俺の名は“工藤 仁”。どこにでもいる普通の高校生……いやっ、俺は重度のガンオタの高校生だった者だ。
なぜ過去形なのかというと、俺は一度死んだのだ。なぜ死んだのかは判らないが、いずれ死因は後々思い出すだろう。この何もない真っ白な空間の中、俺はガンダムの中で特にお気に入りの一つであるいろんな意味で人気のある“鉄血のオルフェンズ”という作品を思い返していた。あの作品は一言で言えば
そして俺は思った。もしこの願いが叶うなら、彼らの世界で彼らに救いを…。オルフェンズにとっての真の平和を…。そう思った途端、俺の頭の中で何かが囁いたような気がした。
その願い………叶えてあげる………
だから………彼らを助けてあげて………
女性のような声を聞こえた俺は急に睡魔が襲い、その睡魔に敵わず俺は瞼を閉じて眠りについた。次に目を覚ますのかは判らぬまま……
どれほどの時間が経ったのだろうか?そう思った俺は目覚めようと重く閉ざされていた瞼を開く。目に映ったものは部屋の蛍光灯の光。そして徐々に覚醒し、眠気がなくなった後に周りを見渡すとそこにはどこぞのSF映画に出てきそうな機械のベットの上に俺が上半身裸で寝ていたことを理解する。
「……ここは、あの世……なのか?それにしてはSFチックな所だな……?」
疑問に思いつつも俺は身体を起こし、再びあたりを見渡してみるとそこにはガンダムOOに登場する私設武装組織“ソレスタルビーイング”のガンダムマイスター専用の白いパイロットスーツがあった。
「パイロットスーツ…?あの世でもコスプレ大会の類でもあるのか?……それ以前にこのパイロットスーツ、俺のサイズに合わせて作られているのか?一体何の為に………?」
理解すらままならないこの状況で俺はとりあえずいつまでも上半身裸のままにはいかず、やむなくパイロットスーツを着込むのであった。パイロットスーツを着込んだ後、この部屋の出入り口である扉が開き、そこから手の平サイズの球体型ロボットである緑色の“ハロ”が跳ねてやって来た。
《ジン、オキタ!オキタ!》
「ハロ……だと……!?何でハロがここに?」
ますます謎が深まる中、ハロが俺を見た後にそのまま部屋を出た。まるで“付いて来い”と言っているかの様にである。考え込んでも先に進めない最中俺は一旦考えるのを止め、ハロの後を追った。
ハロの後を追ったのは良いものの、続く廊下を進むと景色を見る為のガラスの窓があった。そのガラスの窓の外の景色に俺は絶句した。
ー何故ならば、そこは地球ではなく宇宙だったのだから。
黒い空間で浮遊するのは小惑星っぽい無数の岩。そして何よりも決め手なのは、
「……どうやら俺はあの世ではなく、ガンダムの世界に来てしまった様だ。恐らく空耳と思ったあの声の主の仕業だろう」
その声の主はどういう理由で俺をこの世界に来させたのかは定かではない。その考えを一旦止め、宇宙で浮遊するMSの残骸を見た。俺は浮遊するMSの残骸である腕をよく見てみると、見覚えのある腕であった。その腕は鉄血のオルフェンズのMS“ガルム・ロディ”の物であることを理解した。……どうやら俺はよりによって鉄血のオルフェンズの世界に来てしまったことを理解してしまった。そんな時に先に行っていたハロが戻ってきて《コッチ!コッチ!》と俺を誘導するようにまた先に行った。何故俺はこの世界に来てしまったのかは未だに分からないが、俺がこの世界に来たのは何か意味があると思いつつ再びハロの後を追った。
ハロの後を追ってある程度廊下を進んで行き、ある扉を通り抜けるとそこはMSを格納するハンガーらしき場所にたどり着いた。そのハンガーにある一機のMSが格納されていた。そのMSに俺は見覚えがあった。そのMSは本来ならこの世界では存在しないはずの物で、ガンダムOOの世界の第1世代ガンダムであるGN-000“Oガンダム”の汎用性を強く受け継ぎ、第3世代のGN-001“ガンダムエクシア”の前身となった機体。
ー第2世代ガンダムの1号機GNY-001“ガンダムアストレア”
そのアストレアなのだが、何かと姿形が少し違っていた。TYPE-Fの特徴である仮面型センサーマスクを装備していないのは判る。だが肝心の違う部分はそこだけではない。頭部はTYPE-F2の頭部アンテナの形状を使用している。そしてエクシアの予備パーツで改修された形跡があり、特にリアスカートアーマーと肩のショルダーアーマーはエクシアR2の物が使用されていた。そのアストレアの見たことないバリエーションに俺は見たことがあるような気がした。
……違う、見たことがあるのではなく
「ガンダムアストレア……TYPE-F3…!」
ガンプラで組み立てた架空のバリエーション機はどういう訳か俺の目の前に、確かに存在していた。するとアストレアのコックピットが開き、その中には先ほどのハロがいた。
《ジン、チコク!チコク!》
「遅刻って……未だに俺はこの状況を飲み込めてないのだが……?」
