男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第12話 【天界空破 ラッダリト】

 こもっととの模擬戦から、デンドロ内時間で1日。

 つまり午前の収穫を終えて、俺は昼にアルマと一緒に話していた。

 

 話しているのは主に世間話や、アルマの新たな利用法。

 

「生産職も面白そうだよねぇ。アルマって超便利ツールだし、俺そこまで戦闘に全振りしてるわけでもないし」

 

「ん。私とマスターなら、いつのまにか超級職に行ってる」

 

 長時間ログインしてる間ずっと造ってたら、マジでいけるかもしれない。

 ……いやわりと冗談抜きに、アルマの特性から見ると、俺ってば生産職にも才能あるかも。さっすが俺とアルマ、最高だぜ。

 

 その後、営業時間を終えてログインしてきたカザミさんやカザンヌさんから「おまえいつもいるな」という呆れの目を頂戴しながら、果樹園の扉が開くまで世間話をすることにした。

 

「おまえ療養中なら、リハビリとかどうしたよ」

 

「それはもう終わってます。リアルだと体弱いんであんまり運動できませんが、それくらいならできるので。

 あとはまあ……たまのお父様との食事会と、お母様との世間話……それが1時間あって、冷たい食事(kaltes essen)かおにぎりでお腹満たして、四時間ちょい寝て……デンドロ?」

 

 ちなみにkaltes essen(カルテス エッセン)とは、ドイツの夕食のことである。

 ドイツでは、夜では食事に気力を使わずささっと済ませる。具体的に言えばパンやハム、サラダや酒にソーセージで手早く腹を満たすのだ。日本風に言えば余り物で作った夕食だけど、日本と違うのはそれらだけでも物凄く美味しい、という点かな。

 ホテルエデルマにもそういうコースはあったからカザミさんは知ってるだろうけど。

 

「優雅な生活だなァ、おい」

 

「まあデンドロだけしてると嫉妬の声が面倒なので、たまに趣味仲間の富豪(おともだち)にアポ取って色々融通してもらってますけどー」

 

 あの人たち、俺やトーマのことを孫みたいに可愛がってくれてるからなあ。トーマのコネクション作りも兼ねて、病気で倒れる前はオペラにオーケストラに色々と遊んでもらったものだ。

 ドイツのベルリンフィルとか……、それにエンゼルバーグ氏もお祖母様の親戚だから面識がある。あの人の演奏は素晴らしい。まさに神奏に相応しい音だった。

 

「話を聞いてると、本当に雲の上に思えてきますね」

 

「あっはっは、まあねぇ。デンドロでそこは持ち出しませんけど」

 

 そのコネクションは遺憾無く利用するがな! いずれデンドロでも金持ちになってバーっと使ってやろうじゃないか! 十億くらいノリで溶かすのはものすごい気持ちいいからねぇ! 

 ……なんか今「それは破滅主義だからねぇ!?」っていうフランクリンさんの絶叫が聞こえた気がする。気のせいだな。

 

「ヤヨイ君って控えめに言って頭おかしいよね〜」

 

「おうその喧嘩買うぞオラ。アルマ、鉄槌!」

 

「あいあいさー」

 

 ハンマーモードと化したアルマを持ってこもっとに迫る。逃げたようだが甘い! 

 アルマをうにょっと伸ばして頭を叩く。わりと良い音がして地面に倒れ込んだ。

 

「アルマはどんな形にもなれる、だから射程も長い。OK?」

 

「お、……おーけー」

 

じゃあ次の質問だ(Then the next question)……」

 

「ネイティブすぎてなんて言ってるのかわかんないよー!」

 

 こもっと煽るの(ry

 ……そろそろ天丼だなこのネタ。

 

「はいはい、じゃれ合いもそこまでな。そろそろ果樹園の扉が開くし、準備を——」

 

 

 ——刹那。

 冷たい影を、幻視する。

 

 

 背筋を硬く、冷たい風が撫でた。

 まるで死神が、今から殺す人間を無感動的に見つめるように。唯、殺す——その一念だけが伝わってくるのだ。

 

