とある原石の神造人形(エルキドゥ) 作:海鮮茶漬け
「『食らいなさいッ!!』」
裂帛の声と共に電流が少女の身体から溢れ出した。その電流は漏れ一つ無く狙った対象に向けて直撃していく。
電流が直撃して動かなくなったその敵を退け、後ろから新たな敵が続々と投入されて来るのが遠目でもよくわかる。その数は目視で確認できるだけでも五十は超えていた。
「『どんだけ居んのよこのガラクタはッ!…………でも、そっちがその気なら付き合ってあげる。全部ぶっ壊してやるわ!』」
身体から電流を放出させる彼女は目の前の大量の敵に一切臆せずに、勝ち気な笑みを浮かべる。
その表情は彼女らしさ溢れる清々しい顔だった。
「(クククク……ッ!最高だ!最高過ぎるッ!転生最高おおおおおおおおおお!!)」
そんな態度とは裏腹にめちゃくちゃテンションが上がってるアホが居た。オリ主だった。
「(雷神御坂vs上条&削板とか超楽しみなんですけど!イヤッホー!!『とあるシリーズ』におけるベストバウトの一つの戦い!あれを間近で観戦できるとか最高過ぎるッ!)」
過去最高レベルでテンションが上がっているアホがそこには居た。本当にどうしようもない奴である。
「(頼り甲斐のある先輩として、後輩達を見守らなといけないからっていう建前があれば、あの場に居ても違和感は無いはずだし、それに加えて削板と知り合いの上に、ミコっちゃんとも関係性がある俺なら共闘するシチュエーションとしてはバッチリ。
いやー……、今まで頑張ってきたもんなー。今までの頑張りを評価してのご褒美だったら受け取らない訳にはいかないよなー!……アレイスターさえいなければカメラで撮影していたのに……ッ!)」
『とある』の世界に転生する上で、最も鬼門となる
それに対して能力を発動して、すぐさま電撃をぶつけることで行動不能にしていく。
「(……それにしても、まーたコイツらかよ。流石にくどくね?)」
そんなオリ主の前に現れる
「(もう、いい加減本当にしつこいわー。そろそろ見飽きたんですけど。つーか、どんだけ居るんだよ。『スタディ』、モブのくせして頑張りすぎじゃね?)」
まだまだ大量に出てくる無人駆動鎧に辟易としながら、数体を一気に鎮圧していくオリ主。電撃を浴びせれば活動を停止するため捌くこと自体はかなり楽である。
「(とはいえ、俺からしたら幻生と戦うみさきちと離れられてラッキーと言えばラッキーではあるけどさ。雷神御坂までのワクワクをここで発散できると考えれば、俺も結構満喫してると言っても過言じゃないし)」
随分と呑気なものである。
とはいえ、オリ主もただ遊んでいる訳ではない。
「(三人で
御坂はオリ主を置いていくことに難色を示したが、何故ここに連れてきたのか説明を受けていない御坂が、雑魚狩りをするためにここに残るのは不満であろうことを話し説得することで、自分がここに残ることを正当化し、この場に残ることをゴリ押ししたのである。
「(まあ、幻生は俺の体力の限界を狙ってるんだろうけど、エルキドゥスペックの俺の身体の体力は常人の数十倍。こんな雑魚相手なら数十時間は楽勝なんだよなー)」
電撃が飽きたら砂鉄の槍で串刺しにして行動不能にする。的が人間よりも大きく人的な被害な無いのなら、磁力の制御が甘かろうが関係無い。
それが、オリ主が今までになく自由に戦えている理由である。
「(『スタディ』の奴等ミコっちゃん相手にしたときと、黒夜達が手に入れた無人駆動鎧で全部かと思ってたんだけど、まさかこんな在庫が残っていたとは……。
原作とは違って黒夜達が出資したから生産した数がアニメよりも多いのか?うーん、革命未明編はアニオリらしいから詳しいバックボーンが分かってないんだよなぁ……)」
アニメとの相違点からくるものなのか、オリジナルストーリーでもともと合った設定から大量生産されて今ここにあるのか。今この場では分からないことだった。
そんなことを考えながら無人駆動鎧を破壊していく中であるものに目を引かれる。そのパーツを見るとオリ主の目が大きく開かれた。
「(え……?何だこれ?どうなってるんだ?)」
実際にはオリ主はそこにある物に驚いた訳ではない。逆に本来そこにあるべき物が存在していなかったから驚いたのだ。
そう、それはつまりどういうことかというと、
「(
とある病院の廊下にて。
「「わーい!」」
「……ふぅ、体力であれば私の方があるはずなのに私よりもどうして動けるのかしら」
息を切らしながら呟く少女の名前は
「子供の代謝は大人よりも遥かに良いし、日常でかかるストレスも大人と比べれば格段に少ない。それこそ、幼少期の子供は一流アスリート並みのスペックを有しているらしいね?
