男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第9話 進化と、こもっとの力

 □【操縦士】ヤヨイ・ベルダーウッド

 

 アルマが第三形態に進化した。

 予想外だったけど、それは嬉しい誤算である。まだデンドロ始めて一週間も経ってないのになー。

 

 まあそれはともかく、アルマが進化したことで、新しいスキルは——得られなかった。

 それは予想していたことだ。前回のが特例なだけで、そうポンポンスキルが増えるわけではない。というかステータス補正減ったし。

 特にアルマはリソースを質量や各種耐性の強化にも回さなきゃならないので、今回の進化は納得だ。

 

 

 で、何が変わったかというと。

 

「……だいぶ増えたし、硬質化したときの硬さが結構上がってる」

 

 まず質量が、【ブラック・デンドロン】の全身を覆って余りあるほどに増大。これによってデカイ武器への変化も可能になり、装甲も厚さを増したので生半可な攻撃ではぶち抜かれなくなった。

 

 そして一番重要なのが、形状を固定した時にアルマの硬度が上昇した。多分金属としての格が上がったんだろう。

 また色々と調べてみると、熱などの耐性も上昇していた。装甲としてさらに磨きがかかって俺は嬉しいです。

 

 基本アルマがどれだけデカくなろうが、常に流動させて【ブラック・デンドロン】を守らせるので困るもんじゃない。

 

 ただちょーっと困る、というか思い切ったなと思うのが……。

 

 HP補正:E

 MP補正:G

 SP補正:G

 STR補正:G

 AGI補正:G

 END補正:D

 DEX補正:G

 LUC補正:G

 

 ……ENDがちょっとだけ上がって、HPは変わらず。

 

 もしかしなくてもこれ……今後もHPとEND以外捨てるのでは? 

 

「誤解のないように言うけど、これ、マスターに調整した結果」

 

 曰く、【ブラック・デンドロン】があるおかげでSTRなどにステータスを割り振る必要がなく、その上で俺がEND特化型を望んだがゆえの結果らしい。

 体積の増大などにリソースが割り振られている以上、ステータスに割けるリソースはあまりない。そのためにこのような歪なステータス補正になってしまったようだ。

 

「そもそも、ステータス補正が下がるなんて無茶苦茶やらかしたんだから何が起きても不思議じゃない」

 

 ……すみません。

 

 

 /

 

 

「あ、おはようございます」

 

「……おう。っていうかおまえ、仕事してないのか? ログイン時間長すぎじゃねえ?」

 

 仕事がひと段落してログインしてきたらしいカザミさんに、そう呆れを込めた目で見られる。

 失敬な。今は療養中なだけです。

 

「1年半前まではバリバリ仕事してましたよー。今はちょっと、療養中?」

 

「過労でぶっ倒れたのか? 気をつけねえとダメだぞ」

 

 うーん、アンジャッシュ。ちょっと違う? ニュアンスが伝わればいいんだよ。

 まあそんな詳しく伝えるつもりはないけれど。

 

「ぶっちゃけ1年半前までの段階で一生暮らせるくらいの金は稼いでますしねー。あとは甥の手伝いとかしながら好きに生きるのもいいなー、なんて」

 

「どこの世界的営業マンだ」

 

「どっちかって言うと歩く東京本社?」

 

「……おーう」

 

 あ、ツッコミ諦めた。怠慢ですねェ。

 ……コレアニメで見たときは狂気を感じたぜ。

 

「ねえねえ、やっぱりヤヨイ君リアルでヤバくない?」

 

「個人情報ポロリが多いですよね、大丈夫でしょうか」

 

 いつのまにかログインしていたカザンヌさんとこもっとにそうぼやかれる。

 

「まあバレたところで、俺をどうすることもできませんし?」

 

 誰が世界トップクラスの財閥に失礼できると言うんだ。うちの諜報部隊舐めんなよ? 昔本社にイタズラ電話かかってきたとき逆探知で握り潰したからな? 

 リアルバレして頭の弱い輩が何かしたところで消し飛ばしてくれるわ。

 

「すっごい自信満々のイケメンって絵になるよねぇ」

 

「マスターはかっこいい、不変の真理」

 

 そこまで言われると参っちゃうなぁ? はいアルマには昨日残しておいたパイあげちゃう! 

