男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>— 作:クーボー
□【
多分、この世界でも自分の<エンブリオ>に裏切られる経験した人は少ないんじゃないかなぁ。
アルマ、もうちょっと手心をお願い……ギリギリ言っててキツイんだよ。
「さぁキリキリ吐きなさい。なんで生産系にしたの?
いや別に怒ってるわけじゃなくてね? 理由を聞きたいだけなのさ。特にアルマちゃんに言われてた【斥候】とかを無視してなんで趣味に走ったのかを、ね」
あっ、趣味に走ったってバレてる。
ってちょっとまって、アルマきつく締め付けないで……息が苦しい……!
「違うんだ……俺も何も考えずに趣味に走ったわけじゃないんだ……きちんと理由があるんだ」
頭を動かせ。理屈を捏ねろ。
アルマに悟られないよう静かに……しかし素早くピースを組んで理屈を繋げ!
「まず、知っての通り生産系のジョブはDEXとMPが上がりやすい……そしてDEXは<マジンギア>、すなわち【ブラック・デンドロン】の動作系スキルにも影響する。特典武具の効果で、DEXも倍加するしな。
それに俺はアルマの質量回復分のMPをいつか手に入れるつもりだったから、決して趣味だけで就いたわけじゃないんだ」
まあ実際は何も考えず趣味で就いただけなんですけどね。
そんなことはおくびにも出さず、もっともらしい理屈をこねる。俺リアルからこういうの得意だからな、この程度お手の物よ。
「次に、なんで不人気って言われてる【金物職人】に就いたのかと言うとだな、それはアルマがいたからだ」
『私?』
そう。順を追って説明していこう。
まず、【金物職人】の対象範囲を調べてみると……金属加工全般だ。
はい、ここで問題です。同じ金属加工には【彫金師】、鉄の鎧も範疇に入る【
正解は、『範囲が広すぎて特化してる生産系の下位互換にしかならない』、です。
そして金属の造形加工などは【彫金師】で充分だったりするので、【金物職人】は不人気だ。不遇とまではいかないが、それぞれの用途に合わせてジョブを取ればいいのであまり取る意味がない。
あと、『金属を丸ごと整形しなければいけないので面倒臭い』という点も不人気の一因でもある。それに数多の工具も揃えなければならないし、初心者には金銭的な意味で色々とキツく、それぞれの分野のセンススキルを磨かねばならないから時間がかかるのだ。
だが……ここでアルマがいる俺ならば、その前提は覆る。
《クラッキング・オブ・メタル》によって金属のある程度の硬度や熱変動耐性を引き下げることが可能で、かつ《メタモルフォーゼ》によってどんな工具にでも変化可能なアルマならば、前提の問題点を完全に解決できる。
センススキルに関してだが、それについても心配していない。工具にも成れるアルマが俺から生まれたのだから、俺にもその方面に関して才能はあるはずだ。
【鉄人】と同じく、多方面にリソースを割きすぎたゆえの器用貧乏。
それをアルマと俺の才能で補うのが、俺のスタイルでもある。
……あと、取られる心配の少ない超級職が残ってるからだっていうのもある。【彫金王】とか、競争激しいしね。
と、まあこんな感じで即興ながらも中々によく出来た理屈を『前々から考えていた』という風を装いつつ披露する。
「うーん……ヤヨイ君って衝動的に動いてるけど考えるのも速いから、もしかして即興で考えたもんなんじゃないかっていう疑問が……」
ハハ、バレてーら。俺のこと理解してくれて嬉しくなるね、今この場は別として。
まあでも、一応筋道立てた理論ではある。間違っているわけでもないし、アルマとのシナジーもそこそこあるのでわりと良い感じだと思うぞ。
アルマの締め付けから解放され、ついでに二人からの謝罪を受け取る。
よしもう折檻は済んだな? あとは俺のターンだぜ。
「っていうわけで」
ハーイアルマ、ここに金属塊がありますね。
「ん。……まさか」
「……もしや」
頭が良いと助かるねぇ……。
さぁ、音響爆弾祭りは一時終了。
これからは——
「
なぁに1日50個作れば余裕余裕。
それに途中からシステムの補助はカットするから俺のやりたいようにやれるよ、頑張ろうかアルマ。
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1日目。
メルクに借りた作業場で作業開始。
大量の【SP回復ポーション】をお供に、アルマのスキルでやりやすいように硬さなどを調節する。そのあとは工具に変化したアルマを持ってシステム補助を付けて金属を加工していく。
あ、これ楽しいやつだと気付いたのは、2、3個目のシステム補助付きで【レシピ】通りの金属加工ができた時のことだった。
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2日目。
アルマもノリに乗ってきたようでガンガン金属を加工していく。【SP回復ポーション】を呷る速度が徐々に上がっていく。
10個目くらいから自分の好きなように造形を始めた。システムの補助は最小限だけれど、これもまた非常に楽しい。
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3日目。
金属加工の沼にハマる。1日10個は好きなように造れるようになり、もはや【レシピ】は紙屑と化した。それでもたまにスキルのアシスト確認で使うことはあったが。
この頃からジョブクエストを受け始めた。色々と作ったりしているけれど、概ね顧客の要望には合っていると思われる。
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4日目。
スキル発動中の動きをトレースして遊んでみる。アルマが成れる工具の幅が広すぎてやばい。
センススキルのレベルも上がっていく。ここ最近ログインしてからずっと金属しか加工してない。そういえばまだ始めてからリアルタイムで1日とちょっとか……ハハ、ログイン時間の暴力。
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5日目。
いつのまにか【金物職人】がカンストしてしまった。金属塊はまだまだ余っているのに。
仕方ないのでセンススキルのレベル上げを兼ねて【レシピ】の生産品を色々と造っていく。あー、でもこれ自動で腕が動くからあんまり楽しくないなー。
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6日目。
アクセサリーに手を出してみる。
わりとチャラチャラしてるシルバーアクセサリーを造ってみたり、市販のクズ鉱石を中に組み込んだイヤリングを造ってみた。アルマの《クラッキング・オブ・メタル》が金属に有用すぎて怖い。
あと、ジョブクエストなどで造ったアクセが、リアルで色々と美術品を見させられた影響かわりと好評なようで、期待株とか銘打たれて売られていた。ありがたい限りです。お礼にそれなりのスキル付けとこ。
……あっ、失敗した。
——そしてデンドロ内時間で1週間。
「センススキルがカンスト……」
これが廃人の力というわけか……!
下級職のレベル上限である5に到達した金属加工のスキルを用いて色々とアクセサリーを造りながら、俺はアルマと一緒にほくそ笑むのだった。
ちなみにお金が入ってくるのでそれを使って材料を購入している形である。これ本格的に生産職にハマりそう。
ちなみに現時点でヤヨイ君はセンススキルを飛び越えた技量を有しています。
なんでかって? スキルで動くオートモードの時の動きを完璧にコピーして自分のものに昇華させているからだよ。ハイエンド怖いね。
ちなみにリアルでも工作は得意だったので、そこら辺の適性も現れている。まさか筆が乗った結果1話でカンストするとは思わなかったけどなぁ!