男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>— 作:クーボー
黄河帝国最西部、天地に渡る、あるいは天地から逃げてくるためによく使われる大規模な港の街。
現在も内乱が起こっているとは言え、天地との交易も開いている街であるから、街には<マスター>や武者修行で他国を訪れた天地のティアン、あるいは怖いもの見たさで天地に渡ろうとする黄河やカルディナの<マスター>で街はごった返しとなり、連日盛況を誇っている。
——しかしそんな街ではひとつ、上から下まで頭を悩ませるとある場所があった。
それは街から北に少し進んだところにある、大規模な森林。
通称<テングの森>と呼ばれ……伝説級<UBM>【千森天狗 カザシミマル】という、天地から逃げてきた一匹の<UBM>が根城とする魔境である。
『突然現れ根城にされて、優良な木材の輸出地であった森が使えなくなってしまった』
『どうすればいいのやら』
そうやって上層部は悩み、悩み、悩み……そうして、集まっている<マスター>に協力を仰ごうと言う結論に至る。
<超級>はいなくとも、これだけの数の<マスター>がいれば一匹程度どうにかなるはず。
その目論見は確かに正解で、ある者は自分が特典武具を手に入れた姿を夢想し、ある者は自分が英雄としてティアンに讃えられる姿を妄想しながら、結成されたテング大規模討伐隊へと所属。
総計千人にも及ぶ上級下級入り乱れた数多の<マスター>たち。彼らは皆、“自分こそが特典武具を手に入れるのだ”と血気にはやり、自らの力を鼓舞していた。
——たった一人の、ルーキーを除いては。
彼はルーキーでこそあったが、彼らと比べて、単純に落ち着いていた。
独り自室で刀を手入れし、夢を見ることもなく……ただ、自分のコンディションを完璧に活かせるように磨き上げた。
そして討伐決行の日。
大規模な討伐隊が組まれ、森へと遠征し……そして、伝説級<UBM>の能力によって1時間程度で100人ほど殺された。
残る900人も天狗の奇々怪々な能力によって天狗にダメージを与えることができず、もはや倒すことはできないかと皆が諦めかけたその時。
「——読めた」
と、一人のルーキーがつぶやいて——
——刹那、戦闘系超級職もかくやという速度でルーキーが飛び出し、何もない場所へと刀を構えて突撃した。
その10分後には、誰もが皆ルーキーと天狗の戦いの傍観者でしかなく。
【<UBM>【千森天狗 カザシミマル】が討伐されました】
そのアナウンスが流れたのも、ルーキーが戦い始めてから30分後のことだった。
一人のルーキーによる、伝説級討伐。
それは、ヤヨイが数人のパーティーで同じ伝説級を倒した……数日後のことである。
そして同時に、そのルーキーがルーキーでなくなり、黄河を去ったのも……それから、数日後のことだった。
多分察してると思いますが。
この人は今まで作中に地味ーに出ていたルーキーさんです。
ヤヨイみたいな進化パターンがありすぎるタイプではなく、単純に一点特化なので、ヤヨイよりも早く上級に到達しています。
たとえるなら……とある分野に特化したヤヨイみたいなもんです。