男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>— 作:クーボー
□【
昼はワームを狩り尽くしー。
砂漠のボスを圧殺だー!
/
□【
夜は修復作業してー。
いっぱい造ってお金とレベルを丸儲けー!
/
うーん。
「なんだこのレベリング」
昼にモンスターを狩りまくり、夜にアイテムを直し装飾品を造る。それをラトラナジュが売り、俺たちのパーティーはものすごく儲かっている上にラトラナジュと俺のレベルが上がる上がる。
それにENDも着々と上がってきてるし、いい感じ。
「ログイン時間の暴力だからねぇ……羨ましいなあ、僕大学行かないとだから」
「あなたもショートスリーパーだからまだマシでしょうに。私なんかこの後ハゲオヤジとの交渉が待ってるのよ……辛いわー」
「ちなみに誰?」
「顧客情報漏洩禁止」
そりゃそうだ。っていうかこれで言ってたら信用できないし。心配はしてなかったけど。
「っていうか、二人ともアメリカ在住なの?」
「そうだねー」
「うーん……時期によって変わるけど、今はアメリカに住んでるわ。財政界のお偉方に御目通りしてるとこね」
へー。ってかラトラナジュそれって普通にイイトコのお嬢様なんじゃ……。
「ふふん、これでもロレーヌ女学院卒業生よ。大学は商業専攻だったけれどね」
「あー、あの礼儀に厳しいところか。ってことはラトラナジュってフランス人?」
「一応ね。世界中に行ってるから、もう私がどこの国の人間なんて気にしてないけど」
たまにある症状だ。俺も一時期、ドイツとのクォーターで世界中飛んで日本にいるのなんか週末くらいだったから「俺日本人って言えんのかな」なんて思ってた。
今はもう人種的なアレだって割り切ってるけど。
「……うーん、知り合いに三人ロレーヌ女学院がいるなんて結構世界は狭いなー」
「三人?」
「フランクリン……あー、うー、んんー……まあ僕の幼馴染もロレーヌの出身なんだー。僕フランスに住んでたことあったし」
両親の見栄的な問題でー、とイギリス人のメルクが言う。こいつイギリスで生まれてフランスに住んで今はアメリカ在住かよ。
「……へぇ」
おっとラトラナジュが半目になった。幼馴染とか強敵だからな、大概負けてるけど。
「……あっ、勘違いしてるかもしれないけど、アイツとはそういうのじゃないよ。もう絶対ムリ、友達としては付き合えるけどアイツめちゃくちゃ性格悪いから彼女としては論外だし」
「……そこまで断言されると、いっそ見てみたくはあるわね。どんだけ性格悪いのよ」
「んー……例えばの話、だけど」
メルクはクッキーを一つ摘み、ぱきりと割る。
「もしもアイツの計画を少しでも邪魔したら、相手の心が折れるまであらゆる手を使って粘着してくる……って言えばいいかな。前にアイツをデンドロ内で殺したやついたんだけど、そいつフランクリンの改造モンスターに殺されまくってデンドロ引退したらしいよ」
「怖すぎねえ?」
伊達に一国のトップクランのオーナーやってないってことか。メルク曰く基本トップクランのオーナーは終わってるらしいけど。
「私も報復は忘れない主義だけど、それはちょっと引くわー……」
「ま、そんなわけだからぶっちゃけアウトー。アイツ自身劇的な運命の出会いかまさないと結婚する未来が浮かばない」
わぁお、辛辣。これが幼馴染の歯に衣着せぬ言い方か。
……幼馴染と言えば、俺も一応一人いるな。
忙しくて会えなかったけど……会ってみるのいいかもね。
/
それから数日の時が経って。
俺もラトラナジュも順調にメインジョブのレベルを上げて……俺は【
《操縦》などのスキル上限が解放された影響で、俺自身の地力や【ブラック・デンドロン】の性能も上昇している形だ。
というか、それくらい性能が上がらないと俺の反応について来られない。たまに反応しても動くのが遅かったりでわりと不満だったから非常に嬉しいぜ。
「マスターがおかしいこと言ってる……」
うっせ。
メルクはエンチャント付きの宝石に悪いことを思いついたらしく、ラトラナジュと相談しながら新規開発を進めているらしい。果たしてどんな化け物が出来上がるのか……。
まあそんな感じで、俺たち三人のデンドロ生活は非常に充実している。
ってなわけで、だ。
——そろそろ、移動しようと思う。
コルタナから……ドラグノマドへ。
前々から考えていたことだ。
コルタナは確かに、カルディナでもトップクラスの街と言える。<マスター>の初期ログイン地点という利点を活かした、数々の交易路を開いている。
けれど……それ以上にキナ臭いし、周囲の目が煩くなってきた。
どこからか俺が二つ超級職を得たという情報が漏れたらしく、職人や前衛から恨みがましそうな目を向けられるようになった。いやあんなん取れても俺以外役に立たないからな、と言ってあげたいけれど、
まあ、人の嫉妬に歯止めは効かない。こういうのは大ごとになる前にさっさと立ち去るのが吉だ。リアルならまとめて握りつぶしてもいいんだが、こっちだとそこまでの権力はないからなー。
……あと、ダグラス・コインだったか。
アレはダメだ。他者に破滅を振りまき、最期には周囲を含めてまるごと自滅する、一番関わっちゃいけないタイプの俗物だ。
ああいう手合いと関わってると破滅が移る。ラトラナジュは成功する人だからあんなんに関わらせちゃいけない。人を見る目なら俺は自信があるぜ?
……そのためには、やることがあるんだけどな。
/
「え? 勧誘?」
「そう、勧誘。俺たちのパーティーに入ってくれないかな?」
当たり前の話だが、ラトラナジュは【魅売】という宝石商の中でも最高位に属する存在だ。
そんな彼女が、今まで築いてきたコネクションを捨てて俺たちのパーティーに入ってくれるかどうかは賭け、なんだけど……。
「え、別にいいけど……でも条件は一つだけ付けるわ。それを叶えてくれたら喜んで入るわよ」
「……おぅ」
それは嬉しいけど……うーん……こんな簡単に済んでいいのだろうか。色々と。
「あと……すまないけれど、メルクは席を外してもらっていい?」
「えぇ? まあいいけどさ……仲間はずれはヤだから後で事情話してねー?」
はいはい、と手を振って、メルクが席を立つ。
……同時にアルマを薄く拡散させ、盗聴用ホムンクルスがないかどうか確認する。わりとメルクって空気読めないからな……。
「……盗聴器なし、と。はい、続けて」
「ありがとう。それじゃあ続けるけど、まあそこまで難しいことではないわ」
ラトラナジュは一息、コーヒーを飲む。
「私とメルクが深い関係になれるよう、サポートしてくれないかしら?」
「オッケー承知した、メルクを売ろう」
——どうやらメルクもラトラナジュの好みドストライクだったようで。
こうして俺は、メルクを売ることで、心強い仲間を得たのだった。これこそ交渉だよねぇ!