弱くても勝てません、強くなりましょう   作:枝豆%

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 ──高校野球ドットコメ──

 

 

 

 西東京の王者、四回戦で敗れる。

 今大会の青道高校は打撃力が極めて高く、プロ注目の『東清国』くんを筆頭に青道高校史上最強の攻撃力と称されていた今年の夏、薬師高校に2ー0で敗れた。

 薬師高校の一年生投手『樟葉誠』くんは今大会最速の154kmを叩きだし、青道高校相手に完封勝利に導いた。

 インタビューでは「いつもよりも実力が発揮できた」と語っている。聞けば154kmは今までに出したことは無く、夏の暑さで苦しい最終回に自己ベストを更新したそうだ。

 

 逆に青道高校四番『東清国』くん、インタビューで『悔いの残る負け方をした、不甲斐ない終わり方をした分後輩達には同じ道を辿って欲しくない。何より片岡監督を甲子園に連れて行ってあげられなかったことが心残り』と話していた。

 

 

 西東京の三強の一角を潰した薬師高校。

 実は部員は18人しかおらず、三年生は一足先に引退して一二年のチーム。

 今後とも目を離せないチームだ。

 

 

(7月18日)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんじゃこりゃ」

 

 スマホの画面に映る自分の高校の記事の情報が回って来て、読んでみたが「なんじゃこりゃ」の一言に尽きる。

 よく見れば自分の吠えている所を写真に納められてサイトにアップされている。

 

「凄いことになってんな、見ろよ」

 

 そう言いながら真田はスマホを樟葉に見せる。

 そこには薬師の記事ではなく、樟葉だけの記事があった。

 

『MAX154kmの左腕、強豪青道打線を四安打無失点の完封。西東京に怪物一年生現る!?』

 

「何これ?」

「ん? 記事だよ記事、割とマイナーなとこだけど」

 

「あ、でもここ」

 

『更にエースは温存、この8番を上回る投手なのか!?』

 

「お前もバリバリ持ち上げられてるじゃねぇか」

「そうなんだよ、これで故障は言いづらい」

 

 教室の隅で会話をする樟葉と真田。

 その二人は今現在、西東京地区を騒がせている薬師高校の中心人物なのでクラスからは一目置かれていたりする。

 

 

 

 

 〇◎! △

 

 

 

「お前ら、気付いてるかと思うが今俺達はベスト16だ。去年まで一二回戦で燻ってたと考えれば上出来っちゃ上出来だが、世間様が許さねぇし、今まで倒してきた高校も許さねぇ。

 それでもやるのは俺達だ、周りの声なんて気にすんな。やりたきゃやればいい、自分が思った道を進めばいいんだよ。そんで俺を甲子園に連れてけェ」

 

『はい!』

 

 青道を破ったからか、グラウンドの外にはギャラリーが数人いた。

 それは高校野球を知っている生徒であり、一足先に引退した三年生であり、OBであり、青道戦の後に樟葉と監督の所へきた記者もいた。

 

「そろそろ夏休みだな〜。お前予定とかあんの?」

「一応このまま甲子園! って言いたいとこだけど……勢いだけじゃ崩せない壁ってあるからな、正直目の前の一戦以外考える余裕ない」

 

 全体練習が始まる前に真田と樟葉はキャッチボールをしていた。

 話の内容はと言うと、夏休みの予定だった。

 高校の夏休みは7月20日からなので、今週をあと二日乗り切れば夏休みに入るのだが、今は夏大。明日の試合に勝ち、万が一にでも甲子園に出れば夏休みは野球漬けで休みなどなくなってしまう。

 

 しかし、それは仮定の話だ。

 青道を倒したからと言って西東京を制した訳では無い。もっと言えば、青道よりも強く高い壁があと二枚も残っている。それに辿り着くのにも、数々の修羅場を潜り抜けなければならない。それは針の穴に糸を通すように狭い門を突破しなければならない。

 

 

「問題は明日だな」

 

 何度も言うが今は夏大、試合に試合と連戦が続き疲れも溜まっていない訳では無い。一戦一戦の勝ちに喜びこそあるが、直ぐに切り替えなければいけない。

 青道に勝った。それは誇らしいことだ、誉と言ってもいい。

 

