男のロマン、それはロボット —<Infinite Dendrogram>—   作:クーボー

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原作へのリスペクトがないと、デンドロwikiの方に言われてしまった……。
……自分なりにリスペクトしているんだけど、読み取れなかっただろうか?


第24話 (そら)を踏みしめ

 □【舞神(ザ・ダンス)】カグラ

 

 舞う。

 

 風に乗り、砂埃に身を翳し、力を抜きつつ猿を切る。

 

『ぐぅ!』

 

「……スゥ」

 

 瞬間的に空気を取り込み、全身に充満させる。

 脱力と力みのタイミングを取る、それこそが長時間舞うために必要なセンス。全身に張り巡らされた神経の糸を通し、筋肉を完全に操作するのが一番重要なこと。

 

 緊張、恐怖、興奮、興味。

 その全ての感情によって揺らぐごく僅かなコンディションを完璧に把握し、それに見合った舞を選ぶことが肝要なのだ。

 

 そのセンスが一族の中で飛び抜けていたからこそ、僕は10時間以上舞うことができた。

 そして、それは僕自身の集中時間とフルコンディションを発揮できる時間に、比例している! 

 

「《神条院神楽舞・風水備(かざみずぞなえ)——瑠璃色奏歌(るりいろかなでうた)》」

 

『また、面妖な剣技を……!』

 

 風拵と水拵を融合させた応用の型。流れるような動きと、それなりに威力が高く素早い連撃を叩き込む。

 

 けど、さすがは神話級。初めて見せるはずの型を、今までの型を受けた経験から見切っている。これは、早々に腕の一本でも切り落としておいた方が良かったかな? 

 

 いや、それには武器の質が足りないな。ENDをいくら削減しても、あちらの皮をぶった切って腕を切り落とすには武器の質がいささか低い。リアルで使ってる玉鋼の刀で行けるかどうか、ってトコだろう。いずれは神話級金属(ヒヒイロカネ)で作った刀が欲しいなあ。

 

 鉄扇っていう手もあるけど……猿王には相性が悪いし。

 

「驚いた。いやあ、すごいね適応力。さすがは神話級」

 

『この程度はな。……だが、一つ聞きたい。どうやって人の身でありながらそれだけの力と、才に恵まれた者であっても容易には辿り着けぬ技量を持った?』

 

 む。これは敵同士の会話という奴だね。乗った! 

 

「技量に関しては、単純に僕の才能が飛び抜けていて、今までの生涯のほとんどを舞に注ぎ込んでいたからだね。これでも僕、結構偉いんだぜ?」

 

『……人の地位はわからん。だが、汝がその域に辿り着くまでに血反吐を吐くような修練をしたことは、理解できる。その剣筋は、天性の才を不断の努力で磨き上げた真なる強者の証だ。我はそれに敬意を表するし、そしてそれを打ち砕きたいと切に思う』

 

「熱烈なラブコール、どうもありがと。君もこの短時間で対人戦闘のコツを掴んだセンス、すごいと思うよ。

 あと……そうだね。そのステータスを使いこなすセンスも、併せてとても良いものだ」

 

 僕は生まれつきの動体視力で、およそ21万という膨大なAGIからなる異常な速度を使いこなすことが出来ている。

 対して、あちらも単純な慣れはあるだろうけど、肉体が振り回されるようになるステータスを全て制御している。それだけでも、単純にすごいと思えるのだ。

 

 ……あとは、そう。

 

 

「ねえ、猿王。もしかしてキミ——配下の数で自分が強化されるスキルでも、持ってない?」

 

 

『……何故、それを』

 

 あは、やっぱりか。

 

「おかしいとは思ってたんだ。これだけの力を持つのに、何故かキミは配下を侍らせている。あの資料にも、キミは配下とともに竜王へと挑んでいた。キミのそのステータスなら、単騎で挑んだ方がいいはずなのに。

 だから自ずと導かれるのは、キミが、配下の数で——それも自分を中心として一定範囲内の配下の数で強化されるスキルを保有しているという事実」

 

