とある原石の神造人形(エルキドゥ) 作:海鮮茶漬け
「貴方は私達と過ごした時も好奇心旺盛で困りました」
「そうだね。自分が魔導図書館だと自覚しながらも、魔術を見ると解析しに行ったり、君は不用意に知らない人に近づいたりするから、側にいてヒヤヒヤしたものさ」
「むぅ~~。かおりもステイルもちょっと言いすぎかも!私だって見るからに怪しい人には付いていかないよ!」
明るく楽しげな声が、とある木造建築のアパートの一室で交わされていた。それは、原作ではあり得ない光景だった。原作では最終日に上条が首輪を見破ったため、インデックスと彼等が話をする機会がなかったのだ。
インデックスのために心を殺していた神裂火織と、ステイル・マグヌスがこれ程穏やかな表情をしたのは、もしかしたらインデックスの記憶を初めて消した時から、一度もなかったのかもしれない。
そんなあったかい空間が出来上がっている中、俺は今何をしているかと言えば
「あの、先輩?一体何をしているんでせうか?」
「後輩と腕を組みながら街を歩いているんだよ」
そう。上条と共に学園都市を二人で歩いていた。
「俺たちはインデックスの首輪を壊さないといけないから、外にいるのはまずいんじゃ?」
「おや?君ともあろうものがあの三人の空間を壊しに行くのかい?それに彼女の首輪を壊す決行の日は、翌日だと決まっただろう。なら、その時のために英気を養うのも君の役目だよ」
などと言っておきながら、実は俺が上条と遊びに行きたかっただけである。上条は誰かを助けるときは間違いなくヒーローなのだが、男友達として付き合っていくとノリが良いし、交友関係が広く様々な場所を知っているため、一緒に居て結構面白いのだ。
その上、必ず何かしらのハプニングが起こるところが堪らない。(愉悦)
「それとも、僕が相手では不満かな?」
「いやいや!そんなことはないですよ!ただ俺が相手で良かったのかなーって」
「君だからいいんだよ」
からかった反応も面白い。一緒に居てここまで楽しく感じた相手は、今までいなかったんじゃないかと思うくらいだ。それぐらい上条の行動は新鮮で、一挙手一投足が楽しみでならない。
上条と色々な所を赴きながら街を適当にぶらぶらする。そうすると、街中であるため当然知り合いに会う可能性が高い。例えば上条のヒロインの一人とかにね。
「アンタその女とそういう関係だったの?」
壊れた自動販売機の側を歩いている俺達に、声をかけてきたのは、
彼女の周りには彼女と仲が良い三人の友人がいた。推測するに遊びに出掛けている最中なのだろう。
「あれ?御坂さんのお知り合いですか?」
「そうなんですの?」
「うん、そうだよ。実は彼女とは昔からの友人でね」
「へぇ~そうなんですね!」
「いやいや、違うから!佐天さん騙されてるからね!?ていうか、アンタも何平然と嘘ついてんのよ!!」
そんな風にみこっちゃんを弄って遊んでみる。やっぱりツッコミの才能あるよなぁ。話していて面白いよねこのツンデレっ娘は。
「僕と君との仲だろう?」
「会ったのこれでまだ二回目でしょ。…………アンタって思った以上に相手をしていると大変ね……」
みこっちゃんが疲れたように言った。ごめんね弄るのが楽しいんだ。そういえば、まだ彼女達に名乗ってなかったな。
「僕の名前は天野倶佐利だよ。よろしくね」
「佐天涙子です」
「初春飾理です」
「ッ!まさかあなたがあの噂の!?」
「……ええ。多分ね」
二人と握手しながら挨拶をしていると、オセロが俺の名前を聞いて驚いていた。常磐台に通っているみこっちゃんと、オセロこと白井黒子は俺のことを知っているのだろう。
すると、手をピンと挙げて明るい声を発しながら佐天さんが質問してきた。
「はいはい!お二人はお付き合いをされているのでしょうか!」
「ち、ちょっと佐天さん!初対面の方に失礼ですよ!」
「いや、後輩は僕の恋人ではないよ」
上条との仲を、興味津々な目で見ていた佐天さんが尋ねてくる。そんな彼女の質問を一切動揺せずに、平然とした態度で答えながら内心思った。
佐天さんめっちゃカワイイ
明るくて、気さくで、空気読めて、友達思いの女の子って最高じゃない?黒髪ロングで裁縫から菓子作りまで家事が出来るとか男の理想だわぁ。実は能力が
「距離感が近いので私てっきりお二人は、お付き合いをなさっているかと思いました」
この激甘ボイスは「う~い~は~る~!」で、佐天さんにスカートめくりされる初春じゃないか!頭に多くの花飾りを載せている彼女は、小柄なこともあってかインデックスに似た雰囲気を感じさせる。
まあ、さっきも佐天さんにツッコミを入れてたけど。
「ふふっ。これぐらいの距離感は普通だよ」
「いや、その距離感は普通じゃないでしょ」
「私も見ていて顔が熱くなっちゃいました……」
「もしかしたら、中学生には少し早かったかもしれないね」
「ほほう!高校生では当たり前なんですね!」
「佐天さん誤解しないでください。違いますわよ」
冷静に返事をしながら、うっすらと頬に赤みが差しているみこっちゃんや、俺達を見て顔全体を赤くしている初春を見ていると、そういえばまだ中学生だったなぁと感じる。佐天さんの高校生に求めるよく分からん大人っぽさも、中学生らしいのかもしれないな。
「まあ、後輩に特別な感情を抱いている君からすれば、いい気分ではなかったかもしれないね」
「「そうなんですか!御坂さん!」」
「そうなんですのぉお!?お姉様ぁ!?」
「んなわけないでしょうが!!」
「ちょ、馬鹿!うおッ!?」
みこっちゃんが遂にキレた。
倒すべき敵と認識している相手をそんな風に言われたら、確かに気に入らないのかもしれない。だけど、さっき言った特別な感情を抱く相手に、すぐになるから許してほしい。
それにしても流石は上条。よく今の不意打ち気味の電撃の槍を防げるものだ。しかも、しっかりと俺を守るような位置取りをしているし、俺が女だったら惚れてたな。
「えぇっ!?」
「お姉様の電撃を打ち消しましたの!?」
「相変わらず意味が解らない右手ね」
驚愕する彼女達を見て、その反応を楽しみながら胸を張った。フフフフ。どうだ、すごいだろう!これが主人公だ!
