男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>— 作:クーボー
第1話 水と金貨の街・コルタナ
□【
長く……険しい旅だった。
砂漠を通過する強行軍……それは襲ってくるモンスターを俺とホムンクルスたちが殲滅する五日間だった。何度アルマを投擲してわざと食わせて内部から殺害したかは覚えていない。これは邪法なので封印しようと思ったことも数知れず。
途中でホムンクルスの護衛がいるからと余裕そうにメルクが本を読みながら外に出たらワームに一撃貰ったり、それにブチ切れたメルクが大量にホムンクルス放出して砂漠が地獄絵図になったりとアクシデントはあったものの、なんとか一度もデスペナせずに辿りついた。
っていうかアクシデント大体メルクが原因なんですけど。思いっきり笑ったら放出中のホムンクルスの群れの中に叩き込まれたの許してねえからな!
「それはマスターが悪い」
聞こえませーん。余裕ぶっこいたあの馬鹿が悪いんですぅーってあいたっ。
/
まあそれはともかく。
何度か遭遇したチビサソリの群れを単独で殲滅したりして、ボス級は無視して雑魚をひたすら狩り続けていたおかげか、【鉄人】のレベルも50を超えた。また全武器種のスキルレベルも普通に上がった。
……スキルに関してはどう活用すればいいのかわからん。SPと、【鉄人】のスキルである程度改善されたとはいえMPが足りないもん。
「なんかスキルだけが無駄に増えていってる気がする……」
「いずれ活かせるんじゃなーい? 知らないけどー」
こ、こやつぅ。他人事だからって適当な返事を……! あと着ぐるみ大丈夫?
……いやほんと、これ、どうにかして活かせないかな……覚えたスキルをジョブを変えても忘れないのはありがたいけど、他のスキルはどうにもならんよ? わりとマジで。
——ガシャン
「あ、停めれたみたーい。ヤヨイ君、アルマちゃん、行くよー」
「マスター」
「ん」
【フランケンシュタイン】が停止して、スロープが降りる。
それを伝って外に出て、っと……おぉ。
「砂漠かあ。リアルじゃ行けなかったから初めての経験だぜ」
「普通の人は行ったことないと思うけどねー。あぁ、久しぶりだ」
——カルディナの首都に代わり、<マスター>の初期ログイン地点である街。
<カルディナ大砂漠>の中心に位置するオアシスを核として形成された大都市にして、国内の商業を担う場所。
水と金貨の都、コルタナ。
賄賂と裏社会の闇に溢れたその街に、俺たちは足を踏み入れた。
……いやまあ、ワクワクもするけれど、とりあえず。
「……砂漠用の服買おう」
「……ん」
「僕の着ぐるみ空調付きー、快適ー」
クソァ!!
言いたいことはわかるさ! 前もって買っとけ、だろ! でもドライフは雪国だから薄着なかったんだよ!
照りつける太陽の中、一瞬でグロッキーと化した俺とアルマは、砂漠用の服を売っている場所へと急ぐのだった。ちなみに護衛のホムンクルスと【フランケンシュタイン】は、いつのまにかメルクの紋章の中に戻っていた。
あっ、あったあそこだ! 早く買うぞアルマ!
「ん? わ、そういえば——あぁ、行っちゃった」
/
ふぅ、とりあえず買って着替えたけど……これ、【ブラック・デンドロン】に乗り込んだ時に《瞬間装備》でユニフォーム着替えるってことになるのかな。アレかっこいいしいつも着たかったけどしょうがない。
それに、なんだ……アラビア風も着たいしね!
「お、買ってきたねってだいぶ変わったね君」
「似合ってますよね」
「わぁお断定、さすがナルシ」
失敬な、ナルシではない。自分の容姿を正確に認識しているだけだ。
「アルマも似合ってるよ。可愛い」
「ん!」
アルマも、いつもの銀のドレス(あれは俺たちで言うインナーに該当する装備品のようで、上から服を装備したら消えた)からゆったりとしたアラビア風の全身を白布で覆うような形の服を着ている。
……やっぱり宗教がないからリアルとは大分違うな。
「そういえば最近会ってないけど、どうしてるかな」
「どったのー?」
「ああ……いや、リアルで知り合いの王子……じゃないのか、今は。まあとにかく、最近会ってない知り合いがいるんだ。今どうしてるんだろうなって」
あいつの国、共和制になったからもう王子じゃなくなったんだよなー。弟は絶賛ニート満喫中らしいけど、兄の方は情報があまり入ってこないのだ。
……ニートと言えば、芸術以外万能な奴がいたな。あいつ
まあメディアはものすごい面倒臭いから逃げたい気持ちもわかる気がする。俺も雑誌に写真載せないかって打診が煩かった覚えがあるし。
「もしかしたらデンドロで会えるかもしれんな。あいつらのことだし<超級>でもおかしくない」
「あはは、まっさかー」
……なんだこいつ、やけに白々しいな。
さてはなんか隠してる?
「メルク、なんか隠してなーい?」
「あ、わかっちゃう?」
「隠す気もないのなこの野郎。すぐに吐かねばアルマで足を踏み潰してくれる」
アルマ、金属的な意味で重いよ? 質量的な意味で。
はい、体重的な意味じゃないのでその構えたハンマーを下ろしてください。俺まで巻き込まれたくないです。
「わかったわかった、言うって。
えー……そのね? ……実は、ユニフォームにも空調機構があり、まして」
………。
…………そうですか。
「アルマ、砕け」
「いやちょっと待ってグレードアップしてるってやめ足が折れウワァァァ!!」
結局、砕け散る寸前で取りやめた。傷痍系状態異常はシャレにならんからな。まあ内部出血はやったけど。