とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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そんなに期間空かなかったなあ……と思いつつ103話です。


103.魔術師同士の戦い

「──というわけで、学園都市の取り引きを俺達が止めなくちゃならないってことだにゃー。そんで、インデックスの問題は上やんに丸投げするからよろしく頼むぜい!

 事件が起きていることを隠し通す方向で、なんとか口八丁手八丁で言いくるめてくれってトコですたい」

 

「いや、お前はそう簡単に言うけどさあ……!」

 

「大丈夫だって!フラグまみれの上条当麻ならやれるやれる!適当に餌付けするか、いっそのこと事件と逆方向に食べ物投げとけば丸っと解決だにゃー!」

 

「インデックスが聞いてたらぶちキレそうなセリフだな……。……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「(……あら?)」

 

 なんかさらっと受け入れたな。いつもの上条ならもうちょっと渋りそうなのに。

 まさか、何か心変わりでもあった?もしかしてバタフライエフェクト?そんな小さくてよく分からない変化とか止めてくれない?(懇願)

 

「(先輩やっぱり気付かないところで無茶をしようとしてたのか。きっとこの騒動の解決も土御門達とだけでやるつもりで、俺を遠ざけようとしていたんだな。

 先輩のその優しさは嬉しいけど、それで先輩が傷付くのはダメだ。先輩が女の子ってのもあるけど、何より日頃からお世話になっている人を危険の渦中に行かせるわけにはいかない……。

 先輩がなるべくフォローへ回る状況になるように、今回は積極的に俺が介入していく)」

 

 つまり、上条当麻は自らが率先して騒動に関わることで、オリ主がフォローに回らざるを得ない状況に、持ち込ませようとしているのだ。

 上条はその右手もあって近接戦闘しかできないため、必然的にフォローではなくメインで戦うこととなる。それを利用し自分の立ち位置がメインとなる事で、オリ主をフォローするポジションに固定させるため、上条は珍しくも自分からオリアナ達と遭遇して戦うことを望んでいるのだ。

 自分の不幸は許容するが誰かの不幸は見ていられない。そんな彼は何度も助けてもらった女の子が苦しむ姿など、絶対に許容するわけにはいかなかった。

 

「(例え、どんなに俺が傷付いたとしても、そんな事にさせてたまるか)」

 

 彼は人知れずその拳を強く握り締めた。

 

 

 

 

 

 まあ、それが勘違いでなければきっと熱い展開になったのだろう。

 

 残念ながらここにいるのは、先輩のために率先して危険な騒動に介入する後輩に対して、「(うわぁ、物語の調整箇所が出てきて面倒臭せぇ……)」と、考えているクズである。

 幸か不幸か上条は何も知らずに、騒動へ深く関わっていくこととなったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 土御門の提案で俺達は別々に行動することとなった。俺と上条、そして土御門は競技があるためそちらに参加し、ステイルは単独での行動。

 競技をサボれば何かあるのかと疑われ、周りの人間に注目される事もあり得る。そのため、こんな状況でありながら、学生生活を飾る青春の一ページを満喫しなければならないのだ。

 

「(どちらかというと俺としては、騒動に関わらず青春の一ページを作ることに集中したいなぁー……なんて、思うんだけど)」

 

 他のメンバーが戦争を起こさないように神経を尖らせている中で、このオリ主、ほとほと呆れるくらい適当であった。

 

「(結局は三人で事件解決するから俺いらないんだよな。上条も大して怪我してないしわざわざ俺が出張ることもなくない?

 ここは原作一巻から登場してくる男三人が結託しながら、オリアナ達をどうこうするのがエモいのであって、そこに女が加わるのは物語の雰囲気ぶち壊しじゃね?

