とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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いや、すいませんでした!『スタディ』のくだりを書こうと思ったらない方がスッキリしましたので次かその次に書こうと思います。
お詫びと言ってはなんですがすぐ上げるので待ってもらえると嬉しいですm(_ _;m)三(m;_ _)m


112.外装代脳

施設の中を走りながら二人の少女は言い合っていた。

 

「ねえ!本当に一人にしちゃってよかったの!?やっぱり私も残って全て黙らせてからの方が……ッ」

 

「はあ……っ、はあ……っ、馬鹿言わないで……、今は妹達(シスターズ)の子の保護が最優先よぉ。一応護衛は付けているけど、あの人はどっちかというと頭で物事を進めて解決するタイプ。

 幻生の小飼に拠点を潜入された時点でできることは時間稼ぎが精々よ。幻生が妹達(シスターズ)の子を手にしたら、ミサカネットワークを奪われることとイコールと考えるべきなんだから……ここは天野さんに任せるべき場面でしょう?……ぜえ……っ、はあ……っ、まあ、彼女の安否よりも先にしなくちゃならない確認事項があるんだけど……」

 

 戦う前から既に倒れそうな食蜂は、荒い息を吐きながら今の行動の正当性を告げた。

 

「(ミサカネットワークが幻生の手に落ちた場合、おそらく御坂さんならどうにかできる可能性がある。幻生が何をするつもりかは知らないけど、そもそもミサカネットワークは御坂さんのDNAマップからクローン技術で生み出された妹達が、身体から発する電磁波を繋ぐことで生み出されたもの。

 なら、幻生がミサカネットワークに干渉しても妹達の元となった御坂さんなら、打開する(すべ)が何かあるかもしれない。天野さんはあくまで能力のコピーだから御坂さんほどの精密さはないはずだし。

 それに幻生の手駒がどれほどの実力かは知らないけど、御坂さんも伊達に超能力者(レベル5)な訳じゃないし、私との組み合わせならあの幻生にも勝てるはず。……仮に幻生の狙いがあっちでもね)」

 

 科学の重鎮であり学園都市の闇を生き抜いてきた木原幻生ではあるが、人の精神に干渉できる食蜂と電子機器を支配することができる御坂の組み合わせならば、木原幻生が有する科学系統の技術と手駒達は完璧にねじ伏せられると食蜂は考えている。

 

「……まあ、あの幻生が御坂さんと私が組むことを想定していない、なんてことあるはずもないだろうけどねぇ……」

 

 御坂美琴の逆鱗に触れるようなことをしておいて、幻生に対して彼女の怒りが向かってこないなどあるはずがない。つまり、幻生は食蜂と御坂のコンビでも打倒する(すべ)があると考えるべきだ。

 

「(……あの入り口から大量に現れた駆動鎧(パワードスーツ)は、おそらく天野さんに対しての足止めのため。つまり、今の盤面は幻生の思い通りってことなんだけど……。適材適所で行動すると今の人員の配置が最適解。…………誘われていても今は御坂さんと乗り込むしかない)」

 

 狙い澄ましたかのようなあの襲撃からして、幻生の策略の一つなのは間違いない。それがわかっておきながら他の選択を取れない自分自身に対して、食蜂は歯噛みしながらも全力で道を走り抜ける(御坂美琴曰く駆け足程度の速度)

 しかし、食蜂の顔はどこか安堵もしているようだった。

 

「……天野さんは言ってしまえば今回は部外者。いくら妹達(シスターズ)を見捨てられないからって鉄火場に出てくる必要はないわ」

 

 妹達(シスターズ)

 今回の騒動の起点となっている少女が、生み出される原因となった計画の名称。これは御坂美琴がDNAマップを科学者に渡してしまったから生まれたと言っても過言ではない。

 本来なら天野倶佐利同様に食蜂操祈も部外者である。ある事情がなければ。

 

「(ドリー……。あなたのような存在は二度と生み出させはしないわ)」

 

 食蜂操祈が妹達を気にかける理由である。『メンバー』の馬場芳郞(よしお)の手によって眠らされた妹達を保護したのはその少女が居たからである。

 

 

