男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>— 作:クーボー
□【
「とりあえず上級進化と、必殺スキル覚醒おめでとー。いやあそっちの必殺スキルもデタラメなようで何よりだ」
進化して必殺スキルを覚えたと、そう報告したメルクから、そんな風に祝福された。
詳細も報告していて、実際に使うときに起こりうる想定外のデメリットを予想するために知恵を借りているのだ。
「いいわねー、そっちの必殺スキルは。あんまりコストも重くないし、安定して強いし」
一方祝福はしてくれてもそうやって愚痴ってるのがラトラナジュである。
カーバンクルはスキル数が少ない分強力なのだけれど、必殺スキルはそうでもないみたいだ。いや、強力な分コストがデカイのか?
「そう言うなよ。そっちだってどうせコスト解決したらデタラメなことできるんだろ?」
「まあそうだけれどー。コストさえ用意できれば、<超級>でも相手できるくらいには強いけどー」
でもそのコストが問題なのよー、とテーブルに突っ伏す。この人交渉とかしてる時以外子供っぽいよな。それだけ心を許してる証拠なんだから嬉しいけどさ。
「ラトラナジュちゃんは大変だねぇ。僕の必殺スキルはコストとかあんまり必要ないし。
えっ、【禁忌王】最終奥義あるのか。多分ホムンクルス暴走とかそんなんだろうけど。
「ちゃん付けって……私一応20超えてるんだけど」
「まあいいじゃない。さん付けも呼び捨ても違和感あるし。……そういえば、なんだかんだ言って僕たちみんな成人してるのか」
「そーなると、俺が最年少なのかな。入院してたから成人式やってないけど」
そんときは多分リハビリしてたはず。
「ヤヨイ君ってわりとポロポロ個人情報もらすわね……」
「それ僕も前に言ったんだけど、バレても問題ないんだってさ。ヤヨイ君リアル社会的強者だし」
「いえーいリアルブルジョワジーでーす」
「テヘペロするな、似合ってるから余計にキモい」
やーん手厳しい!
/
メルクが買い込んでいたらしい使い捨てジョブクリスタルを使って、久しぶりに【鉄人】に戻った。まあ感覚的にはほとんど変わりないけどさ。
とりあえずということで、必殺スキルを試し打ちすることにする。
「説明文からして街中で使ったら大迷惑だし……」
多分五倍くらいだろうけど、それにしたってあの質量なら家くらい押し潰せる。俺とて指名手配なんて喰らいたくないんだ。
目標として……ワームの巣穴にアルマを叩き込んで圧死させるくらいで行こうか。
大丈夫、もしも仕留めきれなくても音響爆弾はありったけ用意してあるからね!
周囲の人影がないところを選んでいるので、間違ってキルすることはないだろう。あとスキルバレも。
……多分。予想以上に質量が多かった、とかいうオチじゃない限り。
『マスター、それはフラグ』
うっせ。
さあ使うぞ、用意せよアルマ!
『ん』
確か必殺スキルは宣言しなければ使えないらしい。まあ必殺技なんだからロマンを求めるわな。
ちなみに【ブラック・デンドロン】にも「音声照合搭載してロマン追求しようぜ!」という案が出たらしい(何だそれかっけぇ)が、余計な武装を積む訳にはいかなかったのであえなく潰えたという経緯がある。畜生!
このやり切れなさを力に変えてぇー!
『「《
——刹那、アルマがわずかに光ってちょっと待てぇ!?
うお、ちょ、うわ、巣穴から溢れて、うわああああああっ!?
『マ、マスター! 量が、多すぎてー!』
棒読みで叫ばないで違和感がすごおおおおああああああ!!!
ちくしょ、このまま自分の<エンブリオ>に圧殺されてたまるかっつの!
俺の思考も全部制御に回す、並列思考処理でなんとかするからアルマも増えた演算能力に振り回されないよう踏ん張れ!