 なんかさー、やっぱ今回は全体的に気が乗らねえんだよなぁ……。ヤバさで言ったらどっちかと言うと明日の方が大変だし、科学と魔術の摩擦がそこまで気にする必要が無いって分かっても、結局は上条のことで戦争が起きるのは変わらないんだよね)」

 

 結末を知っており介入すること自体が不純物になる。それを察しているため今一つ必死になれない。それが今のオリ主の状態だった。

 

「(俺というなんか科学とも魔術とも言えるような、よく分からん奴が騒動の中心に行くと、いろいろなところから目を付けられて原作の流れが変わりそうだし。

 だから、今回は手出ししたくないなーってのが嘘偽らざる本音。うーん、どうやって離脱しようか……)」

 

 ボイコットするための算段を付けているオリ主。自らを慕ってくれている後輩の、先程の内心を聞かせてやりたいものである。

 上条当麻も思うまい。まさか、上条に知らせないどころか最初は押し付けてトンズラしようとしていたなど。

 

 そして、上条と同じく勘違いをしている男がもう一人。

 

「(ほう、流石だな。上やんはさっき言われた事もあって、動揺が表に出ちまっているのは仕方無い。だが、逆にそこまで何事も無いように振る舞えるのは一種の才能だ)」

 

 競技に参加している土御門はさりげない仕草で、観客席にいるオリ主を確認する。上条がどこか思い詰めているような雰囲気を纏っていることから、オリ主も何かしらの影響が出ているのではと思い至ったためだ。

 だが、それもいい意味で彼は肩透かしをくらっていた。

 

「(()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ……まあ、あいつの生い立ちや生きてきた環境を思えば、そうでもできなきゃ生きてこれなかったんだろうがな)」

 

 なんだかんだで相手の内心を看破しているのは流石はプロと言ったところだろうか。だが、土御門もそれが本心だとは見破る事はできなかった。

 それもそうだろう。そんな事を考えていたらとんでもない人でなしだからだ。

 

 それが正解であると分からぬまま、彼らの大玉転がしが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛てて……、まさか大玉に踏み潰されるなんて不幸だ……」

 

「あれは競技中にこっちのことを考え過ぎた自業自得だぜい。まあ、俺達としてはそっちの方が大切だから、そうしてもらえると助かるんだけどにゃー。

 それより、あらかじめ決めていた通りに、上やんはインデックスの注意を引いてもらうぜよ。どこにインデックスが居るかその連絡も忘れるなよ?」

 

 「了解」と短く答えた上条はインデックスの方へ駆けて行った。

 

「まあ、これでインデックスは大丈夫だろ。お前の特殊な体質もインデックスの場所を把握していれば、問題にはならないわけだしな」

 

「だけど、彼女が移動していたらどうするんだい?後輩も運び屋を追うのだからずっと共には居られないだろう?」

 

「それも大丈夫。上やんに適当に契約した携帯をインデックスに持たせるよう言ってある。その携帯のGPS辿れば鉢合わせることはもちろん、サーチに入る心配も無い」

 

 なるほど確かにそれなら安心だ。インデックスが車に乗って移動する描写がアニメで無かったから大丈夫だろう。原作ではどうかは分からないが交通も規制していたから大丈夫のはず。

 

「そんじゃあ、俺とステイルは魔術の痕跡を探してくる。分かっていると思うが競技は適当に流せよ。下手に勝ち続けるとその分だけ競技に拘束されるからな」

 

「うん、でもそれは皆次第かな」

 

「あん?どういうことだ?」

 

「だって次は綱引きだしね」

 

 そう言うと、土御門は納得したように答えた。

 

「ああ、なるほどな。相手校に怪力系統の能力者が居なければ、拮抗して長引く可能性もあるか」

 

「終わったら電話するよ。それまではクラスの輪に混ざっていることにしよう」

 

 そして、俺と土御門も別れて行動をする。土御門としては少しでもオリアナ達の居場所を掴みたいのだろう。話し終わると小走りでどこかに向かって行った。

 俺もこのあとの綱引きに向けてクラスのもとへと向かって行く。目の前に居る二年の女子達の顔を見れば、余りやる気がないため早く終わるかもしれないと当たりをつける。

 これはすぐ終わるだろうなぁと思いつつ、歩く最中でふと俺は思った。

 

