とある原石の神造人形(エルキドゥ) 作:海鮮茶漬け
まさか100話もかかるとは。
最初期から見てくれている人はお久し振りの話です。
これは今から十年以上前の出来事。
とある青年がこの世界で意識を取り戻すところまで遡る。
「(……う、ううん、なんか変な夢を見たな)」
とはいえ、神が用意したであろう『無』しかない異質な空間よりは、遥かに親近感を抱く場所ではあったが。
「(……いや、そもそも、あれ自体が夢だろ。死んで転生なんて常識的に考えてもあり得ない。やたらと身体に感じる感覚に現実味があったから、一瞬勘違いしてしまった)」
そんな自分の隠れた転生願望に気付き赤面する。まさか、そんなものがあるとは考えてもいなかったのだ。そして反射的に頭に手を当ててしまうが、その瞬間に違和感を抱いた。
「(あれ?俺ってこんなに髪艶良かったっけ?なんかキューティクル効きすぎじゃ……ってなんだこれ!?)」
そして、遅れて自分の髪質の変化に留まらず、長さ、色などが元の黒色からかけ離れた異質な物に変化していることに気付いた。
「(み、緑……?前日していたコスプレのかつらだっけ……?いや、俺がしていた格好は上条当麻だ。こんなかつらはしてない。じゃあ、これは?)」
朝起きたら髪がアニメの色のようになっていたら誰でも驚く。彼も例外ではなく言葉を失っていると、更に追い討ちをかけるようにあることに気付き驚愕する。
「(デ、デカイ!?なんだこの部屋ッ!?部屋の大きさも物も異様にデカ過ぎる!!その前にどこだここ!?俺の部屋とは全然違うぞ!?)」
拉致などが考えられるが、それにしては余りにも費用がかかっており採算が取れていない。元々はアミューズメントパークだったとしても、これほど大掛かりな設備があるのなら、ニュースやバラエティーで取り上げられないなんてことがあるだろうか?
相手の思惑はどうであれ想定していない不可思議な事態に巻き込まれ、彼の思考能力はパニックで全く働かなくなっていた。
そんな彼だったが驚愕の事実はまだ終わらない。
「(……いや、なんだよこの手足は!?もしかして子供……かッ!?嘘だろ!?何がどうなってるんだ!?)」
目が覚めると知らない場所に常識から逸脱した物。そして、様変わりした自らの身体。こんな現象、名探偵コナ●でしか見たことがない。
「(どうなっているんだ……?現実でアポトキシン4869が開発されたとでも?いや、だったとしても俺なんかに使うわけが……)」
混乱の極致に居る彼だったが、自分の姿の特徴からハッとあることに思い至る。
「(待てよ……この姿にこの風景……。まるで夢の中であったことの地続きみたいな……)」
そんな馬鹿な。と思うが、その疑念が脳裏から離れなかった。
彼がエルキドゥを知ったのは死ぬ日で見た友人のコスプレである。コミケでコスプレするという約束でいざ当日会ってみると、その友人がエルキドゥの格好をして参加していたのだ。
友人曰く、「Unlimited Blade Works を見てるなら、FGOのエルキドゥも知っていると思ってた」とかいう、偏見甚だしいセリフを吐かれたのである。
嘗て友人のコスプレを見たときは思いもしなかった姿だ。コスプレとして大の大人が子供キャラの衣装を、着ることがないわけではない。コスプレとはその人が着たいものを着るのが正しい。
「(……とはいえ、二十歳になった一八〇センチある成人の男がそのチョイスだとは思わないだろぉ……)」
予想外も予想外。やたらと様になっていたから勘違いをしてしまっていたのだ。
「(……確信が欲しいから姿見があるといいんだけど、そんな便利なものはさすがに無いか。子供がいちいち鏡を見るなんてケースは少ないだろうし)」
身体の大きさからしておそらく幼稚園児ぐらいだろう。そんな子供が見てくれなど気にする方がどうにかしている。そのため、部屋を出るべきかどうか検討していると、その扉から明らかに部屋着ではない女性が現れた。
「(誰だこの人?)」
疑問と共にその人の格好を見れば、メイド服を着ていた。しかも、メイド喫茶みたいなフリフリなやつではない、ガチのやつだ。確かヴィクトリアンだかの服だった気がする。
そのガチメイドさんが俺に向けて言葉を発した。
「おはようございますお嬢様。朝食の準備はできています」
「(………………は?)」
そして、一ヶ月の時が経ち、その間で俺はあることに気付いた。そう、この身体になってからまともにしゃべることができなくなっていたのだ。
初めはそれは驚いたが、試しに友人のコスプレでしゃべっていたエルキドゥの話し方をすれば、口から言葉を発することはできることを知ってからは、慣れないしゃべり方に四苦八苦しながらも生活することができた。
まあ、生活といっても家政婦さんと話す程度でしかないが。……母親や父親と会うことはできていない。海外赴任という可能性はあるが俺がこの身体に宿る前にどうやら
敬語が使えないのは痛いが、『とある』の世界ならば敬語使えないキャラはそんなに珍しくもないのでは?とも思う。
それにしても、いやー、辛かった。ふとしたときに、つい地が出てしまい、いきなり眼と口と顔の表情筋が死ぬのである。この度に、使用人が怯えてしまいとっっても心苦しかった。
別に怒ってないんだよ。表情筋が俺の管理下から勝手に外れるだけなんだ……。
「(あー……それと、まあ、何ていうか……実は初日で気付いていたことなんdガチャ「
そうなんだよ。俺、実は女の子のお嬢様になってるんだよね。
そんな属性もりもりの俺の今の名前は、
