男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>— 作:クーボー
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セーブポイントでメルクと合流し、ついでにログイン地点に登録する。
メルクは満足できる買い物ができたようで、ホクホク顔(と思われる)で俺たちの前に現れた。
……にしてもほんと広いな、オアシス。
リアルじゃ泳いだことなんてなかったから、この世界でいつか泳ぎたいものだ。オアシスは遊泳禁止だけども。
「ふふふー、さすがカルディナ。横流しされた<マジンギア>の部品がたっくさんあったよ」
「それっていいんですかねえ……」
「良くはないけど、ここってシルクロードみたいなもんだからねー。問題があっても誰も告発できないし、何より金があればこの国は全てを許す。他の国も他国との重要な流通ルートを潰すような真似はしないさー」
必要悪みたいなものか。ま、商業の国なんだからこれくらい当たり前かもね。リアルでもこういう事案はあったけど、誰も何も言えなかったし。
「あと<マジンギア>のオプションとか、音響爆弾も売ってたから後で案内するよー。昔来たことがあるから良い店知ってるんだー」
「それはありがたい……って、そういえば<セフィロト>に勧誘されたんだっけ」
<セフィロト>。
世界最強のクランにして、10人のうち9人が<超級>で構成されているという超弩級の戦力。カルディナが最強の国家と呼ばれる理由にして、国が彼らを繋ぎ止めるために数多の特権を与えられているという。
そして、一時期カルディナを本拠地とし、<悪徳街殲滅事件>ののち<超級>に至っていたメルクもめちゃくちゃ勧誘されたのだという。
……この分だと<クリフォト>もいそうだな。
「そうだねー。なんか色々と特権くれるって言ってたけど、わざわざこっちの世界に来てまで縛られたくないしー。それに僕、AR・I・KAとイヴと一緒に仕事するとか絶対ヤダ」
“蒼穹歌姫”に【砲神】か。聞いてる限りわりと性格クソらしいけど。
「マニゴルドとはビジネスライクで、あとたまにカジノで遊んだりしたなー。女の子の趣味も結構合うから楽しかったよー。
あとファトゥムとはたまに連絡取り合ってるね、仲良いしー。後で君にも会わせてあげるー。
カルルとアルベルトはあんまり接点なかったなー。イリョウは……好きでもないけど嫌いでもない。
ただ、ホント、あの二人だけはマジ勘弁。AR・I・KAは色情魔でナチュラルに話が通じないし、イヴの方は単純に生理的に無理。だから丁重にお断りしたよ」
後半が口調崩れてる……そんなに嫌いなのか、その二人のこと。
「多分AR・I・KAは君の存在に気づいたら口説いてくると思うから無視していいよ。イヴの方は見つけ次第殲滅を要求する、ほっといたら頭上射撃で殺されるからヤられる前にヤれ」
「えぇ……」
「マスターは私が守る」
クセが強いよ、色々。あとアルマはいつも可愛いね。
——そんな感じで雑談しながら、バザールを歩く。
途中良さそうなアクセを見つけて買ってみたり、良さげな金属塊を購入してみたり、掘り出し物がないかメルクのナビ付きで探すのは結構面白かった。
いや結構じゃなくて、リアルじゃ絶対できない経験ばかりでめちゃくちゃ楽しい。
これだ、これなんだ俺が求めていたものは。リアルじゃ絶対にできないことを追求する……それこそが俺の求めていたもの。理想通りの旅の始まり。とんでもなくワクワクする!
そんな感じで宿を取り、メルクは一旦用事があるからとログアウト。
俺だけになったので、またレベリングに戻るのだった。
……まあ、レベリングと言ったら相変わらずアルマを放り込む作業なんですけどね。
だってあいつら少し刺激したらワラワラ湧いてきて圧殺してくるんだもん……だから先手打ってテロるしかないじゃん。
『マスターは誰に言い訳してるの?』
「さぁな、俺にもわからん」
音響爆弾が多少値は張るがそれ以上に収支が多い。俺が巣穴にポイってしてエアコン付きの機内で涼んでる間にアルマが全部処理してくれてるから堕落しそう。
はっ、アルマは男を堕落させるいい女……!
『喜んでいいのかわからない。とりあえず頬を摘む』
「ふぉいやー」
ああ、レベルがどんどん上がっていく……なんかモグラ叩きみたいな要領で楽しい……。
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リアルタイムで二日、【鉄人】がカンストしました。
大体転職してから、リアルタイムで五日ぐらい? レベル上限が100ということを差し引いても巣穴テロが予想以上に高い効果を発揮した。これもしかしてかなり効率の良い稼ぎ場所見つけたのでは……。
ちなみに【鉄人】に奥義はありませんでした。ここでも産廃具合を増していくんだね君ィ……!
そしてその中でも騒動は特になく……強いて言えばイカサマ使ってたカジノでアルマを悪用して恨まれない程度に金を稼いだり、素材を売って金を稼いだり、クエストでモンスターを正面から狩ったりして金を稼いだりしていた。
……金しか稼いでねえな最近。もう総資産は100万を突破したけれど、<超級>の総資産に比べればまだまだだ。
メルクなんてこの前バザールでポンと一億出してたし……俺もああなりたい。
それで、必然的に次のジョブをどうするかという話になる。
【斥候】? 【鑑定士】? 確かにそれも良いだろう、アルマにも汎用スキル取れって言われてたし。
だが下級職はまだ二つ空いている……そして鑑定係はメルクがいるからまだ必要ない……。
というか趣味に走りたいと思ったので、思い切ってカタログで色々調べてみたら、良さげなジョブが見つかった。
早速大型ジョブクリスタルで転職してっと……よし。
/
「そういえば君次のジョブ何にしたの?」
「【
「は?」
「マスター、理由、説明。……きちんと」
あっ、これきちんとした理由説明して納得させないと怒られるやつだ。
流石に趣味に走ったとは……言えないよね。
爆誕! ヤヨイ君生産職になる!
……まあヤヨイ君が選んだだけあって色々微妙なジョブですが。