男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

49 / 144
第2話 【鉄人】の欠点

 □【鉄人(テツジン)】ヤヨイ・ベルダーウッド

 

 メルクがどうにかして足を回復した後、俺たちは果実水を出す店の中で休憩していた。ちなみにアラビア風の服は着たままだ。

 

「まず何するー? 僕はバザールで色々と仕入れるつもりだけどー」

 

「俺は……まあ、レベル上げですかね?」

 

 近くにワームの巣穴があるようだし、中にありったけの音響爆弾詰め込んだアルマを放り込んでテロでもしようかな。直接やり合うのは自殺行為だから知恵を使わないとねぇ……? 

 いずれは普通に戦いたいけどさ。

 

「マスター悪いこと考えてる……」

 

「人間、頭使わないと自然界では弱いからねえ」

 

「確かに」

 

 ちゅー。

 ……あ、これ美味しい。

 

「じゃあ別行動だねー。とりあえず二、三時間後にセーブポイントで集合ってことでー」

 

「あいさー」

 

 とりあえずリアルタイムで二日でカンスト目指そうかな。

 

 

 /

 

 

 さて、とりあえず狩りを始める前に今までぼかしてきた【鉄人】のスキル内容を説明しようと思う。

 

 

《マギア・パフォーマンス》:

 MP消費を20%軽減する。

 パッシブスキル

 

《スキル・パフォーマンス》:

 スキルのクールタイムと、SP消費を20%軽減する。

 パッシブスキル

 

《ブースト・パフォーマンス》:

 ステータスの何かに、その値の20%分加算する。小数点は切り捨てる。

 アクティブスキル

 

 

 まあ、単純に便利というか……あって困らないスキルばかりだ。まだスキルが増えるのかもしれないが、それにしたって奥義とかそこら辺だけだろう。

 

 けど……それだけだ。単純に便利なだけ。

 他の上級職と比較して、明らかに器用貧乏。「あって助かる」、「単純に便利」——けれど、「決め手に決定的に欠けている」。

 

【盾巨人】なんかは、防御力を攻撃力に変換するという強力なスキルがある。あのおかげで一瞬だが非常に高い攻撃力を実現でき、決め手には充分だ。

【聖騎士】とかだと、《聖別の銀光》を筆頭に様々な種族に対する特攻効果を持つスキルを複数有し、《乗馬》などのスキルを活かしてテイムモンスターに騎乗して戦う。どちらかと言うと耐久寄りのステータスだが、それをスキルで補完している形である。

 

 で、それを踏まえて【鉄人】を見ると……ぶっちゃけ効果倍増が低い。弱いと言い換えてもいい。

 

 これがスキル特化型とか、AGI・STR特化型ならばもっと活かせたのだろう。

 しかし【鉄人】はEND型。ENDだけが伸びるがゆえに、戦闘では不遇でしかない。

 

 俺だってアルマを回復するときに軽減する効果がちょっと役に立ってて、あとはスキルを連続使用するときに助かるな、ってくらいだ。【ブラック・デンドロン】に乗ってるから色々と活かせているだけで、もしもこれがなかったら絶対にジョブリセットしていた。

 

 何を思ってこんなジョブ作ったんだか。理解に苦しむ。

 というかだな、それよりもENDの高さを活かせる方向に進ませればさ……まだマシだったかもしれないのに。一定ダメージ以下オールカットとか。

 

 でもまあ、これを作った意味は理解できなくても……意図は理解できる。

 これは、アレだ。他のスキルが豊富に手に入るジョブと組み合わせろっていうことを言ってるんだ。

 

「けどやっぱりこれ、破綻してるよな」

 

 よく考えてみろ。

【鉄人】は便利なスキルだけ詰め込んでいる——で、それを活かすためには、【鉄人】を活かせるような(・・・・・・・)ジョブ構成をしなければならない。

 

 ……ほらな? これ、逆転してるんだよ。用途と実際の使い方が。

 他のジョブを補佐するための便利なスキルなのに、その実便利なスキルを使うために他のジョブを使わなければならない——サポート系のジョブだとしても論理が破綻している。

 

 俺も他のゲームで経験があるけど、便利なスキルが手に入ったらそれを使うために他のものもそれに合わせてしまうことがある。

 それもまあ、快適性という意味では一つの解ではあるだろう。けど大概の場合、それ以上に優れた構成が存在する。

 

 それはデンドロでも同じこと。便利なスキルは所詮「便利なスキル」でしかない。

 極まったもの……【盾巨人】の《ストロングホールド・プレッシャー》や、各種上級職に存在する奥義を活かせるように組んだ方が遥かに強いのだ。

 

 

 で、それを踏まえて考えてみると……これ多分、自分たちができることの全てを快適化しようとした結果、リソースが足りなくなって器用貧乏化したパターンだ。

 

 どうせならENDを活かせるように——それ以上にスキルか魔法、あるいはステータスの快適化に特化していればまだマシなはずなのに。

 

「まあリソース(それ)が解決される超級職なら、また別かもね」

 

 往々にして、器用貧乏は何かしらの問題点を解決すれば化けるもんだ。

 

 砂漠地帯に行くからと、<叡智の三角>にめちゃくちゃ融通してもらった音響爆弾を、10個くらいまとめたものをアルマで包んで巣穴に放り込む。

 刹那、衝撃とともに音が穴から突き抜けた。俺はアルマで耳栓してるから問題なし。

 

『ん、ワームが死んだ。生き残りも今殺してる』

 

「頼むぞー」

 

 音響爆弾10個とか、それもう普通に殺傷兵器の域だし。

 特に視覚が退化してる分聴覚が鋭いワームに、しかも音が響く巣穴にぶち込んだら死ぬわな。

 

 で、死なずとも聴覚と脳に大ダメージを負ったワームの中にアルマが潜り込み、トドメを刺す。

 たまに人間態に戻って外から突き殺したりして《紋章偽装》のための戦闘経験(?)を積んだりしてるし、地上で俺は【ブラック・デンドロン】に乗り込みつつアルマと雑談しているだけで済む。

 

 ドロップアイテムもアルマが回収してきてくれるし、本当にアルマがいてくれてよかった。

 

 

 あ、レベルが一気に三つ上がった。強いモンスターでもいたのかな? 

 

 

 /

 

 

 その後、巣穴にいたワーム……の中に紛れていた【亜竜甲蟲(デミドラグワーム)】のドロップ品——【亜竜甲蟲の宝櫃】をオープンし、出てきたアイテムと普通のワームのドロップアイテムをまるごと売ったことで、物価の高いカルディナでも音響爆弾代に使っても余りあるほどのリルを得た俺は、さらに勢いづいて巣穴に音響爆弾を叩き込むのだった。

 

 ちょっと楽しすぎたけど、もちろん集合時間には間に合わせました。社会人の基本だからね。




【鉄人】の問題点披露会。
あとしれっとレイ君が死ぬ思いして撃破したデミドラグワームをナレ死させてる。まあ当時のレイ君とはレベルもエンブリオも上だから仕方ない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。