男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>— 作:クーボー
とりあえずなんかいかがわしい感じで蠢いていたこもっとを回収し、目の前でものすごいドヤ顔をした。
「うぅー、負けちゃったー! くーやーしーいー!」
「上級が下級に負けるってどんな気持ちなんですかぁ〜?」
「殴りたい! 《ファイアーボール》!」
「ぅおあぶなっ」
ノータイムでぶちかましやがった!
「今のはマスターが悪い、反省」
「……ごめんなさい」
いつも俺のノリに乗ってはっちゃけてるアルマに言われると堪えるなあ……。ちょっと冷静になったので、【ミロの実】を二つ取り出してアルマと一緒に食べる。
もきゅもきゅ。ごくん。美味しい。
こもっとがなんかすごい目でこっち見てるけど無視しよう。こういう弄りがいのある奴身近にいなかったから新鮮なのだ。だって
「まァ、こもっとは仲間に守られてる時が一番強いからな。超級職にでもなれば別なんだろうが」
「でもでも、《クリムゾン・スフィア》と《爆龍》は使わなかったよー」
さすがにそれ使われたら一撃で俺のHP全損するので勘弁してくれませんかね。
しかもあれだろ、その魔法も<エンブリオ>の効果で範囲と威力上がってるんだろ? 余裕で死ねるわ。
……それを考えたら素直に勝ったとは喜べないなあ。うーん、微妙。
「……私は、いつか正面から、こもっとの全力を受け止められる?」
アルマが憂いを込めた表情で、そう聞いてきた。
彼女の頭を撫でながら、絶対なれるさと思念で伝えた。
「……ほんと?」
「当たり前だろ。俺はおまえを信じてる。おまえも俺を信じてる。それだけで充分根拠はある」
ふむ、さっき散々ドロドロ(融解的な意味で)にされたのが堪えてるな?
まあ、進化したばかりなのにあれだけ溶かされれば少しは自信をなくすか。
「アルマ、こもっとは上級で俺たちは下級。だから負けた……なんて逃げるようなことは言わない」
「……ん」
「今回はひとえに、俺たちの力不足が原因だ。
俺はステータスと技量、アルマは各種耐性と質量。まだまだ俺たちには足りないものばかりだけど、このまま強くなっていけば必ず手に入る」
まだアルマは二回進化を経験しただけ。俺だってカンストには程遠い。
だからこそ、早急に——けれど急がず、着実に強くなる。
「時間はいくらでもある。頼れる仲間もいる。そして最高の<エンブリオ>が俺と一緒にいてくれる。
ほら、できないことなんてないだろう?」
「……ん! 私も最高のマスターに会えて、嬉しい」
そりゃ良かった。
さて、俺もアルマを活かせるようなジョブ構成、考えないと。果樹園に出てくるモンスターを狩ってたら、もうすぐ【操縦士】がカンストしそうだし。
《操縦》のスキルレベル(現在4)が上がり、【ブラック・デンドロン】の機体性能が発揮されるにつれて反応速度がさらに上がって楽しくなってきたけど……とりあえず、上級ジョブにでも就くかな?
この前見つけたアルマの特殊性は、スキルを多く得られるジョブに就けば就くだけ輝くし……ね。
まさか【闘士】に就いたのが遠回りだったとは思わなかったが、まあ、考えればわりと妥当かな。
そしてそれを活かせるか否か……俺の才能、信じてるよ。
/
風が唄う。
「QU——」
風は笑う。
「QU——」
あの時、空から落ちてきたナニカを取り込んでから、ひどく調子が良い。
今の自分ならばどんな敵をも倒せるのではないか——そう、眼前で飛ぶ飛竜を、風の弾丸で撃ち落とした。
——けれど。
ああ、ああ——不愉快だ。フユカイだ。
せっかく風の集まる場所に来たというのに、汚いものが湧いている。
風を汚す穢れた臭い。それが、風にはひどく不愉快に思え、そしてそれをわざわざ堪えるほどにソレの精神は成熟していなかった。
ならば、ならば。
滅ぼしてしまおう。消してしまおう。自らの力で吹き飛ばしてやれ。
そうしてしまえば、もはや穢れはいなくなる。
——風は、穢れを許さない。
生命よ、風を穢す生命よ。
汝らいのちに、
「QUAAA……」
ソレ——伝説級<UBM>、【天界空破 ラッダリト】は、謳う。
怒り、慍り、消し尽くせと。
「QUAAA……!」
ちなみに汚いもの認定の基準は、「生きていること」。
理不尽にもほどがある。
アルマの特性についてはですね……うん。
ヒント:“どんなものにもなれる”・武器系ジョブスキルの仕様