男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>— 作:クーボー
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いやあ上々。
生産速度も質も高いからとわりと高値で買い取ってくれてさらに効率の良いジョブクエストも紹介してくれるし、生産ジョブって楽しいなぁ!
「レベルも30を超えてティアンの人とも仲良くなってきたし、充実充実」
「ん」
アルマが工具になってみせるとものすごい羨ましがってて面白かった。
工具は金属を相手にするので先っちょが潰れやすいんだけど、アルマの場合その心配はないからなあ。その上どんな工具にもなれるし、金属干渉スキルがあるから整形がしやすい。
そりゃあ本職からしたら喉から手が出るほど欲しいわな。俺だけのものだから貸しもしないけど。
「むふー」
はいはい。
けど……そろそろ、技巧だけじゃあどうにもなくなってくる。
今までは卑金属……鉄を中心に、クズ鉱石を織り込んでなんとかやりくりしていたんだが、そろそろ相手方から貴金属とを中心とした細工を要求されるようになってきた。
加工に関してはアルマもいるし問題ないんだけど……問題は物価だ。
「カルディナ、割と治安悪いんだよなあ」
そりゃ、色々と言われてるから察してたけどね?
んで治安が悪いってことは、マトモな商店が少ないって意味でもある。バザールに期待するのはほとんど博打に近いから除外するにしたって、宝石関係は俺は管轄外なんだ。
物の良し悪しくらいはわかるけど、それが適正価格なのかもわからん。まさかここまでリアルのツテは使えないし。
「……ということは、やっぱり?」
「早急に信頼できる……特に金属と宝石のどっちもツテがあるバイヤーを見つけないとまずい」
もちろんギルドの人間にも聞いたんだけど、にっこり笑顔で「それを話すことは禁じられておりますので」と切り捨てられた。多分そこも成長するための経験と考えてるんだろう、気持ちはわかるけど正直イラっとした。顔には出さなかったけどね。
「金はあるけどぼったくられて嫌なわけじゃないんだよ。賄賂としてなら喜んでぼられてやるけど、そうじゃないんなら払う必要はない」
「賄賂って、いいの?」
「必要経費さ」
世の中綺麗事で回るほど単純じゃない。裏での嗜好品、あるいは現金でのやり取りはある程度上の立場の者なら当たり前のようにやっている。
つっても、まだウチは健全な方だけどな。本当に必要な時程度でしか賄賂なんざ使わないし。
「賄賂に頻繁に頼るほど、真木は弱くないんだよ」
賄賂を使わずとも、相手の方から便宜図ってくれるからな。
「マスター、黒い。でもかっこいい……!」
「ありがと」
でも窮地が改善したわけではないので、アルマと一緒に考える。
メルクは……ダメだ、あの人宝石に微塵も興味がないからわかるわけがない。リアルでも着けられるような生活してなかっただろうしで、<超級>でも役に立たたないので除外。
ギルドの連中……先述の理由で除外。
……あれぇ、全滅しちゃったぞぅ?
「デンドロだと交友関係が……」
ま、まあ所詮まだルーキーだし? これから築き上げていけば良いし?
そんな風に自己擁護しながら、適当に屋台で果実水を二つ買い、アルマと歩きながら飲む。この世界だとセンススキルがあるからある程度の美味しさは保障されてるのが良いよなあ。
もちろん本当に美味しいものは天にも登る美味しさなので、こだわった分だけ味に出る。そういうところもこの世界の料理の良さだと思う。リアルだと高いもの使っても微妙になることがたまにあるからね……。
「そういえば、この世界の美食も堪能してみたいな」
「私も美味しいもの食べたい」
また楽しみが増えたぜ。
ちなみに俺はもちろん料理はできず、メルクも家事はできるが料理はド下手(砂漠進行中に作ったけどダークマターと化した)なので、俺たちで食材を集めて自分たちで調理するのは不可能だ。
「あら、もしかしてシェフもご所望?」
とりあえず蹴り飛ばして——
「マスターそれはない」
——みようとしたが、液状化したアルマに止められた。
そういやあの時はアルマいなかったから……結局避けられたけど。デジャヴ。
「……ええーっと……」
「マスターがごめんなさい。たまにアホになるから……」
おいブーメランぶっ刺さってるぞ。
……まあそれは良いや。とりあえず離してくれ、結構この体勢キツイのよ?
「ん」
「よ、っと」
くるりと回って、着地。
背を翻して、話しかけてきた女性を見る。
……ふぅん?
「それで、なんの御用でしょうか? 俺は貴女を、全然知らないんですけど」
「ああ、それもそうね。いきなり話しかけて悪かったわ。
それと、敬語はやめてちょうだい。同年代の人間に使われる敬語ほど、気持ちの悪いものはないから」
「ん、わかったよ」
……プラチナブロンドの長髪に、ルビーにような紅い瞳。違和感のないキャラメイク——さてはリアルフェイスからあまり変えてないな?
うん、まあ、かなりの美女ではあるだろう。けどいないレベルではないな。
あとなんか肩に、リスともウサギとも似つかない黒毛の愛玩動物が乗っかってるんだけど……アレ、<エンブリオ>?
「それで、あなたは誰? 俺たちの話を聞いていたらしいけど、何が目的なんだ?」
「そうね。それじゃあ早急に言うわ。
私の名前はラトラナジュ。端的に言うと【
それで、目的だけれど——あなた、私のビジネスパートナーにならない?
対価は——」
女——ラトラナジュは、手のひらをこちらに向ける。
するとそこから、光の粒子がわずかに漏れ出て、ひとつの宝石——ガーネットへと収束する。
「あなたが望む宝石を、いくらでも用立ててあげましょう。
どう? 組む? それとも、組まない?」
「……」
さて、ここで拒絶するのは簡単だ。
けれど、今彼女が生み出した——というより取り出したのであろうガーネットには強く心が惹かれる。
そして売るのではなく、ビジネスパートナーという単語を使ったからには、今後も取り引きするつもりなのだろう。
ならば俺を騙す意味はない。
アルマ、お前はどうしたい?
『……私はマスターの道具。マスターの決めたことには逆らわない。
けれど……否、だからこそ組んだ方がいいと、私は進言する。彼女は、私たちにとっての鍵で——私たちは、彼女にとっての鍵なのだから』
OK。
「決めた。組むよ、ビジネスパートナーを。
俺はヤヨイ。ヤヨイ・ベルダーウッド。今は【高位金物職人】。で、こっちが俺の相棒でTYPE:メイデンのアルマ。よろしくな」
「ん、よろしく」
「話が早くて助かるわ。よろしくね、二人とも」
そう言って、俺とラトラナジュは握手した。
この出会いが何になるのか——それはまだ、わからないけど。
それでもきっと、良いものだろうと……そう思った。
今回の章の裏テーマは、「出会い」です。