「それに、天野さんには今まで充分お世話になったもの。私達の因縁にまで付き合わせると、本当にそろそろあの人の隣には立てなくなっちゃうしね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コツコツッ、と靴音を鳴らしてその老人は手下達が捜索している部隊から離れていく。指示した場所から一人遠ざかる彼は淡々とした声音で話し出した。

 

「天野くんは入り口付近で駆動鎧の足止めを。食蜂くんと御坂くんは建物の中に入って来たと……。ふむふむ、万事順調だねぇ」

 

 ひょっ、ひょっ、ひょっ、ひょっ、と独特な笑い声を上げて、木原幻生は目の前の携帯端末を手にし喜色を浮かべた。そんな彼に向けて手持ちの端末から声がかけられる。

 

『まあ、こっちも統括理事会を通して無い事がバレちゃったけど、別にもういいよねー。計画も最終段の詰めにまで来てるんだし』

 

「そうだねぇ。今さら何をしたところで間に合うはずもないから、放っておいていいよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それは確証の無い自信などではなく、計算によって弾き出された事実でしかない。単純な火力だけ見れば今からの実験の成果物は、学園都市中の能力者全てを集結させても相手にならないほどの、文字通り次元が違うものになるのだ。

 彼は屋上への階段を上がりながら、まるで宣言するように狂気を感じさせるような笑みで呟いた。

 

「──さあ、実験を始めよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食蜂によって連れてこられた場所は妹達のところではなかった。その事に文句を言おうとした御坂だったが、目の前にある(おぞま)しい光景を目にしいつもの様子からは想像もできない声音で言葉を発した。

 

「な、何よこれ……」

 

「……天野さんならともかく、よりにもよって御坂さんに見られちゃうなんて最悪だわぁ」

 

 今、食蜂達が突入した施設は食蜂にとって最重要拠点である隠れ家だ。本来ならば誰にも知られたくはなかった、彼女にとっても弱点に成りうる拠点。そこにあるものもまた尋常な物ではない。

 彼女としても御坂妹を助けるのを優先ではあるのだが、食蜂からすればこちらをどうにかされるとそれだけで戦局が引っくり返る代物。

 

 

 

「学園都市の科学者達の狂気が生み出した人工臓器──外装代脳(エクステリア)

 

 

 

 そこには直径何メートルあるのか分からないほど大きな脳が、左脳と右脳それぞれ一つずつ、培養液が満たす容器の中に入れられていた。

 その異様な光景をただの一般人が見れば、皆一様に狂っているとしか表現できないほどに異常なものであった。

 

「これは私の大脳皮質の一部を切り取って培養し、肥大化させた巨大脳。私の能力を底上げする私の切り札よぉ。……本来は別の使い方みたいだけど」

 

「……別の?」

 

「言ったでしょう科学者の狂気だって。最初の理由は違ったみたいだけど、この脳は私の心理掌握(メンタルアウト)を他の人間が使用するための機械になってる。私の能力の底上げは副次的な効果よぉ。

 私以外の人間が心理掌握を使えば、能力に振り回されてどんな人間も外道に堕ちる。私のような高潔な人間でなければ心理掌握は制御できない代物。それを、俗物が使えばどうなるかなんて言うまでもないのにねぇ?

 まあ、こんなものを作る科学者がまともな思考をしているとは思えないし、その筆頭である幻生の手に落ちればどうなるかなんてわざわざ説明する必要もないでしょう?」

 

「……アンタがあの子よりもここを優先したのはそういう理由なのね」

 

「とはいえ、心理掌握の所有権を譲渡するための登録はそれなりの日数が掛かるから、幻生でもどうにもすることはできないけどぉ(外装代脳が狙いじゃない?あの子には何重にもプロテクトが

掛けてあるから安全のはず……幻生は一体何を狙って)」

 

 そこまで考えていると、食蜂の端末から着信を知らせる音がなった。

 

『食蜂さんですか?こちらは妹達を確保しました。現在、彼女を連れて屋上に退避しています』

 

「でかしたわっ!そっちに全てのステータスを戦闘力に極振りしたアマゾーンを連れていくから、安心して待ってなさいね!」

 

