男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第3話 個別行動

 □【禁忌王(キング・オブ・タブー)】ヴィクター・F・メルクリウス

 

「それじゃ、頑張って」

 

「ええ。そちらも楽しんでね」

 

 ラトラナジュに手を振り、別れる。ほんの少し名残惜しいけれど、すぐに会えるから気にしない。……まあ、そんなことを考えている時点で僕って結構重いんだろうけど。

 

「……ん、待ち合わせ場所は……あれ、彼のレストランじゃないのか」

 

 クランの事務仕事が溜まってるのかな? 世界最強のクランのオーナーともなれば、そういうしがらみも増えそうだしね。

 

 そんなことを思いつつ歩き、ドラグノマドでもトップクラスの料理店の前に着いた。

 ……うーん、何度こういうところ来ても慣れないなあ。普段から食事は基本ジャンクフードで済ませてるから、こういう高級店はデンドロでしか行ったことがないし、それでも慣れる気はまったくしない。

 

 まあ、マニゴルドに言わせれば、それも正しい形なんだろうけどね。

 

「……えっと、この店の中に居るのは……よし」

 

 AR・I・CAとかいたら最悪だから。性格面ではマニゴルドも同類なんだけど、話が通じるのと通じないのとでは大きな差がるのだ。

 

 料理店の扉を開き、中に入る。

 

 その中にいたのは——

 

 

「お久しぶりですね、メルク」

 

「久しいな、メルク。ふふ、相変わらず趣味の悪い着ぐるみを着ているようだ」

 

 

「ん、久しぶりー、二人とも」

 

 ——西方三国のみならず、全世界にその名が轟く“魔法最強”、【地神(ジ・アース)】ファトゥム。

 そして<セフィロト>でも上位の戦闘能力を持ち、<マスター>最高峰の大金持ち……【放蕩王(キング・オブ・ゴージャス)】マニゴルド。

 

 カルディナでの僕の友人、その二人が、レストランの中で待っていた。

 とりあえず着ぐるみを脱ぎ、白衣に着替える。このレストランのオーナーも、僕の素顔は知ってるから大丈夫。

 

「……着ぐるみから着替えたと思ったらまた白衣か。それ以外に着るものがないのかお前は」

 

「しょうがないだろ、これが僕の装備品の中で最高の性能なんだから。オシャレなんか興味ないし」

 

「それも変わらず、ですか。私たち皆変わりませんね。それに手紙からわかっていたことですが、元気なようで何よりです」

 

「そっちもね。まあ君を殺せる相手なんて、この世界にはほとんどいないだろうけども」

 

 あり得るとしたら同じ“最強”の名を冠する二人と、【破壊王】であるシュウくらいだろうね。ゼクスは相性的に生き埋めにされて終わりだろうし。必殺スキル使ったらどうなるかわからないけれど。

 

「お前も広域制圧型の中では最強格だろうに。グレイとフレイは息災か?」

 

「うん、元気だよー。久しぶりに全力で戦いたいって言ってるけど」

 

「グレイさんとまともに戦えるとなると……古代伝説級くらいですかね? 彼、<超級>に匹敵しますし」

 

「そりゃあそうだとも、僕が最初に創ったホムンクルスにして最終規格だよ? 改変兵器の類と<UBM>由来の身体能力を、マイの能力で完全に組み込んだんだから。自慢の息子だとも」

 

 思えばラスカルとマジ喧嘩したのは、<遺跡>の改変兵器と希少素材を取り合った時くらいだな。向こうの超兵器と僕の物量作戦でしばらく争ったんだけど、結局あっちが希少素材を、僕が改変兵器を取った。あっちはどっちも欲しかったらしいけど、カチあったのが運の尽きだと思うがいい。

 

「マイが新しく創ったアホの子も、単体スペックなら古代伝説級と殴り合えるんだけど、いかんせんアホだから純粋性能型くらいしか対応できないんだよねー。その点も踏まえると、やっぱりグレイが最強だよ」

 

「どんどん戦力が増強されていくな。グレイが最強兵器で、フレイがそれらを支援する超級職。そして一度起動したが最後神話級……いや、それを超える存在であろうとも必ず殺す最終兵器をも所有している。<セフィロト>にお前が入るだけで、国力は何倍にも膨れ上がるだろう。ホムンクルスの労働力もあることだし、な」

 

