男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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第8話 不穏なるは、雨の音

 □首都ヴァンデルヘイム中央広場 【闘士】ヤヨイ・ベルダーウッド

 

 PKを殺害してから数時間後。

 レベル50になりましたー、ぱっぱかぱーん。

 

「わー」

 

「感情のこもってない賑やかしどうもありがとう」

 

 アルマってノリが良いのか悪いのかよくわからん。さっき他の<マスター>に話しかけられた時は「うん」「あ」「邪魔」としか言わなかったから、こんな寸劇に付き合ってくれるはずないと思ってたんだが。

 

「さっき言った。私は喋るのが苦手。でも、マスターと話すのは嫌いじゃない」

 

「これがクーデレってやつですか?」

 

「どっちかと言うと素直クール?」

 

 おいこら待てどこでそんな言葉知った。あとなんかさっきから妙に密着してるなーと思ってたけどマジかお前。

 

「マスターのパーソナルから学んだ。ずばりマスターの好きなタイプって、私?」

 

「もちっと胸が大きい方が」

 

「最低」

 

 胸元をぽかぽか殴られる。あまり力が入ってないあたり、冗談なのだろう。

 ……まあ、アルマは身長が小さくて胸も小さい「失礼」……はいそうですねすみません、その、全体的に慎ましいことを考えなければ俺の好みドンピシャだからなぁ。俺日本人より外国人の方が好きだし、父さんもイギリスのちんまりした美女を妾にしたし。

 

 ……わぁ、ものすごく綺麗なガッツポーズだぁ……。

 

「……なんかこれが俺の心から生まれたと思うと、わりと複雑」

 

「万死「こっわ」……私はマスターのパーソナルを読み取って生まれた、いわば一心同体。マスターのことならなんでもわかる。次複雑とかマイナスイメージ考えたら……」

 

「考えたら?」

 

「……へそ曲げて短剣以外に変身しなくなる」

 

 随分可愛らしい反抗だ。まあ人を怒らせる趣味はないし、頭を撫でて許してもらおう。

 

「なんか手慣れてる……」

 

「はっは、モンスターサクランボを舐めるんじゃない。リアルだと虚弱でそういうことも何もできなかったけど、たまに行く高校だと『儚い王子さま』って呼ばれてたからな」

 

「むぅ……でも気持ちいいから許す」

 

 はいはい、っと、コント繰り広げてる場合じゃないか。

 

 どうやってたった数時間でレベル50に達したのかと言うと、複数の——いや、全部アルマのおかげなんだが、ともかくこんな理由がある。

 まず、アルマが目覚めて狩りの効率が段違いになったことで、必然的にレベルが上がる速度も上昇した。さらにアルマは車輪型にもなれたので、俺の足に取り付いて車輪を形成、森の中をそれで走行したのだ。

 スライム状なので破損する心配はないし、凸凹に合わせて伸縮するから非常に速い速度で走行できた。これによって森を駆け回って湧き出たモンスターをサーチアンドデストロイできた、というわけである。

 

 また次に影響が大きいのは、アルマは大体の武器に変化できたので、武器費用が浮くことで出費を非常に少なくできること。正直これはかなり助かった。さらに戦況に応じて武器を一瞬で切り替えることができるから、対応力が非常に高い。

 ……おかげで《瞬間装備》君が死亡したが、まあ、使い所はあるだろう。多分。

 

 そして最後に、アルマの使用する装備欄だ。

 端的に言おう。アクセサリーと防具欄以外、増えた装備枠まで全部アルマが使った。

 

 ……まあ、これだけの万能性を得た代償とも言えるだろう。別に問題ない、アルマ以外の武器を使うわけでもないし。というかアルマ以外の武器を使うなんて、俺が満足できないだろう。

 

 ちらり。

 

「……このまま広場にいるのもアレだし、少し歩こうぜ」

 

 そろそろ周囲の視線も煩わしくなってきたところだし、皇都を散策することにした。

 TYPE:メイデンは珍しいらしく、その上美少女とくれば否応なく視線を集める。それに俺の身長も高いから、それも合わせてか周囲の<マスター>の視線が非常にうざい。不躾だ。