ハロと話している時に俺はコックピット内であるコネクタ接続部を発見する。そのコネクタ接続部は背中の脊髄部分の位置に配置されていた。このコネクタ接続部を見た俺はあるシステムであることを理解した。
「これは……阿頼耶識システムか?しかもこれは、オリジナルのか?……まさかっ!」
俺は一旦パイロットスーツを上半身だけ脱ぎ、その後に自身の背中の脊髄部分を触れてみると鉄の感触が感じられた。
「マジか……俺、いつのまに阿頼耶識施術を受けたんだ?……何て、冗談言ってる場合じゃないか」
《乗ッテ!乗ッテ!》
「.……本当なら乗りたくはないんだが、乗らないと話が進まなさそうだし.……やむ負えないか」
俺は恐る恐るアストレアのコックピットに乗り込み、オリジナルの阿頼耶識システムと接続する前にハロにあることを頼んでみた。
「ハロ、出来るなら阿頼耶識システムを通して俺に掛かる負荷の軽減を頼めるか?」
《了解!了解!》
少し不安になりながらもコックピットシートに座り、ハロにサポートを頼んだ後に阿頼耶識システムのコネクタと接続すると膨大な情報量が俺の脳裏に走り回った。ハロのサポートがあるものの、これはこれで結構きつい。
「…ぐぅっ!?これ、結構……キツイな……!だが、阿頼耶識システムを通して操縦方法が分かる…!網膜投影、スタート」
阿頼耶識システムに苦闘しながらも俺は網膜投影を起動させた。この時に俺はアストレアが動かせるのかどうか試してみたいと思った矢先、アストレアを固定していた台が移動を開始した。その時に俺は悟った。これはカタパルトの方に向かっているのではないのかと。
「まさか……カタパルトの方へ移動している?」
《発進準備!発進準備!》
「おいおい……急過ぎるだろ。幾ら何でも早すぎるって!…でもまぁ、動かしてみたいっていうのは本当のことだし少し肩慣らししてくるか」
そう楽観的に考える俺。アストレアがカタパルトに到達すると武装やシールドを掴んでいるアームがアストレアに取り付けた。そして発進ゲートが開き、そして発進合図であるランプが緑色に光っていた。この時に俺は射出タイミングがアストレアに譲渡されていることに気づく。
「この様子だともう出られるようだな?」
《出ラレル!出ラレル!》
「オーライ、もうこうなりゃ流されるまま行くしかない様だな?……工藤 仁、ガンダムアストレア。目標地点に向かう!」
レバーを動かすとカタパルトが連動してアストレアを押し出し、アストレアの背中に搭載されているスリースラスター型のGNドライヴからGN粒子を放出して宇宙空間へと飛び出た。その際に俺はカタパルトの加速によるGを体感した。それは重く、ジェットコースターとは比べものにならない位にキツかった。
「……っ!ハァ…ハァ…!これ程のGが掛かるなんてな…。正直舐めてたわ」
そう言いつつも俺は操縦桿を握り、ある程度動かしてアストレアの動かし方を理解した。一応阿頼耶識システムで操縦方法を覚えたのだが念の為である。
「よし……いい感じだ。じゃ、肩慣らしにいっちょ飛ばしてみるか?」
《危険!危険!》
ハロが危険であると俺に告げているものの、初めてMSを乗って操縦した為か少しハイになっていた為かハロの言葉を聞かなかった。
「そういうなよハロ?鉄男を作ったとある社長さんが言っただろう?時には歩くよりまず、
俺は操縦桿とフットペダルを操作してブーストダッシュを試みた。するとアストレアの背中のスリースラスター型の太陽炉からGN粒子が大量の放出され、機体は加速し、その分のGが俺の身体に掛かる。
「グゥォオオウオウオ!?ホッホォー!!最高だ!痺れるぜ、アストレア!もっと俺にお前の
アストレアを操縦しながらも俺は
ーアストレアを操縦してから10分後、俺は出撃したであろう小惑星を改造して建造された基地に帰還し、ハンガーに戻った後に俺はアストレアから降りた時に俺は嘔吐した。あまりにもはしゃぎ過ぎて今まで体験したことがないことが仇となって身体がついていけず、俺は軽く酔ってしまったのだ。
「うぇっ……気持ち悪ぃ……柄でもないことはやるもんじゃないな」
《言ワンコッチャナイ!言ワンコッチャナイ!》
「うぅ……あぁ、取り敢えずアレだ。教訓として先ずは身体を鍛えよう。ハロ、しばらくは長いつき合いになりそうだから今後ともよろしく頼むよ」
《任サレタ!任サレタ!》
こうして俺は、この小惑星基地にてアストレアを完全に自分の物にすべく日々訓練に勤しんだり、この世界の常識や世界情勢、この小惑星基地の内部の詳細などを把握する為に色々と調べたりするのであった。
ー2ヶ月後……
この世界に来てから……いやっこの場合は転生と言うべきか?…まぁ良い。些細なことは気にしないとしてこの世界に転生してから2ヶ月もの月日が経過した。
この小惑星基地に滞在していている時に俺はこの基地にある装置が存在することに気づいた。それは“