 確かにね。僕が……例えば王国に就けば、【獣王】以外の全ての<超級>は僕一人で担当できるだろう。黄河でも大概の<超級>が個人戦闘型なので勝てる上、【機械天使】を解放すれば負ける要素はほとんどない。ケンタウリの方もグレイに任せれば沈められるしね。

 

 ……だからこそ、僕はどの国にも付かないんだけど。

 

「僕は、<超級>の中でも飛び抜けて他者にもたらす利益が大きい。ホムンクルスによる労働力生産、<超級>も数人なら担当可能な過剰戦力、そして簡単に軍勢を生み出せるローコストハイリターンの<超級>。

 それを考えると……僕自身の気性もあるにせよ、何れかの国に所属すればバランスが破綻する」

 

 現状、この世界の戦力バランスは奇跡的に釣り合っている。

 

 アルター王国には“最強”に比肩する<超級>であるシュウ、そしてトリッキーな<超級>であるレイレイさん、単純に強いフィガロがいる。

 

 ドライフ皇国には“物理最強”と、僕に広域制圧という形で張り合えるフランクリン、大佐と、ついでに閣下。

 

 黄河帝国には対応力の化け物である迅羽、飛行要塞持ちのグレイ・α・ケンタウリ、<黄河四霊>最強・名捨、そしてキャラメイク一ヶ月の輝麗。

 

 カルディナは……説明するまでもないけれど、八人の<超級>が属する最強のクラン<セフィロト>がある。

 

 グランバロアには、“最強”に比肩する広域殲滅型最強格の醤油抗菌、彼を含めた<グランバロア七大エンブリオ>の<超級>がいる。

 

 天地、レジェンダリアにもそれなりの数の<超級>が所属する。

 

 そしてフリーの<超級>と、犯罪者のみのクランである<IF>の面々。

 

 ここで所属した国の国力そのものを膨れ上がらせる僕が、どこぞの国に所属すれば、色々とマズイことになる。

 アルターなら問題はないかもしれないが、色々と問題が発生しかねない。

 

 

 ……いや、一番はデンドロでまで権力に縛られたくないのと、知り合いと殺し合うのは嫌なだけなんだけど。

 

「俺もお前とは戦いたくはないな。面倒だ」

 

「私も、遠慮したいですね。特にグレイさんは飛べるし、魔法で捕まえようとしても砕かれますし。それにフレイさんの采配で、昔暗殺されかけましたから。あなたほど戦っていて神経を使う相手はいません」

 

「お褒めいただきどうもありがとう。というか、ファトゥムと直接戦ったら死んじゃうんだから、そりゃあ暗殺に頼るしかないじゃん。……昔、10万体くらい用意したホムンクルスが一撃で殲滅されたの、忘れてないからね」

 

 マニゴルドはもっと簡単だ。埋めればいい。

 その分《金銀財砲》も連発されるけど、それで完全に殲滅されるほど甘くはないからね。

 

「いや、それにしても美味しいねこのお店。初めて来たけど」

 

「お前はスキルにコストがかかるわけでもあるまいに、何故金を使わないんだ……」

 

「貧乏性ですかね」

 

「うるさい、苦学生に酷なこと言うな」

 

 ジャンクフードで十分だから……最近はラトラナジュに心配されて美味しい食事を出されているけど。

 

 あ、そうだ。

 

「マニゴルド、多分近いうちに【魅売(チャーム・バイヤー)】の女性から色々と打診が来ると思う。彼女、ラトラナジュというんだけど、君に不利益はもたらさないと思うから受けてやってくれないかな」

 

「……ふむ。その程度なら構わないが……なんだ、惚れてるのか?」

 

「ばっ……! 、……!?」

 

 やばい露骨に反応しすぎた! 

 

「ほほーう? 朴念仁なお前が、なぁ?」

 

「それはいささか興味がありますね。私も妻を持つ身、それに友人の恋愛ともなれば……ふふ」

 

「や、やめ、やめてぇぇぇぇー!」

 

 僕ってなんでこんなにいじられるんだよぅ! 

 

 

 /

 

 

 ……あー、なんか今面白いこと起きてるような気がする。

 漠然としないけど。

 

「マスター?」

 

「んー……ま、いいや。アルマ、外行こうぜ」

 

 一回、まともに戦ってみるかな。

 自分の力の確認の意味を込めて、さ。




原作キャラの口調は難しい。
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