 

「(両手が塞がる綱引きって能力使える奴が極端に減らないか?そんな状態で綱引きとか、大覇星祭の中でもかなり絵面地味な競技じゃね?)」

 

 

 華はないし綱を強く引っ張るときは、必死になって力を入れることで顔がスゴいことになるわなどの理由で、映像で映し出される大覇星祭では綱引きの女子人気は凄まじく無かったりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、僕はこれで失礼するよ。知り合いと待ち合わせをしているんだ」

 

 そんな言葉を言ってクラスから離れる。両方ともやる気がなかったために自棄(やけ)に長引いてしまったが、これで三人と合流できるだろう。

 

「(まあ、合流したいのかと言われるとそうでも無いんだけど。連絡するって言ってるから早くした方がいいよな)」

 

 そんな感じて電話を掛ければすぐに土御門が電話に出た。

 

《っと、天野か?競技が終わったのならこっちに来てくれ。多分だがお前の治癒能力が必要になるからな》

 

「おや?運び屋を探すのではなかったのかい?もしかして、倒してしまったとか?」

 

《いや、オリアナを見付けはしたが取り逃がした。流石は追跡封じ(ルートディスターブ)のオリアナ=トムソンと言われるだけのことはあるようだ。コイツはなかなかの鬱陶しさだぞ》

 

 あー、なるほど。最初の取り逃がしたところか。確かトラップに対処している間に雲隠れしたところだっけか。そんな事を思っていると土御門が別の相手と会話をし出したようだ。

 

《──あん?それはオリアナが使っている霊装(れいそう)だよ。『Soil Symbol』ってのは土の象徴。五大元素とか聞いた事はないかにゃー?そいつには『土のお札』っていう意味もあるが、土の属性色は『緑』だ。

 だが、コイツは『青』で書かれているだろ?『青』は水の属性色だから普通は『土』の魔術には使わない。土の魔術を使いたければ相性の良い『緑』や『円盤(アイテム)』なんかの象徴を重ねるはずだからな。

 ………………まさか。間違えてるなんてあり得ないぜよ。いいか上やんコイツはわざと変えてるのさ。ズレた配色を意図的に設置して、その反発力を攻撃力に変えてるんだ。

 五行で言うなら相克(そうこく)だ。悪い相性は悪い効果を生む、ってトコですたい》

 

 おそらく、上条がオリアナが残したらしい魔術の霊装を見て土御門に尋ねたようだ。電話口を抑えなかったのはオリアナの魔術関連のため、俺に断片的でも聞かれた方が良いという判断だろう。

 

「(まあ、魔術に関してはさっぱりなんだけどね。マスターはマスターでも三流以下の一般ピーポーですので)」

 

 衛宮士郎でさえ魔術の『投影』と『強化』ができたことからすると、本当にどうしようもないマスターなのだと自覚する。

 

「(あれ?そう言えばFGOのマスターも一般人なんだっけか?なら、そんなに珍しく無かったり?)」

 

 FGOの主人公は血液検査でたまたま適正がある事が分かり、補欠として加わっていただけで、本来ならば人理を守るマスターとして行動する予定は無かった。

 彼?彼女?がマスターとなったのは他にレイシフト適正という、時代を渡るための適正がある魔術師の生き残りがいなかったためである。

 つまり、ずぶの素人がサーヴァントを使役するマスターになるなど、本来ならばまずあり得ない事なのだが、半端な知識を有していたためにオリ主は勝手にそう認識してしまったのだった。

 

《まあ、とにかく迅速に頼む。このままじゃオリアナに逃げられるからな。お前が居るのと居ないのじゃあ戦闘の続行に、かなりの違いが出てくる》

 

「分かったよ元春。すぐに向かう」

 

 そう言い終え通話を終えると携帯をしまい、指定された場所に向かって空間移動(テレポート)を開始する。

 