君は
「私が担当していたのはあくまでも学習装置の調整。学習装置に詰め込まれた全ての知識を把握しているわけではないですし、クローン技術についてはノータッチですので、人体の変化について専門的な知識があるわけではないです」
彼女を知る人間からしてみれば敬語を使う姿など思い付かないだろう。しかし、御坂美琴に対して年上に敬語を使わないからと、回し蹴りを食らわした布束が、フェブリ達の命の恩人である冥土帰しに対して敬語を使わないのは、いささか道理に反しているとも言える。
「(この光景を見た
彼女が天野に対して御坂と同じ様に回し蹴りをしないのは、一応恩人であることと相手の身体能力が異常なほどに高いために、大して意味が無いであろうことを予め察しているからである。
布束はため息を吐いて気分を切り替えるように話題を変えた。
「Anyway フェブリ達の毛髪を利用した、遠隔操作による能力の強制発動は本当に解決したのですか?フェブリ達は元々能力を引き出すように造られたため、ハッキングなどによる外部からのセキュリティには脆弱性がどうしても付きまとう。
……それこそ、悪名高い木原に目を付けられればプロテクトで弾くことは難しいのでは?」
「僕には『患者に必要な物は何でも揃える』というモットーがある。色々な人の手術をしてきたから
「(……さらっと言ってはいるけど、あの科学の天才達である木原にも突破できないプロテクトを施すなんて生半可なことじゃない。間違いなく暗部系統の技術のはずなのに、こうも事も無げに言うなんてこの先生も本当に大概みたいね)」
あの
そんな彼女の意識を逸らす高い可愛らしい声が再び響く。
「「キャー♪」」
「二人とも走るのなら中庭に行くわよ。また看護婦の人に怒られたくはないでしょう?」
彼女達が望むこともできなかった穏やかな日常が、笑顔と共にそこには確かにあった。
襲い掛かる無人駆動の群れを捌きながら、オリ主はテンションを下げて状況の把握に集中していく。
「(ストレス発散で今まで頭を使ってなかったけど、あの『スタディ』に御坂戦と同等の無人駆動鎧があるはずもないよな。能力者を工学技術で打倒するとか言ってたし、必要最低限の駆動鎧しか渡そうとしないで多くは自分で所有したいと思うのが自然だよな)」
暗部からの資金という理由があったとしても、駆動鎧を造るのも楽なことでは無いだろう。フェブリ達の毛髪による稼働ならば、他所で使用されてしまい自分達の駆動鎧はその余波で動かなくなる、なんて可能性もなくはないはずだ。
フェブリ達の
そんな状況を知っているはずの『スタディ』が無人駆動鎧をこんなに用意するだろうか?暗部の資金欲しさに自分達が行う計画の成功率を下げようとするのか?