……ただ、このGシステムは仕組みややり方が違っていた。高エネルギー圧縮体であるECAPや設計図は不要で、その代わりに“キャピタル”と呼ばれるデータ通貨を使用する仕組みであった。……これってGジェネじゃね?と思ったのは発見した当時であった。そして肝心のデータ通貨であるキャピタルの稼ぎ方はMSや戦艦、MAなどの倒すことでデータが収集し、蓄積されてキャピタルが増えると言うものだった。
現在の俺は資金調達の為にアストレアでエイハブ・リアクターを搭載しているMSや戦艦などの残骸を探しに来ていた。いくら資源が豊富でも、今後の資金が無ければ意味がないと1ヶ月前に始めた事なのだが一向にMSといった残骸らしきものは見当たらなかった。
「ここもハズレか…。リアクターやMS、戦艦などの残骸があればジャンク屋で言い値で買い取ってくれるのだが、此処にもないとしたらそろそろこいつを使って傭兵をやるしかないな……ん?」
あたりをよく見渡してみるとそこには残骸と化した一機のMS“スピナ・ロディ”が浮遊していた。運が回ってきたのかはともかく、そこで予想外なことがあった。
《生体反応アリ!生体反応アリ!》
「生体反応?……まさか、まだ生きているのか!?」
そのスピナ・ロディにはまだ生きている人間が乗っていると分かった途端俺はスピナ・ロディに近づいてコックピット付近をよく見てみると赤茶髪の女の子と薄茶髪の男が乗っていた。何で二人で乗っていたのかはともかく、その二人が共通するものが背中にあった。
それは阿頼耶識システム。俺のとは違って流出された粗悪性の阿頼耶識システムである。
「阿頼耶識……か。となると彼らは
ー“ヒューマンデブリ”
様々な理由があるが噛み砕いて説明すると阿頼耶識システムの手術を強制的に受けて少年兵として使われ、人としてではなく
「ハロ、彼らのバイタルはまだ持つか?」
《直グニ搬送!直グニ搬送!》
「急がないとやばいってことか。……ならやることは決まっている。こいつらを基地に運ぶぞ。帰ったら直ぐにこいつらをナノマシン・ベットに入れてやんねぇとマズい。飛ばすぞハロ!」
《了解!了解!》
アストレアでスピナ・ロディを抱え、俺は二人の生存者を助けるべく基地に運ぶのであった。
基地に戻った後、彼らを医療室にあるナノマシン・ベットに寝かしつけた後に俺は再びハンガーへと向かい、残骸と化したスピナ・ロディのデータを解析していた。そして解析して分かったことが二つあった。彼らの名前と経由である。名前の方は彼らが乗ってきたスピナ・ロディのコックピットの中からヒューマンデブリのリストからである。
「えっとだ………赤茶髪の女の子が“イザベル”で、薄茶髪の男が“ファーラン”か。……名前からして巨人に食われた人物っぽい人と思ったのは俺だけか?」
《気ニスルナ!気ニスルナ!》
彼らの経緯なのだが、どうやらどこかの宇宙海賊からスピナ・ロディを奪って脱走したヒューマンデブリの様だ。今思えば、組織から脱走するヒューマンデブリもいたんだな?その証拠に先程確認された少量の資金が積み込まれていた。
「脱走したのはいいものの、今のご時世じゃ真っ当な仕事に有り付けないだろうな。今の彼らじゃ……」
《ドウスル?ドウスル?》
「どうするも何も、一度関わってしまったんだ。いずれ彼らの仲間がこの基地を発見されられるのも時間の問題だ。だったら、最後まで関わり抜くしかないだろう。ハロ、二人が起きたら俺に知らせてくれ。俺は少しアストレア用の新武装の開発や、いずれテイワズから買う予定の百錬の新装備のプランを考える」
《了解!了解!》
ハロに二人のことを任せて俺は自分の部屋に戻り、PCでアストレアの新武装の開発プログラムを組み立てつつも木星圏を中心に、主に小惑星帯の開発や運送を担う企業複合体“テイワズ”から購入予定のテイワズ・フレームの“百錬”の新装備プランを考えるのであった。
ー2時間後
新武装と新装備プランを両方考えながらやった為か疲労がたまっていき、そして俺は疲労回復の為に一度ベットで眠り込んでいた。
「あぁ……疲れた。取り敢えずアレだ。アストレアの新武装は決まった。それはそれで良しとしよう。問題は、百錬の新装備プランだな……。どうしたものか?」
アストレアの新装備プランは決まったものの、購入(もし出来なければレンタル)予定の百錬の新装備プランが中々どうして思いつかなかった。百錬の新装備プランを未だに考え込んでいる最中、ハロから通信が入った。
《ジン、二人起キタ!二人起キタ!》
「…おっサンキュな、ハロ。さてっと……行くとするか」
俺は起きた二人の様子をこの目で確かめようと一旦作業を中止して二人がいる医療室に向かうのであった。
仁Side out
……あれっ?アタシ、何で此処にいるんだっけ?確かアタシはファーランと一緒に海賊組織“エスメラルダ”から脱走を試みたんだけど追撃に来たMSの銃撃でスラスターをやられて、デブリにぶつかって………?
