男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第10話 予兆と

 □【鉄人王(キング・オブ・アイアン)】ヤヨイ・ベルダーウッド

 

 さて、と。

 とりあえずこれは借りるとして……。

 

「アルマ、それ借りたいのか?」

 

「……ん」

 

 しゃーないなー。世話の焼ける子だ。

 アルマ、とりあえずその本を渡して。ふむ、恋愛小説か……別に重要文献でもないし大丈夫だろう。

 

 ……司書は確か入り口付近にいたよな。

 

 女だったら楽なんだけど、男の場合は……アルマを使うか。幼児体型だけど美少女だし、男相手なら俺の指示でやればいけるだろう。

 

「……怒ったらいいのか嬉しがればいいのかわからない」

 

 幼児体けいだッ!? 

「何故マスターはそんなに馬鹿なの」と訴えかけるような視線を頂戴しつつ、俺は出入り口へと向かった。

 

 ……ん、発見。あー、女の人かー。助かったな。

 

「あー、お姉さん? いやーちょっと借りたい本がありまして……え、駄目? 困った、なぁ?」

 

 ずずいっと顔を近づける。うん、少し顔が赤くなった。こいつは楽な手合いだな。

 リアルだと鉄仮面の女性が多すぎてね……。取引先でそういうのが相手だと非常に困っていたので、有り難いものだ。

 適当に似合いそうなアクセサリーを見繕い、銀貨とともに手の中に握りこむ。

 

「数日でいいからさ、頼めないかな?」

 

 例の資料本と、あとアルマの持っていた恋愛小説をカウンターに乗せる。

 案の定どもりまくる女性の頬に手を当てて——

 

 

 ——後日、化粧気のなかった女性司書の髪に、最近頭角をあらわしている職人製のアクセサリーが付けられていると、そんな噂が立った。

 

 そして同時にアルマが物凄い不機嫌になった。何故だアルマよ、俺は俺の持つものを全て使ったんだけど。

 

「あんなことする……マスター、最低」

 

 何故に? 

 

「でもかっこいいからすごいむかつく」

 

 何故に!? 

 

 まあそんなわけで、資料をゲットしたのでしたー。ぱちぱちー。

 つってもデザイン以外でなにも詳しいことはわからなかったけどね……ダメ元で、聞いてみようかな? 

 

 

 /

 

 

 ウキウキ状態のまま家に帰ると、珍しくメルクが読書や実験以外のことをやっていた。側にはラトラナジュもいて、なにやら椅子に座りながら机の上でやっている様子。

 

「へぇー……なるほど、リソースに還元して……すごいねぇすごいねぇ、夢が広がりそうだよ」

 

「できればもっと欲しいんだけど、鉱山に行こうにもね……。メルク、今度ホムンクルスを貸してくれないかしら。生憎、私だけだと戦えても浪費が激しいから」

 

「あ、大丈夫大丈夫。採掘系のホムンクルスと戦闘用ホムンクルス、どっちも貸し出すからねー」

 

「やった。これでもっと造れるわね……! ありがとう、メルク」

 

 ……なーんかラトラナジュの服の露出度が高いようなー。まあカグラで慣れてるから別にどうってこともないけど。

 

「ただいまー。収穫大量ー」

 

「わ、おかえりヤヨイ君。収穫って、例のデザインのこと?」

 

「あら、おかえりなさい。ん、その本……国立図書館って貸し出し禁止じゃなかったかしら?」

 

 お、鋭い。

 

「ちょっと賄賂で済ませた。面白いのがあって良かったよー」

 

「へぇ。……アルマちゃん、その大事そうに抱えている本……もしかして」

 

「ん!」

 

 トテトテトテ、と可愛らしい足音を立てて……って、そんなに懐いてたのか。まあラトラナジュ可愛い子好きだし、アルマも大人のお姉さんに甘えられるのは情操教育にいいのかもしれない。

 俺の方をちらりと見る。OKの意を込めて片目を閉じると、それを読み取ったのかラトラナジュがアルマの手に触れた。母親連れみたいな感じだ。

 

「メルク、それじゃあまた後でね。私はアルマちゃんと一緒に本を読むから」

 

「はいはーい、了解だよー。後でフラスコに入れて送るからねー」

 

「ええ、ありがとね。行きましょうか、アルマちゃん」

 

「ん」

 

 ……あうちの<エンブリオ>がカーバンクル以上にマスコットな件について。

 そのカーバンクルは今も机の上で眠ってるし、こいつ自由だな。

 

「メルク、そういえばカグラは?」

 

「彼ならフィールドに出てるよ。ログイン時間が少ないから、僕たちに遅れてる分まで取り返したいんだとさ」

 

「ま、あいつらしいか。【舞神】のレベルもまだ低いらしいし」

 

 まあそれはいい。今は用を果たそう。

 

「メルク、お前ってここら辺の伝承知ってる?」

 

「え? まあ、昔興味本位で調べたことはあるけど……どうしたの?」

 

 BINGO! まだ知ってるとは限らないけどな。

 

「いや、これにさ、昔この近くで神話級UBMが暴れたっていう話が書いてあったんだけど」

 

「……あー、もしかして、“猛き双王”のこと?」

 

 お、知ってたみたいだ。さすがハイスペック。

 

「ティアンの人は、あんまり知ってる人はいないけどね。UBMのこと調べてると、自ずと行き着く話さ。<マスター>は特典武具欲しさに調べる人が多いから、知ってる人もそれなりにいるけど」

 

 そう言うと、メルクは椅子から立ち上がり、大仰に天を仰いだ。

 

「古き日に竜王と猿王ありて、彼ら猛き双王と讃えられん。恐れ見よ、双王共に神話に在りし強者なり……伝えられてる長い伝承の一節だ。察するに神話級、僕が昔シュウやゼクスと一緒に戦った【グロウリー】に比肩する力を持つだろう。いや、あいつに比べれば性質はまだマシだろうけどね」

 

 なんか気になる単語出てきたけど、とりあえず置いておこう。

 

「そしてここからが本題なんだけど、まだそいつら、出てきたって記録がないんだよねえ」

 

「……誰かが討伐して秘匿してるんじゃないのか?」

 

「あはは、その可能性もあるねえ」

 

 

「まあ、その時はその時だよ。そもそもそれだけの力を持つ奴らを痕跡も残さずに殺した存在がいるなら、見てみたいものだけどね」

 

 

 そう言って、メルクは妖しく笑ったのだった。

 

 

 /

 

 

「……う」

 

「……? どうしたの?」

 

「……あたま、いたい」

 

「………えっ!? ちょ、ヤヨイくーん!」




メルクはグレイテスト・ワンを【獣王】が倒したことを知っています。ホムンクルスの盗み聞きで。
なので、それほど強大なUBMを誰にも知られずに倒すことができるのは、彼らほどの力がなければ不可能だと知っています。
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