そんなわけで自分のことを理解できた俺が思うことがある。
それは、原作に介入しない方針で行こう、ということだ。
本来なら、原作のキャラと会って話をしたいのは山々ではある。それはもう本当に。だが、一番恐ろしいのは原作ブレイクなのだ。俺のせいで原作が崩壊しては俺に待っているのは死だ。
上条のギリギリで命を繋いでいる感じは、原作を読んでいる読者なら全員が共感してくれるだろう。
一回死んでいるとしても前世は苦痛どころか、死んだ認識すらできずにポックリ逝ったらしいため、当然死に慣れているなどはあり得ない。俺からすればいつの間にか死亡童貞を失った、という話でしかない。怖いものは怖いのだ。
まあ、本来なら初めてが最後になるのが普通ではあるのだが、こうしてよく分からん状態ではあるが二度目の生を得ている以上は、結構生きたいというのが本音である。
それに、確か新訳で学園都市から離れた日本で、上条や
「(まあ、グレムリンの攻撃に巻き込まれないといけないっていう、超危険な状況と背中合わせになるけど。それに、こっちの方が可能性は低いだろうけど神里と会うかもしれないしな。
このサーヴァント身体と前世持ちっていう、地雷ふんだんの女なら上里の右手の性質が引き寄せる可能性もある)」
上里翔流が上条当麻と邂逅するのは新訳のおよそ中盤だ。それまで雌伏の時を過ごせば、上条勢力もそれなりの関係性を築くことができるだろう。それからなら、介入しても大幅に原作が変化する隙はもうないと言ってもいい。
そこから学園都市のメンバーと出会うのもありではある。
「(……まあ、上里ハーレムの中にはもう原石のキャラがいるから、多様性から見て無視される可能性が高くはあるけどさ。うーん、それはそれとして、上里の側に居たくねえんだよなぁ……。
まあ、あの厄介女製造機のせいで、いつのまにか『上里が一番カッコイイ!』みたいに俺がなったら最悪過ぎる)」
上条と上里の違いは簡単である。
端的に言ってしまうと、上条は『ラノベ主人公』で、上里は『なろう主人公』なのだ。
上条はヒロイン達と天然でイチャイチャしながら、敵とは命懸けの戦いをする系の主人公で、上里は上里でなろうでよくあるチート能力+自分の置かれている状況に不満を持っている悲劇の主人公、と言った具合だろう。
新訳で上里が多くの読者から嫌われている理由は、『なろう主人公』の悪い側面が描写されていたからではないだろうか?
だからこそ、その置かれた状況であり背景を知ることで、上里が嫌いではなくなったという人も多いはず。
要するに、『なろう主人公』特有の試すような上から目線の行動で、「ときめいて好きになりました」みたいな洗脳されるくらいなら、死んだ方がまだマシという話なのだ。
「(まあ、もったいないけど適当に学園都市の外で過ごして生きますかね)」
ちなみに、上条を『ジャンプの主人公』ではなくラノベ主人公としたのは、削板軍覇というハチャメチャな奴が存在するためである(+ハーレムという存在がいない点も挙げられる)。
それから、さらに一年後。
俺は家から出て俺はバスの停留所に向かっている。家から出たのは転生してから初めてのことだった。まあ、幼稚園児の子供を連れ回すのは金持ちの家では余り無いことなのだろう。
「(誘拐のリスクとかあるからしょうがないとはいえ、外を知らないからここが一体何県なのかすら分からん。まあ、飯とベッドがあるから大して気にしてもなかったけど)」
そんなぐうたらできる天国を満喫した俺は、こんな小さい子供をバスに乗せれば騒ぎ出す可能性もあるのに、よく乗らせるな他人事のように思う。
子供の躾ができていないなんてことを噂されるのはイメージとしてどうなのだろうか?
「(まあ、俺は必要最低限の言葉しか言わないから、そんな心配もないっちゃないか)」
そんなわけで、この金持ちの家の外聞を汚すことも無いというわけなのだろう。信頼というか生態を把握されたと言った方がいいのかもしれない。
それを理解してバスに乗ると、なんかメイドが『行ってらっしゃいませお嬢様』と言ってバスを見送った。
「(……いや、アンタ乗ってこないの!?)」
まさに、驚天動地。予想外過ぎた。
この身体になってから驚いてばっかりである。そんな状態だったためにバスが動き出したことを数秒後に知り、バスを止めるための行動すらできなくなったのであった。
「(あーもう、どうでもいいや。どうせ、幼稚園かなんかだろ)」
子供をバスで送るといえばそれぐらいしか思い付かない。説明が無いのは気になったが、それこそこの身体に宿る前に説明していたのなら分からなくもないことだ。
「(……あれ?それにしてはどうして保護者同伴じゃないんだ?)」
気にはなったが周りの子供も似たようなもののため、勝手に納得して考えるのを止めた。
───ああ、この時もう少し考えていれば……。
ポーンと軽快な音と共にハキハキとした元気な声が、手元にあるマイクから車内全てに通るかのように発せられた。
「はーい!皆さんここがどこだか分かりますかー?」
「「「がくえんとしー!!」」」
近未来的な学園都市の街並みをスクールバスが子供達を乗せてどんどん進む。その途中で目的地につくまでの間、子供達を楽しませるよえにバスガイドが学園都市についての説明をしていた。
そんな、バスガイドが子供達の好奇心を煽っているのを横目に、緑色の長い髪を膝元まで伸ばしている死んだ眼をしている子供がいた。
というか、俺であった。
次はあの妖怪の話です
そもそも今回はその前フリだったり