ガンプラビルダーズ・フレンズ   作:いすた

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声の主は、アベックの彼女のほう。

わざらしく、筐体の中のユリカに聞こえる大声で。

 

「しかも臨時チームってヤツ? 友達なし女じゃん?」

 

自分の彼氏がやられそうになっているからなのか。

色香で可愛い男の子を逆ナンしてると曲解したのか。

おそらく両方だろう、彼女の無礼な言葉はまだつづく。

 

「ちょっと顔がいいからって調子にのってるってゆーかー?

 そのくせプラモでマジになってるとか、チョーウケルし!」

 

同姓と勘違いしていたタタミに話しかけることすらオドオドしていたユリカ。

思春期の中学3年生には辛いだろうに。

ライブモニターの映るユリカのアルケーは空に静止し、動かなくなってしまう。

ふざけるなと、観戦していたガクが声を荒げようとした瞬間だった。

試合中のはずの筐体の扉がバンッ! と勢いよく開き。

顔を出したのは、今まさに戦いの最中のタタミ。

 

「ねぇコウタ君。女の子はガンプラしちゃだめなの?」

 

無礼な女になど見向きもしない、ガクと同じくイライラしているコウタへ問う。

答えなんか決まってる。コウタはチラッと女のほうを見て。

 

「んなわけねぇだろ? ガンプラの前に、男女なんて関係ねぇよ」

 

当たり前だ、ガクもそれにうなづき、それに呼応するように。

 

「そうだそうだ!」「余計な事いってんじゃねぇぞ!」「部外者は黙ってろ!」

 

他のギャラリー兼選手も賛同し、女を責める言葉。

そもそもガンプラバトルをプレイする女性はかなり多いのだ。

家族連れでガンプラ選手権に参戦していた人も居る。

いや、ガンプラを楽しむことに、差別などありえるはずが無いではないか。

 

「うんっ♪ だって、トウジョウイン先輩!

 気にすることなんてないよ!」

 

ささっと筐体に戻り、ユリカに伝えるタタミ。

戦いよりも、勝利よりも、今日出会った仲間を優先する少年。

それは美談ではあるのだが、

針のムシロになっている無礼な女の思考回路を考えれば、大人しく引き下がるはずもなく。

 

「マジムカツク! ダーリン! そこのガキだけでもやっちゃって!」

 

彼氏の筐体を叩いて、お願いという形式の命令。

どう考えても逆ギレだが、悲しいかな、彼氏は逆らえない立場らしい。

彼氏のザクファントムは飛び上がり、

バックパック”ブレイズウィザード”のミサイル一斉射。

狙いは、筐体へと戻り、ベルドを締めなおしているタタミのパワード・ジム。

 

「わっわっ、うわぁぁぁぁ!」

 

大慌てで逃げるパワード・ジム。その走り方はギャグマンガの如く。

背後の爆発からの、情けない逃げ走りに会場は爆笑。

大量のミサイルを避けきれず、一発がパワード・ジムの直撃する、寸前。

アルケーの赤いビームが、ミサイルを撃ち落し、タタミを救った。

 

「・・・ありがとうございます、タタミさん」

 

救われたのは自分のほうだと、嬉しそうな言葉をタタミにだけ伝え。

ユリカのアルケーは、巨大なサイドアーマーを広げ。

 

「行って下さい、ファングっ!」

 

アルケーに搭載された、遠隔操作の小型砲台は10基。

赤い粒子を纏い、”牙(ファング)”達は空を翔る。

この武装は、アルケーの代表的武装ではあるのだが。

設定通りの再現に、会場は大きくどよめいた。

 

「まじかよ!?」「完全再現!?ぱねぇ・・・」「なんて工作技術だよあの娘!」

 

アルケーのガンプラに、ファングは再現されていない。

プラモとしてギミックが再現されていなくとも、ゲームシステムとして使えはするが、

実際に動くようにしてあれば、その分だけ性能があがるのがガンプラバトル。

フタの下にモールドが掘り込んであるだけのソレを、ユリカは徹底的に作りこんだ。

縦横無尽に飛び交うファングはザクファントムを取り囲み、細いビームを何十と撃ち放つ。

回避するにも、10の砲門を相手に、たった一機で避けきれずはずも無い。

ファングを落とそうにも、10基全ての工作精度がハイレベルで高性能。

突撃の能力も再現されたシャープな造形は、逃げようとするザクの両脚を切り裂き、

ブレイズウィザードを粉砕し、動く手段を全て奪う。

地面に倒れ、あとは銃を撃つだけしかできないザクの頭上。

アルケーは大剣”GNバスターソード”を振り上げ。

 

「ええいっ!」

 

女の子らしい声とはミスマッチな、アルケーの凶悪なカメラアイが輝き。

ザクを頭から、真っ二つに切り裂き、試合は終了を告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「負けちゃったね」「負けてしまいましたね」

 

 

