ガンプラビルダーズ・フレンズ   作:いすた

17 / 22
4-5

試合は終わり、いつもなら喝采が巻き起こるはず店内。

 

今は、重苦しい空気が流れ、満たしていた。

 

ブツブツと不満を漏らしながら、逃げるように走るフリーダムの持ち主。

 

出口へ、そう思いガンプラバトルのコーナーを抜けた先に待ち受けていたのは、

 

他の選手たちに拘束され、恐怖に怯える三人組のあと二人。

 

爆竹を仕掛け、逃げていった少年を捕まえたのはガク。

 

かなり手荒い捕まえ方をしたようだ、頬が腫れ上がり元の原型が見えない顔。

 

ジャスティスを使っていたほうは、やめてやめてと泣きわめいている。

 

あんなヤツしらない、つかまるヤツが悪い、俺は逃げると思うのだが、

 

四方から集まるキツイ視線が、萎縮させ、逃げられない事を悟らせる。

 

 

「は・・・はは。あんだよ?

 

 おまえら、何ムキになってんだよ?」

 

 

小学生や中学生だけではない、20代や30代、もっと老齢の者も多い。

 

 

「いい大人が玩具遊びになに本気だしちゃってんの?

 

 ・・・まじカッコワリィし!」

 

 

せめてもの抵抗だったのだろうか。

 

言いたいことはそれだけかと、詰め寄っていく大人達。

 

彼らはガンプラビルダーとしてではない、

 

人として過ちを犯した、それを許すものは、ここには誰一人いない。

 

 

「・・・どうして?」

 

 

その背中にかけられる、悲しそうな声。

 

恐怖で反射的に振り向いた手に、

 

置いてきたフリーダムとジャスティスのガンプラが押し込まれた。

 

先ほど自分を撃墜した、パワード・ジムのパイロット。

 

 

「そんなに、誰かを見下していたい?

 

 誰かに勝って、自己主張してないと、気がすまない?」

 

「・・・は? お前なにいってんの?

 

 遊びで哲学とか、マジでおかし―」

 

「その遊びの勝ち負けに一番こだわってるの、君じゃないか!」

 

 

タタミの、怒りじゃなく、悲痛な叫び。

 

 

「おかしいよ!」

 

 

目尻に浮かぶ涙が、顔を上げて、飛沫となって飛び散った。

 

 

「さっきの君は言ってたよ!? フリーダムが最強だって!

 

 好きなんだよね? 好きなモノで、なんでこんな酷い事するの!?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「好きなら・・・、どうして優しくあげれないの?

 

 僕には、わからないよ・・・」

 

 

直接戦ったから、タタミにはわかる感情。

 

この少年の心は歪んでいる、だけど、ガンプラが好きなんだ。

 

タタミの言葉は、届いたのだろうか?

 

他の誰の怒りよりも、それは強い感情で。

 

 

「勝っても負けても、悲しいだけなんて、絶対あっちゃだめなんだ!!」

 

 

タタミの、誰もが望むだろう想いが、響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、店長から三人組へ、入店禁止が言い渡され、大会は続けられた。

 

ショックが大きかったのか、タタミとユリカはその後の試合は辞退。

 

ガクやコウタにとっても、非常に後味の悪い結末だった。

 

そして、大会の次の週末の事だった。

 

一週間で気を持ち直したタタミは、

 

他の皆よりも早く、いつもの店へとやってきた。

 

フライングアーマーをもっと使いこなせるようにしたい。

 

パワード・ジムと共に抱きしめてやってきたタタミに、声がかけられる。

 

 

「タタミ兄ちゃん!」

 

「あ、マサヒコ君」

 

 

先日の3対3大会で一緒になった、ガンダムエックスを使っていたマサヒコ君。

 

その後ろには、ザク1・スナイパーを片手に、

 

ノーマルスーツに着替えた彼のお父さん。

 

一緒に遊んでいた親子が、タタミを見つけて駆け寄ってくる。

 

 

「先日はすまなかったね。だが、おかげで私も大切な事を思い出せたよ」

 

「ううん、僕はなにもしてないから」

 

 

用件は、挨拶だけではないようだ。

 

お父さんにほらと促され、マサヒコは、えっと、と前置きし。

 

 

「あのね、先週の大会でタタミ兄ちゃんと戦った3人なんだけど」

 

「・・・うん」

 

 

どうしていきなり、彼らの話になるのだろう?

 

暗い話ではないようだ、マサヒコは、早くタタミに伝えたいと笑顔。

 

 

「昨日ね、3人で、デパートでガンプラ買ってたよ」

 

「・・・え?」

 

「きっと、タタミ兄ちゃんの言葉が届いたんだよ!

 

 もうこのお店にはこれないと思うけど、

 

 ちゃんと、ガンプラビルダーになったんだよ!」

 

 

そうかもしれない、そうじゃないかもしれない。

 

けど、悲しいだけの結末じゃないと、信じたかった。

 

 

「・・・良かった」

 

 

いつかちゃんと、あの三人には、ガンプラを愛してほしい。

 

コウタが語った、根っからの善人ゆえの、優しい心。

 

それは熱い雫となり、頬を流れていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。