 なにが「美男美少女カップル」だ、美男と美少女なのは否定しないけど生憎と見せもんじゃないから。

 

 逃げるように広場を去って、ドライフの街を歩く。

 相変わらずのオーバーテクノロジーの塊みたいな風景の中、会話は自然とアルマが生まれるまでの話へと移り変わった。

 

「こんだけ万能性の代わりに色々と埋めるの見ると、第0形態が長かったのも納得だな。俺に合わせてアジャストするの、大変だろうし」

 

 主にリソースの関係で。

 

「ん。マスター、虚弱を解消したいって思ってたり、それに合わせようとしたらロボット大好きとか言い出すし、病弱のくせに戦いの才能溢れてるし、形が決まりそうになったらENDあげれば病弱が解消されることに気づいたり、めちゃくちゃ振り回された覚えがある」

 

「悪かったな、色々」

 

 連れ添って歩きながら談笑する。アルマは終始無表情だったが、わりと感情が漏れるのでわかりやすい。

 これなら話しづらくはなさそうだ……って、おい待て。

 

 ポタポタ、と、空から雨粒が降ってくる。

 デンドロって天気予報ないのかなあ、と現実逃避気味に考えて……。

 

 さらに速度と量を増した雨粒に打たれ、一気に現実に引き戻された。

 

「やばい風邪引く! アルマ、近くに喫茶店あるからそこ行くまで入ってろ!」

 

「ん!」

 

 アルマを紋章に戻し、全速力で駆け出す。

 くっそ、こういうときAGI高いと便利だろうなあ! 振らないけど! 

 

(……私が車輪になってればよかった)

 

 なんか紋章からそんなことが伝わってきたが、聞こえないふりをして俺は近くの喫茶店にまで直行するのだった。

 

 

 ——最終的に、突然の豪雨はデンドロ内時間で数時間も続いた。

 どうやら俺が気づいていないうちに天候が急変していたらしく、転職もできないままに、俺は数時間喫茶店の中でアルマとともに過ごすのだった。

 

 /

 

 □<オルトウテナ平原> ??? 

 

 初心者が数多く訪れる、初心者狩場として有名な<オルトウテナ平原>。

 現在雨が降っており、誰もいないその地表から約数十メテルの地下に、大きな箱型のナニカが埋まっていた。

 

 ——キキ

 

 軋みをあげる箱型のナニカ。よく見てみればそれは“コンテナ”であり、強固な魔法障壁によって厳重に守られている。事実、上級までの<マスター>の攻撃ならばほとんど減衰させられるほどに強力な結界だ。

 しかしここは数十メテルの地下世界。さらに地表には雨が降っていて、土は湿り気を帯びて重量を増している。

 

 キ、——バギャッ! 

 

 そしてついに重量に耐えきれずに、コンテナの一部が破損した。

 それだけで、中に何も入っていないか、ただのアイテムならば問題なかっただろう。

 

 だがそこに入っているのは、アイテムでも、ましてただのモンスター()でもない。

 

 

 ──化身反応、確認

 ──封印術式破損、待機命令解除

 ──チェックシーケンス

 ──システム・オールグリーン

 ──《物質吸収(マテリアルアブソーブ)》、異常なし

 ──出撃を決定

 ──出撃シーケンスに移行

 

 ——対“武装の化身”用戦闘兵器、——ジジ————M>【クロマドーラ】

 

 ——出撃

 

 そうして、【クロマドーラ】は、コンテナに侵入した土に触れる。

 刹那、その土が消え去った。否、消えたのではない——【クロマドーラ】の腕に、土が付着していた。融合、と言えばいいのだろうか。

 【クロマドーラ】は、それを利用して土を掘り起こし、地上へと突き進んでいく。

 

 ——かつて暴走し、異物の混ざった戦闘兵器。

 フラグマンの手によるものではない、数多の賢者たちによる夢の遺産。

 

 ソレは、己が原初の命令を果たす。

 創造主の命令(オーダー)を果たす。

 

 ただそのために、造られたのだから。




ボス戦闘早くねえかな、と思いつつ、そもそも原作のレイ君が一番ボス戦闘早かったので無問題と気づいた。
感想くれてもいいのよ。
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