試合は終わり、いつもなら喝采が巻き起こるはず店内。
今は、重苦しい空気が流れ、満たしていた。
ブツブツと不満を漏らしながら、逃げるように走るフリーダムの持ち主。
出口へ、そう思いガンプラバトルのコーナーを抜けた先に待ち受けていたのは、
他の選手たちに拘束され、恐怖に怯える三人組のあと二人。
爆竹を仕掛け、逃げていった少年を捕まえたのはガク。
かなり手荒い捕まえ方をしたようだ、頬が腫れ上がり元の原型が見えない顔。
ジャスティスを使っていたほうは、やめてやめてと泣きわめいている。
あんなヤツしらない、つかまるヤツが悪い、俺は逃げると思うのだが、
四方から集まるキツイ視線が、萎縮させ、逃げられない事を悟らせる。
「は・・・はは。あんだよ?
おまえら、何ムキになってんだよ?」
小学生や中学生だけではない、20代や30代、もっと老齢の者も多い。
「いい大人が玩具遊びになに本気だしちゃってんの?
・・・まじカッコワリィし!」
せめてもの抵抗だったのだろうか。
言いたいことはそれだけかと、詰め寄っていく大人達。
彼らはガンプラビルダーとしてではない、
人として過ちを犯した、それを許すものは、ここには誰一人いない。
「・・・どうして?」
その背中にかけられる、悲しそうな声。
恐怖で反射的に振り向いた手に、
置いてきたフリーダムとジャスティスのガンプラが押し込まれた。
先ほど自分を撃墜した、パワード・ジムのパイロット。
「そんなに、誰かを見下していたい?
誰かに勝って、自己主張してないと、気がすまない?」
「・・・は? お前なにいってんの?
遊びで哲学とか、マジでおかし―」
「その遊びの勝ち負けに一番こだわってるの、君じゃないか!」
タタミの、怒りじゃなく、悲痛な叫び。
「おかしいよ!」
目尻に浮かぶ涙が、顔を上げて、飛沫となって飛び散った。
「さっきの君は言ってたよ!? フリーダムが最強だって!
好きなんだよね? 好きなモノで、なんでこんな酷い事するの!?」
「・・・・・・・・・」
「好きなら・・・、どうして優しくあげれないの?
僕には、わからないよ・・・」
直接戦ったから、タタミにはわかる感情。
この少年の心は歪んでいる、だけど、ガンプラが好きなんだ。
タタミの言葉は、届いたのだろうか?
他の誰の怒りよりも、それは強い感情で。
「勝っても負けても、悲しいだけなんて、絶対あっちゃだめなんだ!!」
タタミの、誰もが望むだろう想いが、響き渡った。
その後、店長から三人組へ、入店禁止が言い渡され、大会は続けられた。
ショックが大きかったのか、タタミとユリカはその後の試合は辞退。
ガクやコウタにとっても、非常に後味の悪い結末だった。
そして、大会の次の週末の事だった。
一週間で気を持ち直したタタミは、
他の皆よりも早く、いつもの店へとやってきた。
フライングアーマーをもっと使いこなせるようにしたい。
パワード・ジムと共に抱きしめてやってきたタタミに、声がかけられる。
「タタミ兄ちゃん!」
「あ、マサヒコ君」
先日の3対3大会で一緒になった、ガンダムエックスを使っていたマサヒコ君。
その後ろには、ザク1・スナイパーを片手に、
ノーマルスーツに着替えた彼のお父さん。
一緒に遊んでいた親子が、タタミを見つけて駆け寄ってくる。
「先日はすまなかったね。だが、おかげで私も大切な事を思い出せたよ」
「ううん、僕はなにもしてないから」
用件は、挨拶だけではないようだ。
お父さんにほらと促され、マサヒコは、えっと、と前置きし。
「あのね、先週の大会でタタミ兄ちゃんと戦った3人なんだけど」
「・・・うん」
どうしていきなり、彼らの話になるのだろう?
暗い話ではないようだ、マサヒコは、早くタタミに伝えたいと笑顔。
「昨日ね、3人で、デパートでガンプラ買ってたよ」
「・・・え?」
「きっと、タタミ兄ちゃんの言葉が届いたんだよ!
もうこのお店にはこれないと思うけど、
ちゃんと、ガンプラビルダーになったんだよ!」
そうかもしれない、そうじゃないかもしれない。
けど、悲しいだけの結末じゃないと、信じたかった。
「・・・良かった」
いつかちゃんと、あの三人には、ガンプラを愛してほしい。
コウタが語った、根っからの善人ゆえの、優しい心。
それは熱い雫となり、頬を流れていった。