男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第6話 ひらめきときっかけ

 うおおお! 

 気合いだ気合いィ! 気合いで避け続けかすったぁ!!! 

 

 視界に一瞬映った黄色い雷が頭部をかすったのを感じ取って肝を冷やす。反射的に動かしてなかったら直撃してたぞ。躱した雷の着弾点から見てあんまり威力はないようだけど、多分喰らったら操作機構が麻痺って連撃叩き込まれて沈む……! 

 

 姿勢を低くして駆け抜けて、襲い来る風やら雷を躱していく。

 ちくしょう、これが上級ってことか! 

 

『……八方、塞がり?』

 

 言うなアルマ、薄々気づいてるけど言うんじゃない……! 

 

 くそう、なんだこの飛びながら雷と風が飛んでくるとかいう鬼畜仕様は! 【ブラック・デンドロン】には操作性と敏捷性を優先して遠距離武器は搭載してないんだよ実はそんな金ないだけだけどさぁ! 

 

 アルマも銃にはなれるけど、火薬も何もないから飛距離はない。少なくとも足を止めたら雷撃で一瞬で五割なんて削られる。そうでなくとも、この、不可視の風が非常にうざい! 

 カザミさんの頭が良いのか、的確に嫌な位置に風の刃や塊が置かれて行動を阻害され「『飛ぶ』」! 

 

「なぁ、なんでおまえ、今置いた風玉を飛んで避けれんの?」

 

『アルマのおかげ!』

 

 アルマがオペレーターとして優秀なのだ。

 

『マスター、正面に2個設置。爪に変化するかもしれないから、飛びながら切って』

 

 その間、0.5秒。

 

『おう!』

 

 アルマを変形させて跳躍しながら肩を回転、無理な軌道で風塊を断ち切り、設置罠の憂いをなくす。

 

 アルマは俺に周囲の状況を伝えながら俺の思考を読み、俺の言わんとしていることを察して俺の意のままに変形している。ゆえに俺は【ブラック・デンドロン】とアルマを並列で操作しながら戦闘を行えているのだ。非常に楽で助かっている。

 

 さてここで問題なのだが、周辺状況をオペレートしつつ思考を読み切って察し、粘液と化した己の身体を動かすなんて、そんなこと人間の頭脳に可能なのだろうか? 

 

 答えは否だ。それどころかアルマがいかに<エンブリオ>と言っても、演算能力に特化していない限りそんなことはできないだろう。

 けれどアルマはそれを可能としている。それはなぜか。

 

 ——それには、アルマの第一スキル、《リキッドメタルモード》に秘密がある。

《リキッドメタルモード》とは、全身を液体金属と化すもの。けれどただの液体金属ではなく、金属製のスライムだ。

 

 そう、スライム。

 スライムとは、まあ広義の意味であればアメーバだ。アメーバは肉体の区別がない原生生物。

 

 すなわちその全身が、手であり、脚であり、腕であり、耳であり、口であり——そして、脳である。

 ゆえにその演算能力は、人をはるかに上回る。それに全身を置換したアルマは、元々人間でない身ゆえに、演算特化でないのにも関わらず俺をサポートするために非常に高い演算能力を獲得しているのだ。

 

《リキッドメタルモード》発動時限定で、アルマは俺の——【ブラック・デンドロン】と俺の全てを活かすための力を得る。

 それこそが汎用性特化型<エンブリオ>、【装甲乙女 アルマトゥーラ】の、力の一端だった。

 

 

 これに気付いたのは、つい先日だ。

【ブラック・デンドロン】に乗って、アルマを使っている時のこと。

 

 アルマが周辺状況を俺に伝え、本来ありえない並列思考を見せたことで俺はそれに疑問を抱いた。

 メルクさんなどと共に色々と仮説を考えた結果、このような金属スライムゆえの特性を獲得していることが判明。その上、原理的にアルマが変化できる体積が増えれば増えるごとにアルマの演算能力も上がっていく。

 

 ……正直、盛りすぎな気がしないでもない。

 だが考えてみれば、アルマがこんな力を獲得したのは副次的なものだった。

 

 アルマは自己造形型という、多段変形型とは異なるタイプの<エンブリオ>。

 

 俺の万能性を表現するために、多段変形型ではリソースが足りないから、能力を流動と固定に限定することで大きな汎用性を得た。

 そしてその副次効果で演算能力を獲得する。それはおそらく、一種の想定していなかったバグのようなものだろう。けれどそれが存在し、ナーフされていない以上——俺はそれを活かすまで! 

 

 

「っち!」

 

 雷撃を切り離したアルマで防ぎ、耐える。

 多分あの<エンブリオ>、【屏風四甲 フウジンライジン】は、遠距離攻撃にはあまりリソースが割かれていない。第五形態なのに俺が防げているのがその証拠。

 

 で、あるならば、今カザミが狙っているのはただ一つ! 

 

 俺の手札を引き出して、丸裸にした後で——あの浮遊に使っている風を加速に回し、近距離攻撃で勝負を決めてくるはず……! 

 

 そもそもアイツ、装備からして明らかにグラップラーなのにチキンな戦法で確実な勝利を決めようとしている。それだけでも怪しさ満点なんだ、気付いてないとでも思ったか! 

 

 ……あるいは気付かせることも作戦のうちかもしれないが、そこまで組まれてるなら弱者である俺にどうにかすることはできない。

 

 相手は第五形態まで達した格上、ステータスもカンストかそれに近いはず。ならば近距離攻撃に移行した時に不意打ちで仕留め、て……? 

 

 

 ……待て、なにか、なにかが見えてきた。

 

 アルマ、帯電、金属、弾丸、遠距離。

 

 演算能力、並列処理、知識、教養。

 

『マスター?』

 

【ブラック・デンドロン】、装甲、余り——

 

 

 ……くそ、まだ見えない。だがきっかけは掴んだ。

 

 このまま考え続けていれば『マスター!』うおおおああああ! 

 やばい、近距離移行のチャンスを逃した。ちくしょう、一旦引いて態勢をっ! 

 

 その瞬間、先ほどよりも明らかに威力の増した雷撃を手甲にまとわせたカザミの拳が【ブラック・デンドロン】の頭部をかすった。

 

『っぶねえなぁ!』

 

「敵目前に考えてる奴が悪いんだろうがよォ!」

 

 それもそうだった。

 

 

 

 ——その後、物の見事にボコられました、

 せっかくなんか見えた気がしたのになー、残念。

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