進撃の狩人   作:こんがり芋

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「2355」面白いですよ(言いたかっただけ)



第3話 シガンシナ区Ⅱ

 ハンターにとって、敵前逃亡は恥ではない。

 彼らには軍規が無ければ、逃亡だという概念も無いからだ。

 装備品等に費やしたお金が無駄になるだけで済む程度の問題だ。

 

 生きて生還出来た。ということは、己の実力不足やモンスターの通常とは違う行動を理解し、それを報告することはギルド全体の利益となるからだ。むしろ称賛すらされることもある優秀な行動だった。

 

 だからこそ、リアは壁の上で()()()()()()()

 いくらなんでも、緊張感皆無の行動である。しかし、その突飛な行動を咎める者は誰もいない。見てなければ報告もされないのだから当然ではある。

また、想像を越える出来事が立て続けに起きている以上、休息は必要であった。

 そもそも、ハンターたるもの討伐したモンスターの側で「踊る」ぐらいの度胸が勤まらないのだ。なので、周囲の安全が確保された壁上でくつろぐ程度ならば大きな問題ではない。

 だからこそリアは、気ままに普段よりも少しだけ大きな空を眺めていた。

 

「なーんもないなぁー……」

 

 子鳥も龍も、雲すらない空。

 眼下を見れば無数の巨人がたむろしているが気にしたら敗けだ。

 彼らは壁際に留まり続けていた。リアが落ちてくるのを待っているのだろう。

 しかしリアは空を見ている。動くのが億劫になるほどに日光浴をしてくつろいでいる。

 

「……せめてクッションとか欲しいなぁ」

 

 口にした出るのは不満。その中身は、地面が土草ではなく硬い石であることだ。場違いな文句でしかない。

 戦闘意欲は当然、皆無である。

 

 ──それもこれも、疲れているのが悪いのよ

 

 そう結論付けたリアは、快適な日光浴を取るために行っていた思考を放棄する。

 町に入ってから壁上に避難するまでに半刻程度が経過していると算段をつけていた。

 体内時計で狩猟時間よりも少し長い程度だろうと推測し、大体そのくらいだろうと算段をつけただけである。正確ではないものの、普段以上に長い時間警戒していれば疲労も貯まるので、間違ってはいないだろう。

 ここから一歩も動きたく無いと思ってしまう程に、リアは疲労していたのだ。

 

 そんな疲労。穏やかな風と暖かい日差しの影響で、リアは夢の世界へ旅立っていた。

 リアの背中が、羽に当たる

 

「グェッ」

 

 ぶつかった痛みで、怒りの籠った文句が届く。

 

「……あぁ。ごめん」

 

 目をさすり、定型文のような返事をする。

 無理やり身体を動かして、リアは寄り掛かるのを辞める。背中を確認して、怒った理由を把握した。

 チョコボの怒りの原因は、リアが彼にぐったりと寄りかかってしまったからだ。勿論チョコボという種は、その程度で怒る程、気性の荒い性格ではない。

 しかし、武器を掲げたままであれば別だ。弓の角が当たるって痛かったのだから文句の一つや二つは出て当然だった。

 安眠も邪魔されたので、彼の文句も倍だった。

 

 ──詫びにお肉は多めにしないとだよね

 

 そんなことを思いながら、リアは鞄から生肉や肉焼き器を取り出す。

 疲労回復の為にも、出来立ての肉を作ろうとしている。

 作る、とは言っても作業工程は非常に簡単だ。

 最初に火打ち石で火を起こす。仮に無くても火種を作ることくらいハンターには容易い。

 火が燃えすぎないよう。かつ絶やさないように注意しながら温度を上げたら、肉を焼く。

 この時、肉全体に火が通るように肉をコロコロと回すはこんがり焼くためのコツだ。

 そして頃合いを見て肉を火から離せば完成だ。

 それは料理とすらいえないような、即席狩人飯(ハンターめし)

 しかし甘く見てはいけない。龍の肉というのは、丸焼きであっても美味である。

 焚き火で焼いた肉は美味であるのは常識だった。

 多少野蛮ではあるが、それがハンタースタイルである。

 

 そんな骨つき肉を細かく千切ってから、チョコボへと渡す。

 基本は草食であるチョコボだが、美味しそうにパクついていた。

 

 普段の狩猟と違い、ずっと走ったり、戦闘行っていた訳ではない。けれど、体力が万全ではない状態で重たい狩猟道具を持ち続けるだけでもかなりの体力を奪われてしまう。

 その上、先ほどまでやった巨人相手の狩りだ。

 回避をしない以上倒しやすいモンスターだと思っていた。しかし彼らは、回避能力をして再生させることに特化した種族であるらしい。

 

 だからこそ疑問があった。

 

 ──何度も甦る巨人と、直ぐに死んだ巨人との差ってなんなの? 

