ドカーン! いや、ドギャァァァァァァァン! だろうか。
とある中学校の二年生教室。
『コウタ』は戦慄の表情で、その効果音を口にしていた。
「お・・・おま・・・おおおお」
「オマ王?」
衝撃で舌が回らないコウタを見て、謎の王の名を口にして首をかしげるのは『タタミ』。
その彼の肩をガシッとつかみ、ツバを飛ばしながら叫ぶコウタ。
「お前! 本当に昨日―」
「うん、ユリカさんと、僕の部屋でずっと一緒だったよ、朝まで」
楽しかったと、にこやかタタミの一言で、コウタは爆発した。
「と、年頃の男女が、同じ部屋で、
朝まで・・・ぬぬぬぬっ、ぬおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
発狂。そしてなぜか制服を脱ぎだし始めたコウタをチョップで止めるガク。
これじゃ前と同じだろうが、と突っ伏す友人に目も向けず。
「先週はファーストを見た、と言ってたな、昨日は何を見たんだ?」
「08小隊っていうガンダムだよ。ロミオとジュリエットみたいなガンダムだった」
「まずは一年戦争走破コースってところか・・・」
一夜を過ごしたといっても、やましいことなどしてはいない。
『ユリカ』がもってきたガンダムの映像ディスクを、タタミの部屋で見ていただけだ。
ガンプラはそれだけで楽しめるが、やはり原作を知っておくともっと楽しい。
しかしガンダムはシリーズが多すぎて、今から全制覇となると数年はかかるだろう。
なので、日曜日は彼女と少しづつガンダム鑑賞という事になったのだが。
コウタのような邪推をするわけではないが、真夜中に、
年頃の男女が二人きりというのはいささか不健全な気も・・・。
「先輩に、なにかされなかったか?」
「ユリカさんに? 別になにも」
ユリカも中学3年生、身体はしっかりと大人だ。
ショタっ気の強いタタミに対して、
何か間違いを起こさぬとも限らんとガクが思った矢先。
「タ~タ~ミ~さん!」
教室の扉を開け、入ってきたのは噂のユリカ御本人。
その手には、大きめの雑誌が何冊か抱えられている。
「昨日お話していた、模型雑誌のバックナンバーです!」
「わぁ! 雷撃ホビーマガジンに、ホビー・ニッポン。表紙のガンプラかっこいい!」
「このケストレルは、私も好きなモデラーさんの作品なんですよ!
一緒に見ましょう!」
「うん!」
学校の有名人、美少女ユリカの登場に教室がざわつく。
それはそうだろう、清楚可憐、高嶺の花の学園アイドルが、男向けモデラー雑誌を抱え、
いままでのイメージをぶち壊すほど無邪気な笑顔でやってきたのだから。
「トウジョウイン先輩が・・・」「キドウ君と付き合ってるのかな?」
「俺のタタミたんとあんな近くに、キィッ!」
ヒソヒソ話も、集まれば教室もうるさくなるものだ。
内容としては、色気に満ち溢れてはいるのだが、
当の二人には、甘い空気など微塵も感じられず。
例えるなら少年マンガを回し読みする小学生か。
「まちがい、起きそうにもねぇな」
それはそれで残念なのか、起き上がりながらそう漏らすコウタ。
ユリカがタタミを襲うかもしれないと、
少しでもそう考えた自分がバカらしくなり。
「・・・まったく」
小さく、そんなため息を吐くガクは、
違う意味で二人の世界に浸るタタミとユリカを眺めていた。