱり廃人は最高だぜ!
「アルマ、昨日酔ってて聴いてなかったろ? 収穫の条件というか、決まり事確認するぞー」
「ん。謝罪」
「良いよ、食わせた俺も悪いし」
とりあえず、アルマと一緒にクエスト内容の確認と、昨日言われた決まり事を確認することに。
まず一つ目は、『特殊な能力を用いての収穫は厳禁』。つまり<エンブリオ>に頼るなってことだ。理由はそんなので乱獲されたら村が飢饉で滅んでしまうから。
なおメイデンやアポストル(そんなのがあることに驚き)、人間体のガードナーの場合は例外的に収穫に参加が可能。
二つ目は、『村で問題を起こした場合即刻退去』。これについては問題ない。
三つ目は、『モンスターが出現した場合即刻討伐』。収穫にマスターを呼ぶのも、収穫範囲が広いこともあるが用心棒的な役割も期待しているからのようで、その目論見は割と成功しているらしい。
四つ目は、『まだ未熟な果実を取るのは厳禁。渡された虫眼鏡で鑑定し、完熟と表示されたものだけを収穫できるものとする』。これについても当たり前なので無問題。ルーペ壊したら弁償みたいだけど。
「——と、こんな感じだ。
「理解」
「
……アレクと話した影響か、なんか会話の端々に英語が混ざるぅ……。
なんか、そうだ。アニメで見た一々
そのあとは家を出て、村を散策する。
そこまで特徴的なものはなかったし、村もそこまで広くはない。一般的に想像される村そのもので、住んでいるティアンたちは飢えた様子もなく、子供も元気に走り回っていた。
また服も汚れておらず、果実産業で儲かっているのが見て取れる。
「店はないみたいだね」
「残念」
それにしても、だ。
……いやあ、風が気持ちいい。防寒具は夜にしかいらないようで、秋を思い出すような涼しさを感じる。
これは確かに、見所のひとつと言えるだろう。
【ブラック・デンドロン】の燃費関係なく、来て良かったと思える場所だ。
「……ん」
そろそろ集合時間かな。アルマ、行こう。
/
「皆様は第二陣であり、すでに第一陣の<マスター>の皆様は果樹園に入っています。本日新たに到着した<マスター>の皆様を第三陣として、全体的な募集を締め切らせていただきますので、ご友人を呼ぶ際は注意してください。
制限時間は昼までと、昼から空の色が変わるまでです」
……そんなに人数を要するくらい果樹園は広いのか?
村長の話を聞きながら、彼の後ろにある大きな木製の扉を見る。柵で向こう側は見えないけど、<マスター>を募集して果実を収穫させてなお村全体に収益が行き渡るくらいの面積はあるようだ。
ちなみに一人で来た<マスター>はおらず、基本皆クランで行動するらしい。単独行動は、近いので言えば俺だがアルマがいるので厳密にはペアと言える。
理由は、逸れた時面倒だから、だそうで。いやマジでそんな広いの?
「それでは、行ってらっしゃいませ」
ギギギ、と大きな扉がひら、かれ、て……。
——途端に目に入るのは、視界いっぱいに咲き誇る赤い実を付けた花畑。
収穫期で成熟した果実が、風に揺られてふわりふわりと山間を満たす。
絶景。その言葉に相応しい壮大で可憐な光景に、俺もアルマも、他の<マスター>も、声を出すことができなかった。
これは……凄いな。
そうだ、これこそが俺の求めているもの。世界を旅してでも、求めているもの——!
「よっし、行くぞアルマ! たくさん取ろうぜ!」
「ん!」
「うおっ、出遅れたっ! 行くぞおまえら、たくさん取ればその分パイが焼けるからなァッ!」
「ひゃっほーオーナーのパイさいこーう!」
え、貴方が焼くの? 今日一番のびっくりです。
/
果樹園の中で収穫を開始して、数十分が経った。
「マスター、取って」
「はいはい」
アルマの身長が足りずに取れなかった【ミロの実】を取り、アルマの背負う籠に入れる。アルマは身長が150もないので、アルマが届かないものは必然的に180以上の俺が取ることになる。
まあアルマなら腕を液体化させて伸ばせば取れるんだろうけど……使わなくても困るものでもないし、別にいいかな。
「最低でも10時間は稼働させたいし、色々と使えるから……50個は取りたいな」
ひとつの木に2、3個付いていて、他の<マスター>が取っているのを吟味してもまだまだある。アルマが下を、俺が上を担当して大量に取ってるけど、それでも全然終わりが見えない。
「この果実リアルにあったらなぁ……」
そしたら色々と悪巧みできるのに。
「お、さっきぶりだな」
「ん、そうですねカザミさん」
向こう側の通路から見覚えのある一団が現れる。
よく見てなかったけど、多分、彼らが<双天と火>のメンバーなんだろう。
「オーナー、この人がさっき言ってた人?」
と、カザミさんの前に一人の少女が出た。
「……」
「あ、もしかしてメイデン? 珍しいね、私“こもっと”って言うの。よろしくねー」
「……ん」
「むふふ、可愛い。……じゅるり」
うわぁひどい顔。その顔でじゅるりとか怖すぎなんですけどー。
あ、アルマがドン引きしてる。すすす、と数歩後ろに下がって、俺の後ろに隠れた。
「ありゃ、嫌われちゃったかな?」
「……貴女の美少女趣味は結構ですが、人に迷惑はかけないように」
ガシ、とこもっとさんの肩を掴んで後ろに引き戻す、おそらくはリアルフェイスに近いのであろう秘書っぽい美人。さっき見た人だな。
そのあと聞いたのだが、彼女の名前はカザンヌ(かざんぬ……)と言うらしく、これが俺たちと<双天の火>との、初対面になるのだった。
人数が増えると難しくなりますねやっぱり。