タタミとユリカ、二人の即席チームは第一試合を勝ち抜き、第二試合も勝利を収めたのだが。

続く第三試合、HGUC”ユニコーン””バンシィ”のタッグチームを相手に、

残念ながら負けてしまった。

1/144スケールでありながら、設定上最大の特徴である変身”NT-D”を完全再現。

アルケーへのファング搭載など小細工レベルの改造を前にしては、

さすがのユリカも善戦だけに終わった。

お疲れ様でしたもかねて、二人は近くの喫茶店へと立ち寄り。

 

「あとで少しお話を聞いたんですけど、

 お二人とも、ガンプラマイスター候補の方らしいですよ」

「ガンプラマイスター?」

「ガンプラ道を究めた人に与えられる称号なんです。

 すごく名誉な称号なんですよ」

 

自分達のガンプラをテーブルに置き、今日の反省と、タタミの知識の補強会。

ティーカップを揺らしながら、最後に戦った高クオリティのガンプラを思い出し。

私もまだまだですね、と、言葉とは裏腹に嬉しそうなユリカ。

 

「へー、そんな人じゃ、負けても仕方ないよね」

「そうですね、でも、次は負けません!」

 

ぐっ! と拳を握り、やる気を見せるユリカ。

お嬢様だとか高嶺の華だとか、そんな言葉が似合わない。

歳相応の、これが本当のユリカの表情なんだろう。

 

「トウジョウイン先輩って、結構負けず嫌い?」

「クスッ♪ そうかもしれませんね」

 

ところで、と、ちょっと頬を染めながらユリカは。

 

「そ、その、タタミさんさえ宜しければ。

 私の事は、えっと・・・。ユ、ユリカ、と、

 名前で呼んでほしい・・・です」

「あ・・・、うん、ユリカ先輩・・・?」

「せ、先輩も・・・いりません・・・」

 

上目遣いでタタミを伺い、そう願い出るユリカ。

年齢とか、同じ学校の先輩後輩なんて関係はいらない。

 

「あ、あの・・・ですね。よ、宜しければ、私と・・・」

「?」

「お、おと・・・おとも・・・」

「???」

「お友達・・・に、なって、くれませんか?」

「え・・・? 僕とユリカさんて、もう友達じゃないの?」

 

おかしなことを言うなぁと、タタミは屈託のない笑みを浮かべる。

それが、ユリカの緊張を決壊させたのか。

 

「うれ・・・し・・・ぇぅ・・・」

「わ、わわわ! ちょ、ユリカさん!」

 

急に、泣き出してしまうユリカ。

どうしたのか? 僕はなにかマズイことを言ったのだろうか?

 

「ご、ごめんなさい。

 その・・・私、今まで、一緒にガンプラをしてくれる人がいなくて・・・。

 学校でお嬢様とか・・・、ガンプラのお友達、

 ほしかったのに、いい出せなくて・・・」

 

えぐえぐと、うれし泣きで頬を濡らしながら、そう語るユリカ。

あの無礼な女の言葉が思い起こされ、何がショックだったのかがわかった。

そうか、それなら、コウタの言葉に不満を感じたのも理解できた。

 

「じゃあ、僕がずっと、ユリカさんの友達になってあげるから。

 だから、ね? 泣かないで」

 

指で、ユリカの涙を払い、優しく微笑むタタミ。

かなりキザな行為だが、顔がいいだけに、サマになっている。

最初に出会った時とは違う、別の意味で頬を染めるユリカ。

 

「た・・・タタミさんって。結構、大胆なんですね・・・」

「え?」

「じ、自覚が無いなら、いいです・・・」

 

このタタミという少年、結構怖い存在かもしれない。

そんな事をユリカが感じていたら、それに同意する声が聞こえてきた。

 

「先輩、ソイツには気をつけたほうがいいですよ。

 天然で老若男女垂らしこみますからね」

「なーに言ってんだよ、その一人がよぉ」

「お前に言われたくはないな、もう一人」

 

いつのまにか、タタミとユリカの座る隣のテーブルに、ガクとコウタが居るではないか。

喫茶店での反省会に誘おうと思っていたのに、どこ居たんだろうとタタミ。

 

「お前なぁ、指で涙拭うのはやりすぎ」

「え・・・だめなの?」

「タタミはもうちょっと、自覚を持ったほうがいいな。

 そう思いませんか、先輩?」

 

親しみを込めて、ユリカを呼ぶガク。

話を聞いていたのだろう、ハッキリとは言わないが、自分達も貴方の友人ですと。

それが嬉しくて、嬉しすぎて。

 

「そう、ですね♪」

 

タタミという、この人に声をかけてよかった。

この人となら、大好きなガンプラを、もっともっと楽しめると信じている。

 

「ん~、よくわからない・・・」

 

まだまだガンプラに関しても、人に関しても勉強が必要なようだ。

今日この日から、タタミとガンプラの物語は、始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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