 遅れて好感度が下がるのは避けなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空間移動で移動すると当然の話だが走るよりも遥かに早い。三秒後には数十メートル先にいるのだから、当然と言われれば当然である。

 お馴染みの白井黒子に変身して能力を使えば、すぐに目的地へと到着することができた。

 

「(やっぱり超便利だな空間移動って。ぶっちゃけ一方通行とかじゃなかったら、不意打ちだったらまず防げない能力なんだよなぁ)」

 

 空間を押し出して現れるなんていうヤバい能力である。狙いを外させる事しかできず防御ができない攻撃とか、どんなチートだよっていう話だ。

 相手が魔術師でも通用する能力だと言えるのでは無いだろうか。

 

「(当たればそれこそグレムリンのメンバーの何人かはダウンしそうなんだな。実際に全能神トールに残ったメンバー完敗してるし)」

 

 空間移動の有用性を考えながら指定された場所に向かうと、そこには既に三人集まっていた。どうやら一番最後となってしまったようだ。

 見た感じもう魔術か何かをしているらしい。確か、そんな話もあった気がする。大覇星祭の話は昔過ぎて所々覚えてないのが痛い。関わらないようにするつもりだったから、事細やかに思い出そうとしてなかったのがここで足を引っ張っていた。

 取り敢えず、遅れた謝罪と共に声を掛けようとした直前、それは起きた。

 

 

「が、ああああああああああッッ!!」

 

 

 ステイル=マグヌスの絶叫が響き渡る。

 バキベキバキッ!と発せられる異音から、良くない事が起きているのは明らかだ。土御門の指示に従い、上条がステイルの身体に右手を叩きつけると、その音が止みステイルが崩れ落ちた。

 

「『どうしたんですの!?』」

 

「え!?白井!?……あ、何だ先輩か」

 

「──ごめんよ。紛らわしい事をしたね。それで彼はどうしたんだい?」

 

「逆探の魔術でオリアナの居場所を見付けようとしたらこの通りだ。おそらく逆探知の魔術に反応する迎撃術式を組み込まれていたんだろうぜい」

 

「ぐッ…………なるほど、先ほど使った魔術から僕の生命力を逆算したというわけか。つまり、僕の魔力に反応して封じにかかる迎撃術式というわけだね……全く厄介な。

 ……だが、『自動処理』というやり方にどこか見覚えがあるんだけど……まさかね」

 

 ほーん、話からするとステイルの魔力に反応して、迎撃をする魔術があらかじめ仕掛けられているらしいかった。そう言えば、アニメでもそんな感じの話をやった気がする。

 

「いや、ステイル。俺も同意見だぜい」

 

「本気かい?……だが、それなら自動的に作動することには理屈が通る」

 

「?何の話なんだ?」

 

「僕も詳しく聞かせて欲しいな」

 

 分かり合っている魔術師達の側で素人二人が首を傾げている。魔術のことは分からんのですよ。科学も怪しいけど。

 土御門が苦笑混じりで答える。

 

「上やんはその存在について既に知っているんだけどにゃー。まあ、実物を見たことは無いから仕方無いっちゃあ仕方無いかもしれないが」

 

 魔術師でそんな奴居たっけか……?と、頭を巡らせていると土御門がさらっと続きを言った。

 

「魔術に関する知識を詰め込まれ、それ自体が術者の意思によらず一つの魔方陣として起動するもの。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ほら、お前の隣にはアレを103000冊も記憶している禁書目録が居るだろう?」

 

「ま、さか」

 

 目を見開く上条に土御門はニヤリと口角を上げてその物の名を言った。

 

 

「"魔道書の原典"さ」

 