 

 その違いは検討がつかなかった。

 初撃の強力な攻撃でだけ倒せて、後の連射では倒せなかった。というのであれば対応しやすい。

 一撃必殺を叩き込めば済むからだ。

 確実に、一撃で、倒していけば、今の武装でも仕留めきれると踏んでいた。時間は懸かるものの、倒し尽くす目処を容易に立てれるのだから、古龍を相手にするよりも数段余裕があった。

 

 けれど違った。

 連射でも()()()()()もあった。

 

 ──倒せなかったことの方が多いけど……

 

 あの乱戦では、狩猟中に観察する余裕がなかったのだ。倒せる基準がわからない。

それでも収穫があった。

巨人の特徴は幾らか判明してきたからだ。

特に大きいのは、弱点があると判明したことだった。

それ以外にも、

 

 一つ、ビンんを使い全力で頭部を狙えば殺せる。

 一つ、全力で矢を放てば手足を破壊できる。

 一つ、威力が低くても何処かを狙えば殺せる。

 

このようなことが判明した。羅列していけば、弱点というよりも攻略方法であが、大きな手懸かりである。

 距離を保ちながら何度も試していけば、弱点もわかるだろう。

 しかし目的は、()()()()()()()()()

 

 ──亡くなった人のことを思えば、倒してあげたいけど……

 

 リアは、敵討ちが叶いそうもないことを理解している。

 武装の底を着きそうなのが、目に見えていた。そうでなくとも、体力が持たない。

 今の手持ちでは、あと一回先ほどと同じように動き回れば補給する食糧が足りなくなってしまうからだ。

 

 何よりもリアが優先すべきなのは、生き残ること。そして、食糧確保であった。

 乗っていた船が無事なのかも確認したい。その為にも、人と会うことを優先したかった。

 誰かに会えれば、その周囲には生活圏が確保されており、食料も分けてもらえる可能性があるからだ。

 

 何にせよ、この町からの離脱は必然であった。

 置いてきた荷馬車を無視すれば離脱するのは難しいことではない。けれどあの中には、兵装が入っていたので確保しておきたかった。

 そのためにはもう一度、巨人の巣に飛び込む必要があるので、現状では無謀であった。

 

「直ぐに戻るからね……」

 

 巨人の住みかの何処かにある荷車を思いながら、リアは惜しむように口にした。

 あの荷車は、白チョコボを仲間にしてからずっと愛用してきた代物だった。その中には、お気に入りの物も入っていたので何としてでも取り戻しに来る決意をしたのだった。

 

 壁上は安全圏である代わりに、遮蔽物が何もないので留まるには向いていない。

 生存者がどこへ避難したのかを見極めて、リアもそちらへ早く向かう必要があった。

 

 主に胃袋の為に

 

「ちょっと歩くよ」

 

 羽を撫でながら告げた。チョコボは好物を食べれなかったからか、返事の覇気は弱かった。

 

 

 *

 

 チョコボへ繋げたリードを引っ張りながら、壁上を歩く。

 リアたちが動き始める頃には、空が赤く染まっていた。

 しかし変わったのは空しかない。他は代わり映えのしない景色の連続だ。

 中側は巨人に破壊された町とたむろする巨人。外側は何もない草原。

 

 ──早く見つけないと、ここから降りれずに餓え死ぬことになるわ……

 

 最悪の結末を予想してしまった。そんな終わりだけは御免だ。絶対に生き残ってやる、と強く決意をする。

 せめて腹一杯ご飯を食べたい。

 更に欲をいえば、家に帰りたかった。

 

 普段感じるよりも過酷かもしれない生命の危機を感じながら進む。

 その悲しみは壁の反対側に着いたら見事に晴れた。

 気の遠く成る程に立ち塞がる壁の向こう側には、家があったからだ。

 

 ──この先には人がいる

 

 それは確信ではない。けれど、かなりの期待を持つことができた。

 内側をみても、巨人の気配もない今は好奇だった。

 

「行こう!」

 

 ──お腹一杯のご飯が私たちを待っている

 