「まさか、こんなところで『どんな能力でも効かない能力を持つ男』に会えるなんて!」
「……お姉様、街中での能力の使用は、止めていただきたいのですが」
「うぐっ!?わ、悪かったわよ」
「あなたがたも公共の場で、あまり過激なことはしないようにお願いします。
「ありがとう。覚えておくよ」
そう言って彼女達と別れる。初めて佐天さんと初春に出会えて、内心ホクホクしながら家に戻った。
「いやー、すごくラブラブなお二人でしたね!」
腕を組んで去っていく───正確には緑髪の少女に腕を掴まれ少年が引きずられている───彼女達を見ながら隣の佐天さんは呟いた。
「え?でも、付き合っていないとおっしゃっていましたよ?」
「もう馬鹿だなぁ、初春は。あんなの照れ隠しに決まってるじゃん」
「そうでしょうね。流石にただの先輩後輩の距離感ではありませんでしたし、少なくともあの方はそれ以上の感情をあの殿方に抱いていますわね」
うーん。確かに、私も嘘なんだと思うけど照れ隠しをするようなキャラかぁ?どっちかっていうと、恋人という関係性を全面に押し出してきて、こっちをからかってきそうな気がする。アイツもなんか戸惑ってたし。
「あんなにキレイな人に会えるなんて、今日は運がいいのかなぁ」
「あら、美しさではお姉様のほうが優っていますわよ」
「黒子」
「あははは……。御坂さんもお綺麗ですけど、天野さんはいろいろ濃かったですよね」
「うんうん、あの膝元にまである艶やかな淡い緑の髪に、儚げな笑顔。さらに僕っ娘で高校生のお姉さんだもんね!」
「そう言われるとあの人本当にキャラが濃いわね。しかも、元常磐台出身の
そう言うと、二人が呆然とした顔になった。
「本当に凄い人なんですねぇ……」
「やはり、あの方が……」
「そうみたいね」
私が言った情報でさらに驚く佐天さんと初春さん。まあそうよね、それにいろいろ加味すれば私よりも希少な存在だし、それこそ
「うん?あの人がどうかしたんですか?」
「そういえば、さっきも噂とか言ってましたよね?」
「ほら、以前話したでしょ?【どんな能力でもコピーする能力をもつ女】の都市伝説」
「ええっ!!もしかしてあの人が!?」
「私も人に聞いたぐらいで詳しくは知らないわよ?でも、噂によると本当にいろいろやってるみたいね」
「ええ、聞いた話によると常磐台で嘗て一大派閥を作ったのがあの方らしく、次の女王に一年生だった食蜂操祈を指名したのも彼女だとか。
さらには、常磐台を離れて歩き回ることもほぼ毎日なさっていて、一時期は
「食蜂操祈ってあの
「げっ!あの女とも知り合いなのあの人……」
「御坂さんは知らなかったみたいですね」
あの女と関わりがあるなんて聞いてないんだけど。確かに、あの女とは違ったやりにくさがあの人にはあったわね。
「でも、派閥なんてものを作っていたことや風紀委員に居たことは知ってるわ」
「実際には、ちょっと手伝いをしていたぐらいらしいですわよ。固法先輩がそう言っていました。」
「へえ~、行動力のある方なんですね。見た目は深窓の御令嬢って感じでしたけど」
「そうだよね。話を聞くと御坂さんと、さっき言ってた食蜂さんを合わせた人みたいだよね」
「なぬっ!?」
その聞き捨てならないセリフに食い付く。その言葉に初春さんが納得するように言った。
「あー、確かに。常磐台の中で初めて派閥を作るとこは食蜂さん。学舎の園から出ていろいろとするのは、御坂さんの先駆けと言えるかもしれませんね」
「ね?でしょ!でしょ!」
「ぐぬぬぬぬ……」
「お姉様、淑女としてその反応はどうかと思いますわよ」
あの女といっしょくたに扱われるのは気に入らないが、そう言われればそうかもしれない。というか、派閥を作りながらどうやって学舎の園から出る時間を作ったのだろうか。
「ああー、もう!ゲーセン行きましょゲーセン!パーと遊ぶわよ!」
「はあ……。お姉様にはそんなものより、お琴やお裁縫のほうが似合っておりますのに」
「ないない。あり得ないわよ。私そんなことしても全然楽しくないし。どうせなら、みんなで楽しめたほうがいいじゃない」
そんなことをしゃべりながら、四人でゲームセンターに向かい私達は歩き出した。
そして翌日。木造のアパートの一室で床に伏せる女の子を助けるために、数人の戦士が自分の得物を構えていた。
「準備はいいか上条当麻」
「ああ!インデックスを助け出す!」
二人の言葉の応酬によって、インデックスを助け出すための作戦が開始された。