「(……割りとありそうだなぁ……)」
頭の中に『くそっ!あいつらまさかこのタイミングで無人駆動鎧を動かしているのか!?今日決行だとあらかじめ言っていただろうッ!?……これだから大して信用できない暗部に僕は頼りたくなかったんだ!!』とか言って、
もしかして、そんな感じじゃね?とか半ば思いはしたが、肝心のフェブリ達の毛髪を入れた容器がないため、思考を新たに巡らしていく。
「(ていうことは、……あんまり考えられないけどまさかそういうことか?)」
状況から見ればそれが一番正しく、逆にそれ以外の理由が見付けられない。だからこそ、するっとその答えが自分の中に入ってきた。
「(木原幻生が『スタディ』の技術を流用している?)」
随分と在り来たりな理由だと思いながらも、無人駆動鎧の利点を考えると頭ごなしに否定できるものではない。
「(うーん、いやまあ、時間稼ぎの雑兵としちゃあ及第点ではあるか。『スタディ』レベルであの数用意できたんだから、木原幻生ならその数倍は用意できそうだし、コストとか考えたら割りと現実的ではある。
この数相手じゃ素の身体能力で倒すのはいつか限界が来るだろうし、
削板の一撃でぶっ飛ばすとその派手さから当然騒ぎになるだろうし、後ろの建物にも影響が出そうで出せないからしないが、削板の全力の一撃を出せば大きな隙が生まれるから、ゲテモノ技術を有している木原幻生を相手じゃそれはできない。
暗部組織『メンバー』の馬場が御坂妹を眠らした蚊のロボットで、戦闘不能にされるリスクあるのだ。
「(まあ、無人駆動鎧ってわかっていれば、
オリ主の手から甲高い音と共にコインが打ち上げられ、再び手元に戻ってくると高速で撃ち抜かれる。
ミコっちゃんの代名詞である技だが、俺が使うと制御の難しさから衝撃波を振り撒くという傍迷惑な技である。
建物からある程度距離を取っていたという理由と、無人駆動鎧がクッションになっていなければ建物に削板ほどで無いにしろ、影響が出ていた一撃は周りに居た無人駆動鎧を薙ぎ倒すことに成功したのであった。
「(これで仕切り直しっと。無人駆動鎧にも何か仕掛けがあるわけじゃないみたいだし、本当にコスト面からの流用だったみたいだな)」
中に人が入っている外道みたいな真似もしておらず、特殊なギミックが搭載されているわけでもない。そんな無人駆動鎧にどこか肩透かしを食らったような気分になったが、状況を考えればそれも自然だとは思う。
「(幻生からしてみれば俺なんて、ミコっちゃんが
今回の主役は天野倶佐利ではなく、御坂美琴。
それ以外は絶対能力者の邪魔者と言ってもいい。
「(まあ、幻生なら俺が介入したらそれはそれで喜びそうなのがあれだけど)」
想像した幻生に辟易としながらも、うって変わってそんな幻生をどこかを小馬鹿にしたムカつく態度で話し出した。
「『いやぁ、それにしても便利だからって、まさかあの科学の重鎮である幻生が他人の技術を流用するとか、随分と角が落ちて丸くなったじゃない。いくらお邪魔虫が相手でもそんな手抜きをするなんて本当にらしく……………………………………あれ?』」
そこで違和感が生まれた。
あの木原幻生が他人の……それも『スタディ』の技術を利用する?
「(……あの『スタディ』の技術を学生の図画工作レベルだと思ってるだろう木原幻生が、その技術を流用するなんてあり得るのか?
『スタディ』みたいなフェブリ達の毛髪を必要しない新しい方法を確立したんだろうけど、それにしてもそれだけであの木原幻生が満足するのか?)」
確かに凡人相手に格の違いを見せ付けて優越感に浸る木原一族のキャラクターは確かに居る。しかし、あの木原幻生がただの学生相手にそんな無駄なことをするだろうか?もし、そんなことに時間を使うのなら全く新しい最先端の機械を生み出すのでは?
「(…………)」
合わない。
木原幻生というキャラクターらしくない。オリ主という存在から木原幻生に何かしらの影響を与えているのだとしても、余りにも強烈な違和感。
そこでふと真逆の考えが浮かんだ。
「(……
その理由とはなんだろうか。オリ主は無人駆動鎧と戦いながら考える。
「(あの木原幻生がわざわざ『スタディ』の技術を流用する理由……そんなのあるか?木原幻生って言えば科学の重鎮だからそのコネも技術も他の人間よりも卓逸しているのは明らか。
それなのに、なんでそんなショボイのを作るんだ?訳が分からん。無駄にもほどがあるだろうに)」
一度生まれた疑問は無くなることはなく、より濃いものになっていく。オリ主がその疑問を解消しようと頭を働かせるが、事態はそんなに悠長に待ってはくれない。
たまには読み専の頃のように『とある』の作品が読みたいと思うこの頃。伏線ゴリゴリに張った頭のおかしい奴が読みたい。誰か書かないか?