ガンプラビルダーズ・フレンズ   作:いすた

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TV収録が終わってから、ガンプラビルダー達はこぞって筐体の中へ。

 

タタミとパワード・ジムが行ったファンネルを足がかりにしたダッシュを、

 

皆が実演し始め、まともに成功したものがほとんどは居らず。

 

ガンプラの性能ではなく、パイロットの技量に依存する戦法に、

 

タタミは負けたという結果以上の評価を受けていた。

 

店の代表として恥ずかしくない戦いを見せた彼は、

 

皆を連れて家に帰るなり、アイドルとの件を相談する。

 

 

「―そういうわけで、明日、たぶんもう一度戦う事になるんだけど・・・」

 

 

タタミの話を聞いて、三者三様。

 

 

「試合に負けて下さいって、最初に申し出たのはあちらなのに、

 

 なんだか、理不尽な気がしますね」

 

 

別にタタミは悪くないと、ユリカは不満を漏らし。

 

 

「クーミちゃんはヤラセなんて望んでねぇって事か。

 

 TVも罪作りだねぇ、いや、クーミちゃんマジ天使」

 

 

などとのたまうコウタ。

 

 

「まぁ、白熱していただけに、わざと負けられたのは気に入らんだろう。

 

 それがプロデューサーの方針でもな」

 

 

俺もあのアイドルの立場なら怒っていた、とガク。

 

謝罪しようにもアイドルに直接電話が通じるはずもなく、

 

明日、面を向かって謝るしかないだろう。

 

で、タタミの相談の本題なのだが。

 

 

「あのクシャトリヤっていうガンプラへの対抗手段を、考えたいんだ」

 

「おいおい謝って終わりじゃねぇのかよ?」

 

 

なんでやる気マンマンなのかと、コウタの問いに、タタミはうんと肯定。

 

 

「僕も、今日の戦いは不満だったから。

 

 もう一度、ちゃんと戦いたいんだ!」

 

 

約束なんてしなければ良かった。そう一番思ったのはタタミ本人。

 

アイドルのテレビ用ごっこ遊びじゃない。

 

彼女は、タカイ クミは、本物のガンプラビルダーだ。

 

インターネットのリプレイ再生サイトで、あのクシャトリヤの戦いを確認。

 

とにかく強力なのが、ファンネルによるオールレンジ攻撃。

 

それをかいくぐったとしても、バインダーや胸部のメガ粒子砲が襲い掛かり。

 

接近戦であっても、体格からくるパワー勝負では、

 

ほとんどのガンプラに有利を取り、勝利を収めていた。

 

ガクが地上で戦うな、と言ったのはこれが理由。

 

移動方法が限られる地上で正面からぶつかって、勝てる相手ではない。

 

隙といえる隙など、およそ存在するように見えなかった。

 

数試合のリプレイを確認した後、改めて作戦会議。

 

とにもかくにも、ファンネルを封じる必要があると提案するガク。

 

 

「まずはファンネルだな。アレへの対処をしなければ、どうしようもない」

 

「ファンネルきたら、また踏み台にすりゃいいんじゃねぇの?」

 

「・・・ムリだと思います。同じ手が2回も通じる相手とも思えませんし」

 

「逆に、ファンネルのある場所に移動するのがわかる分、狙い撃ちだろうな」

 

 

所詮は曲芸の域をでない技だ、多用はできないだろう。

 

ガンプラの中でも規格外の戦闘能力を有するクシャトリヤへの対策。

 

今のパワード・ジムの装備ではだめだ、何かがいる。

 

・・・そういえば、TV出演のバイト代として、

 

タタミがもらったガンプラを思い出したユリカ。

 

購入予定だった代金が浮いたと、RG・Zガンダムを選んだタタミ。

 

せっかくなら、もっと大型キット貰えよとコウタに言われていたが。

 

Zガンダムが劇中で見せた、対ファンネルへの切り札があったではないか。

 

 

