男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第15話 必殺スキル

 全員に、作戦の決行を通達する。

 

『おい、正気か。この状態で、しかもあの攻撃を喰らったら、俺たちの必殺スキルも撃ち負けるぞ』

 

『それが目的なので』

 

 恐ろしいほど頭が冷えている。アルマも同じだろう。

 

『アイツはあの攻撃を撃ったら、少しの間だけ風の防壁がなくなります。そこを突く。

 カザミさんの必殺スキルは、確か分離可能なんでしたよね? ひとつ、貸してはくれませんか?』

 

 脳内で組み立てられた作戦。できるだけ運要素は排し、それでもヤツの心情を読み切るという不確定要素と、その上でアイツが精神的に幼稚であることを前提にして成功する欠陥だ。

 だけどこの場で、それ以上に有効なものはない。

 

 そしてこの中で、司令塔ができる人間は俺しかいない。

 カザミさんは冷静そうに見えて頭に血が上っているし、こもっととカザンヌさんはすでにブチ切れている。正直まともに作戦練るなんざできないだろう。

 

 アルマは単純に経験値が足りない。人を指揮するのは人に命令するよりはるかに難しいのでそこは仕方ないのだけれど。

 

 俺とて思考は殺意に満ちている。だが頭は極めて冷静だ。

 まるで、リアルで真木を甘く見た企業を潰した時のように。

 

『そういうわけなので、よろしくお願いします。

 ヤツはここで確実に殺す——あなたたちはそれだけを考えて動いてください、小難しいことは俺とアルマがやるので、合図とともに最大火力をいつでもぶつけられるように』

 

 ああ、でもダメだ。無意識に口調が上から目線になってしまう。久しぶりで鈍ったかな、まあいいや。

 

 他のマスターは勘定に入れない。邪魔だから早く死ねよ。

 

 

 ……さて、配置は整ったか。

 そろそろアイツもデメリットから復帰する頃だし、俺も動くとしよう。

 

『アルマ、塞げ(・・)

 

『ん』

 

 

 /

 

 

【天界空破 ラッダリト】の保有する第一スキル《SINGING(シンギング)DESTRUCTION(デストラクション)》は、攻撃範囲に優れた技である。

 周辺の障害物を丸ごとなくすことで、有象無象を天に吹き飛ばし、地に墜落する衝撃で殺す攻撃。

 

 けれどそのデメリットは、30秒間の第二スキルの発動不可能という、高度の代わりに防御力を得た【ラッダリト】にとってはそれなりに重いものだ。

 

 だからこそ最初からは撃たなかった。結局、憤怒に身を任せて使ってしまったけれど。

 

「QUAAA♪」

 

 これで煩わしいものは消えた。あとは死に体の奴らを一人一人殺せばいいだけ。

 

 そうやって第三スキルを発動させた【ラッダリト】だったが……何故か、先ほどまで探知できていた反応がひとつ、消えている。

 

 墜落したわけでもないのに不可解な、と一瞬思ったが……不愉快な吐息が消えたのは素直に嬉しいことなので、詮索はしなかった。

 

 

 ——それが、罠であることに気付かないまま。

 

 

 /

 

 

【ブラック・デンドロン】に搭乗しているヤヨイを、どうやってソレが感知しているかと言えば、それはただひとつ。

 

【ブラック・デンドロン】の空調機構で外に放出される二酸化炭素を感知している——そしてそれもヤヨイは理解している。

 

 直接口などを塞ぐのは非効率極まりなく、この戦闘の中でそれをするのは自殺行為だ。

 けれど【ブラック・デンドロン】に乗り込んでいるがゆえ、直接外で呼吸していないヤヨイならば——空調機構を塞ぐことで、感知をスルーできるのだ。

 

 元々の機内にある空気と、塞いでいるアルマが取り込む空気。

 それらがあることで……ヤヨイは、二酸化炭素を発生させることなく、自由に行動することができる。

 

『アイツが完全に防壁を取り戻したら、全力全開で切り札を撃ってください。それで仕留められればいいですけど、もしも今と同じ技を使えた場合——』

 

 ヤヨイは【ブラック・デンドロン】の手中にある小さな太鼓を弄びながら、作戦の全容を伝えるのだった。

 

 

 /

 

 

「完全にキレてやがるな、ヤヨイ」

 

 通話中にも恐ろしいほど静かだった。多分、ブチ切れると冷静になる珍しいタイプの人間だ。あるいはヤヨイが時々語るリアルでの経験ゆえか。ま、知らねえけど。

 

 俺らは手足として動くだけだ。難しいことはわからんからな。

 

「こもっと、カザンヌ、行けるか?」

 

「いけるよー!」

 

「ええ、こちらも」

 

 アイツの周囲がまた蠢き始めたのを見て、俺たちは全員で手を合わせる。

 そうして、宣言した。

 

 

「《風伯雷公、以て双天成すは理(フウジンライジン)》」

 

 

「《絢爛たるや天上の火(ウルカヌス)》!」

 

 

「《繋げよ天地、忘れぬ想いは未だ遠く(メーティス)》——連結(コネクト)

 

 

 ——俺たちが、自分たちのクランを<双天と火>と名付けたのは、この必殺スキルが所以だ。

 

<双天>を俺が。

 

<火>をこもっとが。

 

 そしてその二つを繋ぐ、<と>を……カザンヌが。

 

 三位一体の理を成すものとして、こもっとが名付けたクランネーム。

 俺はわりと……気に入っている。

 

 

 /

 

 

 かっこいいじゃないか……。

 

『かっこいい……』

 

 中二病とか言ってごめんなさい。ネーミングセンスと理由が素晴らしいです。

 

 さて……こっちの準備も整った。

 

 背中でアルマに包み込んだ太鼓が、雷を発するとともに輝くのを感じながら、俺はレールガンとなったアルマを空に構える。

 

 ——反撃を開始しよう。

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