 多分、猿王は純粋性能型。一つのスキルを核に、超効率の強大な自己強化を可能とする、特殊なタイプの<UBM>。

 この100匹の猿たちは、猿王の自己強化の保険を含めた数。全てのステータスを均等に強化するから、STRとAGIだけを強化する似た種別の僕のスキルによって、一部追い抜かされたのだろう。

 

「僕のスキルは、視線を集めるっていうわりかし面倒な条件で、その上で数を集める必要がある。

 対してキミのスキルは、自軍を集めるだけで効果が発揮されて、しかも全ステータス超強化。系統が被ってるといえば被ってるけど、キミの方が上位互換と言っていいだろうね」

 

『驚いたな。まさか、我のスキルを完璧に言い当てるとは』

 

 ま、このくらいできないとあのリアルでの狡猾な爺様方の相手なんて無理だからね。ヤヨイは全部受け切った上で反撃してたけど、アレは例外。

 

「さて、タネも割れたことだし……続き、やろうか」

 

『ああ。……と、言いたいところだが』

 

 僕の後ろ、正確にいえばヤヨイと竜王が戦っている方を見る。猿王への警戒は怠らず、僕も空からホムンクルスを呼び寄せて水晶玉を覗く。

 

 ……なるほど、あちらはもう終わったのか。割と距離離れてる上、戦闘に意識を完全に傾けていたから気付かなかった。

 

「向こうさんは終わっちゃったみたいだね。勝ったのは、僕の友人のようだ」

 

『……そうか。それは、残念だが……奴も、楽しんで逝ったのだろう。ならば我は、惜しむ気持ちはあれど、悲しむことはせん。奴が命を賭けるに値する戦ができたのなら、それは喜ばしいことだ』

 

 ふむ。長年戦っていたもの同士、妙な感覚があるのかな。僕にはよくわからないけれど、これも友情の形なんだろうか。

 

『それが我でなかったのは、無念としか言いようがないが』

 

「そっか。複雑な友情があるんだねぇ——それで、どうする? まだ続ける?」

 

 あの二人の戦いが終わった今、僕らが戦う理由はない。僕がガン逃げして、猿王に気づいた<超級>が倒すのを眺めるのも一興だろう。

 

 ——まあ、そのつもりは毛頭ないけど。

 

『無論、続けるとも。奴が逝ったのだとしても、汝が倒すべき敵であることは間違いない』

 

「うん、そう言うと思った」

 

 これは確認だ。

 もはや僕らが戦う理由はない。意味もない。

 

 だけど、道理はある。こいつを倒したいという、純然たる殺意と闘志が、僕らの中に満ちている。

 ならばお互いのどちらかが息絶えるまで、殺し合うのが似合いだろう。

 

「あまり長引かせるのもつまらない。速攻で決めちゃわない?」

 

『……それも、良いかもしれんな。何より、汝は我が一撃でも当てれば死ぬであろう。このまま戦い続ければ、いずれは我の攻撃が当たる時が来る。それではつまらん』

 

 ……バレてたかー。まあ、少し考えればわかることだから驚きはしないけども。

 実際、一発当たれば死ぬというオワタ式みたいな戦いだ。そのくせ相手はEND削って8万に及ぶ攻撃力を叩き込んでも全然倒れる気配がない。

 

 でも、いずれは当たる。ずっと躱し続けるなんて不可能だから。いずれ猿王が動きに慣れたら、その時が僕の終わりの時だ。

 

 だから、この提案は僕が勝てる可能性を残しつつ、速攻でケリを付けられる、言ってしまえば僕に都合が良すぎる提案なんだけど……まさか受諾されちゃうとは。びっくり。

 

 まあ、だからこそ受けてくれたのかもしれないけどね。

 

 だったら僕はそれに乗るまでだ。

 刀を納め、一歩、後ろに下がる。

 

「よし。それじゃあ次の一撃でケリを付けよう。どっちの攻撃が相手の命を奪うか」

 

『その勝負、というわけだな。ならば良し、来るが良い』

 

 タイミングは、自由。どちらが先に動こうと、僕らのAGIならばそれを予兆から察知できる。

 ゆえに——

 

 

(来る)

 

 

