男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第19話 出発と出オチ

 □【鉄人王(キング・オブ・アイアン)】ヤヨイ・ベルダーウッド

 

「なぁにこれぇ」

 

 なんか目の前に、しっかりとした造りの馬車があるんですけど。

 

「あら、知らない?」

 

「生憎と馬車はあんまりね」

 

 御者台に立ったラトラナジュが自分の手で馬車をペタペタと点検しながら、「爺様からの贈り物だけれど、壊れてないかしらねー」とつぶやいている。

 ちなみにメルクは色々と買い出しで市場に行っているので、ここにはいない。

 

「ドラグノマドに行くんでしょう? 私やメルクはログルーラ(ログアウト&ログインルーラの略)があるから問題ないけど、ヤヨイ君一人置いてくわけにはいかないし」

 

「でも、メルクの【フランケンシュタイン】が……」

 

「風情がないし、あんなド派手な四足歩行工場で移動するなんて襲ってくれって言ってるようなものでしょう」

 

 確かに。風情がないのは道理だ、そっちの方が楽しそう。

 

「御者は交代制ね。私の上級職の【大商人(グレイト・マーチャント)】には《操車》スキルもあるから動かせるし、ヤヨイ君も《操縦》があるから。メルクは何もできないけれど……そうね、ホムンクルスを使って護衛かしら」

 

「へぇ……ってかなんだこの馬車、ひっろ」

 

 中に入ってみたが、明らかに外見と異なる広さだ。【フランケンシュタイン】にも施されてた空間拡張かな? 

 

「爺様が私にくれたものよ。【大商人】就職祝いだー、って言って買ってもらっちゃった。

 レジェンダリアの妖精工房で造られた現行の最新型魔法馬車でね。これを私の《グレイト・キャラバン》で強化して砂漠を行くわ。砂漠も行けるように車輪も取り替えてあるし、っと」

 

 点検が終わったのか、御者台から飛び降りる。

 爺様甘々だな! わかってたけど! 

 

「ヤヨイ君の人物眼は信頼してるから、出来るだけ早くコルタナを出ましょうか。それにあのダグラスって市長、私の身体を舐る(ねぶ)ように見つめてきて気持ち悪かったのよねー。リアルでも散々喰らってるけど、未だあの目は慣れないわー」

 

「あー、確かになー。上位層ってそっちのケでもあるのか俺でも背筋が凍るような目線向けてくることあるし。一回ベンチャー企業の社長が一回ホテルに行かないかとか誘ってきてビビったわ、そのあとぶっ潰したけど」

 

「私はビジネスライクに付き合っていくけど、あなたもあなたで大変なのね……」

 

「わりとな。……周りに見知らぬ人間ばっかのパーティーは気をつけた方がいい、酒飲まされてお持ち帰りされたらその後の計画も全部壊れるからな。ビジネスライクも相手をよく観察しろ、勘違いして迫ってくる馬鹿はどこにでもいる。俺みたいなすでに完成した地位があるなら別だけど、ラトラナジュみたいなのをどうにかしようとする手合いはどこにでもいるぞ。嫉妬情欲なんでもありだ、気をつけた方がいい」

 

「……為になるわね」

 

「ま、もうちょっと経ったら俺の庇護下に入ると思うから安心しなよ。受ける気があるならウチの教育係貸すし。俺も友達が喰い物にされるのは見たくないんでね」

 

 ……なんか急に政治的な話になった。でもラトラナジュって手際は良いんだけど甘いっていうかお人好しっていうか、ある意味のほほんとしてメルクとお似合いなんだけど心配になるっていうか。

 俺の友人だって情報が伝われば阿呆な真似する馬鹿も減るだろう。それでもいないと言い切れないのが、集団心理の怖いところだけども。

 

 

 /

 

 

 ともあれ、そんな感じで早急にコルタナを発った。

 慌てて他の商人とかが引き止めようとしてたみたいだけど、ラトラナジュはにっこり笑顔で全部ぶった切ると馬を取り出して速攻で砂漠に出た。せっかくなので思いっきり手を振って煽りましたとも。

 

「これでコルタナは代々抱えてきた【魅売】と、超級職を二つ得た規格外を失ったわけだ。一応<超級>もかな?」

 

「ま、<マスター>だから好きに移動できるし、別にいいんじゃねー」

 

「そうねぇ。早いとこドラグノマドに行きましょー」

 

 そだねー。

 

 

 /

 

 

 ガタンゴトンと馬車の旅〜。

 

 すーぴーすーぴー馬車の旅〜。

 

 わーきゃーわーきゃー馬車の旅〜。

 

 肉食女子(おおかみさん)の馬車の旅〜。

 

 草食男子(こえたひつじ)の馬車の旅〜。

 

 親戚面(つまりはおれ)の馬車の旅〜。

 

 

 まあそんな感じで、気ままに馬車の旅を楽しんでいたのだが。

 

「……ん?」

 

 レベル上げのため《透視》を使っていたのだが、その途中変な反応を捉えた。

 

 んだあれ……あー……他の<マスター>が戦ってる……? 

 あっ、燃えた。ってかあれローパーか? 

 

「燃やすローパーとか知らないし……もしかして、<UBM>?」

 

 へぇー。

 ほほう……遠距離に翻弄されてるな。あっ、でも触手伸ばせば燃やせるのか。いや、雷撃で炎上させてもいる。

 

 

 …………むふっ。

 悪いこと思いついた。

 

 

「アルマ、ちょっと試してみたいことがあるから空に行くぞ」

 

「ん」

 

【ブラック・デンドロン】に乗り込み、ラッダリトを起動させて空に登る。

 

 驚いているメルクらの目を受けながら、俺は高度200メテルほどまで上昇する。

 直下にソレがいるのを確認してっと。

 

「《我は原初の道具に通ず(アルマトゥーラ)》」

 

 

 ——さてここで問題です。

 小山くらいある液体金属を球体に固定して、空気抵抗を極限まで軽減したものを高度200メテルの高みから落っことすと……どうなるでしょうか。

 

 答えは——これだ! 

 

 

 /

 

 

 ソレは、久方ぶりの地上に気分が高揚していた。

 大地の中で魔力を吸収し、自己進化に努め……落ちてきたナニカを吸収して、自分が格段に強くなったことを感じ取っていた。

 

 自分は強い。この通り、襲ってきた奴らを簡単に殺させるのだから。

 

 そう思うと、なぜか周囲が暗くなる。

 

 はて、まだ昼だったはずだが、と上を見ると——

 

 ——そこには、自らの視界の中で徐々に大きくなる、大きな球体の姿があった。

 

 一瞬思考が停止して——その一瞬が、ソレの最期の見た光景となったのだった。

 

 

 /

 

 

【<UBM>【魔道霊障 スリッドテンタクル】が討伐されました】

【MVPを選出します】

【【ヤヨイ・ベルダーウッド】がMVPに選出されました】

【【ヤヨイ・ベルダーウッド】にMVP特典【魔道霊手 スリッドテンタクル】を贈与します】

 

 うっし獲ったァ!




管理AI4号:Jさん「……そこに誘導したつもりはなかったのだが」

<エンブリオ>の相性差で即殺。クマニーサンもカンガルーでやってるしいいよね!
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