男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>— 作:クーボー
□【
とりあえずカグラの首に全力でチョップを叩き込んで【気絶】させた。
……少しは治ってるかなーって期待したけど、こいつ酒乱のままだった。高校時代に父様から酒に慣れろって言われて飲んだ時もこんなんだったんだよなぁ……そのあとの大学時代はほとんど外国暮らしだったし、油断していた。
「はいはい、お休みなさいね……ふぅ」
ん、ラトラナジュが部屋から出てきた。
「悪いな、介抱任せて。こっちはもう意識はオトしたから大丈夫だ」
「まあ、酒に濡れて色っぽかったメルクを独占できたから良かったけど。甘えてくる姿は眼福だったわ……」
順調に色ボケてるぅ……。
「っと、とりあえず何故こうなったか説明してくれない?」
「そうだねぇ。じゃあとりあえず、簡潔に行こうか」
事の始まりは、今から数十分前に遡る。
/
いぇーい、と旧友との再会を済ませた俺たちは、二人でメルクのいる宿へと帰った。ついでだから紹介しようと思ってね。
もうその時には飲み会から帰っているとの通話を受けていたから、ちょうど良かったのだ。
「というわけで、俺のリアルフレンドのカグラ。メルクに紹介したくてさ」
「へぇー、ヤヨイの友達ねー。よろしくー」
「……また癖の強い人を」
おうそれてめえも入ってるからな、と言うツッコミも入れつつ、何故かカグラが酒を取り出した。
「……おい」
「リアルだと晩酌もできないからさ! いや酒飲めば大概仲良くなれるって!」
「この子も結構なお家柄なのね……まあお酒はあんまり飲めないけど、少しくらいなら」
——そうして、男だけの宴会が始まった、のだけれど。
まあ、治ったかといえばちょっぴり悪化していたカグラの酒乱にほろ酔い気分のメルクが巻き込まれ、俺がトイレに行っている間にメルクが酒で溺れていた。
「うわちょまってやめろカグラァ!」
「あっはははー!」
くそっ、酒飲まなければ良いやつ——良いやつ? わりと性根はクソな気がするけどそれはまあ良い。
よくないのはメルクがかなり危険な状態であることだ! このままじゃデスペナしかねんぞと引き剥がそうとしたんだけど、ぶっちゃけカスSTRな俺とそれなりに高いSTRのカグラとではあまりに差があった……。
これもしかしてホントにメルク死ぬのでは、とカグラを頑張って引っ張っていたんだけど。
そこでちょうどラトラナジュが帰ってきたので、メルクを任せて首をチョップ。カスENDのカグラくらいはこれで【気絶】するので、あとは寝かせて安静にした、というわけだ。
「……うん、大体の経緯はわかったわ。ちょっとなんとも言いづらいけど」
「十割こいつが悪いから安心せい。トラブルメイカー気質なのは変わってないんだよな、昔から」
小学生の頃はあまり接点がなかった。あの事件ですぐにスイスに飛んだし、こいつは日本に暮らしてたから。
本格的に接点ができたのは中学生の頃だ。あの時は……うん、あいつのお披露目の時に俺が全力の嫌味言ったんだったな。多分今でも同じ場面に遭遇したら嫌味言うと思うけど。
「カグラ君って、ヤヨイ君のリアルでの友人?」
「うん。中学生の頃にちょっと色々あって、高校の時もつるんでた。大学の時はたまに電話するくらいの仲だったよ。ま、
「……あなたのような人の友人ってことは、彼もそうなのね」
苦笑してるなあ。お察しの通りだけど。
「日本の名家だな。ある種さな……げふん」
「もう誤魔化す必要ないと思うけど?」
「それもそうか。ま、簡単に言っちゃうと真木にある種比肩する名家だな。俺とカグラが仲良いから家族ぐるみで付き合ってる」
うちの傍流とあっちの傍流が結婚した話もあるし。数ある名家の中でも仲が良い部類に入るだろうね。
「はあ……なるほどね。結局パーティーに入るんだろうし……なんだかパーティーの半分がセレブに染まっちゃったわ」
「ラトラナジュ、メルクと一緒にセレブになる気満々じゃん」
「そりゃあね。田舎で二人で暮らす余生も素敵だけど、それよりも私は華やかな宝石に囲まれて側にメルクがいる人生の方を選ぶわよ」
ブレないなこの人。あるいは血筋かな、まあやらかした肉親と比べてこっちは賢明だから大丈夫だろうけど。
しっかしそうなると、パーティー全員セレブになるのか。どういう巡り合わせですかねぇ?
「ま、酒飲んでなければノリ良いし性根はわりとアレだけど付き合ってて楽しいから、よろしく頼むよ」
「ええ。あとでメルクにも言っておくわ。あなたと付き合っていく以上、彼のような癖の強い人とも多く会うのでしょうし」
……そんなに財政界は変人ばっかじゃないよ?
「マスター、ブーメラン」
めちゃくちゃ心外だなぁ!
/
「……マニゴルド」
「なんだ、ファトゥム」
「いえ、大したことでは、ないんですが」
「……」
「——メルクは、とても嬉しそうに友人たちの話を語っていました。そして、彼が好いていると思わしき女性のことも。
それが、私には嬉しい」
「……ふん、まああいつは聞いている限り相当心中に闇を秘めているようだからな——俺たちはそれをどうすることもできん。あのような<エンブリオ>になったのも、それが所以か」
「私が言えた義理ではありませんが、彼の<エンブリオ>は相当異質ですからね。それでも彼自身の精神性は真っ当であることを考えると、一種の奇跡と言えるでしょう」
「そうだな。奴の友人が増えることは、嬉しい限りだ。
……さて、ファトゥム。例の話を知っているか?」
「はい。かつての神話大戦の話ですね。古き竜王と猿王が、100年に渡ってしのぎを削ったという」
「そうだ。文献によればその二体は神話級だそうだが——力の規模を鑑みれば、おそらくは神話級最上位の力を持つだろう」
「そうですか。いずれ議長から言い渡されるでしょうが、私の仕事は、それらを叩き起こすことでしょうか?」
「いや、どうも違うらしいな」
「? ——それは?」
「どうやら、近いうちに起きるらしいぞ。お前が手を出さなくとも、な」