……ってことはアタシ達、死んだのかな?それにしても何か変だ。そう思っている内に瞼に光が当たっていることに気づいた。アタシは何とか閉じている瞼を動かして開いてみると、そこには天井があって、一つの蛍光灯が部屋全体を照らしていた。あたりを見渡してみようとした時に身体が何かの液体に浸かっていることが分かった。
「何だこれ…?それ以前に、此処どこだ?」
動こうとしてもアタシは何かしらの機械に拘束されていて身動きが出来なかった。その時に何かが動く様な音がした。その音はアタシの周りで鳴っていた。すると身体を拘束していた物が外されてそして浸かっていた液体が抜かれていき、全ての液体が抜かれた後にフタ?っぽい物が上に上がっていく様に開いた。その時にアタシはある違和感を抱いた。
「何なんだ?それに……アタシの身体、治っている?」
海賊組織の大人たちに打たれた痕などが消えていた。謎めいている時にアタシはもう一つの疑問に気づく。
「……あっ!アタシの服は?!」
その時のアタシの格好は袖が長くてヒラヒラした服一枚だけだった。自由になったアタシは周りをよく見てみる。すると、一つのロッカーがあった。アタシは少し警戒してそのロッカーをゆっくりと開けて中を見てみると、アタシのじゃない別の服一式と一枚の紙切れが入っていた。
その紙切れを取って読んでみたらこう書いてあった。
ー君たち用の服一式を置いておいた。お好きにどうぞ。
最初に読んだ時は怪しかった。でも、流石にいつまでもこの格好は恥ずかしかったのでやむなく着ることにした。
そして着替え終えてこの紙切れの主もそうだが、その内容について考えていた。
「君たち……か。もしかして、ファーランも?」
今は此処にいない
《起キタ!起キタ!》
「な…何だこれ?喋るボール?」
《コッチ!コッチ!》
「あ!…ちょっと待てって!」
アタシはそのオレンジ色の丸っこい奴を追いかけると、そのオレンジ色の丸っこい奴は別の部屋に入っていった。アタシもその部屋に入るとそこには一緒に脱走したファーランの姿があった。
「…!イザベル?!」
「ファーラン!お前、無事だったんだな!」
ファーランがいることに安堵した私は先程追いかけていたオレンジ色の丸っこい奴を見つけると、そこには別の緑色の丸っこい奴がいた。
《兄サン、二人起キタ!起キタ!》
《了解!ジン、二人起キタ!二人起キタ!》
その丸っこい奴等は兄弟か何かだったのかは分かった。でも、あの緑色の丸っこい奴が言っていたジンって誰だ?
「イザベル、お前も無事だったんだな?」
「あ…あぁ、何とか。でもファーラン、なんか変だよな?」
「あぁ、俺も思った。此処の設備といい、やたらと気が利きすぎている。それ以前に此処はどこなのか分からないと来た」
「…もしかしてアタシ達、マジであの世に来ちまったのか?」
「いや、君たちはまだ生きているぞ」
此処が何処なのかファーランと話し合っている時にそいつが居た。そいつはアタシとファーランと同い年くらいの男で、何かと少し子供っぽくて抜け目のない奴だった。ジンとの出会いが後にアタシ等の人生を大きく変化することを今のアタシには知る由もなかった。
二人の孤児を基地に招き入れたジン。しかし、その孤児二人に迫る影がジンを戦いへと誘う。
次回、『女神の初陣』
運命の歯車が動きだす。