五行では反発しているのに、何故オリ主はアックアのように爆発していないのか。明かされるときは長いですね(遠い目)
ちなみに原作と同じセリフは伏線です


◆考察◆
 それではまた考察をしていきたいと思います。この考察が既存なのかどうかは分からないので、仮にあったとしても『同じこと言ってるー』程度の認識でいてもらえると助かります。
 そして、今回は前回言っていたアンナ=シュプレンゲルとエイワスの考察は一旦保留とします。(……ぶっちゃけホルスではなくラーだったねくらいしか言えませんし……あるいは、ラーとホルスの習合の神かな?)
 そんなわけで今回は別の考察をしていきたいと思います。今回の考察の題材はズバリ『原石』です。


『原石』
 天然の能力者。作中では能力開発をする環境が偶然にも合致して生まれる能力者が、『原石』と説明されている。この『原石』だが分類的には超能力、つまりは科学サイドだとされていることは、原作の読者ならば知っているだろう。
 しかし、本当にそうなのか?原作では『魔術』と『超能力』の違いは特に無いとされている。ならば、魔術よりも先に存在している『原石』が、後の世でアレイスターの手によって分類された、科学サイドであるというのもおかしな話だと思わないだろうか?

 つまり、『原石』とはそもそも科学サイドに分類される存在では無いのだ。
 それでは『魔術』なのかと言われるとそれも違う。それについても理由があり、木原数多の発言にそれがある。彼は科学を突き詰めると非科学が出てくると言っていた。非科学、つまりはオカルト。
 ならば、同じ木原である幻生がそれに気付かないはずが無い。もし、そんな不純物であるとしたら気持ち悪いほどにテンションを上げて、「万象をゼロで割るかのような破格の計測」などと言うと思えないし、幻生の性格からして削板を観測場所から遠ざけたいと考えるのでは?少なくとも取り乱すほどに興奮することは無いでしょう。
 ならば、『魔術』でもなく『超能力』でもない、別の能力であると推察することができる。では、作中に出てきていない新たな能力なのか?
 それについても、作者は違うと考えている。鎌池先生ならば既に伏線のような言外に述べられているのではないかと考えた。
 では、その力とはなんなのか。これについて考えたときに作者は一つの推論が生まれた。

 そう、つまり『原石』の正体とは『願いの集積体』なのではないかと。

 先に説明するが『願いの集積体』とは、複数の願いに同一の指向を与えれば、因果律に作用し得る力が生まれる、というものだ。
 一見、これは突拍子も無い考察なのではないかと思うかもしれないが、とあるSS一巻で統括理事の一人である貝積継敏が、雲川芹亜にある言葉を言っている。
 「『原石』とは何だ?まともな能力とは思えん。発火や発電などと言った「発現しやすい」能力とは完全に方向性が違うように感じられる」
 つまり、この事から分かるように、生まれ方が極めて『まとも』では無いのだ。まさに唯一無二と言えるような特別な稀有な能力を持つ存在。そんな『原石』が生まれるとするならば『願いの集積体』が近いのでは、と思い至った。
 分かりやすい『原石』の例として姫神秋沙を挙げる。彼女の能力は『吸血殺し』。吸血鬼が彼女に牙を突き立てようとすると灰になって死んでいくという、世にも珍しい能力を持つ少女。
 これが自然に発生すると考えるのは些か無理がある。ならば、生まれるような状況が必ずあるはずだ。

 それこそ、吸血鬼に恐怖する人達が吸血鬼を殺せるような、同一の願いを抱くなどの理由が。

 おそらく彼らは願ったのだろう。『吸血鬼という恐怖を一身に惹き付け、一瞬で消滅させる事ができる人間』などという夢物語を。
 そして、そんな願いから生まれた『願いの集積体』が『吸血殺し』だと考えられる。

