男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第13話 風よ

 カザンヌさんは《看破》系のスキルを所持しているらしく、その情報がアルマによって全員に共有される。

 

 便利だし、俺も取るかな……いや今はそれどころじゃない、この風の弾丸の回避に集中っ……! 

 

『マスター、このままじゃジリ貧。それに被害がどんどん拡大していく』

 

 わかってるさ。さっき死んだ親子も、今しがた吹き飛ばされて塵になった家屋も……腹が煮えくりかえりそうだ、クソが。

 

 何か、何か手はないか。

 せめてカザミさんたちがなんとかできるくらいの時間は稼ぎたい。

 

『……ハッ』

 

 ……違うな。何を弱気になってやがる。

 他の奴に頼る前に——自分でなんとかできるようにしねえと、意味がない! 

 

『ん!』

 

 まずは状況分析だ。アルマは周辺の警備に専念してくれ。

 

 

 状況分析、演算……開始。

 ——敵は伝説級UBM。【クロマドーラ】よりもランクは低いが、おそらくは条件特化型に当てはまる存在。100メートルの高度から襲い来る風の弾丸は、落ち着いて見れば避けられる程度だが……その高度が問題だ。

 

 カザミさんらの切り札ならば奴を撃ち落とせるかもしれない。

 ならばその手札は温存させておく。万全な状態で撃って避けられたりでもしたら目も当てられないし、今この状況で大技なんて隙が大きすぎる。

 よって初手切り札は却下。

 

 俺のレールガンは、そもそも電力がないので行使が不可能。よしんば使えたとしても迎撃で終わる。

 よって俺の手札も却下。

 

 ならば今は、奴の手札を暴くことに専念する。

 

 ——この間、約1秒——

 

 

『使う時が来たか……アルマ!』

 

『ん!』

 

 エレメンタルモンスターである以上、何が有効かわからない。

 ならば内蔵兵器をありったけ使って、何が有効か試すだけだ! 

 

 腕を奴がいる上に向けて、合図! 

 

『【グレネード・ボム】、射出!』

 

 アルマの掛け声とともに腕の装甲がガシャンと開き、改造時に仕込まれていた内蔵兵器であるグレネードが射出される。

 火薬を用いているため飛距離は出る、あとはこれでどうでるかだ……! 

 

 ドン、と打ち出されたグレネードが空中を昇っていく。

 重力の影響でそこまで長くは飛ばないが……それでも20メートル付近まで飛んだところで、派手に爆発を起こした。

 

 

 そして、その瞬間。

 

「QUAAAAAA!!!」

 

 なんだ、これ。もしかしてアイツの——

 

『マスター!』

 

 反射的に、横に飛ぶ。

 直後、先ほどまで俺が立っていた場所を風が抉り取った。やっぱりクソ火力じゃねえか死ね! 

 

 ……だが、段々とわかってきたぞ。

 

 アイツは、俺がぶん投げたグレネードに最初興味を示していなかった。しかしそれが爆発し、空中に爆風やらが撒き散らされた瞬間、初めて認識したかのように声を——何かに怒っているような声を出した。

 

 

 もしかして、だけど。

 アイツ——空が汚されることが、大っ嫌いなんじゃないのか? 

 

 

『マスター、3秒後に3発! 右斜め46度に飛んで!』

 

 細かいオーダー、でも助かるぜっ……! 

 

 きっちり弾丸を避けて、思考を再開する。

 俺のグレネードは在庫が少ない。あと3発しかないし、それだけを使ってアイツを倒せるかと言われれば……まぁ、無理だろう。

 

 だがこの場には、俺以上に大気汚染に適した存在がいる! 

 

『こもっと! できるだけ射程と効果範囲を広くした魔法、撃てるか!?』

 

『もっちろん! ようやく出番だね、待ってたよっ!』

 

 カザミさんたちは3人で行動しているらしく、機動力に優れたカザミさんが2人を小脇に抱えて滑空していた。スタイリッシュだな羨ましい! 

 

『カザンヌさんに調整してもらってぇー、よぅしいっくぞー!』

 

 固定砲台(こもっと)が上を向く。

 その手には【符】が数枚握られていて——

 

『合成魔法! 《爆・龍・玉(バオロン・スフィア)》!』

 

 

 多分、その瞬間に見た光景は、俺は一生忘れることはないだろう。

 こもっとの杖から吐き出された輝く熱球が一瞬で膨れ上がり、それが空に撃ち出されて……数秒後、叩き込まれた風の弾丸を起爆剤として、大爆発を発生させた。

 

 ね、熱と風がすげぇ……! うおおおおおぉぉぅ……! 

