男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第2話 汚い大人

 □【金工王(キング・オブ・ハードウェア)】ヤヨイ・ベルダーウッド

 

 まあ、場所が変わったからと言って、そんなにやることが変わるわけでもない。

 

「……よし、できた」

 

 10個くらいのアクセサリーをまとめたアイテムボックスをラトラナジュに渡し、レベルが上がるのを確認して口角が上がるのを感じる。

 

 現状、【金工王(キング・オブ・ハードウェア)】の方が【鉄人王(キング・オブ・アイアン)】よりもレベルが低い。音響テロでまだまだ稼げる【鉄人王】と比べて、【金工王】はジョブクエストクリアしないといけないからな。

 

 それもラトラナジュが交渉してくれて《リワインド・メタル》で装備品の修復ができるから、少しずつ埋まってきてはいるんだけど。

 

 今は少し休憩中。交渉帰りにラトラナジュが買ってきた黄河帝国のお菓子(多分月餅)を()みながら雑談している最中である。

 

「あ、そういえば僕、知り合いのお店に行ってくるねー。帰るのは夕方になると思う」

 

「……唐突だな、おい」

 

「メルクの知り合いのレストラン……もしかして」

 

 あぁ、なるほど。そういえば親交あるんだった。

 

「うん。<セフィロト>のオーナーが経営してる店。今ドラグノマドにいるって通信送ったらじゃあ一緒に食事しないかって誘われてさ。暇だし、行こうと思ってる」

 

「良いんじゃないの、久しぶりなんだろ直接会うの。今の時代直接会わなくてもどうにでもなるけどさ、やっぱり直に会うのは良いからね」

 

 実体験だ。世界中色々飛び回ってるとSNS上だけのやり取りが多くなって人間関係が希薄になっちゃうからね。

 

「そういえば……私も、少し空けるかもしれないわ。同じ商人系<マスター>の超級職の人から誘いが来ててね。いずれ<セフィロト>とも接点を持ちたいところだけれど」

 

 商人系ってわりと数が多いからな。特にカルディナは商人系が集中してるし、新たな【魅売】であるラトラナジュとはそりゃ接点持ちたいだろう。

 

 ……そう考えると、俺も誘いが来てもおかしくはない……のか? 一応生産系超級職だし、装備品修復とかいうチートスキル持ってるし。

 

「……君をマニゴルドに会わせたくはないなぁ」

 

「あら、噂に聞く限り私たち皆相性が良さそうだけれど?」

 

「いやそうじゃなくて……うーん……」

 

 お、嫉妬か? 良いぜ良い傾向だ、ラトラナジュの掌の上で転がされてるのに気づいていないのもGOOD。

 

 まあそれは良いけど、マニゴルドか。調べた限り俗物系<マスター>らしいけど、まあ俗物なんていくらでも見たことあるからなー。贅沢もリアルで散々経験した(接待先で色々)から許容範囲だし、愛人囲ってるのもまあ金があるならやる人の方が多いだろうし。

 

 ラトラナジュはラトラナジュで、色々と汚い世界を知ってるから俗物であろうとビジネスライクで接することができる。結論言っちゃうと、飛び抜けた俗物は俗物で好印象なので多分俺ら全員相性が良い。

 

 だからこそメルクは色々と心配してるんだろうけども。

 

「ふふ、まあメルクをからかうのはこれくらいにしておきましょうか」

 

「そだねー、いじりすぎて拗らせてもつまらないし」

 

「君たちねぇ……はぁ、もう良いや」

 

 メルクが着ぐるみに着替え、立ち上がる。

 

「あ、私も一緒に出るわ」

 

「わかった、それじゃあ行ってくるねー。ヤヨイ君は好きに動いててくれ」

 

「はいはい、デート楽しんでねー」

 

「違うよぅ!?」

 

「あら、違うの?」

 

「……えっ?」

 

 攻めるなあラトラナジュ。好きよ、そういうの。

 

 

 ……さてさてさーて、俺は俺で色々やるとしますか。

 

「デンドロには外部への入力があるからー」

 

 こういうこともできるだぜ、っと。

 

 俺が造り貯めしておいたアクセサリーをカメラアイテムで撮りつつ……メルクとラトラナジュの写真も撮る。

 うん、わりと良いアングルかな? 

 

「ウチのアーティスト部門と、諜報部隊は凄いよー?」

 

 いやあ、三倍時間だからこういうの得だよねぇ! 

 こっちで設計したアクセサリーを、リアルのプロに見せてアドバイスを貰えるなんてさ! 

 

 そしてその上で、メルクとラトラナジュの写真から現在の住所を探る。

 メルクはもうほっとんど見つけてるんだけど、ラトラナジュはかつての女優の血縁者で現宝石商ってこと以外不明だからね。ただラトラナジュ曰くわりと大手の宝石商らしいので、アメリカ全域に絞れば簡単に見つけられるだろう。

 

 あとは見つけたラトラナジュの親族である宝石商と商談を重ね、色々と便宜を図りつつラトラナジュとメルクとの婚約をアシスト。

 二人を少しずつ社交界慣れさせて、こなれてきたところで俺の友人ということを明かし二人を完全にこちら側に引き込む。メルクは医者の卵(でもホムンクルス関連で超一流にも負けない圧倒的な経験値を得ていると思われる)で、今大学院生ということを考えると博士号を取るはずだ。

 

 メルクの頭の回転の良さ、実地的な経験値など、そこらへんを考えると将来的には院長にだってなれるだろう。俺の……病院関係にも長い手を持つ真木の力があれば、メルクのために総合病院を建てることも可能。どうせ俺のポケットマネーで補える額だし、投資と考えれば安いものである。

 

 ラトラナジュも俺と友人関係であれば世界中のセレブとも接点が持てる。ラトラナジュは聡明で、優秀な女性だ。機を見誤ることも少ないだろうし、彼女ならば投資する価値がある。

 

 なので二人をくっ付けといて、いざという時のために高級マンションの管理人でもポストを空けておく。自分でもわりと甘いとは思うけど、その分の見返りはきちんとあるからね。

 

 それに、俺の容態が急変した時にすぐに駆けつけられる医者は、複数いた方がいい。それが気の置けない仲なら最上だ。

 

 俺は汚い大人だからね、こういうことくらいやるさ。

 

「マスター、黒い。でも、流石」

 

 ありがとう、アルマ。

 

 本当なら、ラトラナジュは雰囲気作りとかをしてほしかったんだろうけど、甘いなァ。

 

 ——どうせなら、俺と真木の利益となるものも併せて進めてみようじゃあないか! 

 

 なあに、安心してよ。損はないから。

 

 ……どちらにも、確かな利があるだろう?




ヤヨイ君フルスロットル。
権力を全力で使って二人をくっ付けた上で身近な存在にしようとしてます。ヤヨイ君友達は多いけど親友が少ないからね、仕方ないね。
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