男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第10話 次の位階

 □【高位金物職人(ハイ・ハードウェアマイスター)】ヤヨイ・ベルダーウッド

 

 とある宿の一室。

 

「なるほどねぇ」

 

 ズズ、とメルクが紅茶を飲む。

 

「10種類同時発動ねー……それなりに厳しいけれど、できないことはないと思うけれど。そもそも超級職の試練は、元々ティアンの人たち用のものなんだから」

 

 その紅茶を入れた美女——ラトラナジュが、トレイをテーブルに置いて同席する。

 どうせなら、ということでメルクと同じく俺よりデンドロ経験が長い彼女にも同席してもらったのだ。

 

「いや、今回の件はヤヨイ君が<マスター>だからこそ起こった出来事だろう。簡単にことが進みすぎたからねぇ。

 何事も楽に進めるわけじゃなかったってことさ。まあ世の中には、<エンブリオ>の性能だけで<超級>になってる人もいるんだけど」

 

「なんだかあなた、大学教授みたいね」

 

「残念、まだ学生だ」

 

 焼菓子を摘み、食む。あ、美味しいこれ。

 

「急がば回れ、なんて言葉があるけど、まさしく今回はその通りだったわけだ。ま、得たものはあったけど」

 

 アルマの進化のヒントだ。当のアルマは目を輝かせて焼菓子を頬張っているけれど。

 

「マスター、これ美味しい」

 

「そう? なら良かった、作った甲斐があったわ」

 

 え、これ市販品じゃないの? 俺が美味しいと思えるなんて相当だぞ。

 しかもさっき紅茶も入れてたし……というか普通に美味しいし。今時の宝石商ってそんなのもやるのか。

 

「うんうん、美味しい美味しい。僕は料理できないからわからないけど、料理人でも取ってるの?」

 

「取ってないわね。あくまで趣味の一環だから」

 

 ってことはリアルスキルか……カザミさんのパイとベクトルは違うけど、こちらも充分に美味しい。

 

「ま、取られる心配はないだろうから一ヶ月程度問題ないんじゃないかな。それよりは一ヶ月の間に試練をどうするか……それか数は少ないけれど取られるかもしれない生産系を取れるようにしよう」

 

「それがいいかもね。私も出来る限り支援するから」

 

「ん、ありがと」

 

 その後は普通にお茶会になり、出された菓子の感想を言いながら四人で楽しくティータイムを過ごした。

 

 

 /

 

 

 とりあえず【鉄人王】は完全に秘匿。俺が就けるまで色々と方法を試すことになった。

 まあバラされてもあんなジョブ就く奴を見つける方が難しいけども。

 

 今もミスリルで装飾品を造りながら、アルマと世間話をしている。

 

「そういえば、そろそろ進化の時期だよな」

 

『ん。またあの頭痛は嫌だけど、進化のためなら頑張る』

 

「なんで頭痛なんて変な予兆に……」

 

 ……ん、そうか。

 次が上級進化ってことは……少し進化が派手になるかもな。

 

 TYPEも変わるかもしれない。だって明らかにチャリオッツじゃアルマを表し切れてないし。

 

「うし、完成。2個目いくぞー」

 

『ん』

 

 上級になったらリソースが大きく増えるっていうし、出来ることも増えるだろう。

 試練の時に経験したあれも、確実に反映されるはずだ。

 

 それが楽しみでならなくて……自然、細工の速度もどんどんと上がっていく。コンディション最高だぜ。

 

「【高位金物職人】がカンストしたら、他のと色々併用できるジョブに就こう」

 

『ん。【鑑定士(アプレイザー)】?』

 

「それがいいと思う」

 

【鑑定士】は、《透視》、《看破》、《鑑定眼》という有用な汎用スキルを三つ取得可能な下級職だ。しかしレベル上限が低く、それ以外にも高いレベル上限で取れるジョブがあるため<マスター>には人気がない。

 

 だが俺が求めているのは同時発動できるスキルを多く取得できるジョブ。

 だからこそ、下級職が一つ空いている今……それこそが俺の最善だと確信している。

 

 ……完成。

 

【金物職人】の超級職への道は、近い。

 

 

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 造る。造る。造る。

 

 

 /

 

 

 今の俺ならば、今まで造っていたものよりも、もっと良いものを造れる。

 その確信を胸に、ラトラナジュから数種類の宝石と【高品質ミスリル】と……伝説級金属(オリハルコン)を購入した。どこから仕入れてくるのかはわからないけれど、助かるのでありがたい。

 

 

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 造る。造る。造る。

 

 

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 もう少しで、レベルがカンストする。ジョブクエストももっと高難易度のものを紹介されるようになり、ラトラナジュがウハウハらしい。『あと少しで条件を達成できるわよ!』と、興奮した様子で言われた。

 俺も頑張ろう。

 

 

 /

 

 

 試練の時から、1週間が過ぎた。

 世間ではようやく【魅売】の逝去が周知されることとなり、どこぞの商人が慌ただしく動いているのが見えた。

 とっくに出遅れてるのに気付かず宝石を買いあさっている商人が少し哀れに思えたけど、ラトラナジュの悪い顔が怖くて何も言えなかったです。

 

 

 /

 

 

 ラトラナジュがついに【魅売】の条件を満たし、試練に挑むらしい。

 けれど手記によればまだ不安要素が残るらしく、ならばということで俺が作り貯めていた細工を放出して応援した。いつも面倒な取り引きなどを担ってくれているお礼ってことだ。

 

 彼女は俺に礼を言って、早速売り捌いた。俺の名前はわりと有名になっているらしく、俺の元にも結構なお金が舞い込んできて中々に嬉しい。

 ただ宿にまで訪ねて来られると困る(来客対応キツイんだけどとメルクから苦言を受けた)ので、もっとセキュリティー意識の高い宿に移った。

 まあ【フランケンシュタイン】の中で過ごせばいいんだろうけど、アレって結構見た目キモいし……フランクリンさんの【パンデモニウム】ほどじゃなくてもね。

 

 

 /

 

 

 なんだか最近テンションがリアルに寄ってきているような……。

 

「落ち着いてきてるのかもねー。まあ多分元に戻るだろうけど」

 

 失敬な! 

 

 

 /

 

 

 造る造る造る造る造る造る造る造る造る造る造る造る造る造る造る造る造る造る——ハッ! 

 

『マスターが正気に戻った!』

 

 

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 あーーーーっっっっっ! 

 だらぁぁぁぁぁほいさぁぁぁぁぁぁ! 

 

 音響爆弾テロ! ワームは死ぬ! 

 

 ずっと部屋にこもってたら疲れるんだよー! 

 意味もなく【ブラック・デンドロン】を走らせてぇ、目に入った巣穴にテロってお金と素材がたっくさん! 

 

 たーのしーいなー! 

 

『マスター……ついに、頭が……いたい……』

 

 おうそれは俺の頭がおかしいってことですかね? 

 失敬な疲れているだけだともー! 

 

『いたい』

 

 …………あっ。

 

『あたまがいたい』

 

 えーっと、これはもしかしなくても……アレですか? 

 

『はやくねたい』

 

 お、おう、待っててアルマ。

 

 全速力でBack to the home! 

 

 アルマが紋章の中に戻って今紙装甲だから攻撃しないで——てめえ好機とばかりに攻撃してくんな! 

 

 

 /

 

 

 次の日。

 

 アルマは、上級へと進化した。




シリアスを維持できない男。
今回あんまり書けるところ少なかったので、ダイジェストでお送りしました。
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