 

「もっきゅもっきゅ」

 

「っていうか私も食べたーい!」

 

「え? 異性に食べ物ねだるとかドン引きなんですけどー」

 

「むきー! でも正論だから何も言えない!」

 

「……なんでおまえらはそんなコントしてんだ」

 

 こもっと煽るの楽しいなァ!(2回目)

 

 

 /

 

 

 その後、普通に果樹園に入り、普通に50個ほど取って、40個差し引かれた。

 これでも95個、単純計算で95時間の稼働が可能。収穫イベントはあと数日で終わるので、まあ100個くらいかな? 

 

 

 /

 

 

 そんなこんなで昼、この前の着想をカタチにするためにカザミさんにもう一度模擬戦を頼んだ、のだけれど。

 

「俺パイ焼くので忙しいから後でな。今こもっとが暇だから相手してやれ」

 

「ほいきたー!」

 

 と、こんな感じで勢いのままにこもっとと試合することになってしまった。

 ルールは以前と同じ。ただしカザミさんによれば、ヤバいと思ったらすぐに降参すること。

 

「デンドロの先輩が君にご教授してあげよう! 私の<エンブリオ>も第五形態だからね!」

 

「はーい」

 

 電気が欲しかったけれど……でもまあ、別にいいか。今じゃなきゃいけないってわけでもないし。

 こもっとがどれだけ強いのか、そしてデンドロでの経験を学ばせてもらおうか。

 

 こもっとは戦闘服——きゃるんきゃるんなわけじゃないが、魔法少女が着てそうな服——に着替えて、手には杖を持っている。んー、魔術師? 

 俺の方もすでに【ブラック・デンドロン】に乗り込んでいる。

 

「ちなみに言っちゃうけど、私のメインジョブは【紅蓮術師(パイロマンサー)】。火力が正義って感じ?」

 

『そうですか』

 

 ……なぜわざわざ、自分の手札を晒すようなことを言う? 

 まさか……言ったところで対処できない攻撃なのか? 

 

「そして私の<エンブリオ>——【炎天火 ウルカヌス】の効果は、たったひとつ!」

 

 杖——おそらくは<エンブリオ>なのだろうソレをこちらに突きつけて、茶髪で赤目の美少女は、こう告げた。

 

「私が使う炎熱系の魔法の効果を増加する! 《ヒート・ジャベリン》!」

 

 刹那。

 

 こもっとの杖から噴き出した炎が槍のようなカタチになり——話に聞いていたのと随分違う大きさの《ヒート・ジャベリン》となって、俺に飛んできた! 

 

 ちょ、マジで大艦巨砲主義——!?




—情報開示—

【炎天火 ウルカヌス】
TYPE:ルール・アームズ
先端にルビーが埋め込まれた、木製の杖のカタチをしたエンブリオ。
その名の通り炎に特化した性質をしており、こと炎に関しては化け物じみた効率と火力を両立させる。
この<エンブリオ>の存在で、こもっとは<双天と火>の<火>を担う随一の火力型となっている。

その効果は至極単純。所有者の使う炎熱系の——天属性や、減衰などの海属性、そしてジョブの炎魔法系スキルの効果を増幅させる。ちなみにMPは符で補っているが据え置きで、【ジェム】にも適応される。

そのために【紅蓮術師】との相性が非常に良く、《ヒート・ジャベリン》一発でも他を寄せ付けない火力を発揮する。《クリムゾン・スフィア》など明らかに通常から逸脱した火力となる。

ステータス補正はMPとSPに特化。

こもっとの大艦巨砲主義が良く現れたエンブリオ。しかし単純ゆえに非常に強力。カザミが「ヤバいと思ったらすぐに降参しろ」と言ったのも、火力が高すぎるから。

このエンブリオに合わせて、こもっとは上級ジョブを【紅蓮術師】、【赤龍道士】で埋めている。見事な火力バカだが、《クリムゾン・スフィア》と《爆龍》がシャレにならない威力になっているため充分脅威。
……というかチームプレイの時はカザミに抱えられて空を飛び、カザミを減衰率の増した《ヒート・レジスト・ウォール》で守りながら《ヒート・ジャベリン》を交えてぶっぱしてくるため相手は死ぬ。

多分炎魔法系列の超級職になったら準<超級>最強クラスになると思われる。
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