男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第13話 雑談他色々

 □【鉄人(テツジン)】ヤヨイ・ベルダーウッド

 

 とあるバーの一室。

 

「と、言うわけで数時間くらい前に【魅売】になったラトラナジュよ。これで私も超級職の仲間入りね!」

 

 ふんす、と大きい胸を張るラトラナジュ。ぱちぱちー。

 

 あの後、広場での演説を終えた彼女は、市長の護衛に連れられて何処かへ消えた。まあ多分会食でもあるんだろう、と俺たちは思っていたんだけど、なんか黒服の大柄な男が俺たちに紙をくれて、このセキュリティー意識に優れたバーへの道を示した。

 

 それで行ってみたら、普通に彼女がいたわけで。

 

「なんかさ、普通ああいうのの後のって市長と会食でもなんでもするもんじゃないの?」

 

 メルクがちびちびとオレンジジュースを飲みながら(おまえ酒飲めないのか)そう言う。

 ちなみに俺とラトラナジュは普通に高級酒です。ラトラナジュもそんな飲めないのか酒精薄目だけど。

 

「んー、そうでもないんじゃないかな。元々ある程度の商会を率いてるんならともかく、ラトラナジュはフリーだ」

 

「それに<マスター>は、不定期に消えるからね。責任ある立場には就きにくいし、そもそも今じゃ私が客を選ぶ方よ。あちらの機嫌に合わせて会食するなんて無駄なことはしないわ」

 

 ぶっちゃけあの市長が敵に回ったところで、質のいい宝石仕入れたいんなら【魅売】のネームバリューがあるラトラナジュを頼るしかないからな。他の宝石商じゃ型落ちするし、他の独立都市国家の長に舐められないためにも、むしろ市長がラトラナジュの機嫌を伺わないといけない立場にある。

 

「あー、ここは商業都市だから商人の方が立場強いからかー。<マスター>なら忙殺も意味ないし、とことん商人系<マスター>って厄介なんだねえ。ラ・クリマのクソ野郎もそうだけど」

 

「ラ・クリマ……【魂売(ソウル・バイヤー)】ね。何かあったの?」

 

「僕がゼクスに……ゼクスが<IF>を結成したお祝いで送り届けた【機械天使(ヴァルキュリアル)】をイデアにされた」

 

 ゼクス、ゼクス・ヴュルフェル。【犯罪王】。メルクの交友関係ってどこまで広いんだよ。

 いやそうじゃなくて……<エンブリオ>で改造されたのか。それなら情が深いメルクがブチ切れるのも理解できるけど。っていうかメルクってわりとグレーゾーン入ってるよね? 

 

「お互いの行き違いによる事故だったらしいけど、それにしたってちょっとないわー。ゼクスに対しては後で金一封と<マジンギア>送ったけど、もうラ・クリマの近くにホムンクルスは送りたくないね」

 

 へっ、と不貞腐れた様子のメルク。

 

「……そういえば、ヤヨイ君ってメイデンの<マスター>だから世界派よね? メルクって結構グレーゾーンに足踏み込んでるけど、そこは別にいいの?」

 

「別に。俺の知ってる人に迷惑かからなかったらどうでもいいです」

 

 人間、関わりのない人間の被害なんて聞いた次の日には粗方忘れている。メルクが犯罪クランに出資してようが、別にそこは気にするところじゃない。

 

「っていうか、メイデンの<マスター>のパーソナルってアレだろ。人の命をリアルと等価に捉える、ってやつ。ってことは別に全ての命を大事にするわけじゃないってことだ。

 俺って結構ドライだから、目の前で起きてる悲劇をどうにかしようとは思っても、遠い地で誰か大勢死んでも義憤を燃やしたりしないさ」

 

 さらに言えば間接的な原因に責任を追及する気はない。直接的な原因だけが俺が不愉快に思う対象だ。なので、あくまでも輸出などの裏方であるメルクが何してようが直接なんかやらかさない限り別に俺が何を言うわけでもねえし。

