玩具のコマーシャルフィルムでしかなかったこの作品は、
アニメ業界に”ガンダム”という一つのジャンルを確立し、
長年続くシリーズとして、今現在でも衰えない人気を博している。
そして、CMであるのだから、商材があり、
その最もスタンダードなアイテムが、ガンダムのプラモデル、通称”ガンプラ”。
ガンダムの歴史と共に進化し続けたこの玩具もまた、人々に支持され。
今やプラモと言えばガンプラと広まってもいるほど。
この物語は、ガンダムと、ガンプラをこよなく愛する、少年と少女達の物語。
1/1ガンダム立像。お台場などで展示され、その圧倒的な迫力に、
ガンダムファンはおろか、知らない人も魅了した、とんでも企画。
都内に住んでいない人でもアクセスしやすい、静岡駅での公開期間。
『キドウ・タタミ』は、友人二人と、その見物に来ていた。
深緑の髪を中学二年生というには幼く見えるように短く伸ばし。
黒曜石の双眸に、白い巨人をクッキリと映しながら口をついてでたのは。
「・・・おおきい」
実物大ガンダムを見た最初の一言アンケートをとればダントツ一番だろう感想。
けど、そうだとしか思えない、CGかと見間違えそうなスケール感は、
テレビや写真では絶対味わえない、身にしみる感動。
それはタタミだけでなく、友人の『サトウ・コウタ』も同じようで。
”大仏面”とよく評される人畜無害そうな顔に、頭を洗うのにシャンプーも必要がなさそうな坊主頭。
巻いた白いハチマキに寿司ネタを書くのが好きで、今日は甲イカと達筆で記されている。
タタミに続き、コウタも実物を前にし。
いや、タタミ以上で、電車の中から大はしゃぎだったものにさらにプラスされている。
「うひょー! すげぇ! でけぇ! すげぇぇぇぇぇぇ!!」
周囲からの視線が集まるのもおかまいなく、騒ぐコウタ。
興奮のあまり、なぜか服を脱ぎだすのを、
「少し落ち着け」
「おふぅ!」
チョップで止めるもう一人の友人。
彼らと同じ年にしてはずいぶんと大人びた容姿と身長が映え。
茶髪の髪をアイドルみたいに整髪料でセットした伊達男。
「まったく・・・、しかし、これは予想以上にすごいな」
友人の暴走を止めながら、『カンザキ・ガク』もまた、1/1ガンダムに魅了されていた。
同じ中学の同級生で、いつも一緒の三人組。
元気すぎるトラブルメーカーのコウタに。
クールなイケメンのガク。
そして、歳より幼く見えるタタミ。
今回の1/1ガンダム見学はコウタとガクの希望で。
タタミはガンダムについてほとんど知らなかった。
けど、知らない彼すらも惹きつける魅力が、巨大な立像にはあった。
ガンダムの置かれた広場の片隅に立てられた、グッズ物販のコーナー。
じっくりガンダムを眺めた後、3人はそこに入り、早速ガンプラを物色。
コウタとガクは真っ先に会場限定ガンプラを確保。
ガンプラのパッケージを初めて手に取ったタタミは。
「ガンプラって、こんなにあるの?」
両手の指なんかではとても足りない、ガンプラの豊富すぎるラインナップ。
丁度この日は仕入れたばかりなのか、並のプラモ屋では不可能な在庫量。
おどろくタタミを見ながら、コウタとガクは顔を見合わせ。
「TVシリーズやるたびに、30種とかでてるからなぁ」
「ガンプラは絶版もほとんどない。現状千種は超えているだろう」
「すごいなぁ、いっぱいありすぎて、どれがどれかよくわかんないや」
どうやら、タタミは買う気満々、人生初ガンプラに挑戦のようだ。
だったら、すぐ目の前に立ってる『ファースト』のHGが良いんじゃないかと、
二人が相談していると、ふと視界に入ったあるガンプラに、タタミの瞳が輝いた。
「わぁっ! これかっこいい!!」
見つめるのは、『0083シリーズ』のHGコーナー。
GP01か? いやGP02かもしれない。
なかなか渋いセレクトだな、と思っていたら。
手に取っていたのは、白とオレンジ色のガンプラ。
「え~っと、『ぱわーど・じむ』? これもガンダムなの?」
「いや、それはガンダムじゃねえよ・・・」
「ジムといって・・・、まぁガンダムの引き立て役というか・・・」
まさかジム、それも地味なパワードに食いつくのかよ。
とは言え、止める理由もないし、なによりタタミはもう手放しそうにない。
「これにする! 僕の初ガンプラ!」
まるで幼子のように、心から嬉しそうに、箱を抱きしめるタタミ。
可愛い系のショタ少年の姿に、丁度後ろにいた子連れのお母さんがキュンッとしている。
「・・・ジュルッ」
「ガク、よだれよだれ」
「はっ! ・・・コホン」
本人は知らないが、タタミの見せるショタ気は学校で有名で、
直接声こそ掛けはしないが、男女問わずかなり人気が高い。
たまに”ホンモノ”が覚醒するらしいが、
それはガクとコウタが止めているので、今のところタタミに被害は一切無く。
無垢なタタミは、大事そうにパワード・ジムの箱を抱きしめ。
「僕の、ガンプラ・・・♪」