 

 それは、デンドロのシステム的な演出だったのかもしれない。

 本能的なものではなかったのかもしれない。

 

 けれどそれは、

 

 ——俺たちに、ナニカの来襲を知らせるには、充分すぎた。

 

 

「っ——」

 

 

 俺が口を開こうとしたその瞬間。

 

 一軒の小屋が、吹き飛ばされて。

 

 ——中にいたらしい女性や子供が、バラバラになったのが、見えた。

 

 

 その瞬間の俺とアルマの気持ちは、筆舌に尽くしがたいものだった。

 困惑、驚愕、虚無感、絶望、憤怒、——そして、殺意。

 

 それが一気に溢れ出そうになって、けれど俺の冷静な部分がそれを一瞬で沈静化した。

 

「ッ!」

 

 俺はアルマに合図する。アルマもそれを承知して、一瞬で液状化。

 俺たち全員を覆うようにアルマが広がり、地面に楔を打つように突き立った。そのままアンカーに変形して固定され、俺たちを守る防壁となった。

 

 敵の攻撃がわからない以上、下手に動くのは危険だ。

 先ほどの威力なら、耐えら……っ! 

 

『くぅぅうぅ!』

 

 ズドゴン、とアルマが大きく凹む。ぐらり、と揺らいだが、なんとか防ぎきることができた。

 安心はできないけれど……クソ、いきなりなんなんだ! 

 

「アルマ!」

 

『ん! 敵の数は、一……攻撃方法は、風の玉! 上空——100メテル!』

 

 100……100……! 

 

「カザミさん、雷と風の射程は!」

 

「精々50メートル、だが効果を発揮するとなると20メートルが限界だ!」

 

「炎は!」

 

「射程にMP込めまくれば、50メートルは行くよ!」

 

 ってことは、俺たちの間に100メートルなんて距離の攻撃ができるやつは……いや、俺は一応、打つ手はあるが……ダメだ、こんな攻撃をしてくるやつに有効なほど大層なもんじゃない! 

 

「カザンヌさんは何かありますか!?」

 

「私単体では……ですが、私の<エンブリオ>ならば、色々とやれることはあります」

 

「ってことは……」

 

 情報整理、開始。

 

 俺のレールガンによる攻撃ならば、届く可能性はある。しかし迎撃される可能性大。

 カザミさんの遠距離は豆鉄砲。

 こもっとはバ火力で射程も長いが、今この状況だと届かない。

 

 ……これは、詰みでは? 

 

 いや諦めんな、まだ打つ手はあるはずだ。

 

「必殺スキル覚えてる人挙手!」

 

 3人——って全員じゃねえかよ! 

 

「効果!」

 

「俺単体じゃこの状況はどうにもできん! だがカザンヌが鍵!」

 

「どうじょー!」

 

「同上!」

 

「重畳!」

 

 ってことは3人ならこの状況をどうにかできるってわけだな、充分。

 

 アルマ! 聞いてるな! 

 

『ん!』

 

「これから俺は【ブラック・デンドロン】に乗り込みます。そのあとは敵の状況を伺いつつ散開、切り札を切るときは……」

 

 アルマをちぎって投げて渡す。

 

「アルマを通じて言ってください。作戦会議もそれでやります」

 

「便利だなァ、よし!」

 

 4人で頷き合う。

 俺が乗り込んで、準備は完了。

 

『散開!』

 

 アルマをまとわせ、外の世界にさらけ出される。

 空を見上げると——そこには、ナニカが渦巻いているのが見えた。

 

『ッ、見えました!』

 

 早速カザンヌさんから、アルマを通じて連絡が届く。

 

 それ即ち——

 

 

『敵は伝説級<UBM>、【天界空破 ラッダリト】! 風のエレメンタルモンスターです!』

 

 

 ——災厄との、開戦のしるべ。




まだモノクロームより「攻撃性能は」マシ。
え? 防御性能? さて苦しんでもらいましょうか(愉悦)。

戦闘超級職と生産超級職の二個持ちって許されるかな……クラウディアやってるしいいかな………。
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