 主の覇気を感じてか、チョコボも気合いが入った。

 リアが何に喜んでいるかは彼は知らない。けれど必ず良いことがあると確信していた。

 彼女が笑顔になるのはご飯を食べている時だと知っているから、美味しい野菜を食べれると期待もしていた。

 だからこそ、力強く、天へ向けて羽ばたいた。

 

 しかし気合いがいくらあろうとも、食欲には勝てない。

 

「ひゃっ!」

 

 チョコボが突如、急降下を始めたのだ。

 あまりにも唐突なの行動に、リアは年相応な可愛らしい悲鳴が出た。

 そうして飛び降りた先には川があった。

 

「……水、か」

 

 行動の理由には理解した。しかし納得は出来なかった。

 今度好物の野菜を手に入れても、決してあげまいと誓った。

 

 ともあれ、水は大事である。

 泥や排水で汚れていない綺麗な水は、とても貴重だ。

 飲める内に沢山飲んで、水筒に貯めておきたいことには代わりない。

 そう考えれば、水補給できるのは有り難かった。

 

 チョコボは壁のすぐ側にある、川の側に降り立った。その川は真っ直ぐ伸びていた。このまま進めば町はあるだろう。

 けれど、通りやすいこの道が続いているとは限らないし、街も無いかもしれない。

 存在しないならましだ。真っ直ぐ進んだ先にある()()()も滅びているかもしれないのだから。

 

 ──というか、森の中で巨人に遭遇する可能性もあるゆだよね……

 

 平原なら遭遇しても遠距離で倒せる。深い森林なら、見つからずにやり過ごせるかもしれない。

 しかし答えは、既に決まりきっていた。

 

「迂回しかないわね」

 

 特に、夜の森では奇襲に対応するのが難しいからだ。昼間でも通過したくない空間を避けるべきなのは、当たり前の判断であった。

 とはいえ、巨人のテリトリーがこの町だけなのか、他にもあるのかさえリアは知らない森なのか。はたまた別の住みかが存在するのかは不明だ。だからこそ、森は避けたい。

 リア一行は森を迂回するように進む。当ての無い町への進行を始めたのであった。

 

 

 それは大地を月が照らし始めたのと同じであった。

 夜は()の時間であって、巨人のモノではない。

 彼女たちは幸運にも、巨人と遭遇することなく反対側である「ウォール・シーナ」へ到着できかもしれない。

 

 その旅は希望に満ちていた。

 

 

 *

 

 

 同じ頃 ウォール・シーナ壁周辺。

 

 その一帯は死臭で満ちていた。

 

 彼らは口減らしの為に、リアが滞在していたウォール・マリアに派遣されるウォール・シーナより外の元住民だ。

 彼らは奪還軍としてが壁外へ出た。しかし門を出る時から、彼らは軍とは呼べない集団だった。

 

 そんな死地へ向かう集団が、ウォール・マリアへ向かい始めたのは明け方である。なので正確には、リアが到着するよりも早く向かい始めていた。

 そのリアは日の入りと共に向かい始めたので、道中巨人に遭遇する可能性は()()()()()ありえない。

 

 巨人に出会わないことは幸運に違いない。それは、ウォール・マリアを突破された人類にとって共通認識として身に染みている。

 なので自ら巨人に会いに行かされる解放軍は、不運であったのだろう。

 

 繰り返しになるが解放軍は、夜明け前に巨人に会うために外へ出た。しかし壁近くで倒れている。彼らは幸運にもウォールシーナ近くまで()()()()()人間だ。

 彼らには体力があり、決断力も有していた。解放軍にならず訓練すれば、優秀な兵士になったであろう人間だった。

 最も、解放軍にならなければ、そのほとんどが農家になっていたので無意味な期待なのだが。

 

 ウォール・シーナまで帰ってこれなかった解放軍はほとんど一瞬で全滅した。

 解放軍のメンバーほとんどが、()()()()()()()()()()()物言わぬ亡骸になったのだ。

 彼らにとっての真の不幸は、知らないことだったのかもしれない。けれど巨人に食われることなく死ねたのは、幸運だった。と言えるかもしれない。

 

 巨人以外に殺されることなど想像してなかったのだから──

 




【無念】
主人公以外で 生きて登場する人間が 誰もいませんでした!


◆漸く進撃キャラを出せそう。長かった

◆けれど、巨人含めたら四体目のキャラは進撃組ではない模様

◆原作キャラ(サシャ)の出番は次次回までに

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