 だが、それでも夏大は勝たなければ甲子園に行けない。

 それが高校野球というものだ。

 

「成孔だったか」

 

 真田がトーナメントを思い出して樟葉にいう。

 成孔は三強とまでは行かないが、十分に強豪と呼ばれるに値する高校だ。

 持ち味は打撃力とあるチームと被る所もあるが、技ありの青道とは違い完全パワー型である。球場で試合を見たが、どう見ても高校生とは思えないガタイだった。

 

「全員に一発があるチームだから気が抜けない」

「でも青道を完封したんだから行けないはないだろ?」

「過度な期待をするなよ、あれは絶好調でノッてたからできただけ」

 

「そんなもんか?」

「そんなもんだ」

 

 明日は試合なので、ブルペンでは軽く調整する以外のことはしなかった。

 

 

 

 △〇◎!! 〇

 

 

 

 ピピピ、とスマホ独特の機械音で朝の三時に目が覚める。

 朝食はご飯に目玉焼きと焼いたハムにウインナーと手軽に済ませて、自転車で新聞配達のバイトに向かった。

 

「あ、樟葉君おはよう」

「おはようございます」

「学生でこのバイトってキツいでしょ。しかも今日は試合なんでしょ?」

 

 バイト先の先輩である美山さんが話しかけてきた。

 朝が早いからこのバイトは徹夜で来る人も少なくない。

 

「あれ、僕って美山さんに部活してるって言ってましたっけ?」

「いやいや、樟葉君。君スポーツ新聞に少しだけ載ってたんだよ?? 昨日配達してた時に気付いた」

 

 載っていたことは知っていたけど、あれは隅っこの方だったと思うのだが。

 

「いやー。コンビニの店員さんがね、この写真っていつも配達に来てくれてる人じゃないですか? って聞いてくれたんだよね。それで分かったんだー」

「よく見てますね、コンビニの店員さん」

 

「僕もコンビニの夜勤入ったことあるからさー。暇なんだよねー。だいたい来る客決まってるし、顔覚えちゃうんだー。それのおかげじゃないかな?」

「なるほど」

 

 

「じゃ、配達してくるよ」

「分かりました、僕ももう少ししたら行きます」

 

 原付で配達する美山を尻目に、自分の配達専用の自転車に跨りペダルを漕ぎ始めた。

 

「あー眠っ。ちゃっちゃと終わらすか……」

 

 

 

 

 

 △△△△△△△。

 

 

 

 

「おはよー」

 

 試合会場へと向かう前に、一年生組で集合してから電車に乗った。

 特急がとまる大きな駅での待ち合わせだったので、見つけるのに時間はかかったが樟葉が最後といういつも通りの感じで電車に乗った。

 

「俺、思うんだけどよ」

「電車の中だ、静かにしろ」

 

 阿部がいつもの調子でおちゃらけようとしている所を、平畠が止める。真面目故に電車内のマナーは人一倍厳しい。

 

「移動が電車ってどういうことだよ」

「うるさい、黙れ」

 

 続けて米原が阿部にツッこむ。

 

「他の高校ってバスじゃん!? なんで俺らだけ電車なの!? 高野連は手配してくれないの!?」

「知らねぇよ、黙れ」

 

 そんな試合前で緊張を解すための雑談は、次の駅に着くまで続けられた。

 みんな分かっているのだ……あの青道を倒したという意味を。

 

 駅で異様に見られたあの視線。

 大物食いをするというのはどういう意味か……。

 強豪を負かすということはどういうことか……。

 

 それを身をもって体験している途中なのだ。

 

 

 

 

 

 

 






前回のアンケートについて……ゴメン、あれは半分ネタ(笑)
実際バンドリの氷川日菜は好きだから誤解はしないでね。おちょくった訳じゃないよ。

でも薬師にマネージャーみたいなのがいないとキツイかなーって思うのも事実。
極端な話し、黒バスの桃井みたいなやつがいないと来年の夏の丹波のフォークを初見で打つとか不可能だし…。



次回から試合に入るのでキリよく終わりました。短いけどゴメン。



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