『ん! 【
TYPE-βは自己制御に特化させた状態、かつての情報取得に特化させた状態がTYPE-αと称する!
即興だけど中々かっこいいんじゃないか? さあ完全制御を始めよう——!
/
ワームが全滅し、俺もスキルを切って情報を整理する。
……五倍どころじゃない。通常時の第四形態が【ブラック・デンドロン】の全身を覆い、その上で武装を生やせる程度なのだが、あの量はワームの巣穴を一瞬で満たした上で上に溢れ出したほど。
明らかに十倍以上。アルマが混乱したのは、それだけ一気に増えたことによる急激な演算能力の上昇で得た圧倒的な情報密度への混乱だ。アルマ自身のAIが想定していなかったことにバグったとも言える。
そしてその上でスキルによる補正が乗り、攻撃力は表示されているパラメータ以上だ。
俺のアクティブスキルも同時に発動できるから、《ストロングホールド・プレッシャー》で攻撃力が爆発的に上昇するし、単純に量が多いから応用性は非常に高い。
MPも生産系に就いているおかげである程度補えるし、超級職になればもっと長い時間稼働できるだろう。
SPに関しては……まあ、頑張ってやりくりするとしよう。
ただ、結構な誤算だったのが……。
『……ますたー、ねむい』
「……まあ、あんだけ演算能力を行使すればな」
……短時間でこんだけ消耗するか。連続使用は厳しいかな。
回数を重ねていけば、日に何度も発動できるようになるかもしれない。クールタイム表記もなかったのは、ここら辺の精神の消耗を吟味してのものだったのか?
何にせよ、実戦でいきなり使って精神疲労とか目も当てられなかったから、この実験は有用だったわけである。
「それじゃあ帰るか。ふかふかのベッドで寝たいだろ?」
『んー……』
アルマを紋章に戻し、全速力で街へと駆け抜ける。
さて、今日の細工はお休みだけど——どうなるかな?
/
コルタナに戻って見ると、にわかに人々がざわついていた。
見れば商人たちが悔しそうに口を歪めていたり、一見冷静そうに見える<マスター>も瞳の奥に憎々しげな炎が灯る。
ああ、これはと理解して——広場にて、街の市長に微笑みかけながら握手している彼女の姿を見つける。
ん、メルクさん発見。着ぐるみ着てるけど。
「お、ヤヨイ君。ちょうどいいタイミングだねー。今最高の見世物があるよー」
「大まかには察してますけどね」
そりゃあ、コルタナでも大規模な商会を経営していた爺様がお亡くなりになられて、そのジョブを継ぐ人間が現れたらこうもなるよな。
そうして少しの時間が経って、市長との対談を終えたらしい彼女が、こちらを見つけたらしく悪戯な笑みを向けた。はいはい、集中集中。
少しの世辞などを言って周囲の空気を温めた後、彼女は静かに声色を変える。
『私は、先代コーディナル商会会長にして先日ご逝去なされた爺様……ロッド・コーディナル氏からこう言われたの。
“おまえが儂の後を継げ”、とね』
……あっ、よく見ると身体のラインが浮き出るドレス着てる。普段はわりとぶかっとした服を着てたからわかんなかった。
わりとシックで、周囲からの視線をものともしてないから多分慣れてるねあの人。……っていうかスタイルいいな。アルマがいたら胸に顔沈めそう。メルクも好きそうだ。
『だから、ええ。皆様も察しているでしょうけど、改めて宣言させていただくわ』
『私は、【
『
これよりあなたたちの良き商談相手になるから、覚えておくといいわよ?』
そう言って彼女は、
——
祝・ラトラナジュ超級職ゲット。
次は君だ、ヤヨイ!
ちなみにラトラナジュのスタイルはリアルとまったく同じです。
170前半、胸大きい(アルマが頭を沈めて余裕がある)、その他諸々。
簡単に言うとメルクのド