「タタミさん! あれを使えば・・・!」

 

 

必要なのは、ビームサーベルとビームライフル。

 

ユリカの思いついた案を元に、ガクとコウタも協力して作戦を煮詰める。

 

明日の戦いへ向け、入念な作戦が練られていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方的とはいえ約束は約束。

 

指定時間の30分前に、一人店にやってきたタタミは、

 

クーミが来るまで練習しておこうと思っていた。

 

彼女自身も、扱うガンプラも強い。

 

素組みであるが故の油断を誘うこともできない今、

 

性能で劣るパワード・ジムに、非常に分の悪い条件だ。

 

準備には念を押すに越したことは無いと思っていたのだが・・・。

 

深めの帽子にサングラス姿の少女と店先でばったり鉢合わせ。

 

パッと見には誰かわからない変装だが、口元はごまかせない。

 

 

「クーミさん?」

 

 

あちらもタタミの顔を覚えていたので、自己紹介するまでもない。

 

 

「へぇ、殊勝な心がけじゃない。約束よりも前に到着なんて」

 

 

別れ際の勝気な声音のまま、サングラス越しのタタミを睨む瞳。

 

どうやら、ご立腹は継続中のご様子。

 

まず謝ろう、そう決めていたタタミが口を開く前に。

 

 

「さっさとやるわよ。今日は中途半端で終わらせないから」

 

 

カツカツと不愉快全開な靴音を鳴らしながら先を行くクーミ。

 

これは話を聞いてくれる様子ではないなと、タタミは黙ってついていく。

 

店に来ていた常連達が、タタミに気づき、続いて隣の少女を見て。

 

 

「Oh! タタミ君、今日はアルケーガールじゃないんだYO!?」

 

「むむむっ! 別のカワイ子ちゃんなんだな!?」

 

「ほほう、これはこれは、タタミ君もやりますねぇ」

 

 

さすがにアイドルとは思っていないようだが、

 

ユリカではない美少女を連れてきたタタミを冷やかすガノタ三人衆。

 

タタミには良くわからない冷やかしなのだが、

 

その対象とされたクーミは。

 

 

「・・・あんた、おとなしそうな顔して、肉食系?」

 

「え? 僕は野菜も魚も好きだよ」

 

「ねぇ、まさかそれ、素?」

 

「ス? あ、酢飯? うん! お寿司大好きだよ!」

 

「・・・もういいわよ」

 

 

毒気が抜かれそうになり、大きなため息をつくクーミ。

 

この天然をショタ顔でやるものだから、性質が悪い。

 

もういいやとサングラスと帽子を外し、端末をいじるクーミ。

 

周りが気づき、ざわつきだすが気にしない彼女は。

 

 

「ステージは昨日と一緒。時間は無制限で、復活無し。

 

 あんたのガンプラ、昨日と一緒?」

 

「うん、武器は変えるけど、いい?」

 

「好きにしなさいよ。

 

 ったく、あんたみたいな素組みビルダー、

 

 聞いたことないわ」

 

 

ちらりと、タタミの手の中のパワード・ジムを見る。

 

見まごう事なき素組み、しかもシールもスミ入れも無しだ。

 

中をいじっているわけでもなさそうなので、

 

キットそのままであんな曲芸をしたという事か。

 

昨日の盛り上がりぶち壊し事件を思い出し、クーミの眉根が釣りあがる。

 

 

「あー! ムカツク! ほら! もたもたしてないで、

 

 さっさと着替えてきなさいよ!」

 

「う、うん。クーミさんは?」

 

「あたしもすぐいくわよ。何、着替え見たいの? 高いわよ?」

 

「・・・屋上で着替えるの?」

 

「高いの意味違うしっ! ああもう! この天然記念物!」

 

 

テレビ慣れしたクーミですら、ペースを崩してみせるタタミだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

調子が狂う・・・。

 

桜色のノーマルスーツを着込み、

 

筐体に入ってからポツリと漏らすクーミ。

 

