男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>— 作:クーボー
カザンヌさんは《看破》系のスキルを所持しているらしく、その情報がアルマによって全員に共有される。
便利だし、俺も取るかな……いや今はそれどころじゃない、この風の弾丸の回避に集中っ……!
『マスター、このままじゃジリ貧。それに被害がどんどん拡大していく』
わかってるさ。さっき死んだ親子も、今しがた吹き飛ばされて塵になった家屋も……腹が煮えくりかえりそうだ、クソが。
何か、何か手はないか。
せめてカザミさんたちがなんとかできるくらいの時間は稼ぎたい。
『……ハッ』
……違うな。何を弱気になってやがる。
他の奴に頼る前に——自分でなんとかできるようにしねえと、意味がない!
『ん!』
まずは状況分析だ。アルマは周辺の警備に専念してくれ。
状況分析、演算……開始。
——敵は伝説級UBM。【クロマドーラ】よりもランクは低いが、おそらくは条件特化型に当てはまる存在。100メートルの高度から襲い来る風の弾丸は、落ち着いて見れば避けられる程度だが……その高度が問題だ。
カザミさんらの切り札ならば奴を撃ち落とせるかもしれない。
ならばその手札は温存させておく。万全な状態で撃って避けられたりでもしたら目も当てられないし、今この状況で大技なんて隙が大きすぎる。
よって初手切り札は却下。
俺のレールガンは、そもそも電力がないので行使が不可能。よしんば使えたとしても迎撃で終わる。
よって俺の手札も却下。
ならば今は、奴の手札を暴くことに専念する。
——この間、約1秒——
『使う時が来たか……アルマ!』
『ん!』
エレメンタルモンスターである以上、何が有効かわからない。
ならば内蔵兵器をありったけ使って、何が有効か試すだけだ!
腕を奴がいる上に向けて、合図!
『【グレネード・ボム】、射出!』
アルマの掛け声とともに腕の装甲がガシャンと開き、改造時に仕込まれていた内蔵兵器であるグレネードが射出される。
火薬を用いているため飛距離は出る、あとはこれでどうでるかだ……!
ドン、と打ち出されたグレネードが空中を昇っていく。
重力の影響でそこまで長くは飛ばないが……それでも20メートル付近まで飛んだところで、派手に爆発を起こした。
そして、その瞬間。
「QUAAAAAA!!!」
なんだ、これ。もしかしてアイツの——
『マスター!』
反射的に、横に飛ぶ。
直後、先ほどまで俺が立っていた場所を風が抉り取った。やっぱりクソ火力じゃねえか死ね!
……だが、段々とわかってきたぞ。
アイツは、俺がぶん投げたグレネードに最初興味を示していなかった。しかしそれが爆発し、空中に爆風やらが撒き散らされた瞬間、初めて認識したかのように声を——何かに怒っているような声を出した。
もしかして、だけど。
アイツ——空が汚されることが、大っ嫌いなんじゃないのか?
『マスター、3秒後に3発! 右斜め46度に飛んで!』
細かいオーダー、でも助かるぜっ……!
きっちり弾丸を避けて、思考を再開する。
俺のグレネードは在庫が少ない。あと3発しかないし、それだけを使ってアイツを倒せるかと言われれば……まぁ、無理だろう。
だがこの場には、俺以上に大気汚染に適した存在がいる!
『こもっと! できるだけ射程と効果範囲を広くした魔法、撃てるか!?』
『もっちろん! ようやく出番だね、待ってたよっ!』
カザミさんたちは3人で行動しているらしく、機動力に優れたカザミさんが2人を小脇に抱えて滑空していた。スタイリッシュだな羨ましい!
『カザンヌさんに調整してもらってぇー、よぅしいっくぞー!』
その手には【符】が数枚握られていて——
『合成魔法! 《
多分、その瞬間に見た光景は、俺は一生忘れることはないだろう。
こもっとの杖から吐き出された輝く熱球が一瞬で膨れ上がり、それが空に撃ち出されて……数秒後、叩き込まれた風の弾丸を起爆剤として、大爆発を発生させた。
ね、熱と風がすげぇ……! うおおおおおぉぉぅ……!
