男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>— 作:クーボー
いやあ、気持ち良いくらいに負けたね。
これがカンストとルーキー、上級と下級の差かとしみじみと思う。
「いやというかな、なんだよあのロボット。明らかに初心者が買えるもんじゃねえだろありゃ」
「アレ特典武具ですよ、先日出た古代伝説級の」
「おーう理解の範疇軽く超えてきやがった」
改めて考えるとルーキーが古代伝説級撃破って意味わかんないな。
今俺とアルマは、午後の採取を終えて村の一軒家の中でカザミさんたちと世間話しながら休憩していた。ちなみに果実の方は模擬戦で疲れたので40個しか取れておらず、30個差し引かれて10個ゲットした。初日に取りすぎたからですねわかりますごめんなさい。
「え、ってことはヤヨイ君<UBM>倒したの?」
「大体アルマのおかげですけど、ええ。【骸収機兵 クロマドーラ】っていう奴です」
こもっとさんが興味津々に聞いてきたので、奴のことを口頭で伝えていく。アルマのスキルをバラすわけにはいかないから、一部脚色と削除して都合のいいように、でも怪しまれないようにアドリブで考えて、と。
「——と、まあこんな感じですね。アルマのおかげでなんとかなった、まさに辛勝でした」
「ほへー、凄いんだねー」
あっ、こいつ全然わかってないな。我がインテリジェンスの結晶を理解できないとは愚かな……!
あと反応少なくてちょっぴり寂しい。……アルマ、肩を叩かないで。
「あー、すまんな。うちのこもっとバカだから」
「ひどっ! オーナーだってこの前年少組に高校の勉強教えてーって言われて困ってたじゃないですかぁ!」
おっとコヤツ道連れにしようとしてる。
「俺は料理で食ってけてるから大丈夫なの」
「それにそれを補うために私がいますし」
でも全然効いてない。というか逆にカザミさんとカザンヌさんの仲の良さを認識させて……え? この人たちリアルで付き合ってんの? それとも年齢的に夫婦?
「うー……はっ、そうだ! ヤヨイ君は!? ヤヨイ君はどうなの!?」
「なんでそんなに道連れにしたがるんだおまえは……。俺そんな高校行ってませんからねー、17の頃には飛び級して大学に行ってましたし」
「あっ、この人ヤバい人だ」
おうそれはどっちの意味だ? 意味次第で喧嘩買ったるぞてめえ。
拳を握りしめた俺を見て焦ったのか、こもっと……がさらに墓穴を掘っていく。
「い、いやいや! 飛び級とかそんな聞いたことないしさ!」
「あー、そりゃ確かにそうかもしれないが……事実だしなー。高校の思い出とかミスコンに出たくらいし、か……」
「……ミスコン?」
あ、これ俺が墓穴掘ったかも。
そろりそろりと逃げようとするが、誰かに足を絡め取られるってアルマおまえぇ!
「ミスコン?」
「……ミスターコンテスト。
ちなみに女装部門もあって、それにも参加させられて……うう、思い出したくない。トチ狂った男と百合の花畑と化した女どもに追われるなんて最悪な経験したくなかった……。
「結果はどうだったのー?」
「優勝」
「……もしかしてリアルでもその顔なのか?」
カザミさんが信じられないとでも言うような顔で聞いてくる。色とか変えてるけど、ほぼリアルフェイスだしな……。写真は許可ないから取らせてないから大丈夫だと思うけど
「それは言えませんけどー……」
「……なんか深淵覗いちゃったね」
「金輪際封印するか」
「ん」
そうしてくれ、お願いだから。
……そうこうしているうちに夜になり、カザミさんがパイを焼き始めた。
俺たちもご同伴に預かることになり、現在わくわくしながら待機中だ。
「高級果実の本業が焼くパイか……美味しいんだろうけどどうなるかな」
「マスターが食べたものしか食べないから、マスターに任せる」
アルマはしれっとしているが、その食癖だいぶヤバくないかなぁ……。
アルマの食癖は、俺が一口食ったもの、あるいは俺が食ったものと同じものしか食べない。以前はカレーとかイカスミとか、俺に食わせてから食べ始めたが、別に俺がそれ食ってなくとも俺が同じものを食べていれば食えてたらしいのだ。あの時は金銭的な意味で遠慮したので、俺に一口食わせたらしいけど。
なので今回の場合は、俺がアルマのを食べずともいいらしい。まあ空気を読めない(あるいは読まない)アルマだから、しれっと俺にあーんとかするかもしれないけど。
「マスター。膝」
「……あぁ」
そういえばアルマを膝に乗せてあーんするっていうオーダーが……え、今ここでやるの? マジでぇ?
「いいから早く。しなかったら後でみんなの前でほっぺにキスする」
「なんでそんな公開処刑を……いいけどさ」
アルマを膝に乗せて、っと。うん、軽い。
……そういえば金属化した時ってアルマのたいじゅ「絶許。……絶許」足を踏むなグリグリするな金属化した足で刺そうとするな!
「俺が悪かった、やめて……」
「マスター、デリカシーがない」
「ごめんなさい」
いやでもさ、頭の中読んでくる相手に隠せって無理じゃない?
「そもそも考えるのが悪い」
「おっと暴論来ましたね」
ふんすと鼻を鳴らすアルマの頭を撫でながら、今後は気をつけようと心に誓うのだった。心を読まれるって、一々口に出さなくていいから楽っちゃ楽だけどこんなデメリットもあるんだな……。
ん、カザミさんのパイが焼けたみたいだ。切り分けるみたいだから、行こうか。
/
「……幸せ」
「アルマ、しっかりしろアルマァー!」
え、おい待てそんな安らかな顔で眠るんじゃない!
確かにこのパイは非常に、非常に美味しいけれど! 倒れるもんか普通!?
「逆にヤヨイ君の意識が飛んでないのが不思議なんだけどー」
「俺はリアルで色々と食ってるので……」
「というかアルマちゃんが倒れたのはヤヨイ君があーんしたからじゃ……」
美味しすぎて意識が飛ぶパイとか物騒というかなんというか。
——端的に状況を説明すると、カザミさんが焼いたパイが美味しすぎて、アルマと食べ慣れてると思わしき<双天と火>のメンバー以外の<マスター>がぶっ倒れた。
俺はリアルで色々と食べ慣れてるから大丈夫だったが、デンドロ世界の素材と一流の手際が組み合わさって俺でも一瞬意識が飛びかけた。こいつはやばい。中毒性とかそんなチャチなもんじゃあねえぜ……!
「でもなーんかこう、前に食ったことがあるような……」
アルマを紋章に戻し、他のマスターを小屋の隅に蹴り飛ばしながら考える。
うーん…………………色々と食べてるからか、思い出せん。
「ホテルってことは覚えてるんだけど……」
「毎度思うんだけどヤヨイ君なんなの? お金持ちなの?」
「
「ネイティブムカつくなぁ!」
こもっと煽るの楽しいなァ!
うーむ……。
「カザミさん外国のホテルでシェフしてましたー?」
「ん? ああ、まあな。わりと有名なホテルだぞ」
……ああ、なら候補は絞れる。
俺は衛生関係上ビジネスホテルには泊まらないから……スイートホテルでよく泊まってるとこは、片手の指で数えられるくらいしかない。
ホテルエデルマ、かな?
まあ、個人情報に当たるから言わないけれども。
交流させとかないと後のイベントで色々と支障が出るので、一見必要ないように見えて必要なのです。