 

「なるほど。メイデンの<マスター>も、色々あるのね。レアカテゴリーは伊達じゃないってことか」

 

「……で、件のアルマちゃんどこ行ったの? アルマちゃんこういう雰囲気好きでしょ?」

 

 あー。

 

「今宿で寝てるよ。必殺スキルを使ったら急激に眠くなったらしい。多分慣れていけば改善されるだろうけど、乱用はできないな」

 

「まあ、聞いた限りじゃクールタイムもないみたいだからそれくらいのデメリットは妥当かもね」

 

「やっぱり必殺スキルってクセが強いわー」

 

 

 /

 

 

 そんな感じで酒を交えつつ、雑談を肴に呑んでいたのだが。

 

「さぁて、そろそろヤヨイ君も超級職になりましょうか!」

 

 なんか酔ってない貴女。あと超級職ってそんなポンポン取れるもんじゃないのよ? 

 盛大なブーメラン? 一回試練失敗してるからいいんだよ。

 

「私も色々とコンタクト取ってねー、生産系超級職の条件に当たり付けてきたのよー!」

 

「わっ」

 

 メルクの方に崩れ落ちた。ので、俺たちは静かに目線でやり取りする。

 

 ——おめーが介抱しろよ。利得だろ。

 

 ——そりゃドストライクだけどねぇ!? っていうか彼女友達だよ!? 

 

 ——友達から恋人に、なんて実例いくらでもあるっつの。いや別に推奨してるわけじゃないけど、この中で酒入ってないのおまえだけだから。

 

 メルクとラトラナジュがくっつこうがくっつくまいが俺は気にしない。変わらず友達でいよう。

 

 ただ見てる限りお似合いなんだよなー、料理ぜんっぜんできないメルクに比べて料理上手だし、メルクが宝石なんてわからないと常々言っているけれど綺麗なものは綺麗だと言える感性があるから気が合うようだし。

 ……これは、親戚面を装着してお見合いをセッティングすべきか……? リアルで。

 

「たくさん作るのよー……1000個以上作品作ってぇ、付いた価値が飛び上がるくらいの一品を私が売るのよー……」

 

 んー、寝ながら就職条件話してるぅ。ありがとー。

 

 ……あっ、寝息立てた。

 

「メルク、GO」

 

「……覚えとけよヤヨイ君。童貞にこれは辛いからなァ……!」

 

「残念ながら俺経験あるから」

 

 お得意様のね、ご令嬢にね……はは……襲われたわ。

 今でもそことは取引しているが、令嬢は俺が入院している間にどこぞの家に嫁いだらしい。わりと富豪層遊んでるからなぁ。一夜限りの夢とか言われたし。

 

「ちくしょうめ……ふぅ、それじゃあお休み。あと僕多分、明日はリアルタイムで一日卒論でインできないからよろしく」

 

「はいはーい、了解しましたルイス君」

 

「うん……なんて?」

 

 はっは、すでに調べ終えているぞ君のことはな。ルイス・テレジア・フォーサイス……! 

 

「悪用するつもりはないんで安心してください。近いうちにお迎え(・・・)に上がるかもしれませんけど」

 

「怖いなあ……まあそこらへんは信頼してるけど。じゃねー」

 

 ……自然な流れでお姫様抱っこするメルクも充分モンスター童貞だと思いますよ? 

 

 さて……それじゃ、明日は超級職でも取ろうかな。




メルク190近い長身なので……170ちょいの女性一人くらいお姫様抱っこできます。
運動神経皆無だけどスタイル保つために運動してるので。

なお作中でしれっとゼクスと友好関係にあることが判明したメルクさん。
二人……というか【破壊王】交えた三人の関係の始まりは、とある神話級最上位クラスの<UBM>の討伐戦の時です。
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