 ——そんな、勘のような不確かなものであっても、確かなチャンスとなり得るのだ。

 

 刹那の間に、意識の間隙を察知して。

 猿王は、今までの強化とは比ではないスピードで僕の目の前に現れた。

 

 力を隠していたのか、あるいは使用にタメが必要なのか。

 どちらにせよ、僕の強化を相手が上回った以上、僕にできることはないと——そう、訴える猿王の目を鼻で嗤う。

 

 ああ、そうだね。このままでは僕は負けるだろう。間違いなく。

 ……それが、僕だけの……【アメノウズメ】だけなら、の話だけど。

 

 さあ、行こうか。

 刀の持ち手を掴み、全神経を集中させる。

 (そら)を踏みしめ——(くう)を、薙げ。

 

 

 /

 

 

 勝った、と、そう思った。

 それは、間違いではなかったのだろう。瞬間的に全ステータスを上昇させるこのスキルは、身体に多大な負担をかける代わりに非常に高い効果を持つ。

 

 だからこそ、眼前で佇む少年に拳を振るい——それが一瞬で掻き消えた時には、一瞬、思考が停止した。

 

 

「《神条院神楽舞・土拵(つちごしらえ)——」

 

 

 背後より聞こえるその声は、もはや聞き慣れた少年の唄。

 理屈はわからないが、ああ、そうか。我は負けるか。

 

 ならば一言。

 

『見事』

 

 賞賛を。

 

 

紅落葉絵(くれないちばえ)》ー!」

 

 

 刹那。

 痛みなく、けれど視界がズレて。

 

 

 ——【砂猿王 モナブリム】は……首を刎ねられて、息を引き取った。

 

 

 /

 

 

 僕の特典武具——【千森張飛 カザシミマル】は、本来の<UBM>からだいぶ劣化した能力を持つ。

 

 風を泳ぐとすら評された、天狗の空泳ぎは『大気を踏み、空を歩ける』能力に。

 非常に高いAGIは、僕のAGIをある程度補正するように。

 

 そして長距離転移を可能とする能力は——『10分に一度、超短距離に限り好きな場所に転移できる』能力に。

 

 正直劣化も甚だしいけど、まあ、剣士である僕にとっては非常に有用なものだ。特に、敵の意識の狭間を突く場合は。

 

 先ほどのように、刀を納めて《居合い》の体勢を取り、敵が近づいてきた瞬間にスキルを使用し、背後へと転移。

 そこで2倍になったAGIを込めて、無防備な首元に刃を振り——猿王の首を刎ね飛ばした。

 

 

【<UBM>【砂猿王 モナブリム】が討伐されました】

【MVPを選出します】

【【カグラ】がMVPに選出されました】

【【カグラ】にMVP特典【猿王襲装(えんおうしゅうそう) モナブリム】を贈与します】

 

 

「……ふぅ」

 

 ……最後に、つぶやかれた言葉。

『見事』、と、そう言われて……僕は、あの武人に対して敬意を表したいと思った。

 

 後悔はしていないけれど。

 もしかしたら、他の道があったかもしれないね。

 

 ……と、特典武具を確認しないと。

 

 アイテムボックスからそれを取り出して、装備する。

 

「これは……おぉ」

 

 袴と、巫女装束が組み合わさったような、砂猿特有の黒色を基調とした艶やかな色合いの装束。袴にはあの資料の表紙に書いてあった、猿王の紋章が刻まれている。

 

 これ、今までのオーダーメイド品よりも断然良い。着心地も最高だし、装備補正もSP200%補正と素晴らしい。舞の複合も、戦略も大きく広がりそうだ。

 

 ……でも、困ったトコがある。

 

「装備スキルが、ちょっとこれは……難しいね」

 

 一つ目は、《艶惹威織(えんじゃくいおり)》。【魅了】の付与確率と効果の上昇、視線誘引スキルの強化、それでいて上半身を脱いでも補正と効果が失われないという、単純に便利なスキル。

 

 それで、二つ目、なんだけど。

 

「……《猿王貴魂(モナブリム)》?」

 

 これ……どう使えばいいんだ……?

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