なぜだろう、彼の顔を見ただけで、

 

イヤな気持ちが一瞬で消えてしまった。

 

整形もなにもしていない、純天然の幼い美顔は、TV業界にもそうはいない。

 

いや、面食いなわけではないのだが・・・。

 

 

「(自分でも気づかなかったけど、ああいう顔が好みなのね、あたし)」

 

 

収録中に見惚れるぐらい好みドストライクだったようだ。

 

てっきり初見補正かと思っていたのだが・・・、

 

2回目に気づかれなかったのは、サングラスのお陰だ。

 

アイドルが同じ男に何度も見惚れるとは、情けない。

 

そうこう頭の中で考えている間に、ガンプラのスキャン終了。

 

発進は、ガランシェール。宇宙からコロニーへ侵入するルート。

 

劇中と違うのは、ピンク色のドレスを纏ったクシャトリヤ。

 

 

「タカイ・クミ。”クシャトリヤ・パールバティ”、いくわよ!」

 

 

ウェディングドレスに身を包む武人が、漆黒の宇宙へ放たれ、

 

コロニー内へと進入。回転する円筒の中央部分、無重力帯へ。

 

昨日と同じ光景、かわらぬ場所、オレンジ色の機影を発見。

 

装備を新調したと言っていたが、ハイパーバズーカをビームライフルに変えたようだ。

 

なるほど、ファンネル相手にバズーカなど無用の長物。

 

最近発売されたばかりのRGゼータのビームライフルなら、性能も悪くない。

 

いい判断だ、戦いがいがある。

 

あちらも視認したようだ、タタミから通信が届く。

 

 

「・・・あれ? クーミさん、羽が2枚なくなってるけど」

 

「あたしの自己満よ、気にしないでいいから」

 

 

昨日斬り落とされた正面バインダー2枚。

 

クーミにとって、これはあの続き。

 

バインダーを外してあるため、ファンネルラックも半分になっているが、

 

そうされたのは自分だ、無かったことにしたくない。

 

こちらに遠慮しているのか、構えたビームライフルが揺らいでいる。

 

 

「・・・武器を変えた事、引け目を感じてるなら、

 

 それはあんたの自惚れよ」

 

「え?」

 

「ボーッとするヒマ、与えないつってんのよ!」

 

 

クシャトリヤ、最大加速。一気にパワード・ジムと距離をつめる。

 

フライングアーマーなどのSFSの欠点は、小回りが利かないこと。

 

正面を向いた状態から、急速は旋回はできない。

 

タタミもまさか、いきなり突っ込んでくるとは予想していなかったようだ。

 

クーミも、ハイパー・バズーカをもっていたら容易に接近はしなかったが、

 

ファンネル対策のビームライフルを持ってきたなら、それなりの対応をするまで。

 

クシャトリヤの大型ビームサーベルと、

 

パワード・ジムのツインビームスピアが激突。

 

距離を離すつもりはない、パワーでクシャトリヤが上回っていることは、

 

昨日の鍔迫り合いでわかっている。

 

体格差を強引に使って押し込み、フライングアーマーから叩き落す。

 

もうコイツは使わせない、パワード・ジムの飛行手段を真っ二つに切り裂き。

 

 

「ここから―」

 

 

両腕、さらにバインダーのフレキシブルアームでガッチリ抱きつく。

 

フルブースト、目指すは、コロニーの内壁、有重力帯。

 

 

「ここから、逃げるなぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

減速一切無し、人口の大地にパワード・ジムを叩きつける。

 

ファンネルを頭上に展開して待機。

 

飛び上がろうものなら、容赦なく撃ち落す結界だ。

 

 

「付き合ってもらうわよ。がっぷりよつ!」

 

 

ガツンッ! クシャトリヤが鳴らす、激しい拳あわせの音。

 

小細工はいらない、正面から、力でねじ伏せる。

 

クーミの思い描いていた、理想通りの試合展開だった。

 

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