 さらに、この考察の次の根拠として上げられるのが、姫神と同じ『原石』である削板軍覇だ。彼の能力を見たとき初めはほとんどの人物が同じ事を思ったはず。

『少年漫画の主人公やニチアサヒーローのような能力だ』、と。

 とあるの世界には悲劇が溢れている。ならば、『根性』で全ての不条理を打ち砕き、悲劇を喜劇のように笑いながら乗り切る存在へ、憧れない者がいたとしても不思議では無いのでは?
 と言うのも、科学が世に広まっているのならば、アニメのようなサブカルチャーも広まっているはず。ならば、そう言ったイメージを多くの人が抱き、一致することがそんなに珍しいことだとは思えない。
 『超能力』がこの世にあるのならば、そう言った超人のような人物が現れるのもあり得ない話ではないと、人々が憧れ、願うのもおかしな事では無いはずだ。

 そして、このことからある推察ができる。削板の能力は科学サイドに近しい能力となっているのではないかと。

 これでは、削板は最初に言っていた考察と矛盾していると考えるかもしれないが、『願いの集積体』は人々が抱く同一の思考から生まれるため、人々が科学サイドに夢を見て願ったのなら、当然科学サイドに類する存在が生まれるのだ。
 『魔術』は世に広まらないよう秘匿されているのに対して、『超能力』は大々的に名が広まっているのもその要因だろう。超常に対して憧れを抱くものが『超能力』と定義されるのは必然だ。
 だからこそ、科学者達が能力を完璧に解析できずとも、オカルトという分類にカテゴリしない理由なのではないかと考える。
 そしてそれは逆説的に、もし魔術師が魔術を広めていたとするなら、削板の魔術サイド版の存在が生まれたかもしれないといことだ。
 ……いや、あるいはそれこそが『聖人』という存在の可能性も……。

 だが、この考察には一つの矛盾点がある。
 それは上里勢力の『原石』、田妻暮亜だ。彼女は身体の細胞が植物に近い植物人間である(本来の意味とは違う)。もし、彼女が『願いの集積体』だとするならば、多くの人間が『植物でできた人間を望む』という世にも奇妙な事が起きる。
 地球温暖化に対して『人間が二酸化炭素を吸い込んで酸素を放出できたら、この問題も解決するよなー』という空想を抱く人も居るには居るだろうが、果たしてそんな願いかどうかも怪しい考えで『願いの集積体』なり得るのだろうか?考えてみると首を捻ってしまう事柄だ。
 もし、これに考察を強引に当て嵌めるとするならば、前提条件として田妻暮亜が『原石』となったのは作中でも書かれている通り、上里に『理想送り』が宿ってから。つまり、この『理想送り』こそが『願いの集積体』を生み出す、あるいは作用する何かしらの力があるのではないだろうか。

 上里のやり方は誰かの背中を後押しして、その人物の力となることだ。ならば、その性質は理想送りにも備わっているのではないかと考えた。
 実際に上条は相手の意見を否定し、皆の輪の中にその人物を加えようとする性質がある。そして、実際にその右手には相手の幻想を打ち砕く力が宿っているのだ。
 ならば、それが理想送りに備わっていてもおかしくはない。『上里の力になりたいや、地味ではない特別な女の子になりたい』などと言った周りの少女達の想いを後押しした結果、限り無く低い可能性が開花したのではないのか。

 つまり、上里が感じていた上里勢力の歪みは、本来ならば表に出ること無かった内面や、可能性が低く開花しなかった才能が芽吹いたことによる変化だったのでは?と、いうことである。

 そのため、右手の所有者が変わっても彼女達の好意は変わらなかった。なぜなら、元々あったものから生まれた感情や力だったからだ。
 そして、右手に宿る『願いが重複したものを新天地へと吹き飛ばす』と言う力と、『願いの集積体』という存在。この二つに共通する『願い』と言うフレーズ。これは果たして偶然なのか?
 これから先は蛇足でしかないため考察は打ち切るが、以上の事から『願い』と『原石』には、何かしらの因果関係があるのではないかと推察できるだろう。

 作者としてはそうであったら面白いと思います。以上です


p.s.
 あっ、ちなみに考察と合わせて一万字言ってました。大変申し訳ないです。m(_ _;m)三(m;_ _)m
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