男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

75 / 144
第5話 バーチャル・エンカウント

 □【鉄人王(キング・オブ・アイアン)】ヤヨイ・ベルダーウッド

 

 カグラの戦い方は、非常に美しかった。

 

 俺が10匹、カグラが10匹狼を担当したんだけれど、周囲を数の不利で囲まれているにも関わらず、的確に状況を見極めて下駄によるステップで紙一重でかわし、1匹ずつ喉を切り裂いていく。

 

 ただ不思議なのが、1匹殺すごとにパフォーマンスが少しずつ衰えていること。それでも持ち前の技術で殺す速度は変わってないけど。

 

 まあ、こっちはこっちで一挙一動でまとめて殺してるんだけど、っとぉ! 

 

『……マスター、戦闘に意識を割きつつ思考を分割してあっちもしっかり見てる……もしかして、変態?』

 

 変態じゃないしー! 

 

 ただ並列思考が得意なだけだよ! 失敬な! 

 

 

 /

 

 

 依頼は【デザート・ウルフ】の100匹討伐。

 そしてそいつらは基本20匹単位で行動している。遺恨を残さないように1匹たりとも逃さずに殺していけば、この作業をあと4回繰り返せば達成できる計算になる。

 

『さー、頑張るぞー!』

 

『おー』

 

「おー!」

 

 

 /

 

 

 まあそんな感じで、100匹分きっちり討伐し、依頼を終了した。

 

 数が多いからそれなりに経験値になるし、戦闘経験も大分積めたので、定期的に受けてもいいかもと思えるくらいには良い仕事だった。

 

 今は冒険者ギルドで、依頼達成後の……なんていうんだろ、食事会をしている。俺から誘ったんだけどね。

 ちなみにアルマは同席でずっと焼き鳥を食べている。俺が食った種類しか食わないから必然的に俺もそれなりの量を……。

 

「お疲れー。いやー、そっちの戦闘は大迫力だったねー。僕は自分の身体で動く方が好きだけど」

 

「俺はロボットが好きだからな。動くのもいいが、こっちの方が性に合ってる」

 

 ……さて。それじゃあ問い詰めて行こうか。

 

「園遊会、どうだった? ヘマはしない……よな、お前のことだし」

 

「え、うん。いつも通り全力で——」

 

 お、固まった固まった。それじゃあ畳みかけようかねぇ! 

 ちなみにアルマを粒子状に俺たちの周りに拡散させ、風の天属性付与で防音しているので周囲にはもちろん聞こえていません。人影もないけどね。

 

「例年までは俺も行ってたんだけど、去年は行けなかったからなぁ。しばらくぶりだよなお前の舞。刀の技量も上がってるんじゃないのかな? 専属の先生は息災?」

 

「んぐ……ごくん。……なーんか似てるなーって思ってたけど……まぁじかぁ」

 

 はっはっは、ようやく気付いたか。不健康なリアルでの面見すぎてたからわからなかったか? 

 

 

「まさか再会がデンドロの中だとは思いもしなかったけどね。

 ——久しぶり、カグラ改め神条院(しんじょういん)巫楽(ふらく)。リアルネームのもじりかよ」

 

「それはこっちの台詞だよ、僕が仕事で会いに行けなかったのにデンドロ廃人になってるとかありえない。

 ——久しぶり、ヤヨイ・ベルダーウッド改め真木(さなき)正弥(まさや)。何もせずに貪る娯楽はたのしーかい?」

 

 

「うん楽しい!」

 

「こやつぅ……!」

 

 

 ——神条院巫楽。

 日本伝統の御神楽を子孫代々伝えてきた、祖先に天鈿女命(アメノウズメ)を持つという皇家に関わりのある名家中の名家・神条院家の後継者。

 

 神条院の傍流を含めた、本来なら厳しい後継争奪戦の中で、飛び抜けた舞の才と少女の如き美貌を示した巫楽は、満場一致で幼年期の頃から後継者になることを定められた生粋の踊り子。

 

 そしてリアルでの、俺という天上人が日本で唯一親友と呼べる存在。

 それが神条院巫楽である。

 

 つかこいつあれだな? 神条院巫楽の顔を知ってるのが極一部のエリートしかいないのをいいことにほぼリアルフェイスでプレイしてやがるな? こっちとしては混乱しないから助かるんだけど、それっていいの? 

 ってかうちのパーティーみんな美男美女ばっかなんですけどー! 眼福ー! 

 

 

 /

 

 

 酒場から出て、街を歩く。

 

「キミねぇ……僕が仕事で忙しくしてるのにぃー……なぁんでデンドロで遊んでるんだよぉー……」

 

「社会復帰はするけど、前みたいに働くつもりはないなぁ。死ぬまでデンドロやってるかもしれん」

 

「立派な廃人だねぇ……ちくしょー」

 

 っていうか、こいつ結構多忙だった気がするんだけど。

 

「お前、デンドロしてて大丈夫なのか? 鍛錬とかあるだろ」

 

「デンドロで舞の鍛錬してる。実戦的な動きも取り入れてるから、最近は母上にも褒められてるよ。合法的に時間作ってんの」

 

 まあ、こいつが本番で舞うのって天皇陛下とか皇后陛下が出るようなビックイベントだけだもんなー。普段練習しかしてなくて、それをデンドロの3倍時間内でやるのって結構効率いいだろうし。戦闘モードに入らなければ音速にはならないからね。

 

「それでも説得するのに一年半かかったんだけどね。みんな頭固いからやんなっちゃう」

 

「そーいやヒップホップダンスやるときも絶叫してたな……」

 

 まあ唆したの俺なんですけどね! 

