男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第9話 遠い日の文献

 □【鉄人王(キング・オブ・アイアン)】ヤヨイ・ベルダーウッド

 

 メルクに何処か図書館のようなものはないかと聞いて、大雑把な位置を教えてもらった。

 それから道行く人に場所を聞き、探索系ゲームのような動きで図書館へとたどり着いた。

 

「デカイなあ。さすがは国立図書館」

 

「……すごい」

 

 脇の石碑には“カルディナ国立図書館”と書かれていて、眼前に非常に大きなレトロな建物が広がっている。

 リアルでも色々と見てきたけど、さすがにアメリカには劣るが壮観だな。

 

 時間的に……うん、10時間くらいは探せるかな? 明らかに足りないけど。

 

 よぅし、頑張るぞぅ! 

 

 

 /

 

 

 うわぁ……すげぇ……デンドロの世界に浸れるぅ……。

 

「マスター、面白いのは否定しないけど目的」

 

 あっ、そうだデザインの参考だった。

 いっけね……おいアルマ体内に本を取り込むな。盗難対策はアイテムボックスが対象で液状化した<エンブリオ>の体内は対象外なの! 

 

「知らない」

 

 おい。

 

「……知らない」

 

 おい! 

 

 

 /

 

 

 しゃあないからその本を放っておいて、デタラメに広い内部を散策する。

 これ空間拡張でちょっと内部がアホなことになってる。資料に限って探ってるけど、さすがは交易国家。酒のラベルだけでもかなりの量があるし、大変だけど同じくらいインスピレーションが刺激される。

 

「アルマ、これとか良くない?」

 

「……良いと思う。だけど耳元に飾るには向いてない、かも」

 

 うーん……難しいなぁ。しっくりくるものもたまにあっても、それを取り入れたデザインをするとどうしてもズレてしまう。こうじゃないそれでもない、俺はもっと違うものがいいんだと、そう訴えてくるようで。

 自分のことながら面倒臭い。面倒臭いがそれに従えば俺はもっと良いものが造れると、経験上確信している。

 

「マスター、これ」

 

「ん? ……なんだこれ」

 

 表紙は……文字が擦れて読み取れない。でも表紙は、竜と猿を象った紋章がある。

 ……これだ。しっくりくる。だけど一部が欠けていて、なんとももどかしい。

 

 っていうか、資料? 随分古ぼけているけれど。

 ん、資料というよりは日記のような……いや、日記を資料集に編纂したのか? 

 

 まあ、とりあえず見てみればわかるだろう。

 アルマ、ちょっとおいで。はい、膝の上っと。絵本読むみたいな体勢だけど、アルマが小さいからこれの方が楽なんだよねぇ。

 

 

 ではパラリ、と。

 

 

 /

 

 私は————。カルディナに住まう、とある研究者である。

 この度、神——の—体のU——、【—竜王 ド—グ——グ】と【—猿王 モ—ブ—ム】の衝突が始まった時のことを、後世のために記録しておこうと思う。

 ——の領域に在りし双王、それも竜の方は、とても寛大で慈悲深く(もしかしたら我らのことなど視界にすら入っていないのかもしれないが)、何故彼らが延々と戦い続けるのか。

 

 そこの本を開いた者よ。どれだけの時間が経ったかもしれないが、それでも私の生涯をかけた意味の集大成だ。名もなき研究者の夢と笑うのも良いが、ひとつ、見て行ってはくれないか。

 

 /

 

 

 ……初っ端からインパクト絶大だな。

 

 続きを読もう。

 

 

 /

 

 まず、彼らが最初に戦いを始めたのは、カルディナ北部——かつて愚王が【地竜王 マザードラグランド】に手を出し、その結果滅びた大事件よりも昔のこと。

 

【—猿王】は配下を率いるタイプだが、本人も単騎で非常に強大な力を持つ。その拳は大地を割り、高度な知性を持ち合わせ、その力で他を圧倒する類である。

 

 そして【—竜王】はもっと単純だ。自己の体積と質量によって全てを押し潰す。

【竜王】共通の《竜王気》によって攻防ともに強化されたその攻撃はまさに山の如し。万の軍勢であろうとも相手にはならない。

 

 双王は、出会った時点で戦いを始めた。おそらくは縄張りの領域を荒らされた【—竜王】の報復か。定かではないが、始まろうとしているにはわかる。

 

 /

 

 

 ……神話級UBM? 

 このまま共倒れしてくれたら最高なんだけどなー。

 

 

 /

 

 双王の戦いは壮絶だった。

 

 大地を割る竜王の攻撃を真っ向から受け止める猿王と、猿王の拳を受け止めてなお揺らがない竜王。戦いの中で幾人かの腕に自信がある馬鹿が乱入したが、双王の意識にも入らずに踏み潰されることとなった。

 私は双眼鏡を駆使して双王の戦いを眺めている時、たまに衝撃波で吹き飛ばされてHPが九割消しとばされる事があるが、これを記録に残すことを比べれば些細なことである。

 

 /

 

 

 こいつ馬鹿だろ。

 

「間違いなく馬鹿」

 

 研究者ってわりとこういうトコある……自分のことに無頓着というか。まあ馬鹿なのは間違いないけど。

 

 

 /

 

 こうして10年の間戦い続け……それでも決着は付かなかった。

 

 それを幾度も、幾度も続け。

 

 そしてその果てに、何がしかの約束をして、眠りについた。

 

 私はその戦いを記録に収めた。超級職ではないゆえに、その力の全てを書き写すことは叶わなかったが……それでも、もしも双王が目覚めることがあれば、この記録が役に立つことを願う。

 

 /

 

 ……なんか途中の紙が丸ごとなくなってるな。老朽化と、あと人為的なものだ。

 

 さて、これが何年前のものかは知らないが……もしかして、目覚めるとかないよね? 

 

「マスター、それ、フラグ」

 

 うっせ。

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