 

『おいコラ少し加減しろぉー!』

 

『あっははははは、たーのしーいねー!』

 

 こいつ爆発狂(ボムジャンキー)かよ! 

 

 幸いというかなんというか、威力はそこまででもないそうで、ちょっと家屋の残骸にトドメを刺したけど目的は果たした。

 

「QUAAAAAAAAA!!!」

 

 今の爆発でブチ切れたように、風の弾丸で爆煙を処理していくラッダリト。その動きに迷いはなく、だからこそその感情も理解しやすかった。

 

 ……やっぱりこいつ、潔癖だな? 

 

 

 いきなりここに現れた理由なんざわからんが、それでもおまえのその習性、利用するしかないよねぇ……。

 

『【スモークディスチャージャー】、射出』

 

 装甲から取り出した煙幕弾を握りしめ、挑発する意味も込めてお掃除中のソイツに打ち込んでみる。

 どちらにせよ飛距離は足りないが……まあ、さっきの爆発よりもある意味汚いものだから、普通なら反応するはずだけど……。

 

 

 先のグレネードの要領で射出された野球ボール大の煙幕弾は、高度20メートルまで上昇すると——パン、という軽い音を立てて空中に白い煙をまき散らした。

 

 けれど、【ラッダリト】は……もうすでに先ほどの爆煙は処理しきっているというのに、それには目もくれない。

 ただただ発狂したように、風の弾丸で俺たちを殺そうとしている。

 

 

 ……爆煙だけに反応して、煙幕には反応しない? 

 どういう理屈だ……? 

 

 

『マスター』

 

 どうしたアルマ。何かわかった? 

 

『是。けれど今この状況を打開するものではなく……むしろ悪化させるもの』

 

『……うっわぁ』

 

 最悪なんだけど。

 でも聞かないわけにはいかないんだよねぇ……話して。

 

『周辺大気の動きを探っていたら、風の弾丸が発射されている場所に妙な反応があった』

 

『妙な反応?』

 

『ん。簡潔に言うと——

 

 ——あいつの周囲に、超高密度の風が渦巻いてる。あいつの大きさはバスケットボールくらいなんだけど、その周囲を完全に覆ってる』

 

 ……そりゃ、何か? 

 

 

 まさか——こんだけの攻撃と、その風による防御を、両立させているとでも? 

 

 

『ん。

 それで、その防壁をぶち抜くには……』

 

<UBM>ってホントクソだな。

 

『こもっと5人分、それに加えて敵の攻撃による減衰をどうにかして、射程を100メテルまで伸ばせるものが必要』

 

 ……<UBM>って、ほんっと、クソだな! 

 

 

 

『多分、俺らなら行けるぞソレ。一人でも死んだら、実行不可能だがな』

 

 

 ……マジですか? 

 それがさっき言ってた切り札ってやつか……だけど、まだ早い。

 

 まだ奴の手札を暴けていない以上、切り札を切るのは避けたい。今の状態ならばカザミさんが運んでるのでなんとかなるだろうが、もしもゲームで言う時間経過をトリガーとする「発狂モード」とかあったらマジで死にかねん。

 

 他のマスターは逃げ回るだけだしな……あぁ、今一人消し飛ばされた。役に立たねえ……! 

 

『今カザンヌがスキルと<エンブリオ>使って色々と調べてるが、うおっと……あの程度の防壁なら俺の必殺スキルとこもっとの必殺スキル、そいつらをカザンヌの必殺スキルで色々やってやれば、ぶち抜ける!』

 

『今その効果うおぁ、話せます!?』

 

『おう! まず俺の必殺スキルは——』

 

 ふむふむ。ほうほう。

 ………………………………………へぇ? 

 

 ってことは、ああしてこうすれば俺も………、まだ奥の手を隠してることを想定すると……………そしてアイツがさっき煙幕を無視した理由……………………整理すれば……………。

 

 

 ——いよっし! 作戦がまとまった! 

 でもやっぱり、まだ温存しててください! やりたいことがあるので! 

 

 まずはアイツがどうやって敵を判別しているのか、調べるぞ。

 

『アルマ、散開』

 

『ん』

 

【ブラック・デンドロン】がまとっていたアルマが、一部離れていく。

 それは小粒の液状生命体となりながら、周辺に散開した。

 

『【完全演算状態(Full Operate Mode)】、起動』

 

 これでアルマの操作権が俺に移行し、アルマは分体を通して情報の獲得に専念することになる。

 

 さて——どう出る、【ラッダリト】?




ヤヨイ君がスパスパ謎を解き明かすからバトル描くの楽しいわぁ……。

ちなみに内蔵兵器はデンドロwikiにあります。
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