『おいコラ少し加減しろぉー!』
『あっははははは、たーのしーいねー!』
こいつ
幸いというかなんというか、威力はそこまででもないそうで、ちょっと家屋の残骸にトドメを刺したけど目的は果たした。
「QUAAAAAAAAA!!!」
今の爆発でブチ切れたように、風の弾丸で爆煙を処理していくラッダリト。その動きに迷いはなく、だからこそその感情も理解しやすかった。
……やっぱりこいつ、潔癖だな?
いきなりここに現れた理由なんざわからんが、それでもおまえのその習性、利用するしかないよねぇ……。
『【スモークディスチャージャー】、射出』
装甲から取り出した煙幕弾を握りしめ、挑発する意味も込めてお掃除中のソイツに打ち込んでみる。
どちらにせよ飛距離は足りないが……まあ、さっきの爆発よりもある意味汚いものだから、普通なら反応するはずだけど……。
先のグレネードの要領で射出された野球ボール大の煙幕弾は、高度20メートルまで上昇すると——パン、という軽い音を立てて空中に白い煙をまき散らした。
けれど、【ラッダリト】は……もうすでに先ほどの爆煙は処理しきっているというのに、それには目もくれない。
ただただ発狂したように、風の弾丸で俺たちを殺そうとしている。
……爆煙だけに反応して、煙幕には反応しない?
どういう理屈だ……?
『マスター』
どうしたアルマ。何かわかった?
『是。けれど今この状況を打開するものではなく……むしろ悪化させるもの』
『……うっわぁ』
最悪なんだけど。
でも聞かないわけにはいかないんだよねぇ……話して。
『周辺大気の動きを探っていたら、風の弾丸が発射されている場所に妙な反応があった』
『妙な反応?』
『ん。簡潔に言うと——
——あいつの周囲に、超高密度の風が渦巻いてる。あいつの大きさはバスケットボールくらいなんだけど、その周囲を完全に覆ってる』
……そりゃ、何か?
まさか——こんだけの攻撃と、その風による防御を、両立させているとでも?
『ん。
それで、その防壁をぶち抜くには……』
<UBM>ってホントクソだな。
『こもっと5人分、それに加えて敵の攻撃による減衰をどうにかして、射程を100メテルまで伸ばせるものが必要』
……<UBM>って、ほんっと、クソだな!
『多分、俺らなら行けるぞソレ。一人でも死んだら、実行不可能だがな』
……マジですか?
それがさっき言ってた切り札ってやつか……だけど、まだ早い。
まだ奴の手札を暴けていない以上、切り札を切るのは避けたい。今の状態ならばカザミさんが運んでるのでなんとかなるだろうが、もしもゲームで言う時間経過をトリガーとする「発狂モード」とかあったらマジで死にかねん。
他のマスターは逃げ回るだけだしな……あぁ、今一人消し飛ばされた。役に立たねえ……!
『今カザンヌがスキルと<エンブリオ>使って色々と調べてるが、うおっと……あの程度の防壁なら俺の必殺スキルとこもっとの必殺スキル、そいつらをカザンヌの必殺スキルで色々やってやれば、ぶち抜ける!』
『今その効果うおぁ、話せます!?』
『おう! まず俺の必殺スキルは——』
ふむふむ。ほうほう。
………………………………………へぇ?
ってことは、ああしてこうすれば俺も………、まだ奥の手を隠してることを想定すると……………そしてアイツがさっき煙幕を無視した理由……………………整理すれば……………。
——いよっし! 作戦がまとまった!
でもやっぱり、まだ温存しててください! やりたいことがあるので!
まずはアイツがどうやって敵を判別しているのか、調べるぞ。
『アルマ、散開』
『ん』
【ブラック・デンドロン】がまとっていたアルマが、一部離れていく。
それは小粒の液状生命体となりながら、周辺に散開した。
『【
これでアルマの操作権が俺に移行し、アルマは分体を通して情報の獲得に専念することになる。
さて——どう出る、【ラッダリト】?
ヤヨイ君がスパスパ謎を解き明かすからバトル描くの楽しいわぁ……。
ちなみに内蔵兵器はデンドロwikiにあります。