 

 こいつ普段は狐の仮面被ってストリートダンスやってる映像、動画投稿サイトに挙げてるのだ。わりと人気だった覚えがある……コメント欄が結構な腐海に侵されていたのは苦笑いするしかなかったけど。

 

 踊りに関しては悪食で、とりあえず知らないダンスがあったら試してみるのがこいつである。もちろん家業の神楽に一番力を入れているのは間違いないんだけど、軽く触っただけのダンスで本業を叩きのめしてるからな。本人に悪意はないんだけどね。

 

 言ってしまえば、俺は全方面に才能があるが、こいつは舞やダンス関連に全ての才能が注ぎ込まれている感じだ。リアルでも体力お化けかつ超優良健康児だからそれを活かす肉体面の才能も非常に高い。

 

「……そういえば、もうデンドロが始まってから一年半経ってるけど、【舞神】残ってたのなんで? 神系だから試練がクソ難しかったのか?」

 

「んー、多分そうだと思うよー。特に僕は難しく感じなかったけど」

 

「内容は?」

 

「連続10時間、休みなしで一定以上の評価を受けつつ踊り続けること(・・・・・・・・)

 

 あー、それなら余裕だな。

 巫楽って、リアルで15時間舞踏は普通にこなすし。24時間はさすがに終わった後は休むけど、それくらいなら少し息が荒くなる程度で大丈夫だろう。

 

「っていうか、それ以上に僕はキミが二つ超級職ゲットしてたのに驚きなんだけど」

 

俺、万能(I am almighty)。OK?」

 

「はいはい、キミのデタラメ具合はよーくわかってるよ」

 

 よろしい。

 

「にしても、メイデンねー。可愛い子で、しかもキミにぴったりとは」

 

「むふん」

 

「当たり前だろ、俺の<エンブリオ>だぞアルマは。最高に決まってる」

 

「むふん!」

 

 可愛い可愛い。

 

「ま、僕のも負けてないけどねー」

 

「薄々察してるけど、そういえば【アメノウズメ】の効果ってなんだ? お前の祖先の名前だけど」

 

「そこら辺も含めてぴったりだよねー。うん。

 えーっと……簡単に言っちゃうと……多数有利?」

 

 やっぱりかー。

 

「で、服を脱いだら僕を見てる敵対対象に10秒間隔で【魅了】が発生して、それをトリガーに“僕を見ている人数”分ステータスが加算されるのー」

 

 ……あー。

 

 なるほど……そりゃ、お前らしい<エンブリオ>だな。

 

 ディペンデントルール、か。よく言ったもんだよ。




—情報開示—
【奉納神楽殿 アメノウズメ】
TYPE:ディペンデントルール(オンリーワンカテゴリー)
能力特性:多数有利
到達段階:Ⅳ
紋章:舞台の上で踊る豊満な女
固有スキル:《玄妙なるや魅惑の踊り(ダンシング・テンプテーション)》《常在舞台の心得》
必殺スキル:《笑ひゑらぎて和魂を奉ず(アメノウズメ)
備考:
『他者に依存するTYPEルール』という面倒くさい存在。全てのスキルが他者ありきで成立するため、仲間と敵がいる方が有利。故に『多数有利』。
スキル数が絞られているのでその分効力が高い。
そして効果をさらに上げるため、自分に視点が向けられているのが外部コストに当てはめられているが……それは【舞神】のスキルによって解決し、もう一つのトリガーは<マスター>自身の精神性によって無問題と化している。

玄妙なるや魅惑の踊り(ダンシング・テンプテーション)》:
“肌の露出度が一定値まで達する”ことと、“自分を見ている敵対対象”にのみ、10秒間隔で【魅了】判定を行う。レジストされてもまた10秒後には判定が来るため、完全に対策していなければいつかは術中にはまる凶悪なスキル。
また自分を見ている対象の居場所も把握可能。
パッシブスキル

《常在舞台の心得》:
“肌の露出度が一定値まで達する”と、いつでもどこでも踊り子系のスキルが発動可能になる。いわば常時舞っている状態。またそれらのスキルのクールタイムが減少する。
これによって【舞神】のスキルの弱点を補正している。
パッシブスキル

笑ひゑらぎて和魂を奉ず(アメノウズメ)》系列:
必殺スキル。同系列の弱いスキルが、下級の時から存在する。
“肌の露出度が一定値まで達する”ことと、“自分を見ている対象”の数に応じて、自己ステータス(特典武具やスキルによる補正を含む)のSTR・AGIの20%を自分に加算する。スキルのクールタイムを0.5%減少させる。
敵味方関わらず、意識を持ちこちらを見ているのならば加算するため、戦争などの状況であれば膨大なステータスを獲得する。


この<エンブリオ>によって大規模討伐隊の全ての人数分ステータスに加算して特化型超級職並のステータスを獲得し、第一スキルで天狗の位置を把握、光学迷彩で隠れていても必ず見つけ、転移しても見た瞬間に居場所が把握されるという恐怖体験をした末、狂乱して突っ込んできた天狗を《居合い》を発動させてぶった切りました。南無!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。