男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>— 作:クーボー
『火力高すぎる、ぞっ!』
斧になったアルマで飛んでくる《ヒート・ジャベリン》を叩き落とし、流動体に戻して飛んでくる《ファイアーボール》を握りつぶ——なあこれほんとに初期魔法? 明らかに普通の《ヒート・ジャベリン》以上の火力なんだけど! 爆風もすげえし!
っていうか融解してガラスになってるゥー!
「まだまだ行くよー! セットマジック《ファイアーボール》×2!」
即時発動二枚重ね……!
まともに受けたらアルマが蒸発する! ちくしょ、せっかく上がった熱耐性活かせねーじゃねえかコラ!
こうなったら……よし!
『マスター、このままだとジリ貧』
わかってるさ、この爆撃の中でどうにかするかなんてなぁァ!
アルマ、
『ん!』
『
わざわざ英語で言ってるのは、即座に理解するのを防ぐため!
そして!
『
「むっ」
バスケットボール台に造形したアルマを三つ、砲弾のように発射する。
火薬がなく、ただアルマ自身で大砲の中でぶっ叩いて発射しているから飛距離も威力もない。だけど全てこもっとに向かっている。つまりこもっとは対処せざるをえない!
もっと言えば——
「っ、《ファイアーボール》!」
——即時発動が可能な魔法で!
これによってアルマが三つとも見当はずれの方向に吹き飛ばされ、俺のMPを消費してアルマが回復する。
「ねえねえ、今みたいな攻撃してても私には敵わないよー? 単純にー、火力が高ければ強いんだから!」
『この大艦巨砲主義め……』
けれど、確かにそうだ。
このまま撃ち続けても意味がなく、俺の敗北は決定したも同然。このまま一発でも魔法が当たれば、その瞬間俺のHPは五割以上削り取られるだろう。
「さっさと降参した方がいいよー、《ヒート・ジャベリン》が一発当たったらヤヨイ君死んじゃうもん」
『……っち。ああそうだな、降参だ——
——とでも言うと、思ったか?』
「え?」
アルマ。
噴出。
『ん』
短い受諾。
それだけで、俺たちの間には充分で。
「——なにっこれ!」
『注意力散漫。途中からアルマの量が少なくなってたの、気づかなかった?』
まあ爆炎に塗れてたからよく見えなかったのかもしれんが、それは今どうでもいい。
大事なのは——
『今おまえが、拘束されてるってことだ』
——地面から飛び出した、銀色の液体。
それらがこもっとの足にまとわりつき、スーツのように覆うことで……彼女の動きを阻害していた。その上徐々に上に這い上がり、アイアンメイデンのごとく足に針を刺してHPを減少させている。
先程、俺は
まず、こもっとの魔法をまともに受ければアルマが蒸発すると気づいた時——俺は、こもっとの正面からの撃破を諦めた。
爆炎で視界が霞んでいるのを利用し、周囲を走り回りながらアルマを残し、地面に潜らせる。
それらも全てアルマ自身の統率下にあるから好きに動かせる。ある程度の量があれば、こうしてこもっとの動きを封じることも可能。このまま棘でHPを減らしていけば、勝てる。
うへぇー、と焦りと何かが足を包み針を刺してくる気持ち悪さで変な顔になるこもっと。
しかし彼女は一気に得意げな顔になると、自分の足元に杖を向けた。
「ちっち、増幅するのは威力だけじゃないんだよ、私のウルカヌスはねぇ!
《ファイア・レジスト》……諸共に燃えろ! 《ファイアーボール》!」
自身を効果の増幅させた耐性魔法で守りながら、自らの足を覆うアルマを《ファイアーボール》で蒸発させる。
「ちょっとHPは減っちゃったけど問題なし! 煩わしい枷も消えたし、まだまだ続けられ——」
『俺はまだ、打つ手なしとは言ってないぞ?』
——二つ目の仕込み、発動。
刹那、先程バラまかれた砲弾状のアルマが、こもっとに向かっていき……彼女の口と足と手を包み、完全に拘束したのだった。
これが俺の二つ目の仕掛け。
自分の手で弾き飛ばしたために意識から逸れた砲弾のアルマを利用して、相手を拘束すること。
アルマの武器は汎用性だけではなく、その身体を利用した応用性だ。
進化する前だと質量不足でできなかった戦法だが、今ではこうやってギリギリだけど行使できる。
カザミさんには負けちゃったけど……ただの火力バカなら、打つ手はある。
——これにて模擬戦終了。
勝者は——ヤヨイ・ベルダーウッド。