男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第7話 【美玉乱心 カーバンクル】

 □【高位金物職人(ハイ・ハードウェアマイスター)】ヤヨイ・ベルダーウッド

 

 とりあえずビジネスパートナーとしての契約を結んだ俺たちだったが、そもそも何をすればいいのか? 

 

 そう聞いてみたら、肩に乗っているウサリス(仮称)と自分用で二つ果実水を購入して戻ってきたラトラナジュは、笑ってこう答えた。

 

「私が提供する宝石と金属を使ってあなたが装飾品を造り、それを私が売るだけよ。【魅売】のジョブを持っていたティアンの爺様が先日逝去なされたからね。もうちょっと経ったら死んだことに気づいて争奪戦になるから、前もって準備しとこうってワケ」

 

「なんで死んだのに気付いてんだよ……」

 

「私、その爺様の下で働いてたから。気に入られてたから遺産もあって、おまえが【魅売】になるんだって言われちゃったからね。家族の人は宝石商じゃないし、近しい立場で宝石商だったのは私だけだったから」

 

 ああ、なるほど。どこの誰とも知らない輩に取られるよりは、気に入った美人に取らせる方がいいって考えたのか。現金だなあその爺さんも。

 まあできるなら、後継は美人の方が良いよね。それに、他にもそこで働いてる<マスター>はいたんだろうが、それでも気に入られてるってことは有能ってことなんだろうし。

 

「ご丁寧に【魅売】の就職条件を書き写した手帳もくれたしねー」

 

「おまえそれ、俺に言っていいの?」

 

「言いたきゃ言っていいわよ。私というツテを失うのが怖くないのならね」

 

 よくわかってらっしゃる。まあそれ除いても口は堅い方だから言わないけど。

 

「私ってわりと新参者だから、お得意様が少ないのよ。爺様の紹介で便宜図ってくれる人は多いけど、それでも本当に信頼できるビジネスパートナーはいないわ。

 だからあなたのような、上級職の金属加工に優れた職人で、その上で有用なツテのない人が必要なの」

 

「それでも大抵の人は【彫金師】の方に流れるだろうけどな。

 ま、いいさ。納得したし、俺は君から宝石を購入して造り、それをあんたを通して売る。それを【魅売】に君がなるまで続ける。それだけでいいとも」

 

 ビジネスライクな関係? いいじゃないか、余計な気を使わなくていい。

 そりゃ友人関係もいいけど、拗れたときは面倒だし。最初からこういう関係の方が後腐れなく終えられる。

 

「何言ってるの。私が【魅売】に就いたところで関係は終わらないわ。

 ……というかね、不人気職業に就いていながらこれだけの品をあの速度で造れる人間を手放すわけがないでしょう。あなたは確実に超級職に就ける。そのツテを手放してどうするの」

 

 あ、それ俺が造ったアクセサリー。あんまり材料の質は良くないから、その分細工にこだわった品だ。

 ……こだわった甲斐があったね、アルマ。

 

「ん」

 

「ってことは、この契約は俺が超級職になることも視野に入れていると?」

 

「当たり前よ。あなたもなりたいでしょう?」

 

「もちろん。ま、俺はもう一つ超級職は確保してるようなもんだけどね」

 

 ……なんか先に生産系の方を取っちゃいそうだけど、まあ何が就職条件に影響するのかわからないし、取っておいて損はないだろう。

 

「超級職複数? でもアレ効率悪いような……あぁ、戦闘系と生産系なら別か。というか、よくそんなジョブを確保できたわね」

 

「アルマがバグってるから」

 

 武器系だけじゃなくて一度覚えたスキルが消えないとかいうバグ。さすがにジョブリセットしたら消えるだろうけど、全武器種のレベルが一気に上がるとかよく考えなくても頭おかしいよね。

 本来ジョブ変えたらある程度消えるはずの系統別スキルがまるごと残ってる上にスキルレベルも結構高い。俺が変なジョブ構成なのを差し引いても非常に有用だ。

 

「そっちの<エンブリオ>(あいぼう)も中々に個性的のようね。けど、こちらも負けてはいないわ」

 

 そう言って、肩のウサリス(仮称)を指差す。やっぱり<エンブリオ>だったか。

 

「この子は【美玉乱心 カーバンクル】と言ってね。第六形態のルール・ガードナーで、私が【宝石商】になった原因にして要因よ」

 

「なんだそりゃ」

 

「……そうね。見てもらった方が早いかしら」

 

 ポケットからひとつ、宝石を取り出す。随分と小粒で、色も濁っていて良い品とは思えない。

 

「《ジュエル・ボックス》」

 

 刹那、宝石が手のひらから消えた。

 アイテムボックス、じゃないな。ってことはこの<エンブリオ>……カーバンクルのスキルか? 

 

「これがこの子のスキル、《ジュエル・ボックス》。宝石限定で重量制限もなく、多種多様な種類の宝石を分けて所有しておくことができる。その上等級ごとに仕分けもできるから、宝石に関しては私の右に出るものはいないわ」

 

「……確かに、宝石商になれって言ってるようなもんだな」

 

「他にもスキルはあるけれど、今実践するには少し面倒だから許してね。

 それで、これが要因だとすると……こっちが原因」

 

 再度宝石を《ジュエル・ボックス》から——今度は随分と綺麗な宝石を取り出して、肩に乗るカーバンクルに近づけた。

 途端それを手にとってむしゃむしゃ美味しそうに食べ始める。

 

 あー、大体わかってきた。

 

「……質の良い宝石がエサなのか」

 

「1週間にひとつでいいけど、最初の頃はそれでも大変だったわ。だから【宝石商】になるしかなかったのよ。元々リアルでも近い家業だったから、あまりノウハウは変わらなかったけどね」

 

 おぉう、ため息がすごい。

 肩のカーバンクルは宝石を食べ終えてご満悦の様子。ラトラナジュが手で撫でてやってるから、苦労してても可愛がってはいるんだろう。

 

「ん」

 

 ……あの、それは今撫でろということですか? え、カーバンクルに対抗心でも湧いたの? 

 まあいいや、なでなで。

 

「むふー」

 

「……そっちも苦労してるのかしら?」

 

 そうでもない……んじゃない、かなあ?




—情報限定開示—
【美玉乱心 カーバンクル】
TYPE:ルール・ガードナー
能力特性:宝石の完全管理・???
到達段階:Ⅵ
紋章:宝石で戯れる愛玩動物
固有スキル:《ジュエル・ボックス》・《ジュエル・??????》
必殺スキル:《?????(カーバンクル)
一匹の、小さな愛らしい二足歩行黒いリスのような、ウサギのような姿をしたモンスター。額に赤い宝石が埋まっている。
表に出ている間は所有者にアナザールール染みた力を与えるが、たまの食事として質の良い宝石を要求してくる。また紋章の中に戻ることを極度に嫌う。
宝石に特化した<エンブリオ>。またスキル数が少ないので、その分リソースの特化により上級でも非常に高い出力を誇る。

《ジュエル・ボックス》
宝石であるならば量を問わずいくらでも入れることができ、さらに種別・等級・サイズで分けることも可能。仕分けは自動判別。
ラトラナジュの【宝石商】としてのランクを引き上げた要因。ラトラナジュ自身の宝石の目利きもあって非常に高い性能を誇る。
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