「……おいコラ。今誰のことを言った?」

 

 そんな風にじゃれあっていると、突如電話の相手がカイツから変わる。その声音は食蜂にとって一番聞きたくない声だった。

 

 

 

『──やあやあ、食蜂くん。元気かな?』

 

「幻生!?」

 

 

 

 突然、味方の携帯から敵の声が聞こえ食蜂は驚愕する。そして、幻生が与えてくる驚きはそれで止まらなかった。

 

『食蜂くんはどうやら外装代脳は登録しなければ使用できないと思っていたようだけど、巨大脳に僕の脳波を調律して合わせれば能力を引き出すことは可能だよ。それで能力が使用できる事例は君も知っているたろう?』

 

「(幻想御手(レベルアッパー)……ッ!)」

 

「彼女にイントラクションを授けたのは僕だからねぇ。脳波を調律し君達能力者の能力を使用するのは、彼女よりも僕の方が当然長けているとも」

 

 心理掌握が盗まれる。それはつまり、プロテクトをかけた妹達が無防備の状態になることと同義。それを理解した彼女はもう一人の相手に指示を飛ばす。

 

「御坂さん!早く屋上に向かって!このままじゃミサカネットワークが幻生に乗っ取られるわッ!」

 

「ッ!」

 

 本来ならば何かしら口答えの一つでもしていきそうではあるが、彼女も学園都市の頂点の一人。自分がすべきことを即座に理解して磁力を使い屋上までかけ上がっていく。

 彼女からしてみれば次々に新しい情報が出てきて混乱もいいところだ。しかし、妹達は守ってみせると嘗てあの場所で誓ったため、それだけを為すためだけに全力で御坂妹の下へと速度を上げる。

 磁力を使ったショートカットで幾つもの階層を、吹き抜けから一直線に登りきると、そこに倒すべき敵である幻生は居た。

 

 倒れた御坂一〇〇三二号と共に。

 

 それを見た瞬間、身体から溢れだした電流と共に御坂美琴の怒りが沸点を超える。

 

 

 

「その子に何をしたああッッッッ!!!!」

 

 

 

 バリバリビシャァアッッ!!!!と、空間を震わす高圧電流が辺りに振り撒かれる。

 そんな軍隊と渡り合えると言われる超能力者(レベル5)の彼女怒声を向けられても、木原幻生の笑みが途絶えることはなく、それどころか電光で照らされたその顔には狂気に彩られた笑みを更に深めた幻生が映っていた。

 

「ククククッ!ミサカネットワークに特殊なウイルスを打ち込むことで、生み出したこの莫大なエネルギー。どうするのが一番面白いと思うかな?──ねえ、御坂くん?」

 

 その言葉を発した後に先ほどから空を覆っていた黒い稲妻が、御坂美琴の頭上に向かって集約し───

 

 

 

 

 ───彼女に落ちた。

 

 

 

 

 その黒い稲妻が落ちると共に凄まじい電撃が御坂美琴から吹き出す。

 先ほど御坂美琴が生み出した電撃とは比較になら無いほどの電流が溢れだした後、電流が急激に引いていく。

 そこに居たのはこめかみから角のような白い帯を生やし、本来あるはずの人間の瞳から青白い電光を瞬かせる御坂美琴の成れの果てが(たたず)んでいた。

 それを見た木原幻生はこれから行う実験の行く末を想像し、溢れ出る愉悦に表情を歪ませながら言葉を発する。

 

「御坂くんは天上の意志、絶対能力者(レベル6)に果たして辿り着けるかなぁ?」

 

 不自然に身体から淡い白い光を発する彼女を中心にして騒動は更に勢いよく動き出す。

 

 木原幻生の思惑は止まらず盤上に居る駒は動きを止められない。皆が皆、望んでいないにもかかわらず下り坂から転がり落ちていく。

 それは、一見(いっけん)関係が無さそうな駒であっても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、全てがそうではない。

 

「あれ?確かここで落ち合うって話だったんだけど佐天さんはどこだ?」

 

「おっと、なんかここら辺で面白れえことが起きそうだな!ちょっくら行ってみっか!」

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